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短編の短編~学パロ~

今回はマルス視点。学パロ3の裏側。
―――――――――――――

僕はいつものようにパン販売の場所へ来ていた。ロイを迎えに行くためだ。隣でアイクがうんざりしているが、ロイを巻き込んでの逃走劇は楽しいから、仕方がない。そのうちリンク君も巻き込もう。きっと面白い反応を見せてくれる。しばらくパン販売の入口で待っていると、アイクが口を開いた。

「おかしくないか。」

「何が?」

目でロイを探しながら問う。あ、いた。パンをとろうと必死になっている。かわいいなぁ。

「女どもがいない。」

「え?」

言われてはじめて、いつも追いかけてきている女性の姿が、今日は一人もいないことに気付いた。道理で静かなわけだ。

「どうしてだろうね?何か企んでるのかな?」

すると、アイクが嫌そうな顔をした。が、彼が口を開く前に、元気なロイの声が聞こえてきた。

「あ、マルス先輩にアイク先輩!またこっち来てたんスか。直接屋上に行けばいいのに……。」

「クス、可愛い後輩を迎えに来てあげてるのに、それはないなぁ。」

「もう追いかけっこはごめんなんですって!」

「今日はその必要はないみたいだけどね。」

「え?」

ロイも辺りを見渡して、ポカンとした顔をした。

「ホントだ、いない……。」

「おい。」

アイクが焦れたように声を出した。

「今はいなくとも、いつ来るとも限らん。早く屋上に行くぞ。」

「そこで待ち伏せられてたりしてね。」

僕が冗談めかして言うと、アイクはあからさまに嫌そうな顔をした。

屋上に着いたが、僕の言ったようにはならなかった。が、いつも待ってくれているリンク君の姿が見当たらなかった。

「あれ、リンク、珍しく遅いな……。」

「俺達がいつも遅いから、わざと遅れさせたのではないか?」

いない女性達……来てないリンク君……。嫌な予感がするな。

「君達は先に食べててよ。僕はリンク君を迎えに行ってくるから。」

「マルス先輩……あいつ、嫌がると思いますよ?」

「そうだ。お前に嫌気がさして来てないだけかもしれんしな。」

「ハハッ、ロイ、今更。それにアイク、それなら尚更連れてこなくちゃね。」

「自覚あったんスか……。」

去り際にロイのつぶやきが聞こえてきたが、無視した。

リンク君の教室はロイに聞いていたので知っていた。後ろのドアから教室の中を見る。……リンク君はいないな。近くを天使のような子が通りかかった。そうだ、聞いてみよう。

「ねぇ、君。ちょっといいかな?」

「え?……う、うわぁ!マルス先輩だぁ!はい、なんでしょうか!?」

僕って、下級生の男の子にも人気あるのかな?

「リンク君、このクラスだよね?どこに行ったか知らない?」

「あー、リンクはいつも昼休みは隣のクラスのロイって人とどこかに行っちゃうから……。昼休みはどこにいるのか分からないんです。」

「そう……ありがとう。」

僕は教室を後にした。念のために教室に来てみたが、収穫はなし。……嫌な予感が当たっていれば、彼はあそこにいる。

体育館まで来た。裏の方へ足を向ける。女性がたくさんいるのが見えてきた。うん、僕らの周りにいつもいる彼女らだ。そして……困惑した顔のリンク君が囲まれているのが見えた。嫌な予感が当たってしまったか。

「何も言う気はなさそうね。」

リンク君がグッと手を握る。賢い子。反論するより、受け流した方がいいこともあるもんね。

「もういいわ。やっちゃいましょう。」

リンク君の表情が一変した。まずい段階まできているな……。これは早く介入してあげないと。僕は、足早にリンク君達のもとに近づくと、ひと声かけた。

「ここにいたの、リンク君。」

「マルス様!」

女性達が先に僕に気付く。遅れて僕を見たリンク君の顔が渋いものになった。なんでそんな顔をされちゃうかな……と思いながら、今度は女性達に声をかける。

「で、何をやるって?」

さっと女性達が青ざめたのが分かった。まぁ、見たら何をやろうとしていたかなんて、大体見当がつくけどね。

「僕、前にも言ったよね?僕のお気に入りの子に手を出したら、キライになるよって。」

すると、案の定、女性達は悲劇のヒロインよろしく、嘆いたり許しを請い始めたりした。

「いやー!」

「マルス様ー!嫌いにならないで!」

「ごめんなさーい!」

僕は満足してそれを眺めた後、リンク君に視線を向けた。彼は僕を睨みつけていた。……ちょっと傷ついたなぁ……。助けてあげたのに。それでも、リンク君に対して余裕の笑みを見せつけるのは忘れなかった。

「さぁ、リンク君。行こうか。」

僕は歩き出した。しばらく歩いて、足音が全然してこないのに気付いた。立ち止まり、振り返る。リンク君は、相変わらず同じ場所にいた。

「ほら、はやく。」

すると、ようやくリンク君は歩き出した。僕達は校舎まで戻った。

校舎に戻ってから、僕は足を止めた。リンク君も止まったのが気配で分かる。

「僕、何か君の気に障ること言ったかな。」

流石に睨まれたのは初めてだった。だから、何か言ってしまったのではないかと考えたんだ。

「……。どうしてあんなややこしいこと言ったんですか。」

「ややこしいこと?」

「……お気に入りの子。」

「あぁ、あれか。事実だよ?それに、そう言ってしまった方が、彼女達も手出ししない。ところで大丈夫だった?女性って、本気になるとやることエグいから。」

「……大丈夫です。……助けてくれて、ありがとうございました。」

僕は驚いた。てっきり、助けられて迷惑だとか思われているかと感じたからだ。だが、リンク君は、それだけ言い残すと、走り去ってしまった。僕には引き止められなかった。

屋上に戻ると、アイクとロイは食べ終えて待っていた。

「……リンクはどうした。」

「実はね――」

僕は事のあらましを聞かせた。ロイが嫌そうな顔をする。彼も彼女らに目を付けられたことがあったから、それを思い出してのことだろう。

「――それで、リンク君には逃げられちゃった。」

「それは仕方ないことだろう。目を付けられたのは、お前や俺のせいなのだからな。」

「……明日、あいつ来るかな……。」

僕は不安になった。本格的に嫌われたのだとしたら、どうしよう。

「ロイ、リンク君に伝言お願いしてもいい?」

「えー……わ、わかりましたよ……。」

にっこり笑って見せると、ロイはあっさり引き受けた。うん、やっぱりロイはかわいい。

「じゃあ、明日は寄り道しないでここに来るんだよ、って言っておいて。」

自分で言う勇気はない。彼がYesの返事をするのは半々の確率だな、と思った。いや、もっと低いかもしれない。

その日の放課後、部活でロイから、リンク君が分かりましたって言っていたと聞いて、僕は柄にもなく驚いたと同時に、ほっとした。



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