集合&結成!?スマッシュブラザーズ!!

「……今度はどこだ?」

マリオの呆れた声が虚しく響いた。彼らは美しい風景の中にポツンと存在する、全員が乗るには狭すぎる場所にいた。

「私の中です。」

先程のコンピューターの声がした。みんなはあんぐりと口を開けた。

「僕達は……コンピューターの中にいると?」

マルスの声は少し擦れていた。

「そうです。」

「だからこんな狭い場所にいるの?落ちそうなんだけど。」

サムスが不服そうに言った。

「……そうですね……広い場所に変えましょう。」

コンピューターの声と共に一瞬で場所が変わった。

「! ここは!?」

「……ハイラルの……神殿………?」

リンクとゼルダが驚きの声を上げた。無機質なコンピューターの声がそれに答える。

「はい。そこをイメージして作られました。しかし、あくまでもステージであって、本物ではございません。」

「ステージってなんだ?」

ソニックが聞いた。

「後でご説明します。まずはルールから」

「その前に質問!」

コンピューターを遮ってカービィが言った。

「どうぞ。」

「君の名前は?」

「………………?コンピューター……ですが。」

カービィは呆気にとられて何も答えられなかった。その場の状況を察したネスが説明した。

「名前はないみたいだね。コンピューターはコンピューター、なんだよ、たぶん。」

「……それって悲しいね。」

ディディがしみじみと言った。

「じゃあさ。」

「名前、つける?」

ポポとナナが言った。

「じゃあ……コン!」

カービィが元気に言った。

“略しただけだろ!”

口を出かけた言葉を、フォックスはまた、なんとかして飲み込んだ。

「……そうしましょう。いいですか?」

ゼルダが言った。一部の人は驚いてゼルダをみた。

「えぇ、……まぁ……構いません。」

ちゃんと状況についていっていないコンピューターはそう答えた。

“……いいんだ……。”

ルイージは呆れてため息をついた。かくして、コンピューターはコンと命名された。

「じゃあ、そのルールってのを教えてくれ。」

ファルコンが促した。

「はい。ルールといっても状況によってたくさんあります。まずは基本となるものをお話ししましょう。一番基本となるのは4人がそれぞれと戦うものです。4人は他の方をステージから落とすか飛ばすかして、ポイントを競い合うものです。時間制限はあり。一番多く相手を場外にした方が勝利となります。」

「誰かを場外にするために何をしてもいいのか?」

スネークが聞いた。

「OKですよ。」

「……いいのか?」

リンクが低い声で尋ねた。

「はい。大乱闘ですから、各自の能力を大いに発揮してください。」

「しかしですね……それではちょっと怪我をした、というのではすまなくなりませんかな?」

オリマーが不安そうに言った。

「心配するには及びません。これはあくまでも大会。そして、ここはコンピューターの中、つまり現実ではありません。攻撃を受けた時の痛みはありますが、外に戻った時に怪我はもちろん、痛みもありません。ご安心ください。」

「……乱闘の意味はあるのかしら。」

サムスが言った。

「あるはずです。怪我こそしませんが、戦ったことにはかわりません。技術は上達するはずです。後、言い忘れましたが、疲れだけは中でも外でも同じです。」

一度コンは話を止めた。しかし、すぐに再開する。

「ルールについて付け足します。何度も言っている通り、先程話したものは基本となるものです。人数は4人まで入ることができますが、3人で戦う、1対1でやる、というのも可能です。また、チーム戦をすることもできます。それから……時間、ポイント制の他に、ストック、コイン、体力なんていうものがあります。名前で大体想像できると思いますので、この辺りは割愛させてもらいます。……ここまででご質問は?」

「その設定などはどうするんだ?」

ドンキーが聞いた。

「言ってくだされば、私がいたします。」

しばらく沈黙がはしった。

「……なさそうだから、次に進んでくれ。」

みんなの様子を一通りみたマリオはコンを促した。

「承知しました。次はステージについてご説明いたします。ステージはみなさまに縁のある土地、あるいは私のオリジナルのものを再現いたします。因みに現在は、先ほども言いましたが神殿です。ゼルダ様、リンク様、何かここのことで説明しますか?」

「……説明って言われても………。」

リンクは困ったようにゼルダを見た。

「特にはございません。しかし……破壊されては困るのですが。」

ゼルダはコンを伺った。

「先ほども言いましたが、本物ではございません。私が再現したものです。後………このステージでは、どれだけ攻撃しても傷一つつきません。」

コンはさらっと返した。ピカチュウは驚いて耳をピン、と立てた。

「傷つかない?本当!?」

「やってみますか?」

「やる!やる!」

コンの提案にカービィが乗った。カービィは近くの柱に向かって走って行ってしまった。

「……やるのですか……?」

ゼルダは不安げに呟いた。それを聞いたファルコが呆れて言う。

「あの調子なら絶対やるぜ、あのピンク。」

ゼルダはため息をついた。

「でもいいんじゃない?」

ゼルダとは裏腹に楽しそうにリンクが言った。ゼルダは驚いてリンクを見た。

「……君は……大切な神殿を破壊されてもいい、と?」

驚いたのはゼルダだけではなく、マルスが訝しげに尋ねた。

「本物なら良くないけど……あくまでもニセモノなんでしょ?それに、傷一つつかないらしいし。」

リンクは淡々と答えた。ゼルダはそんなリンクを見ているうちに、思わず吹き出してしまった。

「………あなたらしいですね。」

「だが…仮にフェイクであっても、破壊されるのを見たくはないだろう?」

スネークが言った。しかし、リンクはすでにカービィのもとに行ってしまっていた。

「……そう思っているようには……見えないわね。」

サムスが呟いた。

「うーん……あれで勇者、か………。」

ピットはその場で翼をパタパタさせながら言った。

「あの…ゼルダさん、あなたの見解は?」

オリマーが聞いた。

「それは……彼の考えていること、ということでしょうか?」

オリマーを含め、その場にいた何人かが頷いた。

「彼自身がやりたいみたいですよ。」

ゼルダは苦笑していた。

「え……と、止めないの?」

ルイージが心配そうに聞いた。

「……ここはコンさんを信じます。それに……あんな楽しそうなリンク、久しぶりに見ますから。」

ふと彼らの方を見ると、カービィはやりたい放題していた。その隣でリンクは眺めていた。

「さ、さすがに……一緒になって、やら、やらないんだね……。」

「……良かったな、マルス。お前の彼に対する理想像はまだ崩れてはいまい。」

「……アイク、どういう意味かな?」

アイクは肩をすくめた。

カービィを眺めているリンクにトレーナーが近寄った。

「君達の所の神殿だっていうのに、楽しそうだね。」

「……そう見える?」

少々ばつが悪そうなリンクにトレーナーは頷いた。

「……でも、君の場合、本物にやったことありそうかな………。」

「………まさか。いくらオレでも、さすがにそんなこと……してないと思う。」

「……なんか、怪しいんだけど………。」

「心配しないで。……って言うと余計心配になるかな……とりあえずオレ、人の困るような事はやってないつもりだから。」

「あぁ………そう。」

とりあえず、トレーナーは納得しておくことにした。

「ところで、カービィみたいなことをする人、増えてもいいかな?」

「オレは構わないケド………。」

リンクはチラッとゼルダを見た。

「……大丈夫そうかな。いいよ。でも……君が?」

「ハハッ。違う違う。ゼニガメだよ。ほら、さっき僕が戻してただろう?次出したら、絶対みずてっぽうとか繰り出して、メチャクチャするから。……まぁ、僕としてはなんでリザードンに殴られたのかを理解してほしいんだけど……。」

「……トレーナーっていうのも大変なんだね。」

「僕としてはそうじゃないけど。じゃあ、やらせてもらうね。あ、離れといた方がいいよ。……ゼニガメ、出てこい!」

リンクが離れている間にトレーナーはゼニガメを出した。が、ゼニガメは出てくるなりみずてっぽうを繰り出した。

「うわぁー!いきなり何するの!」

「うわっ!」

「冷たい!」

「水!溺れる!!」

「あら、せっかくの服が台無しね。」

近くにいたリンクやトレーナー、カービィはおろか、ほとんどのメンバーがずぶ濡れになってしまった。

「……し、しまった……やっぱり、人のいないところで出すべきだった………。ゼニガメ、止めろ!戻れ!」

トレーナーがゼニガメをボールに戻そうとした。が、戻らない。

「嫌だー!絶対戻らないーーー!」

ゼニガメはなおも暴れ続ける。

「……仕方ない……フシギソウ!頼む!」

「……はいはい。」

フシギソウはゼニガメに向かって走っていった。

「なんだよ、フシギソウ!ボクとやるの!?」

「あんまり長引いても、みんなに迷惑かけるだけだからね。もう、お終い。」

「させないぞっ!みず」

「つるのムチ!」

フシギソウのが速かった。フシギソウは一度ムチで打つとゼニガメを捕まえた。

「放せー!放せよ、フシギソウー!」

フシギソウはゼニガメを無視し、トレーナーの所へ連れていく。

「フシギソウ、ありがとう。……戻れ、ゼニガメ。」

トレーナーはゼニガメを戻した。そして、ため息を吐く。

「…みんな、ごめん。僕の不注意で……」

「不注意だと!?ふざけんな!」

前に出たファルコをフォックスが引き止めた。

「落ち着けって。これは事故だ。あいつに悪気はねぇだろ。」

ファルコはしぶしぶ下がった。しかし、

「悪気がなかったにしても、濡れたことには変わらん!」

アイクは剣を抜き、トレーナーに斬り掛かる。

「あ……アイク!だめだ、止まれ!」

マルスが止めに出た。他にも何人かが走りだす。しかし、間に合わない。一部の人が目を瞑り、顔を覆った。トレーナーは驚きと恐れでその場から動けなかった。が、シャキン!隣にいたリンクが剣で受け止めた。

「……いくら何でも、いきなり攻撃するのは良くないんじゃないか?」

「こちらはそれだけ怒っているということだ。それに………怪我はしないのだろう?」

「怪我をしなければいきなり攻撃してもいいのか?」

「フン。悪いのはあいつだ。」

「彼は謝ってたじゃないか!」

いよいよ口論も白熱してきた時、リンクとアイクの間にスネークが割って入った。

「まぁまぁ、お2人さん。まずは落ち着け。ここで言い争っても仕方がない。」

が、2人は睨み合ったまま、手に持った剣をおろさない。

「リ、リンク……武器をおろして下さい。」

「……彼がおろしたら、オレもおろす。」

ゼルダも動揺しながらリンクを促すが、リンクはアイクを睨みながらそう言っただけだった。アイクは静かにリンクを睨み返す。

「アイク、剣をおろすんだ。ここで一方的に怒っても意味がない。」

マルスがアイクを諭した。すると、仕方なしにアイクはゆっくりと剣をおろした。それを見たリンクも剣をおろす。

「……とりあえず…トレーナー、どうしてこうなっちゃったのかな?」

マルスが優しく聞いた。

「……さっき、ゼニガメがリザードンに殴られていたのは、見てたよね?」

一部が頷いた。

「……自分がお前を殴りたいがな。」

アイクがボソッと言った。それが聞こえたトレーナーはうつむく。リンクは再びアイクを睨んだ。

「…アイク、今は黙っておこう。」

2人の様子に気付いたマルスは、小声で注意した。

「……続けろよ。」

フォックスが促した。

「……あの時、僕はゼニガメを戻した。なぜなら、あの時点でさっきのようなことをやりそうだったから………。」

「そ、そうか…だから…あ、あの時、2匹を戻したんだね………?」

リュカが聞くと、トレーナーは頷いた。

「ならさ、何で今、ゼニガメを出したんだ?」

体を振り、水気を飛ばしながらソニックが聞いた。

「……ゼニガメがあんな事をするのは………分かってた。」

「分かっていたのか!?」

怒りに満ちた声でアイクが叫んだ。そして、トレーナーに近づく。が、リンクが剣を上げた。

「……最後まで聞いたら?」

アイクはしばらくリンクを睨んでいた。が、特に行動を起こさずに元の位置に戻った。リンクも剣をおろす。

「ゼルダ姫……あなたには申し訳ないけれど……僕はコンを信じて、ゼニガメは神殿に八つ当たりしたらいいと考えた。それで、ゼニガメの気を紛らわしておきたかったんだ。だけど……ゼニガメはそんなのお構い無しで……出てくるなりみずてっぽう……。ごめんなさい…こうなることは予測できたはずなのに……。」

「……きちんと考えられたら、こっちは濡れなくてもすんだはずだがな。」

アイクは皮肉を込めて言った。それにリンクが激怒した。

「くどい!ただ濡れただけでそこまで言わなくても!」

「勇者ってさぁ、加害者庇うものなの?」

「被害者、こっちなんだけど?」

ポポとナナが言った。それに、リンクはムッとしたように言い返した。

「オレは自分が正しいと思ったことをやる。勇者だと思われなくてもいい。むしろ、オレは普通の人間だ。それに」

「リ、リンク……。」

トレーナーが弱々しく呼んだ。リンクはトレーナーを振り返る。

「もう、いいよ。悪いのは、僕なんだから………。」

トレーナーは一瞬微笑んで真顔に戻った。リンクはトレーナーをまじまじと見つめた。

「……コン、さっさとステージの説明に移ってくれ。」

突然、マリオが話の流れを変えた。

「に、兄さん?」

ルイージは驚いてマリオを伺う。

「これじゃ、いつまで経っても収拾つかないだろ?」

ルイージの困惑した様子に気付き、マリオが言った。

「そうだな。一度、頭を冷やした方がいい。」

スネークが同調した。

「……コンさん、話を進めてください。」

オリマーが言った。

「分かりました。」

コンは全員を各ステージに連れていき、説明した。



説明が終わり、全員がターマスのいる所へ戻ってきた。

「おかえりなさい。」

「ただいまー!」

ターマスにディディが元気よく返した。

「……何か、疲れちゃったよ。」

ピットが伸びをしながら言った。

「覚えること、たくさんあったしな。」

ソニックが同調した。

「……皆さんお疲れでしょう。今の所は部屋に戻ってお休みください。」

「夜ご飯はー!?」

カービィが不服そうに言った。

「今日は私が用意します。」

「……今日、は?」

フォックスが聞き返した。

「えぇ。明日からは全て皆さんでやっていただきます。当番制にしたらよいかと。」

「そうね。じゃ、それも含めて後で。今はちょっと休みたいの。」

サムスが言うと、ターマスは頷いた。

「分かりました。部屋の場所はご存知で?」

「僕が案内するよ!」

ルイージが名乗り出た。

「じゃあ行」

「ちょっと待て!部屋割は?」

マリオは行こうとしたルイージを止めると、間髪入れずに問う。

「お好きな部屋を一人一部屋ずつお使いください。」

「分かった。ルイージ、行こう。」

ドンキーが言うとルイージが先頭を歩きだした。他の人もついていく。

「……リンクさん、お待ちください。」

ターマスは最後に出ていこうとするリンクを引き止めた。

「何ですか?」

リンクは何故か丁寧に返した。

「部屋に行かれるのですよね?」

ターマスは念を押した。リンクはしばらく黙っていた。

「…………………………。……お世話になりました。」

リンクはそう告げると出ていこうとした。

「待て!リンク!!」

ターマスが声を上げた。しかし、リンクは止まらない。それでもターマスはリンクが出ていく前に腕を掴んだ。

「……ターマス、放して。」

そっぽを向いたままリンクは言った。

「お前が帰らなければ私は放そう。……おとなしく部屋に行け。」

先程とは打って変わり、ターマスはリンクにきつく言った。リンクは少なからず驚いてターマスを見た。

“急に人が変わったように……もしかしてこの人!”

「君が主催者?」

リンクはじっとターマスを見つめた。その目を受け止めて、ターマスはゆっくりと頷いた。

「そうだ。リンク、これで満足か?」

「まさか。」

リンクは鼻で笑った。しかし、すぐに真剣な顔に戻る。

「でも、オレは本人にこれだけは言える。……オレは帰る。スマッシュブラザーズなんて、知らない。」

ターマスは動揺したようだった。迷っているのがうかがえる。やがて、半分諦めたように静かに言った。

「………手紙の内容は、本当だ。」

「ウソだ。」

リンクはあっさりと切り捨てた。ターマスは内心ガックリしながらも、顔には出さずに言った。

「嘘ではない。信じてくれ。」

「だけど、誰もそんな事言ってなかった。実際、トレーナーの手紙には触れてもなかった。他の人が言わなかっただけ?それとも」

「私が皆に宛てて書いた手紙の中で真実を書いたのは1通のみ……つまり、お前に宛てて書いた手紙だ。」

今度はリンクが動揺する番だった。

「だ、だったら……どうして、みんなに話さないの?」

「今はまだ、関係ないからだ。」

暫く沈黙がはしった。リンクはじっと考えて込んでいた。ターマスはそれを懇願にも近い思いで見つめていた。やがて、落ち着きを取り戻したリンクが口を開いた。

「だったら、オレをその時に呼んでくれ。………ここの人とは合いそうにないから。」

再び、ターマスは驚いてリンクを見た。が、すぐに思い当たったことがあり、ため息をついた。

「先程のゼニガメのことだな?しかし、まだ会ったばかりだ。決めつけるのには早すぎる。」

「そうかもしれない。」

そう言うリンクは少々罰が悪そうだった。が、意を決したように続けた。

「でも、オレは帰る。」

リンクはターマスの手を振りほどくと駆けていってしまった。残されたターマスはやれやれと首を振り、深いため息をついた。

「……仕方ない……リンク、強行手段を使わせてもらうぞ……………。」



「私、ここにするわ。」

「では、私はその隣に。」

部屋の方に行ったメンバーは自分の部屋を決めていた。

「俺 ここな!」

「俺はここにする。」

「じゃあ、そん隣行くわ。」

といった風に次々と部屋が決まっていく。そんな中、トレーナーはおずおずと端の方にいた。それに気付いたオリマーが、優しく問いかけた。

「あなたはどこにするのですか?」

「え、えっ……と……。」

トレーナーは困ったようにうつむいた。すると、スネークがやってきた。

「俺の隣に来たらどうだ?反対側はピカチュウだしな。」

「うん!そうしなよ!」

ピカチュウはトレーナーによじ登ると顔にスリスリした。

「あ……うん。ありがとう。」

トレーナーはピカチュウを撫でながらぎこちなく笑った。その時、ひときわ大きな声が響いた。

「僕/私 ここねー!」

ポポとナナが同時に言ったのだった。2人で一部屋を指している。

「え?で、でも…さっさ、1人一部屋、って……。」

リュカはターマスの言ったことを心配していた。

「いいじゃない。そうしたいんだったら。後で許可をもらったらいいでしょ。」

プリンが言った。

「なら、一応隣の部屋、空けとこうよ。」

「そうだね。どうせ余るんだし……。」

ヨッシーの提案にピットが頷いた。

「全員決まったか?」

マリオが聞くと、各自が口々にYesの答えを出した。

「なら、一度落ち着きましょう。」

そう言うと、ピーチは部屋に入っていった。それを見た他の人も部屋に入っていく。廊下には、ゼルダ、マルス、トレーナー、カービィが残った。

「あの…そういえば、リンクは………?」

トレーナーが聞いた。

「……さっきから僕も気になっていたんだ。姿が見えない。」

マルスは辺りを見回した。

「……帰ってしまったのでしょうか……。」

ゼルダが力なく呟いた。

「……え?」

「帰った?」

トレーナーとマルスがはもった。ゼルダは俯いてしまう。

「違うんじゃない?」

カービィが言った。3人はカービィを振り返った。

「……さっきターマスが呼び止めてたよ。」

3人の様子にちょっと驚いたものの、先程見たことを伝えた。そして、そのまま部屋に入っていってしまった。

「……何か言いたい事でもあったのかな、ターマス。」

マルスは疑問を口に出した。

「……もしかして……僕のせい?」

トレーナーは不安そうだった。少し声が震えている。

「違うと思います。」

ゼルダはあっさりと否定した。トレーナーに微笑む。

「リンクは……この大会に不満を多く抱えているようです。その話ではないでしょうか?」

「……不満?」

マルスが短く聞いた。

「何か……皆さんと集められた目的が違う、と……。」

ゼルダは補足した。

「……うん、言ってたよ……。あまりにかけ離れた理由だからって、教えてくれなかったけど………。」

トレーナーも初めて会ったときを思い出し、同調した。

「……僕達は、少なくとも大会というところで共通していたね?」

マルスが聞くと、2人は頷いた。

「それにも共通していないってことかな?」

マルスは呟くと考えこんだ。



少し時は戻り………

リンクはメインルームを出て、玄関に向かって走っていた。

“………こんな所、ごめんだ。”

リンクは階段を駆け降りた。

“大会なんて知らない。それに……オレは納得できない!”

ゼニガメの時を思い浮かべ、激しく首を振った。玄関にたどり着く。扉を開け、踏み出した。が、そこは外ではなかった。

“……個室……?どうして……………?”

「やはり、帰るつもりで玄関を開けましたね。」

突然、声がした。リンクは振り返る。そこにはターマスがいた。

「……ターマス……!」

リンクは怒りで震えた。しかし、ターマスは気にせずに淡々と言った。

「あなたには説明を最後まで聞いていただきます。夕食まで、ここにいらしてください。」

「………………。」

ターマスは扉の方へ歩いていった。

「後、念のために 外から鍵を掛けさせていただきます。それから……私のことは他言しないでください。」

手紙のことも、と付け加えると、ターマスは出ていった。リンクはがっくりと膝をついた。

“……してやられた…。”

外でカチャ、と鍵のかかる音がした。



考え込んでいたマルスは、何か音が聞こえた気がした。首を傾げながらも、ゼルダとトレーナーに問う。

「……何か聞こえなかったかな?」

2人はマルスと同様に首を傾げた。

「さぁ……私には聞こえませんでしたが。」

すると、カチャカチャ、と音がした。

「……今のは聞こえた。」

トレーナーが言ったのを合図に、3人は音のした方に走りだした。



3人が廊下の一番奥に着くと、誰かが扉の前に立っていた。

「あれはターマスさん!」

ホッと胸を撫で下ろして、ゼルダが言った。

「なんだ……。何をしていたの?」

安心したトレーナーがターマスに聞いた。が、マルスだけは訝しげにターマスを見つめていた。

“あれ……?いつの間に………?”

「リンクさんに空いている部屋を教えていたのです。私が話し込んでしまったので、彼は出遅れたものですから。……あなた方はお休みにならないのですか?」

逆にターマスが聞くと、恐る恐る、といった風にトレーナーが聞いた。

「あの、ターマス。コンって、今からでも使える?」

「……………コン?」

ターマスは何のことだかさっぱり分からない、というように唖然としていた。それに気付いたゼルダが説明する。

「先ほどのコンピューターの名前です。……勝手につけさせてもらいましたが、よろしいでしょうか?」

「?… …あぁ、構いません。コンですか……。」

ターマスは面白そうに笑った。真顔に戻ると、トレーナーに向き直った。

「それで、トレーナーさん、使ってもらっても構いません。それに……他の方もいませんし、ね。」

ターマスは優しく言った。が、トレーナーは俯いてしまった。

「……ごめんなさい。」

「気にすることはないよ。あれは……アイクが怒りすぎだと思う。だけど……彼は濡れるのが苦手なんだ。それだけは分かっておいてくれないかな?」

マルスの言葉にトレーナーは頷いた。

「うん。……本当に、ごめんなさい。……じゃあ、コンのところに行ってくる。」

トレーナーは駆けていった。それを見送ってから、ゼルダは口を開いた。

「ところでターマスさん、リンクはどうしましたか?」

「彼は部屋の中で休んでいます。」

ターマスは完璧な笑顔を貼りつけた。しかし、ゼルダは気がつかなかったようだった。

「そうですか。帰っていないのですね。」

嬉しそうに言うと、ゼルダは部屋に戻っていった。

「そういえば、マルスさん。リンクさんをあなたの隣の部屋にしてよろしかったでしょうか?」

ターマスは、さも今思い出した、というようにマルスに言った。

「構わないけど……ターマス、どうして彼の部屋に鍵を?」

「………鍵?何の話でしょう?」

マルスは不適な笑みを浮かべた。

「……さっき、鍵をかける音がしてね。その音をたどってここに来た。すると君がいた。」

「はい。……それで?」

見た目は平静を保っているものの、ターマスの服は汗でびっしょりだった。

「リンクは帰っていない。けれど、彼には帰りたいという気持ちがあり、君はそれを止められなかった。だから、彼を閉じ込めた。……違うかな?」

しばらくターマスは黙っていた。が、やがて、ため息を吐くと、ターマスも不適な笑みを浮かべた。

「……やはり侮れませんね、マルスさん。確かに私は、彼をこの部屋に閉じ込めました。」

マルスは笑みを消した。

「……この大会が強制だったとは聞いていなかったね。それとも……他に目的が?」

“これだから勘の鋭い奴は面倒だ………。”

ターマスは本気で逃げ出したくなった。しかし、そんなことはおくびにも出さない。

「……強制とは書きませんでしたが……強制に近いですね。」

「それはどういう意味かな?」

「私は、皆さんが確実にここへ来るように招待状を書かせていただきました。………内容が違う理由は、ほとんどそれかも知れませんね。」

「彼が帰りたくなるような内容か……少し興味があるね。」

「それはお話ししませんよ。それに…いずれは分かります。さて…そろそろ料理を始めなくては。」

ターマスは歩き出した。

「あぁ、そうだ。リンクの事は」

「心の中に閉まっておけ、……………………かな。」

ターマスは微笑した。ふと、マルスの中に疑問が沸き上がった。

「ターマス、もう一つだけ聞いていいかい?」

“まだ何かあるのか…。”

正直、うんざりしながら、ターマスは振り返った。

「何でしょうか?」

「僕に宛てられた招待状だけど、ちゃんと主催者が書いたものだよね?まさか、王子の僕に宛てられたものが君の」

「もちろん、主催者がお書きになったものです。ご安心を。」

“…こんな横暴な人だっただろうか……。”

ターマスの心配を余所に、マルスはにっこり笑うとそう、とだけ言って、部屋に入っていった。ターマスもキッチンへ向かう。



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