お題(三剣士同盟)

マルスはバルコニーから外を眺めていた。その近くにはリンクが佇んでいた。その彼には少し落ち着きがない。

「それで、リンク。何か言いたいことがあるんじゃないのかな?」

リンクに落ち着きがないのに気付いていたマルスは、リンクが口を開くのを待っていた。が、しかし、しびれを切らしてリンクを促した。リンクは大袈裟に反応した。

「……言いたいことっていうよりも聞きたいことっていうか……いや、でもそんな大したことじゃないんだけど………。」

マルスに聞かれたので一応応えたものの、まだ踏ん切りがつかないらしい。マルスはやれやれと思いながらも優しく言った。

「いいよ。言ってごらんよ。」

リンクはぎこちなく頷いた。

「……あのさ、マルスの故郷って、どんなところ?」

マルスは思わず吹き出しそうになった。

“なんだ、そんなことか…………。何も悩むことないのに。”

しかし、あまりに真剣に聞いてくるので、笑うのも、声に出すのも躊躇われ、なんとか押し留めた。

「いい所だよ。たくさんの国があってね、山や海もあるんだ。僕はその内のアリティアって国に住んでいるんだけど、そこにいる人達もみんな親切で国のことを大切にしているんだ。……………戦争さえなければ、もっといいんだけど。」

「………え?」

マルスの話に聴き入っていたリンクは、マルスの声の調子が突然変わったことに驚き、思わず聞き返した。

「いや、なんでもないよ。ところで、どうしてそんなことを?」

マルスは本音が出てしまったことに気付き、適当に誤魔化した。そして、話を変える。

「え、あ………別にこれ、といった理由はないんだ。あえて言うなら、好奇心、かな。」

「そうか……………。」

気まずい沈黙が流れた。

「そ、それで、君の故郷…ハイラルはどんなところなんだい?」

沈黙に耐え兼ねたマルスが尋ねた。

「ハイラル?ハイラルは……緑が綺麗だよ。自然に恵まれてると思う。山があって、川があって、大きな湖があって……。あ、でもオレの時代は海はないな。」

「……君の、時代?」

マルスは訝しげに聞いた。

“しまった……!口が滑った………!”

「えっと、あの……こ、言葉のあやだよ!ハイラルの勇者は、皆リンクだから………。」

「? そう………。」

リンクの様子を不振に思いながらも、マルスはそれ以上深入りしなかった。

「でもさ、ってことはリンクは海を知らない訳だ。」

突然ロイの声がしたかと思えば、リンクの後ろからひょっこりと顔を出した。

「ろ、ロイ!!き、聞いてたの!?」

リンクがうろたえて聞き返した。

「彼は始めからそこにいたよ。」

マルスはリンクの様子を気にしながらも事実を述べた。すると、リンクはがっくりと肩を落とした。

「なんだよ、俺が聞いてちゃいけないのかよ?」

ロイはあくまでも笑いながら怒ってみせた。

「いや、もちろんそんなことないよ。」

“ロイはバカにするかな、って不安だったけど!”

「そりゃそうだろうな。秘密の話じゃなかったし。」

ロイは明るく笑った。

「それでさ、今度皆で海行こうぜ。」

そして2人に提案する。リンクは少しムッとした。

「……知らないって言ったけど」

「いいじゃんか、ちょっとした息抜きに、さ!」

ロイはリンクの反論を遮り、自分の意見を押している。マルスが微笑みながら言った。

「そうだね、たまにはいいかもしれない。リンク、今度行こうよ。大丈夫、ロイは言葉以上のことを思ってないから。」

「は?何言ってんだよ?」

「なんでもないよ。で?リンク、どう?」

リンクは安心したように笑った。そして言う。

「大賛成だよ。」

“ついでに2人の祖国の様子、感じて来たいな。”

マルスとロイの真っ直ぐな優しさに感謝しながら、リンクは今度出かけることにワクワクしていた。





.
3/5ページ