短編

 アラームの音でぼんやりと朝を意識する。うだうだと布団に潜りながら、起きないと……と葛藤するが、起き上がる気力が湧かない。そうこうしているうちに、アラームがだんだんと激しく責め立て始めた。2段階ほど我慢したが、とうとう最大ボリュームになって、諦める。アラームを止めて一伸び。思い切って布団を蹴り上げ、体を起こした。

 その後はオートモード。顔を洗って、歯磨きをして、着替えて、食料を突っ込んだ鞄を持ち、家を出た。ここまでわずか10分。如何に長く寝ることを重視しているかがよく分かる起床時間設定である。

 さて、かの人の行先は、繰返(そうへん)高等学校。





 学校に着いた彼女は、席に着き、授業の準備を始めた。何を隠そう、宿題がまだなのである。ぼんやりとしながら、ノートを開き、問題を解く。時折頭を掻きながら、問題集とにらめっこ。そうこうする内に、周りに人が増えてくる。おはようの挨拶が行きかい、昨日のドラマがどうだった、朝の部活で何があった、などなど、なんてことない話が場に溢れていく。なんとか1限目の宿題を解き終えた彼女は、今度は2限目の教材を取り出し、予習を始めた。

 その時だった。





 突然、ガン、と頭を殴られたような衝撃。場が回転するかのような浮遊感。周りの色が一瞬失われたように見えた。しかし、その異変は一瞬。すぐに周りは色を取り戻し、普段のざわめきが戻ってくる。だが、そのざわめきの内容が、先程と異なっていた。

「今の何!?」

「おい無事か!!」

「何が起こったの!?先生は!?」

パニックに陥る人々のそれ。どうやら先程の異変は、個人に起こったものではないらしい。

「あれは!!」

 一人の叫びに教室内の全員の視線が動いた。そして、何かを凝視する彼を目にする。そうなると気になるのは、その視線の先。その場の誰もが彼の視線の先を追った。彼の視線の先には窓、グラウンド、さらに校門。そこで疑問を覚える。校門を境に何かある。同じくそれに気付いた何人かが、窓に駆け寄った。

「何だ、あれ……」

「え、閉じ込められたの!?」

「どうして?何が起こっているの!?」

 再度混沌に落とされる教室。窓の外は、窓に群がる生徒たちの姿によって見えなくなっていた。予習をしていた彼女は、これは勉学どころじゃないと、周りの様子をうかがった。相変わらず多くの生徒が状況把握のためにさざめいている。その声を聞く限り、この学校は何かによって囲われているらしい。閉じ込められたというのが正しい認識だった。

 窓に群がる生徒たちの声で、外の様子を認識しつつ、廊下側から外を眺めた。ふと、何かが廊下を歩いて来ているのが見えた。先生が来たのだろうかと思うが、何か違和感がある。人が歩く姿にしては、こう……動きがぎこちないというか。なんだろう、と眺めているとそれは教室の扉の前に立ったようだった。柱が死角となって、姿がよく見えない。得体のしれない何かだと嫌だなと思いながら構えていると、ガラララと扉が開いた。その瞬間に見えた、痛いくらいの激しい光。サッと目をかばう様に伏せた。その瞬間に響く悲鳴。その原因は何だ。先程の光は悲鳴を上げるようなものだったのか。まぶしさを耐えてまで確認すべきか迷っていると、強い衝撃が来た。





 パっと目を開ける。そして耳に届く、ゼェハァという荒い息。何が何だか分からないまま、固まっていた。やがて、荒い息が自分のものだと気付き、いつの間にやら強張っていた体を動かすと、体が横たわっていることを理解する。そして浮かぶ、疑問。ここはどこか。明らかに先程までいた教室ではない。

そこで鳴り響く、音。音に驚いて、ビクリと大きく体が動いた。ドクドクとうるさい心臓の音と一緒に、鳴り響き始めた音を聞く。あまり好きな音ではない。だが、なんだか馴染みのある音だった。そこでふと気づく。毎朝聞いているアラームの音だ、と。なんで!?と思いながら、音の方に首を向けた。その時に視界に入った世界は、自分の家の、自分の部屋。

………夢………?先程の出来事のことをやっとそう認識した。しかし、それにしてはかなり現実味のあるものだった。今になって恐怖を覚える。なんであんな怖い夢なんか見たのだろうか。そこで更に大きくなるアラームの音。逡巡している間にも、アラームはボリュームを上げながら鳴り続けていた。うんざりした気持ちで、一先ずそれを止める。シーンとなった部屋で、寒気がした。それは先程見た夢のせいか、汗だくになった体のせいか。しばらく動く気がせず、呆然としていた。

5分ほど経って、ハッと我に返る。今日は学校のある日だ。朝の準備のために設定した時間は10分。後5分で家を出ないとまずい。慌てて準備に走った。早送りオートモードだ!そうして準備に明け暮れるうちに、嫌な夢のことは頭から追いやられた。

 そして向かう、繰返高等学校。




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