記念・リクエスト
ゆっく様よりリクエストをいただきました。
『ルイージの日常』です。
お楽しみいただけますと幸いです。
―――――――――――――
ルイージはパッと目を開けた。その直後に鳴り響く目覚まし時計。ルイージはすっきりした頭で目覚ましを止めた。思いっきり伸びをする。
「んー、いい朝だ。」
窓からは気持ちのいい光が差し込んでいる。さて、とルイージは身支度を整えると、部屋を出た。
「おはよう。」
ルイージがいつものように挨拶をしながらみんなの部屋に入ると、すでに第一陣は食べ終えていた。ルイージの朝は早いはずだが、朝食の匂いで目覚める大食い達には負ける。
「おはよ、ルイージ!今日はね、エッグマフィンがおいしいの!」
ストン、とルイージの頭にかかる重み。カービィがニコニコしながら、ルイージの頭上に乗っていた。
「あ、ルイージ。おはよー。ポテトもおいしかったよ。」
カービィの声でルイージに気付いたヨッシーも、今日のオススメを伝えた。だが、その目は名残惜しそうに食卓を向いていた。
「おい、ヨッシー。もう十分食っただろ。」
呆れたようにソニックが言うのも毎日のことだ。ルイージは苦笑を漏らした。
「カービィ、今日もオススメの紹介ありがとう。ほら、次の人来たよ。」
「あ、ホントだー!!」
カービィはピョンと跳び、足りない距離は空中移動して、次に来たアイクの頭に向かって行った。カービィから聞こえる肉料理を聞き流し、ルイージはヨッシーの側に寄る。
「ヨッシー、リンク特製のポテトは、他の人にも譲ってあげてよ。僕も食べたいからさ。」
「頑張って我慢してるよ。」
ルイージが宥めると、困ったようにヨッシーは言う。そして、期待に満ちた顔でルイージを見た。ヨッシーはマリオの分を食べていいという言葉を求めているのだ。ルイージはまた苦笑するしかない。
「……兄さんに聞いて。」
全てを兄マリオに委ねることに――責任を転嫁することに――し、ルイージは投げやりに言った。ヨッシーはニヤリと笑うと、次の瞬間には部屋を飛び出していた。丁度ピーチがやって来たのを見て、ルイージはヒヤリとする。しかし、彼女は華麗にヨッシーを避け、ヨッシーに手を振る余裕さえ見せた。ピーチはヨッシーを見送ると、ニコニコしながらルイージの側にやってきた。
「あらあら、今日も楽しくなりそうね?」
「あはは……ピーチみたいに笑って許してくれるとありがたいよ。」
「ウフフ、どういたしまして。」
ピーチは微笑みを残し、朝食をとりに行った。それを見て、自身の朝食がまだだったことを思い出す。ルイージも慌てて自分の分の確保に向かった。
朝食を食べ始めてすぐ、マリオが勢い良くみんなの部屋に駆け込んできた。
「おはよー諸君!俺のポテトは無事かー!!」
みんなの部屋にクスクスと笑う声が響いた。ルイージはマリオを確認し、朝食を食べるスピードを速めた。食事をとる目の端で、マリオがホッと胸を撫で下ろしたのが見えた。
「あー、なんだ、またか……。」
気の緩んだマリオの言葉に、ネスの笑いが爆笑に変わった。
「マリオってば、毎朝毎朝、よくもまあ懲りずに続けるよね!」
「うるせぇ!ってかルイージ!ヨッシーをけしかけんの止めろって何度も言ってるだろ!」
マリオはネスへの文句もそこそこに、ルイージに向かって叫んだ。マリオの矛先が自分に向くタイミングを見計らって食事を終えたルイージは、苦笑を押し込め、涼しい顔を装った。
「そんなつもりはないんだけどなぁ……。」
「とぼけるな!」
怒った顔でマリオがルイージに歩み寄ってくる。だが、途中でマリオは肩を掴まれて足を止めざるを得なかった。
「まぁまぁマリオ。そんなに気を荒立てるな。」
スネークがマリオを止めたのだ。スネークに窘められ、マリオは頭を掻いた。
「いや、これ、毎朝恒例行事……。」
「茶番を見せられるこっちの身にもなりなさいよ!」
サムスが憤慨して言う。
「楽しいんだから、いいだろ!」
今度はサムスに矛先を変え、マリオが吠える。いつの間にかやってきて、ルイージの隣で食事をとっていたトレーナーがため息を吐いた。
「ねぇマリオ。ポテト食べちゃうけど、いい?」
呆れの滲んだ声で、トレーナーは問いかけた。
「ダメだ!!」
マリオはおふざけを止め、慌てて朝食にありついた。
“平和だなぁ……。”
この一連の流れを見て、ルイージが心の底からこう思うのも、毎朝のことである。
朝食を終えたルイージは、図書室に場所を変えていた。机に本やノートを広げ、知識を詰める。ここで勉学に励むことがルイージの日課だった。図書室には静かな時間が流れていた。
「あ!ルイージいた!!」
しんと静まり返っていた場所に、突如響いた声。ルイージはビクリと反応し、顔を上げた。すると、ディディがキラキラした目でルイージを見ていた。
「やぁディディ。どうしたの?」
「あのね、乱闘しない?」
間髪入れず、ディディはウキウキした声で誘う。ルイージはしばし動きを止めた。本日課した分がまだ終わっていない。だが、折角の誘いを無下にするのも気が引けるとルイージは感じた。ルイージがどうしようかと悩んでいると、あ、と申し訳なさそうな声がした。
「ごめん、勉強中だった?」
ディディは机の上の物に気が付いたのだ。バツの悪い顔をしている。それを見たルイージは、勉強は後で取り組もうと心に決め、首を振った。
「大丈夫。今、片付けようと思っていたところなんだ。」
ルイージがそう言うと、ディディは見るからにホッとした顔をした。
「よかったぁ。ドンキーも喜ぶよ!」
ルイージはディディに軽く頷いて見せる。そして、手早く勉強道具を片づけ、ディディに向かってにっこり笑った。
「さぁ、コンのところに行こうか!」
「うん!」
二人は歩き出す。図書室の入口まで来た時だった。
「うおっ、あ、ルイージ。まさか今から乱闘か?」
ロイが図書室の入口から顔を出した。突然の登場に驚く間もなく、出会い頭に発せられた乱闘の二文字。ルイージは瞬時にロイの目的を察した。課題に取り組むのはしばらくお預けだなと半ば諦めながら、ルイージは口を開いた。
「ちょっと待ってくれたらそっちにも参加するよ。」
「よっしゃあ!じゃあ後二人集めて来るから、すっぽかすなよ!」
ガッツポーズをとるや否や、元気なロイは嵐のごとく去っていった。これは急いで第一戦を終わらせないと不味いなと思いながら、ルイージはディディと共にコンの下へ行った。
結局その日も、ルイージは乱闘三昧になり、自由な時間が出来たのは夕食後だった。
“まぁ、いつものことと言えば、そうなんだけど……。”
なんだかなぁ、と思いながら、湯船に浸かるルイージ。離れたところからバシャバシャと騒ぐ音がしているが、流石に巻き込まれたくなかったので、ルイージは安全域に避難していた。
「あ。」
声がして、ルイージは顔を上げる。リンクが側に来ていた。
「ルイージ、ここ、一緒に居ていい?」
リンクもルイージ同様、騒ぎから避難してきたのだった。ルイージは思わぬ来訪者に驚いたが、すぐに頷いた。
「ありがとう。」
リンクはルイージの近くに腰かけた。
「なんか、ここでルイージと会うの新鮮かも。」
「確かに。リンクがこの時間にお風呂なんて珍しいね。」
ルイージは大体同じ時間に入浴するが、ここでリンクの姿を見ることは少ない。
「そうかも。あんな風に騒いでいるのはあまり見たことなかったな。」
リンクはクスクス笑いながら、浴場ではしゃぐマリオやカービィに目を向けた。避難してきたとはいえ、その目はキラキラしている。ふと、リンクの目がルイージに戻った。
「ところで、ルイージはすごく規則正しい生活をしているイメージがあるんだけど、イレギュラーでもあった?」
リンクの言わんとすることが汲み取れず、ルイージは目を瞬かせた。
「え、何で?」
「んー……。」
ルイージが問い返すと、リンクは首を傾げた。やがて、目的の言葉が見つかり、口を開く。
「何か、やるべきことが山積みの主婦みたいな顔に見えたんだ。いつもどおりに過ごしていればそんな顔はしないだろうから、何かあったのかなって。」
ルイージはまた、パチクリとした。確かに、思うように勉強を進められず、課したノルマを達成できるのかと気が重かった。だが、まさか自分がそんな風に写っていたとは。とほほ……とルイージは少なからずショックを受けた。
ルイージはどうにかショックを押しとどめ、リンクに率直な心の内を伝えることにした。
「特別なことがあったわけではないよ。ただ、乱闘に駆り出されて、やりたいことができなかったな、と考えていたんだ。」
乱闘と聞いて、リンクが硬直した。そういえば、普段の乱闘にはレアキャラだったとルイージは思い出す。
“乱闘、楽しいのになぁ……。”
しみじみとルイージは思う。そこではたと、ルイージは動きを止めた。その様子を見て、リンクは開きかけた口を閉じた。不思議に思いながら、リンクはルイージを眺める。一方ルイージは、今思ったことを反芻していた。
“そうだ。乱闘は、楽しいんだ。”
ストン、と落ちるものがあった。随分と贅沢な悩み事をしていたとルイージは思う。納得すると、改めてリンクに向かって言葉を紡いだ。
「やりたいことをしていただけなのに、気付いていなかったみたいだ。」
突然ルイージからどんよりした空気がなくなり、リンクはキョトンとしていた。しかしすぐに、そっか、と安心してルイージに微笑んだ。
ルイージは部屋に戻ると、やり残した課題を片づけた。そして、テキパキと身支度を整える。ベッドに横になる直前に、ルイージは時計を見やった。いつもの就寝時間数分前。それを見てルイージは、なんだ、と思う。
“昼間、乱闘に明け暮れていても、ちゃんと定時に全部終わらせて寝ているじゃないか。”
ルイージは伸びを一つして、布団に潜り込んだ。
“今日も一日、充実していたなぁ。”
夜の帳が辺りを覆う。ルイージは目を瞑った。
「おやすみなさい。」
ルイージはむにゃむにゃと夢の中に旅立った。
これが、この世界におけるルイージの日常である。
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『ルイージの日常』です。
お楽しみいただけますと幸いです。
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ルイージはパッと目を開けた。その直後に鳴り響く目覚まし時計。ルイージはすっきりした頭で目覚ましを止めた。思いっきり伸びをする。
「んー、いい朝だ。」
窓からは気持ちのいい光が差し込んでいる。さて、とルイージは身支度を整えると、部屋を出た。
「おはよう。」
ルイージがいつものように挨拶をしながらみんなの部屋に入ると、すでに第一陣は食べ終えていた。ルイージの朝は早いはずだが、朝食の匂いで目覚める大食い達には負ける。
「おはよ、ルイージ!今日はね、エッグマフィンがおいしいの!」
ストン、とルイージの頭にかかる重み。カービィがニコニコしながら、ルイージの頭上に乗っていた。
「あ、ルイージ。おはよー。ポテトもおいしかったよ。」
カービィの声でルイージに気付いたヨッシーも、今日のオススメを伝えた。だが、その目は名残惜しそうに食卓を向いていた。
「おい、ヨッシー。もう十分食っただろ。」
呆れたようにソニックが言うのも毎日のことだ。ルイージは苦笑を漏らした。
「カービィ、今日もオススメの紹介ありがとう。ほら、次の人来たよ。」
「あ、ホントだー!!」
カービィはピョンと跳び、足りない距離は空中移動して、次に来たアイクの頭に向かって行った。カービィから聞こえる肉料理を聞き流し、ルイージはヨッシーの側に寄る。
「ヨッシー、リンク特製のポテトは、他の人にも譲ってあげてよ。僕も食べたいからさ。」
「頑張って我慢してるよ。」
ルイージが宥めると、困ったようにヨッシーは言う。そして、期待に満ちた顔でルイージを見た。ヨッシーはマリオの分を食べていいという言葉を求めているのだ。ルイージはまた苦笑するしかない。
「……兄さんに聞いて。」
全てを兄マリオに委ねることに――責任を転嫁することに――し、ルイージは投げやりに言った。ヨッシーはニヤリと笑うと、次の瞬間には部屋を飛び出していた。丁度ピーチがやって来たのを見て、ルイージはヒヤリとする。しかし、彼女は華麗にヨッシーを避け、ヨッシーに手を振る余裕さえ見せた。ピーチはヨッシーを見送ると、ニコニコしながらルイージの側にやってきた。
「あらあら、今日も楽しくなりそうね?」
「あはは……ピーチみたいに笑って許してくれるとありがたいよ。」
「ウフフ、どういたしまして。」
ピーチは微笑みを残し、朝食をとりに行った。それを見て、自身の朝食がまだだったことを思い出す。ルイージも慌てて自分の分の確保に向かった。
朝食を食べ始めてすぐ、マリオが勢い良くみんなの部屋に駆け込んできた。
「おはよー諸君!俺のポテトは無事かー!!」
みんなの部屋にクスクスと笑う声が響いた。ルイージはマリオを確認し、朝食を食べるスピードを速めた。食事をとる目の端で、マリオがホッと胸を撫で下ろしたのが見えた。
「あー、なんだ、またか……。」
気の緩んだマリオの言葉に、ネスの笑いが爆笑に変わった。
「マリオってば、毎朝毎朝、よくもまあ懲りずに続けるよね!」
「うるせぇ!ってかルイージ!ヨッシーをけしかけんの止めろって何度も言ってるだろ!」
マリオはネスへの文句もそこそこに、ルイージに向かって叫んだ。マリオの矛先が自分に向くタイミングを見計らって食事を終えたルイージは、苦笑を押し込め、涼しい顔を装った。
「そんなつもりはないんだけどなぁ……。」
「とぼけるな!」
怒った顔でマリオがルイージに歩み寄ってくる。だが、途中でマリオは肩を掴まれて足を止めざるを得なかった。
「まぁまぁマリオ。そんなに気を荒立てるな。」
スネークがマリオを止めたのだ。スネークに窘められ、マリオは頭を掻いた。
「いや、これ、毎朝恒例行事……。」
「茶番を見せられるこっちの身にもなりなさいよ!」
サムスが憤慨して言う。
「楽しいんだから、いいだろ!」
今度はサムスに矛先を変え、マリオが吠える。いつの間にかやってきて、ルイージの隣で食事をとっていたトレーナーがため息を吐いた。
「ねぇマリオ。ポテト食べちゃうけど、いい?」
呆れの滲んだ声で、トレーナーは問いかけた。
「ダメだ!!」
マリオはおふざけを止め、慌てて朝食にありついた。
“平和だなぁ……。”
この一連の流れを見て、ルイージが心の底からこう思うのも、毎朝のことである。
朝食を終えたルイージは、図書室に場所を変えていた。机に本やノートを広げ、知識を詰める。ここで勉学に励むことがルイージの日課だった。図書室には静かな時間が流れていた。
「あ!ルイージいた!!」
しんと静まり返っていた場所に、突如響いた声。ルイージはビクリと反応し、顔を上げた。すると、ディディがキラキラした目でルイージを見ていた。
「やぁディディ。どうしたの?」
「あのね、乱闘しない?」
間髪入れず、ディディはウキウキした声で誘う。ルイージはしばし動きを止めた。本日課した分がまだ終わっていない。だが、折角の誘いを無下にするのも気が引けるとルイージは感じた。ルイージがどうしようかと悩んでいると、あ、と申し訳なさそうな声がした。
「ごめん、勉強中だった?」
ディディは机の上の物に気が付いたのだ。バツの悪い顔をしている。それを見たルイージは、勉強は後で取り組もうと心に決め、首を振った。
「大丈夫。今、片付けようと思っていたところなんだ。」
ルイージがそう言うと、ディディは見るからにホッとした顔をした。
「よかったぁ。ドンキーも喜ぶよ!」
ルイージはディディに軽く頷いて見せる。そして、手早く勉強道具を片づけ、ディディに向かってにっこり笑った。
「さぁ、コンのところに行こうか!」
「うん!」
二人は歩き出す。図書室の入口まで来た時だった。
「うおっ、あ、ルイージ。まさか今から乱闘か?」
ロイが図書室の入口から顔を出した。突然の登場に驚く間もなく、出会い頭に発せられた乱闘の二文字。ルイージは瞬時にロイの目的を察した。課題に取り組むのはしばらくお預けだなと半ば諦めながら、ルイージは口を開いた。
「ちょっと待ってくれたらそっちにも参加するよ。」
「よっしゃあ!じゃあ後二人集めて来るから、すっぽかすなよ!」
ガッツポーズをとるや否や、元気なロイは嵐のごとく去っていった。これは急いで第一戦を終わらせないと不味いなと思いながら、ルイージはディディと共にコンの下へ行った。
結局その日も、ルイージは乱闘三昧になり、自由な時間が出来たのは夕食後だった。
“まぁ、いつものことと言えば、そうなんだけど……。”
なんだかなぁ、と思いながら、湯船に浸かるルイージ。離れたところからバシャバシャと騒ぐ音がしているが、流石に巻き込まれたくなかったので、ルイージは安全域に避難していた。
「あ。」
声がして、ルイージは顔を上げる。リンクが側に来ていた。
「ルイージ、ここ、一緒に居ていい?」
リンクもルイージ同様、騒ぎから避難してきたのだった。ルイージは思わぬ来訪者に驚いたが、すぐに頷いた。
「ありがとう。」
リンクはルイージの近くに腰かけた。
「なんか、ここでルイージと会うの新鮮かも。」
「確かに。リンクがこの時間にお風呂なんて珍しいね。」
ルイージは大体同じ時間に入浴するが、ここでリンクの姿を見ることは少ない。
「そうかも。あんな風に騒いでいるのはあまり見たことなかったな。」
リンクはクスクス笑いながら、浴場ではしゃぐマリオやカービィに目を向けた。避難してきたとはいえ、その目はキラキラしている。ふと、リンクの目がルイージに戻った。
「ところで、ルイージはすごく規則正しい生活をしているイメージがあるんだけど、イレギュラーでもあった?」
リンクの言わんとすることが汲み取れず、ルイージは目を瞬かせた。
「え、何で?」
「んー……。」
ルイージが問い返すと、リンクは首を傾げた。やがて、目的の言葉が見つかり、口を開く。
「何か、やるべきことが山積みの主婦みたいな顔に見えたんだ。いつもどおりに過ごしていればそんな顔はしないだろうから、何かあったのかなって。」
ルイージはまた、パチクリとした。確かに、思うように勉強を進められず、課したノルマを達成できるのかと気が重かった。だが、まさか自分がそんな風に写っていたとは。とほほ……とルイージは少なからずショックを受けた。
ルイージはどうにかショックを押しとどめ、リンクに率直な心の内を伝えることにした。
「特別なことがあったわけではないよ。ただ、乱闘に駆り出されて、やりたいことができなかったな、と考えていたんだ。」
乱闘と聞いて、リンクが硬直した。そういえば、普段の乱闘にはレアキャラだったとルイージは思い出す。
“乱闘、楽しいのになぁ……。”
しみじみとルイージは思う。そこではたと、ルイージは動きを止めた。その様子を見て、リンクは開きかけた口を閉じた。不思議に思いながら、リンクはルイージを眺める。一方ルイージは、今思ったことを反芻していた。
“そうだ。乱闘は、楽しいんだ。”
ストン、と落ちるものがあった。随分と贅沢な悩み事をしていたとルイージは思う。納得すると、改めてリンクに向かって言葉を紡いだ。
「やりたいことをしていただけなのに、気付いていなかったみたいだ。」
突然ルイージからどんよりした空気がなくなり、リンクはキョトンとしていた。しかしすぐに、そっか、と安心してルイージに微笑んだ。
ルイージは部屋に戻ると、やり残した課題を片づけた。そして、テキパキと身支度を整える。ベッドに横になる直前に、ルイージは時計を見やった。いつもの就寝時間数分前。それを見てルイージは、なんだ、と思う。
“昼間、乱闘に明け暮れていても、ちゃんと定時に全部終わらせて寝ているじゃないか。”
ルイージは伸びを一つして、布団に潜り込んだ。
“今日も一日、充実していたなぁ。”
夜の帳が辺りを覆う。ルイージは目を瞑った。
「おやすみなさい。」
ルイージはむにゃむにゃと夢の中に旅立った。
これが、この世界におけるルイージの日常である。
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