Go! Go! Driving School!!

マリオは無事に仮免許を取った。何度目かの路上教習でのこと。

いつものようにマリオが運転する隣で、フォックスは座っていた。順調にコースを進めて行く。

「ん?」

フォックスはあるものを見て、声をあげた。

「どうした?」

マリオは車を左折させながら問うた。

「ハイフラ……?」

「何だって?」

よく聞き取れなかったマリオは再び聞いた。だが、フォックスはマリオに説明しようとはしなかった。

「……マリオ、端に寄せてくれ。停車。」

「は、何で?」

「いいから。」

マリオは不思議に思いながらも、指示に従った。フォックスはハザードをつける。ハザードランプはチカチカと問題なく光っていた。

「……気のせいか?」

フォックスは首を傾げていた。

「だから、どうしたんだよ?」

再度マリオが聞くと、ようやくフォックスは答えた。

「さっき左折した時、ウィンカーの点滅が速かったんだ。もう問題なさそうだが……一応見ておくか。」

するとフォックスは、車のドアを開けた。

「え?おい、フォックス!!」

マリオは慌てて声をかけた。だが、フォックスは、

「ちょっと待ってろ。」

とだけ言って、車を降りてしまった。フォックスは車の前方へ歩いていく。車の前で何かを確認した。そして、今度は車の後方へ回った。マリオは身を乗り出して、フォックスの動向を見守っていた。車の後ろへ行ったフォックスだったが、ある一点を見て、眉を顰めた。その一点を凝視しながら、なにやら考え込んでいる様子だ。しばらくその部分を触っていたが、やがて難しい顔をしたまま車の中に戻ってきた。

「何?故障?」

マリオは、特に異変は感じなかったけどなぁと思いながらも、フォックスの様子を見て、ただ事ではないと悟り、聞いた。

「故障といえば故障だな。左後ろ、玉切れだ。」

マリオはキョトンとした。どんな大事かと思っていたが、拍子抜けしたのだ。

「そうか……。でも、ただの玉切れだろ?何か問題が?」

「合図不履行及び整備不良。」

フォックスは淡々と答えた。

「あ………。」

「だが困ったな……。時間内に戻らないといけなし……。……………。」

またフォックスは考え込んだ。マリオはどうしたものかとフォックスを見つめた。

「……。非常事態だしな。やるか。」

何かを決めたらしいフォックス。

「……フォックス?」

しかし、マリオにはそれを推し量ることはできなかった。ただ呼ぶことしかできない。

「マリオ、本来このような場合は、レッカー車を呼べよ。この状態で運転したらダメだからな。」

突然、フォックスは教官モードになった。真面目な顔で念を押した。

「え?あ、ハイ。」

マリオは思わず素直に返事をした。

「今回は例外だ。……手信号は分かるな?」

「手信号?この前、お前に散々覚えさせられたが…、………、って、まさか!?」

ある考えに思い至り、マリオは目を見開いてフォックスをまじまじと見た。フォックスは気にも止めずに指示を続ける。

「窓、全開にしろ。左折の時は手信号な。運転の補助はする。……と言いたいが、お前、片手でも運転できるよな?」

フォックスはとんでもないことを言い出した。しかし、その顔は至って真剣だ。

「まじか、まじかよ。ってか、いいのか!?」

どうやらマリオの読みは当たったらしい。マリオは返事をすることも忘れ、うろたえた。

「手信号を出せば合図不履行は免れる。整備不良はどうしようもないから、無視。」

フォックスはしれっと言った。

「無視って……。」

マリオの声はかすれていた。だが、フォックスはマリオに構わなかった。

「今は帰る方が優先。じゃあ、右合図出せ。」

そしてマリオは、左折の時は手信号を出して、自動車学校まで戻る羽目になったのだった。





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