短編の短編~学パロ~
「ちょっとそこのあなた!」
ロイだけでなく、マルス先輩やアイク先輩らとも昼食を共にするようになって早一ヶ月。今日もいつものように屋上へ向かおうとしていたオレは、見知らぬ女の人に声をかけられた。チラリとスリッパを確認する。高校3年生だ。
「オレ、ですか?」
見たこともない上級生に呼び止められたことに、内心戸惑いながら問う。すると、その上級生は腰に手を当て、
「そうよ!今、時間はあるかしら?」
と有無を言わさぬ口調で言った。……別に急いで行く必要もないし、むしろ未だにあの場に慣れないオレにとっては好都合だった。
「大丈夫ですけど……何か?」
「来なさい。」
オレの質問には答えずに、その上級生はそれだけ言うと、さっさと歩きだしてしまった。こうなればもう、ついて行くしかない。仕方なくオレは、歩き出した。
連れてこられたのは体育館裏だった。たくさん女の人がいる。……嫌な予感がした。
「あの、オレ、やっぱり用事を思い出したので、」
身の危険を感じ、ここから逃げようと試みる。
「マルス様やアイク様のところに行くこと、かしら?」
が、オレの言うのを遮って、さっきの上級生が嫌味な笑みを浮かべて言った。この人達、マルス先輩やアイク先輩のとりまきなんだ!その時、腹部に鈍い痛みを感じた。オレを連れて来た上級生が蹴とばしてきたのだ。思わずしりもちをつく。オレは、まさか直接、攻撃をされるとは思っていなかったので、驚いた。オレが唖然としているうちに、女の人達に囲まれてしまった。1、2、3、4、………ダメだ、数えきれない。それにしても……これはまずい。のうのうとついてきた己を呪った。
「最近随分と調子に乗っているんじゃない?」
「そんな、つもりは……。」
「じゃあ私達を押しのけて、一緒にマルス様とアイク様とお昼を食べているのはどういうこと?」
「それは、向こうが勝手に、」
「それに、時折一緒に帰っているのを見るわ!」
「この前、マルス様と喫茶店に入って行ったわよ!」
ダメだ……この人達、ヒートアップしてて、聞く耳持たない……。
「大体、同じ剣道部のロイならともかく、全く別の部活で、学年も違うっていうのに、どうしてあなたがマルス様やアイク様といられるの?」
それはこっちが聞きたい!と声を大にして言えたらどんなにいいことか。だが……きっとそれは逆効果。この人達の気のすむまで言ってもらった方がよさそうだ。……だが、それは甘い考えだった。
「何も言う気はなさそうね。」
言える状況じゃないでしょう!とは言えず、じっと耐える。
「もういいわ。やっちゃいましょう。」
危険信号が鳴り響く。まずい。この人達、言葉の暴力で終わらせる気はないんだ……っ!!その時だった。
「ここにいたの、リンク君。」
第三者の声だった。声の主を確認する前に女の人達が反応する。
「マルス様!」
この人のどこがそんなにいいかなぁ……なんて、遠くで思いながら、一方で、一番来てほしくない人が来てしまった、と思った。
「で、何をやるって?」
さっと女の人達が青ざめた。一方、マルス先輩は、いつもの涼しいスマイルだ。
「僕、前にも言ったよね?僕のお気に入りの子に手を出したら、キライになるよって。」
途端に、女の人達は嘆いたり、許しを請い始めたりした。
「いやー!」
「マルス様ー!嫌いにならないで!」
「ごめんなさーい!」
オレは渋い顔をしながら、それを見つめた後、マルス先輩を睨みつけた。もとはと言えば、マルス先輩のせい。それを、また助長するようなことを彼は言ってのけたのだ。が、マルス先輩は、オレが睨んでいるにも関わらず、それでもニコニコとオレを見た。
「さぁ、リンク君。行こうか。」
マルス先輩は歩き出す。オレは躊躇した。今、ここでついて行けば、オレはマルス先輩の「お気に入りの子」で、それを受け入れたことにならないか?少し歩いて、マルス先輩はオレがついて行っていないのに気付いたらしい。立ち止まって振り返る。
「ほら、はやく。」
そう言われて、それも選択権がないのだと知り、渋々歩き出す。女の人達からの痛い視線を背中に感じながら。
校舎内まで戻って、ようやくマルス先輩が足を止めた。
「僕、何か君の気に障ること言ったかな。」
「……。どうしてあんなややこしいこと言ったんですか。」
「ややこしいこと?」
「……お気に入りの子。」
「あぁ、あれか。事実だよ?それに、そう言ってしまった方が、彼女達も手出ししない。ところで大丈夫だった?女性って、本気になるとやることエグいから。」
「……大丈夫です。……助けてくれて、ありがとうございました。」
何故か驚いたマルス先輩をおいて、オレは教室に駆け戻った。
教室でひらいたお弁当は、やっぱりというかなんというか、ぐちゃぐちゃになっていた。ため息を吐きながら、それを食す。食べ終えた頃にロイがやって来た。
「よぉ。今日は大変だったんだってなー。」
「ロイ……他人事だと思って……。」
「そんなことねぇよ。俺もあのとりまきには苦労したんだ。マルス先輩が助けてくれたけど。あ、そのマルス先輩から伝言。明日は寄り道せずに真っ直ぐ屋上まで来いってさ。」
「……。そう。分かりましたって伝えといて。」
すると、ロイが心底心配そうな顔で、オレを覗き込んだ。
「お前、大丈夫か?」
「……何が?」
オレは疑問符を飛ばして、ロイを見た。すると、ロイは首をぶんぶんと横に振った。
「いや、なんでもない。じゃ、俺、行くな。」
「うん、また。」
「おう!」
ロイは教室を出て行った。オレはそれを物憂げに見つめた。
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ロイだけでなく、マルス先輩やアイク先輩らとも昼食を共にするようになって早一ヶ月。今日もいつものように屋上へ向かおうとしていたオレは、見知らぬ女の人に声をかけられた。チラリとスリッパを確認する。高校3年生だ。
「オレ、ですか?」
見たこともない上級生に呼び止められたことに、内心戸惑いながら問う。すると、その上級生は腰に手を当て、
「そうよ!今、時間はあるかしら?」
と有無を言わさぬ口調で言った。……別に急いで行く必要もないし、むしろ未だにあの場に慣れないオレにとっては好都合だった。
「大丈夫ですけど……何か?」
「来なさい。」
オレの質問には答えずに、その上級生はそれだけ言うと、さっさと歩きだしてしまった。こうなればもう、ついて行くしかない。仕方なくオレは、歩き出した。
連れてこられたのは体育館裏だった。たくさん女の人がいる。……嫌な予感がした。
「あの、オレ、やっぱり用事を思い出したので、」
身の危険を感じ、ここから逃げようと試みる。
「マルス様やアイク様のところに行くこと、かしら?」
が、オレの言うのを遮って、さっきの上級生が嫌味な笑みを浮かべて言った。この人達、マルス先輩やアイク先輩のとりまきなんだ!その時、腹部に鈍い痛みを感じた。オレを連れて来た上級生が蹴とばしてきたのだ。思わずしりもちをつく。オレは、まさか直接、攻撃をされるとは思っていなかったので、驚いた。オレが唖然としているうちに、女の人達に囲まれてしまった。1、2、3、4、………ダメだ、数えきれない。それにしても……これはまずい。のうのうとついてきた己を呪った。
「最近随分と調子に乗っているんじゃない?」
「そんな、つもりは……。」
「じゃあ私達を押しのけて、一緒にマルス様とアイク様とお昼を食べているのはどういうこと?」
「それは、向こうが勝手に、」
「それに、時折一緒に帰っているのを見るわ!」
「この前、マルス様と喫茶店に入って行ったわよ!」
ダメだ……この人達、ヒートアップしてて、聞く耳持たない……。
「大体、同じ剣道部のロイならともかく、全く別の部活で、学年も違うっていうのに、どうしてあなたがマルス様やアイク様といられるの?」
それはこっちが聞きたい!と声を大にして言えたらどんなにいいことか。だが……きっとそれは逆効果。この人達の気のすむまで言ってもらった方がよさそうだ。……だが、それは甘い考えだった。
「何も言う気はなさそうね。」
言える状況じゃないでしょう!とは言えず、じっと耐える。
「もういいわ。やっちゃいましょう。」
危険信号が鳴り響く。まずい。この人達、言葉の暴力で終わらせる気はないんだ……っ!!その時だった。
「ここにいたの、リンク君。」
第三者の声だった。声の主を確認する前に女の人達が反応する。
「マルス様!」
この人のどこがそんなにいいかなぁ……なんて、遠くで思いながら、一方で、一番来てほしくない人が来てしまった、と思った。
「で、何をやるって?」
さっと女の人達が青ざめた。一方、マルス先輩は、いつもの涼しいスマイルだ。
「僕、前にも言ったよね?僕のお気に入りの子に手を出したら、キライになるよって。」
途端に、女の人達は嘆いたり、許しを請い始めたりした。
「いやー!」
「マルス様ー!嫌いにならないで!」
「ごめんなさーい!」
オレは渋い顔をしながら、それを見つめた後、マルス先輩を睨みつけた。もとはと言えば、マルス先輩のせい。それを、また助長するようなことを彼は言ってのけたのだ。が、マルス先輩は、オレが睨んでいるにも関わらず、それでもニコニコとオレを見た。
「さぁ、リンク君。行こうか。」
マルス先輩は歩き出す。オレは躊躇した。今、ここでついて行けば、オレはマルス先輩の「お気に入りの子」で、それを受け入れたことにならないか?少し歩いて、マルス先輩はオレがついて行っていないのに気付いたらしい。立ち止まって振り返る。
「ほら、はやく。」
そう言われて、それも選択権がないのだと知り、渋々歩き出す。女の人達からの痛い視線を背中に感じながら。
校舎内まで戻って、ようやくマルス先輩が足を止めた。
「僕、何か君の気に障ること言ったかな。」
「……。どうしてあんなややこしいこと言ったんですか。」
「ややこしいこと?」
「……お気に入りの子。」
「あぁ、あれか。事実だよ?それに、そう言ってしまった方が、彼女達も手出ししない。ところで大丈夫だった?女性って、本気になるとやることエグいから。」
「……大丈夫です。……助けてくれて、ありがとうございました。」
何故か驚いたマルス先輩をおいて、オレは教室に駆け戻った。
教室でひらいたお弁当は、やっぱりというかなんというか、ぐちゃぐちゃになっていた。ため息を吐きながら、それを食す。食べ終えた頃にロイがやって来た。
「よぉ。今日は大変だったんだってなー。」
「ロイ……他人事だと思って……。」
「そんなことねぇよ。俺もあのとりまきには苦労したんだ。マルス先輩が助けてくれたけど。あ、そのマルス先輩から伝言。明日は寄り道せずに真っ直ぐ屋上まで来いってさ。」
「……。そう。分かりましたって伝えといて。」
すると、ロイが心底心配そうな顔で、オレを覗き込んだ。
「お前、大丈夫か?」
「……何が?」
オレは疑問符を飛ばして、ロイを見た。すると、ロイは首をぶんぶんと横に振った。
「いや、なんでもない。じゃ、俺、行くな。」
「うん、また。」
「おう!」
ロイは教室を出て行った。オレはそれを物憂げに見つめた。
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