お題(三剣士同盟)

朝早く、マルスはみんなの部屋で静かに本を読んでいた。毎度の如く、そこにはマルスしかいない。敢えて言うならば、リンクがキッチンで朝食を作っているだけだ。

「おはよーさん。」

そこにロイがやってきた。マルスは読んでいた本から顔を上げた。

「おはよう、ロイ。今日は早いね。」

「……俺が朝弱いみたいに言うなよ。これでも、家では早いんだぜ?で、朝っぱらから何読んでんだよ?」

「これかい?」

マルスは本の表紙をロイに見せた。

「『闘いの基本』って……今さらそんなもんいらねぇだろ。大体、それどっから持って来た?」

「スネークが貸してくれたんだよ。これ、随分と参考になるよ?」

「……そう言われてもなぁ……それ以上強くなられたら追い付けねぇよ……。

ロイの呟きにマルスは静かに笑った。

「聞こえてるよ、ロイ。僕だってもっと強くなりたいんだよ?……でも、今回は強くなるために読んでる訳じゃないんだ。」

ロイは目を見開いた。

「なら、何でそんな本読んでるんだよ?」

「僕は一国の王子として、様々な闘い方を知っておくべきだ……君もそう思わないかい?」

「え、まぁ……確かに一理あるが……。」

「……王子っていうのも大変なんだね。」

突然、第三者の声がした。2人が声のした方を見ると、リンクが立っていた。

「おはよう、リンク。もう終わったの?」

リンクは頷き、テーブルを指さした。そこにはすでに料理が並んでいた。

「……やっぱ多いな、何回見ても。……ってか、カービィやヨッシーは?」

「あの2人は里帰り中。だから、今日は結構減らしてあるよ。」

「そ、そっか……。」

ロイは苦笑いした。

「……ねぇ、2人とも。」

マルスはパタンと本を閉じ、2人に向き直った。

「どうして、闘いってあるんだと思う?」

ロイとリンクはしばらく黙っていた。が、やがて、ロイが口を開く。

「なんでって……理由はいろいろだろ。俺らの場合、国家関係の面倒な」

「そうじゃなくてさ。……僕たちは何のために闘っているのだろう?なぜ、僕たちは闘い続けなければならない?」

マルスは一気に言ってのけると目を伏せた。ロイは驚いてマルスを覗きこんだ。

「ど、どうしたんだよ?何かあったのか?」

「いや、特にこれ、と言ったことはないよ。ただ……どうして僕たちはこんな辛い思いをしてまで闘っているのだろう、って……たまに考えてしまうんだ。バカみたいだね、僕は。そんなこと言っても意味ないのに…………。」

マルスは自嘲的に笑った。ロイはそんなマルスを見て、目を反らしてしまった。が、逆にリンクはマルスを真剣な眼で真っ直ぐ見ていた。

「マルスは、闘いたくないの?」

マルスはリンクを見つめ返した。澄んだ碧の眼がマルスを捕えていた。

「……うん、出来れば、僕は闘いたくないよ。」

「だったら、どうしてマルスは闘うの?」

「おい、リンク。そりゃないぜ。闘いたくなくても、闘わなきゃいけないときがあるだろ?」

ロイが口を挟んだ。リンクはロイに頷いてみせる。

「そうだね。じゃあ、どうして君が闘うの?」

「そ、それは……」

「リンク、君は何が言いたいんだい?僕は僕が闘うしかないから闘っているんだ。それは君も同じだろう?」

「……じゃあ、マルスは、闘うのが義務だから、闘っているの?」

「……………………。」

マルスは何も言い返せなかった。

「もしそうなら、止めちゃえばいいと思うよ?逃げ出しちゃえばいい。」

「っ!そ、そんな訳にはいかないだろう!?」

「そうだぜ、リンク!!俺らは止められないんだ!」

「どうして、止められないの?」

「「国/仲間を守らなければならないから。」」

マルスとロイがはもった。言ってしまってから2人は顔を合わせた。

「出たね、答え。」

リンクが微笑んだ。それにつられて2人も笑った。




自分達は様々な境遇におかれている。その辛さに耐えられなくなって自分の運命を恨むこともある。けれど、闘いから逃げるという選択はしない。闘いは義務じゃない。国を仲間を、時には自分を守るために闘っているんだ。



.
1/5ページ