集合&結成!?スマッシュブラザーズ!!

ターマスが夕食を作り終えて一息つくと、カービィがやってきた。

「ごはんできてるのー?」

「はい、出来ています。一番乗りですね。」

「……みんないないね……。」

心なしかしょんぼりとしてカービィが言った。

「先に食べていてもよろしいかと。」

「え?いいの!?」

カービィは目を輝かせた。ターマスが頷くと、嬉々として食べ始める。すると、ヨッシーがやってきた。

「もう出来てるんだ!いただきます!」

すぐにヨッシーは食べ始めた。



ヨッシーが来た後、次々と人がやって来た。そして、食べ物に手をつけていく。食べ物が半分程減った頃、アイクが何とはなしに呟いた。

「……そういえば、マルスがまだだな……。」

すると、心配そうなゼルダの声もした。

「……リンクもいませんわ………。」

ゼルダの指摘でターマスはハッとした。

“あ、忘れてた……リンクのこと……。”

ターマスは立ち上がった。そして、何でもないように言う。

「私が呼んできましょう。皆さんは晩餐を続けていて下さい。」

ターマスは出ていった。

「……世話のかかる奴らだな……。」

ファルコンが呟いた。幸い、誰もそれには気付かなかった。

“トレーナーもいないんだけど………。”

どうしよう、とピカチュウは一人、悩んでいた。



ターマスはマルス、リンクの部屋がある場所まで来た。そこでふと、歩みを止める。

“……マルスを先に行かせるのが普通か………。”

そう思い立つと、ターマスはマルスの部屋の扉をノックした。すると、すぐにマルスは出てきた。

「あぁ、ターマス。どうしたの?また何か教えて」

「違います。」

ターマスはマルスの言わんとすることを察するや否や、即座に否定した。そのまま言葉を続ける。

「夕食、皆さんもう始められていますが。」

マルスは一瞬、惚けた顔をした。

「え?もう?…………結構前?」

「えぇ。そうです。」

マルスは腕を組み、しばらく考えていた。が、すぐに口を開いた。

「……ターマス、これはちょっと遅すぎじゃないかな?」

“…何を言い出すんだ?来ていなかったのはそっちだ!”

ターマスは憤慨しながらも表面には出さず、冷静に言葉を返した。

「……何がです?」

「リンクを迎えに来ること。……忘れていたのかな?」

“そっちか……痛いところをつくな………!”

ターマスは頭痛がしてきたような気がした。

「まさか。今来ているではありませんか。」

ターマスは苦し紛れにそう言ったが、マルスはターマスを疑うように見ていた。

「…早く開けてあげたらどうかな。」

「そうですね。」

ターマスは内心大きくため息を吐きながらリンクの部屋の鍵を開け、扉を開けた。が、思わず固まってしまった。

「まさか………。」

固まったターマスを不振に思ったマルスは、ターマスの隣から部屋を覗きこんだ。が、同じくフリーズしてしまう。

「……いない……!?」

リンクの姿が見当たらなかった。ふと見ると、窓が開いている。

「窓から出たとか……?」

マルスは呟くと窓に駆け寄った。

「いくらなんでもその窓からは無理かと………。」

その窓は子供一人くぐるのも難しい大きさだった。ターマスが部屋に入り込む。スッ……………。

“……?何か今……動いたような………?”

マルスは振り返った。マルスの目に緑の端が一瞬映る。

「あ!」

マルスは廊下に走り出た。駆けていくリンクを見つけ、追いかけようとする。が、ターマスがそれを止めた。

「おそらく玄関へ向かったのでしょう。先程と同じ方法をとります。」

ターマスは数秒目を閉じた。

「これで大丈夫です。」

「何をしたんだい?」

「玄関から出る人をこの部屋にワープさせるようにしました。」

「あぁ、そう………。それにしても、まさか部屋にいたとはね。全然気付かなかったよ。」

「手前の壁に張り付いていたようですね。全く……困った方です。」


ターマスがワープをつけてから5分程経った。


「……玄関までこんなに掛かったかな………。」

なかなかリンクがワープさせられてこないのに待ちくたびれて、マルスは呟いた。

「……玄関ではない方へ行ったのでしょうか……。」

マルスの呟きにターマスは答えた。

「それって………追いかけておけばよかった……。」

マルスはため息を吐いた。ターマスはリンクの部屋を閉め、鍵をかけた。そして、マルスに向き直る。

「私は彼を探します。マルスさんは……」

「手伝うよ。」

マルスは短く言うと、返事も聞かずに駆け出した。



「…ここ…どこだよ…。」

ターマスらを振り切ったつもりのリンクは歩きながら呟いた。

“来たばかりでどこがどこだかさっぱり分からない。玄関からいきなりワープしたから、一体どこに居たのかも分からないし……。こんなことなら、探検に行っておけばよかった……。”

ふと、リンクは人の気配を感じた。慌てて近くに隠れようとする。が、リンクが感じ取った人はリンクを見つけていた。その人はリンクが隠れる前に近寄ってきた。

「こんなところで何してるの?」

それはトレーナーだった。見つかった事に内心ドキッとしながら、リンクは聞き返す。

「トレーナー……君こそ何を………。」

“オレを捕まえる、じゃありませんように……。”

トレーナーはぎこちなく微笑むとリンクの問に答えた。

「今から夕食を、ね。ようやくゼニガメの気も収まったし、僕も落ち着いたから。それで……」

「あ、トレーナー!」

トレーナーがリンクに聞きなおそうとしたが、違う声に遮られた。リンクは過剰に反応すると口に人差し指をあて、近くにあった階段の裏に隠れてしまった。

“………?何かあったんだろうか?”

トレーナーが首を傾げているとマルスがやってきた。

「トレーナー、リンクを見なかったかな?」

「リンク?またどうして?」

“そこにいるんだけど………。”

出来るだけ平常心を保ってトレーナーは答えた。リンクはほっと胸を撫で下ろす。そこへターマスもやってきた。

「彼は大会に出ずに帰るつもりでいるようです。こちらとしては出てほしいので、探しているのですが………。」

ターマスの話を聞いていたトレーナーは、俯いていた。弱々しく尋ねる。

「ねぇ……リンクが出たくないのは……僕のせい?」

“違う。”

リンクは心の中で即座に否定した。が、階段の裏からは出ずに様子を伺っていた。

「え?」

一方、トレーナーに質問されたターマスは何のことかわからず、しばらく考えているようだった。やがて、納得したようだった。そして、

「あぁ、そういうことですか。えぇ、その通りですよ。彼はそのことで怒っていました。」

と、聞こえよがしにありもしないことを言った。それを聞いたリンクは眉をひそめる。

“ターマス!何を言いだすんだ!”

「……タ、ターマス…?」

また、マルスは唖然としてターマスを見つめた。ターマスはマルスには構わずに続けた。

「自分は濡れた。それでも助けたのに彼が買ったのは他の人からの不評。勇者ではないとまで言われ……」

ターマスが言葉を発するごとにトレーナーはシュンとなっていった。しかし、それでもターマスはまだ続ける。

「あぁ、どうしてこうなったのだろう、これは全てトレーナーのせいだ……」

「やめろ!」

居たたまれなくなったリンクはとうとう影から出た。そして、ターマスににじり寄る。

「何てことを言うんだ!大体、オレはそんなこと思っていない!それと…オレが悪者にされるのは構わないが、トレーナーを傷つけるのはオレが許さない!」

トレーナーはパッと顔を上げ、リンクを見た。リンクはターマスを睨んでいる。ターマスはそんなリンクに近づくと、腕を掴んだ。それから、リンクにしか聞こえない声で囁いた。

「…私はお前が帰るのを許さない。」

「! しまった………。」

リンクの顔には悔しさが見てとれた。ターマスはリンクを捕まえたままトレーナーに向き直ると、頭を下げた。

「トレーナーさん、すみません。先程のことは全て嘘です。どうしても、リンクを捕まえたかったものですから……。」

「……リンク、本当……?」

トレーナーは弱々しく尋ねた。リンクはそんなトレーナーに優しく笑いかけた。

「もちろん。オレは君のせいだなんて思っていない。むしろ……オレのせいだよ。オレがあの時許可を出さなければ、こんなことにはならなかったはずだしね………。」

「そんな!君は悪くない。それに……ごめん、僕のせいで捕まっちゃった……。」

トレーナーは申し訳なさそうに捕まれたリンクの腕を見やった。それに気付いたリンクはそっとため息を吐く。

「……それも君のせいじゃないよ。」

そして、ターマスをきつく睨んだ。ようやくターマスの意図を理解したマルスはため息を吐いた。

「……ターマス、その手はちょっとやり過ぎじゃないかな?」

ターマスは頷いた。

「存じております。しかし……他に名案が浮かばなかったので。他の方も待っていらっしゃりますし…。」

「……だったらオレなんか捜さなくてもいいのに………。」

「そういうわけにはいきません。」

リンクのぼやきをターマスは聞き取ったようだった。今度はターマスがリンクを睨む。リンクは呆れたようにため息を吐いた。

「……ターマス、いい加減放してよ。」

「あなたが逃げないのならば、いいでしょう。言っておきますが……そこの階段はあなたが駆け降りたものとは別ですよ。」

「え?」

リンクはチラッと階段の方を見た。その様子を見て、ターマスはやれやれと首を振った。

「やはり逃げるおつもりでしたか………。トレーナーさん、ロープをお持ちでしたね?」

突然、ターマスはトレーナーに聞いた。トレーナーはすぐには応えられなかった。しばらくターマスを見つめた後、不思議そうに言った。

「あなぬけのヒモならあるけど?」

「私に貸して頂けませんか?」

トレーナーは相変わらず疑問符を浮かべていたが、黙って渡した。ターマスはそれを軽く引っ張り、強度を確かめる。

「これなら簡単に切れませんね。では………」

ターマスはリンクに向き直った。リンクは後退りする。

「タ、ターマス…ちょ、……ちょっと待ってよ!……オレ、を、縛る気か?」

「ご名答。」

ターマスはにっこり笑うとあなぬけのヒモをリンクに近付けた。

「分かった、分かったから!逃げない!だから、それだけは……」

「……誓えますか?」

「え……?ち、誓う……?」

リンクは真っ青だった。

「無理なようですね。それでは仕方ありません。」

ターマスはリンクを押さえ込んだ。

「ちょっ……待ったぁ!」

リンクとターマスは言い争いを始めた。その2人の様子をトレーナーは驚いて、マルスは困ったように見つめていた。

「……僕……悪いことしてばかりだな………。」

ポツリとトレーナーが漏らした。マルスは目線をトレーナーに向ける。

「そんなことないよ、トレーナー。君は考えながら事を進めようとしているじゃないか。」

トレーナーはマルスを見た。マルスは微笑んだ。

「……ありがとう。でも……」

「何がいけない?」

俯いたトレーナーにマルスは穏やかな声で問いかけた。

「僕は……みんなをびしょ濡れにしてしまった……。」

「あれは君の責任じゃないよ。トレーナーとしての責任は感じるかもしれないけど、君はちゃんと果たしている。」

「………え?」

トレーナーはきょとんとしてマルスを見上げた。

「きちんと謝っただろう?僕は、あそこでアイクが許すべきだったと思うね。それに……ゼニガメは見たところ、まだまだ幼いじゃないか。ここは、アイクが大人になるべきだね。」

大人な訳なんだから、と付け足し、マルスはまた微笑した。トレーナーはとりあえず頷いておいた。それから、複雑そうに言い合っている2人を見た。

「さっき、ロープを貸したこと、かな。」

マルスが問いかけた。

「うん。それと……僕のせいで……捕まったこと……。」

「それは、僕にしてみれば、君のおかげで捕まえられた、ってことだけど……。どちらにしろ、君はターマスに利用された、と言ってもいいのではないかな。だから、君がそのことで悩む必要はないよ。」

トレーナーは何も言わなかった。しばらく沈黙が流れる。

「お話は終わりましたか?」

突然、ターマスの声がした。

「……それはこっちのセリフだよ。」

マルスはやれやれと首を振った。そちらを見ると言い合いは収まっていた。リンクが縛られていないのを見る限りでは、リンクは誓ったのだろう。

「ありがとうございます、トレーナーさん。使う必要がなくなったので、これはお返しします。」

「……じゃあ、」

「えぇ、リンクさんは、一応、誓ってくださいました。」

ターマスは一応を強調して言った。

“……信用してないんだ……。”

トレーナーは気の毒そうにリンクを見やった。隣でマルスが笑っている。

「ハハッ。リンク、君も大変だね。」

リンクは表情を曇らせると顔を背けた。

「……お前らそんなところで何してるんだよ。」

突然、第三者の声がした。そこにはフォックスが立っていた。

「君こそ、どうしてここへ?」

マルスが問いかけた。

「お前らが遅いから呼びに来たんだよ。」

「しかし……こちらの方向には……」

ターマスが言わんとしていることを察したフォックスは頷いた。

「マルスの部屋はない。知ってるさ。だが、トレーナーの部屋はこっちだろ?ピカチュウがトレーナーもいないと言い出してさ。お前らも遅いし、呼びに行くことにしたんだよ。それで、リンクの部屋は知らないが、リンクやマルスはターマスが呼びに行ってる はず だったからな、先にこっちに来たんだよ。」

“あぁ…確かあの時、トレーナーもいなかったな…………。”

ターマスは納得したらしかった。

「それで?何でこんなに遅くなったんだ?」

フォックスが訊くと、マルスとターマスは困ったように顔を見合せた。

「……オレが我が儘言ったんだ。だから遅くなった。………ごめん………。」

俯きがちにリンクが答えた。フォックスはしばらくリンクを凝視した。が、やがてトレーナーに向き直った。

「お前の場合はさっきのこと、まだ引っ張ってるんじゃないのか?」

「え?あ、そんなこと……」

そう言うトレーナーは居心地が悪そうだった。

“……やはり先程のはやらない方がよかったかもしれないな………。”

ターマスは1人、さっきの行動を悔いていた。

「……早く慣れろ。」

「え?」

フォックスのその言葉についていけた者はいなかっただろう。それだけ唐突で、理解し難い一言だった。

「……どういうことかな。」

マルスは説明を求めた。フォックスは肩をすくめる。

「そのうち日常茶飯事になるぜ。だから、いつまでもお前がゼニガメの責任とってたら、身が保たなくなる。」

「え?……でも……。」

「ゼニガメが責任とればいい。ま、責任と言っても、追いかけられる程度だろうがな。」

「……何故、そう言い切れるのですか?」

ターマスがその場にいた人を代表して訊いた。

「見ていれば分かるさ。そろそろ、誰かが事を起こしてもいい頃だと思うぜ?」

その時だった。

「待てぇ!」

いきなり大声がした。

「ごめん、ごめんってばぁ!もう許してよぉ!」

そして、走っている音もする。

「……な、何事……?」

リンクが剣の柄に手を置きながら言った。隣でフォックスがニヤリと笑った。すると、誰かが走ってきた。

「あ、こんなところで何してるの?」

カービィだった。取り繕ったように笑顔を浮かべる。

「カービィ!」

そこへ、先程の大声の主、ピカチュウがやってきた。相当ご立腹のようだ。ピカチュウを確認すると、カービィは慌てて近くにいたトレーナーの後ろに隠れた。

「ご、ごめん!もう、許して?」

「ぜっっったい、ムリ!」

ピカチュウはカービィの方へ一歩出た。マルス、リンク、ターマスは驚いて2人(匹?)を見ていた。慌ててトレーナーが仲裁に入る。

「ピ、ピカチュウ、落ち着いて。何があったの?」

ピカチュウは俯いた。肩が震えている。

「……カービィってば、ボクが残してたクッキー、食べちゃったんだ。すごくおいしくて、トレーナーにも食べさせてあげたいって思ってたのに……。カービィ!クッキー返せ!」

ピカチュウはカービィを睨み付けた。防御こそ下がらなかったが、カービィは怯えた。

「ム、ムリだよ……。だって……食べちゃっ…」

「カービィのバカぁー!」

ピカチュウはカービィに向かって(トレーナーに向かって)駆け出した。それをトレーナーは優しく受け止めた。

「ピカチュウ、それ、僕のため?」

ピカチュウは小さく頷いた。

「ありがとう。でも、だったらピカチュウ、もういいよ。ないものはないんだし、僕がいなかったのが悪いから。」

「でも………。」

やっと状況を理解したリンクが、まだ納得できないピカチュウに近づき、しゃがんだ。

「……オレでよければ、クッキーならまた作るよ。だから、もう許してあげて?」

「……本当?」

ピカチュウは期待に満ちた眼でリンクを見上げた。リンクは頷いた。

「……分かった。じゃあカービィ、許してあげる。」

カービィがトレーナーの後ろから出てきた。

「本当にごめんね。」

「いいよ。じゃあ、戻ろう!」

2人(匹?)は駆け出した。が、ピカチュウは立ち止まって振り返る。

「リンク!あれとおんなじやつ作ってよ!」

そう叫ぶと、姿が見えなくなった。

「……味の保証は出来ないんだけど……。」

思わずリンクはぼやいた。

「でも、リンクって優しいね。」

トレーナーは突然、そんなことを言い出した。ニコニコと笑っている。

「………え?優しい?オレが?」

リンクはキョトンとして、聞き返した。トレーナーは頷いた。

「……さ、僕達もみんなのところに行こう。」

トレーナーはリンクを引っ張って行ってしまった。

「……それぞれの個性が強く、中には問題を抱えている人が何人か………。ターマス、僕は本当にこの大会の目的が知りたいよ。」

歩きかけたフォックスが足を止めた。

「だから、何度も言っているではありませんか。それぞれの力を試すことと、交流です。」

マルスはやれやれと首を振った。

“……これ以上聞いていても収穫はなさそうだな。”

そう思うとフォックスは、2人を促した。

「俺らも早く行こう。このままだと夕食抜きになる。」



他の人々は、廊下で起こっていた騒動など露知らず、呑気に寛いでいた。その中から心配そうな声が上がる。

「あ、あの2人、大丈夫かな………。」

それはリュカだった。その声に反応して、ファルコがため息を吐いた。

「……あの2人より呼びに行った奴らとまだ来てない奴らの方が気になるがな。」

「もうご飯残ってないしね………。」

プリンが同調した。

「…………自業自得だ。」

が、2人の言葉をアイクは短く斬りすてた。

「あんたさん、いつまで怒っているつもりなんだ?」

スネークが呆れて言ったときだった。扉が開き、部屋の中は静まり返る。そこにはトレーナーとリンクが立っていた。室内の人の視線を受けたトレーナーは俯いた。リンクは無言でトレーナーの手を引く。その後すぐに、マルス、フォックス、ターマスがやってきた。

「おや、皆さん静かですね……晩餐はもう終わったのですか?」

やって来るなりターマスは不穏な空気を物ともせずに声を発した。それにのんびりした声がのってきた。

「はいぃ!とてもおいしかったよぉ!」

ヨッシーが言ったことで場の空気が少し和らいだ。そのことに安堵したマルスは別の事実に気付き、苦笑した。

「……フォックスの言った通りになっちゃったね………。」

「まぁ、いた奴らでも喧嘩してたようだったからな。」

フォックスはあっけらかんと答えた。それにサムスが反応した。

「あの2人に会ったの?まだ喧嘩してた?」

「いや、もう収まって……あの2人のが先にこっちに向かっていたと思うけど……。」

心配そうにマルスが扉をみた時だった。

「あれ?みんなもう戻っていたの?早いね!」

呑気にカービィが部屋の中に入ってきた。その後ろからピカチュウはとぼとぼと入ってきた。

「……カービィがめちゃくちゃな方向に行くからだよ………。」

等と愚痴をこぼしている。ピカチュウはトレーナーを見つけると真っ直ぐそちらに歩いて行った。それに気付いたトレーナーは、労りの声をかけながらしゃがんだ。その時だった。

「今よ、ゼルダ。」

リンクの周辺を遠目に見ていたピーチがゼルダに囁いた。勿論、他の人は気付いていない。

「ほ、本当にやるのですか………?」

ゼルダは不安そうに返す。すると、ピーチはクスッと笑った。

「当り前よ。それとも………――ていいの?」

ピーチの言葉は肝心な所が小さ過ぎて聞こえなかった。しかしゼルダには、はっきりと分かった。かぶりを振るとリンクのもとへ歩いていく。

「……リ、リンク?ちょっと、いいかしら……?」

「何?ゼルダ。」

リンクはいつもと 多分 変わらぬ笑みを張りつけてゼルダを見やった。

「あの……私………。」

チラッとピーチを見る。ピーチはそっと促した。ゼルダは意を決すると、リンクに抱きついた。

「ゼ、ゼルダ!?」

リンクは驚いてされるがままになっている。それを気にしないことにして、ゼルダは自分の思いを伝えた。

「……あなたが帰ってなくて、よかった………。」

リンクは困惑した表情のまま黙り込んだ。その様子を見て、ネスが野次を飛ばした。

「あれぇ?勇者さん、そこまで言われてだんまり?」

その声に反応したのはゼルダの方だった。さっとリンクから離れる。

「ごめんなさい……いきなりこんなことされても………」

リンクは首を振った。

「そんなことないよ。……ゼルダ、心配しないで。帰ったりしないから。」

「……ありがとう。」

ゼルダはにっこりと笑った。

「あーあ。」

「ごちそうさまー。」

今度はポポとナナが囃し立てた。ゼルダは頬を赤らめて、リンクはそっぽを向いていた。
リンクとゼルダの話が一段落ついた所で、ピットが提案した。

「ところでさ、当番のことなんだけど、今 決めとかない?」

「あぁ、」

ターマスは手をポン、と叩くと紙を一枚取り出した。

「その事ですが、勝手ながら私が原案を作らせてもらいました。」

ターマスがその紙ををテーブルの上に置くと、みんなはそれを覗き込んだ。

『朝食:リンク、ソニック
その他料理関係:ルイージ、マルス、ゼルダ、フォックス、ファルコ、サムス、ピット、スネーク、オリマー、トレーナー、ピカチュウから2人ずつ交代
残りの人:掃除、洗濯等』

“……やっぱり字は同じ、か。”

マルスはこっそり違うことを考えていた。その時、文句が出た。

「何で俺とリンクは朝食決定なんだよ。……しかも俺らだけ毎日。」

ソニックだ。ターマスを睨んでいる。一方、皆から少し離れた位置で様子を見ていたリンクはため息をついた。

“……いつ作ったのか知らないけど、オレがここに残るの前提だったんだ……。”

「ターマス!どうなんだよ!!」

ソニックの叫び声でリンクは意識をみんなの方に戻した。

「あなた方が朝に強いからです。」

「は?そんなの理由に」

「お前は何時に起きるんだ?」

なおも言い募るソニックを遮ってドンキーが聞いた。

「……At five thirty.」

「そりゃ早すぎだろ。」

マリオが言った。ソニックは驚いてマリオを見た。ルイージがため息混じりにつぶやく。

「……10時まで寝ている兄さんにとってはね。」

「それを言うな!」

「リンク、お前は?」

不毛な言い争いが始まると感じたフォックスは、間髪を入れずに聞いた。

「…………………5時。」

顔を背けて、リンクは答えた。

“話は聞いていたようですな。”

いろいろと実は心配していたオリマーはほっと胸を撫で下ろした。

「なら、これでいいんじゃない?大体は6時以降でしょ?」

サムスが確認をとると、ソニック、リンク以外が頷いた。

「だったら、明日からこれで回そうぜ。」

ファルコンが言うと、賛成の声が返ってきた。

「では、そうしてください。ちなみに、料理関係には昼食、夕食の他、買い出しも含みますのでお忘れなく。」

「え?聞いてないよ!」

ディディが抗議した。

「言ってませんから。」

ニッコリとターマスは返した。これ以上の反論は受け付けないようだ。

「ねぇ、お風呂ってどこ?もう入って寝たい……。」

眠たそうにプリンが言った。

「個室の奥にあります。男女分けてありますので、いつでも入れますよ。」

“……あったっけ?”

マリオは独り、考え込んだ。

「広い!?」

カービィが嬉々として聞いた。嫌な予感を押し遣りながら、ターマスは短く答える。

「はい。」

「わぁー!行こう、行こう!」

ターマスの返事を聞くなり、カービィは飛び出して行った。その後にみんなは続くことにした。


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