短編の短編
『想いのペンダント』の後日談です。
―――――――――――――
最近、リンクがすごく素っ気ない。……こんなことなら、意地を張ってないで僕も助けに行けばよかった。はぁ。……………。
最近、レッドの様子がおかしい。……なんか、オレのせいな気がするけど……。でも……最悪の場合を考えると、近づくにも近づけないし……。
あれから、二人の間には大きな溝ができてしまった。リンクが距離をおいてしまったのは仕方ないとする。その点に関しては、他のメンバーは諦めていた。しかし……あれだけ仲のよかったトレーナーとリンクがあの様子じゃあ、調子狂う。
これが全メンバー(リンクとトレーナーを除く)の共通認識だった。あまり干渉することではないが、と思いながらもとうとう行動をおこす。
トレーナーはバルコニーから外を眺めていた。いつもならリンクがいるのだが、この日は見当たらなかった。リンクが今いるであろう森の方を見やる。
“僕の意気地なし……。”
トレーナーはため息を吐いた。その時だった。
「よぉ、トレーナー。」
彼に声をかける者がいた。トレーナーが振り向くと、そこにはマリオが立っていた。
「あぁ、マリオ。何?」
「ん?まぁ……特に用事はないんだけどさ。最近元気ないだろ。どうしたんだ?」
“理由なんて明白だけどな。”
マリオはそれとなく問いかけてみる。すると、トレーナーは狐につままれたような顔をした。
「………僕、そんな風に見えてた?」
“気付いてなかったのかお前は!!”
口まで出かかった言葉をマリオは何とか抑え込み、苦笑いを浮かべて頷いて見せた。
「そっか……最近疲れてたのかな。僕はなんともないよ。心配かけちゃったみたいで……ごめんね。」
トレーナーは弱々しく笑うと行ってしまった。
「………いやぁ~これは先が長そうだな………。」
何の結果も出せなかった己に、マリオはため息をついた。
「ここにいたか。探したぞ。」
迷いの森の一番奥。リンクはそこで剣の素振りをやっていた。フォックスが声をかけると、リンクは素振りを止めた。
「……あんまり近づかないで。まだ時々、体が勝手に動いてしまいそうになるんだ。」
「お前なぁ……。」
フォックスはリンクの忠告を無視し、リンクの側に歩み寄った。そして肩に手を置く。ビクリとリンクの身体が震えた。
「いつまで臆病になっているんだよ。このままだと先に進めないぞ。」
リンクは俯いた。
「分かってる。だけど、もし何かあったらと思うと……」
「リンク!」
フォックスは突然大きな声でリンクを呼んだ。振り返らせて、正面から向き合う。
「スネークの情報によるとな、薬はもうとっくに切れてていい頃なんだよ。それに、お前が突然おかしくなっても、理解できて対応可能な仲間ばかりだ。それなのにお前は拒絶している。……何が言いたいか分かるか?」
リンクはそっと首を横に振った。
「つまり、お前は弱腰になっているんだよ。そして俺達を信頼していない。」
「そんなことない!」
フォックスの指摘に、リンクは声を荒げた。イライラと持っていた剣を柄に戻す。
「そんなことない。オレはみんなのこと信頼している。……ただ、驚いたり傷ついたりした姿を見たくないだけ。」
「それが信頼してないって言ってるんだ。」
リンクは唇を噛みしめた。そして無言で歩き出す。
「待て、リンク!」
フォックスが呼び止める。リンクはチラリとフォックスを見た。
「しばらく考えさせて。」
そしてそのまま行ってしまった。
「……その行為の方が、人にダメージを与えているんだぞ……。」
フォックスのつぶやきは、もうリンクには届かない。
マルスはトレーナーと向き合っていた。トレーナーは何故このような状態になったのか上手く思い出せなかった。それくらい今、動揺していた。
「マルス……今、何て……。」
「君はリンクと一緒にいたい。だけど彼が近づけてくれないから寂しいと思っている。そう言ったのだけど……何か違うかい?」
マルスはマリオが見事に撃沈したのを目撃していた。だから、直球を投げることにした。だが、その事実を突き付けられて、トレーナーは狼狽した。まだ、それを受け止める心の準備ができていなかったのだ。そして、目から水が流れおちてきた。
「マル、ス……。なんで、そんなこと、言うの……?」
“ずっと心の奥底に沈めてたのに。こうも簡単に崩されるなんて……。”
涙を流していることさえ気づかず、トレーナーは問うた。
「その様子を見ると図星のようだね。でも大丈夫。リンクは君を嫌いになったわけじゃないよ。」
「じゃあどうして!どうしてリンクはっ!!」
トレーナーは叫んだ。へなへなと崩れ落ち、顔を覆った。
「どうして……。」
マルスはトレーナーの側にしゃがみ、頭をなでた。
「彼はバカだから。気付いてないんだよ、避けていることが人を傷つけているって。彼は、人を避けることでみんなを守ろうとしているんだ。」
トレーナーはマルスを見た。
「僕らを守る……?そんなの、全然守ってないじゃないかっ!!」
尚もトレーナーを撫でながらマルスは頷いた。
「その通り。だけど、それを僕に言ってもらっても困るな。」
トレーナーは目をパチクリさせた。
「それってつまり……僕に言えってこと?」
マルスは再び頷いた。
「僕なんかが言っても……。」
「君だからこそできること。このままだと彼にとっても悪影響だしね。じゃ、頑張って。」
マルスはその場を後にした。
「僕、が、リンクを変える……?できるかな……いや、やるしかない。」
その後、トレーナーはリンクの部屋に行った。しかし留守だったので、部屋の前で待つことにした。そこにいて何時間経っただろうか。帰ってこないなぁと思っていると、緑が見えた。帰ってきた!と思った矢先。リンクはトレーナーを見つけると踵を返した。
「リンク!待って!!」
トレーナーは慌てて後を追う。が、足の速さは歴然だった。玄関を出て、森へ向かう小道を走る。振り切られる!そう思ったトレーナーは叫んだ。
「リンク!そんなに僕のこと、嫌いになったの!?」
リンクはとうとう足を止めた。
「違う!」
「じゃあ!ハァハァ……どうしてっ!!ハァ……どう、して、逃げるの!?一緒、に、いてくれないの!?」
息もとぎれとぎれにトレーナーは叫んだ。そして、疲れ切った足を叱責しながらリンクに近づいていく。リンクは思わず後ずさった。
「逃げないでよっ!僕は!ずっとリンクと話したかった!」
リンクは困ったように視線を逸らした。ようやくトレーナーはリンクに追いつき、手を掴んだ。
「やっと、捕まえた……。」
「レッド……オレ、何するか分からないよ。」
「知ってる……この会場の人はみんな知ってる……。だけど、そうやって逃げられるのは嫌なんだ。」
リンクはハッと目を見開いた。
「リンクが攻撃的になってしまっても、誰もリンクを嫌がらないから。お願い。逃げないで。」
信頼していない、というフォックスの言葉が脳裏をよぎる。オレ、は……。
「リンクはみんなを守ってるつもりかもしれないけど。僕からしたらそんなことない。お願い、リンク。僕たちから逃げないで。守るつもりなら、一緒にいて。僕にとってはそれが大事だから。」
みんなを守っていたつもりが、自分を守っていただけなんだ。そして、それがレッドを傷つけていた……。
「レッド、オレ……」
「いい。何も言わないでいいよ……。大丈夫、僕らは強いから。さぁ、戻ろう?」
リンクはにっこり笑って頷いた。大丈夫、こんなにも頼れる仲間が、連れ戻してくれる仲間がいるんだから。
戻ってきた二人が仲良く話しているのを見たメンバーは、ほっと胸を撫で下ろした。そして、次は自分がリンクとの溝を埋める番だと思った。
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最近、リンクがすごく素っ気ない。……こんなことなら、意地を張ってないで僕も助けに行けばよかった。はぁ。……………。
最近、レッドの様子がおかしい。……なんか、オレのせいな気がするけど……。でも……最悪の場合を考えると、近づくにも近づけないし……。
あれから、二人の間には大きな溝ができてしまった。リンクが距離をおいてしまったのは仕方ないとする。その点に関しては、他のメンバーは諦めていた。しかし……あれだけ仲のよかったトレーナーとリンクがあの様子じゃあ、調子狂う。
これが全メンバー(リンクとトレーナーを除く)の共通認識だった。あまり干渉することではないが、と思いながらもとうとう行動をおこす。
トレーナーはバルコニーから外を眺めていた。いつもならリンクがいるのだが、この日は見当たらなかった。リンクが今いるであろう森の方を見やる。
“僕の意気地なし……。”
トレーナーはため息を吐いた。その時だった。
「よぉ、トレーナー。」
彼に声をかける者がいた。トレーナーが振り向くと、そこにはマリオが立っていた。
「あぁ、マリオ。何?」
「ん?まぁ……特に用事はないんだけどさ。最近元気ないだろ。どうしたんだ?」
“理由なんて明白だけどな。”
マリオはそれとなく問いかけてみる。すると、トレーナーは狐につままれたような顔をした。
「………僕、そんな風に見えてた?」
“気付いてなかったのかお前は!!”
口まで出かかった言葉をマリオは何とか抑え込み、苦笑いを浮かべて頷いて見せた。
「そっか……最近疲れてたのかな。僕はなんともないよ。心配かけちゃったみたいで……ごめんね。」
トレーナーは弱々しく笑うと行ってしまった。
「………いやぁ~これは先が長そうだな………。」
何の結果も出せなかった己に、マリオはため息をついた。
「ここにいたか。探したぞ。」
迷いの森の一番奥。リンクはそこで剣の素振りをやっていた。フォックスが声をかけると、リンクは素振りを止めた。
「……あんまり近づかないで。まだ時々、体が勝手に動いてしまいそうになるんだ。」
「お前なぁ……。」
フォックスはリンクの忠告を無視し、リンクの側に歩み寄った。そして肩に手を置く。ビクリとリンクの身体が震えた。
「いつまで臆病になっているんだよ。このままだと先に進めないぞ。」
リンクは俯いた。
「分かってる。だけど、もし何かあったらと思うと……」
「リンク!」
フォックスは突然大きな声でリンクを呼んだ。振り返らせて、正面から向き合う。
「スネークの情報によるとな、薬はもうとっくに切れてていい頃なんだよ。それに、お前が突然おかしくなっても、理解できて対応可能な仲間ばかりだ。それなのにお前は拒絶している。……何が言いたいか分かるか?」
リンクはそっと首を横に振った。
「つまり、お前は弱腰になっているんだよ。そして俺達を信頼していない。」
「そんなことない!」
フォックスの指摘に、リンクは声を荒げた。イライラと持っていた剣を柄に戻す。
「そんなことない。オレはみんなのこと信頼している。……ただ、驚いたり傷ついたりした姿を見たくないだけ。」
「それが信頼してないって言ってるんだ。」
リンクは唇を噛みしめた。そして無言で歩き出す。
「待て、リンク!」
フォックスが呼び止める。リンクはチラリとフォックスを見た。
「しばらく考えさせて。」
そしてそのまま行ってしまった。
「……その行為の方が、人にダメージを与えているんだぞ……。」
フォックスのつぶやきは、もうリンクには届かない。
マルスはトレーナーと向き合っていた。トレーナーは何故このような状態になったのか上手く思い出せなかった。それくらい今、動揺していた。
「マルス……今、何て……。」
「君はリンクと一緒にいたい。だけど彼が近づけてくれないから寂しいと思っている。そう言ったのだけど……何か違うかい?」
マルスはマリオが見事に撃沈したのを目撃していた。だから、直球を投げることにした。だが、その事実を突き付けられて、トレーナーは狼狽した。まだ、それを受け止める心の準備ができていなかったのだ。そして、目から水が流れおちてきた。
「マル、ス……。なんで、そんなこと、言うの……?」
“ずっと心の奥底に沈めてたのに。こうも簡単に崩されるなんて……。”
涙を流していることさえ気づかず、トレーナーは問うた。
「その様子を見ると図星のようだね。でも大丈夫。リンクは君を嫌いになったわけじゃないよ。」
「じゃあどうして!どうしてリンクはっ!!」
トレーナーは叫んだ。へなへなと崩れ落ち、顔を覆った。
「どうして……。」
マルスはトレーナーの側にしゃがみ、頭をなでた。
「彼はバカだから。気付いてないんだよ、避けていることが人を傷つけているって。彼は、人を避けることでみんなを守ろうとしているんだ。」
トレーナーはマルスを見た。
「僕らを守る……?そんなの、全然守ってないじゃないかっ!!」
尚もトレーナーを撫でながらマルスは頷いた。
「その通り。だけど、それを僕に言ってもらっても困るな。」
トレーナーは目をパチクリさせた。
「それってつまり……僕に言えってこと?」
マルスは再び頷いた。
「僕なんかが言っても……。」
「君だからこそできること。このままだと彼にとっても悪影響だしね。じゃ、頑張って。」
マルスはその場を後にした。
「僕、が、リンクを変える……?できるかな……いや、やるしかない。」
その後、トレーナーはリンクの部屋に行った。しかし留守だったので、部屋の前で待つことにした。そこにいて何時間経っただろうか。帰ってこないなぁと思っていると、緑が見えた。帰ってきた!と思った矢先。リンクはトレーナーを見つけると踵を返した。
「リンク!待って!!」
トレーナーは慌てて後を追う。が、足の速さは歴然だった。玄関を出て、森へ向かう小道を走る。振り切られる!そう思ったトレーナーは叫んだ。
「リンク!そんなに僕のこと、嫌いになったの!?」
リンクはとうとう足を止めた。
「違う!」
「じゃあ!ハァハァ……どうしてっ!!ハァ……どう、して、逃げるの!?一緒、に、いてくれないの!?」
息もとぎれとぎれにトレーナーは叫んだ。そして、疲れ切った足を叱責しながらリンクに近づいていく。リンクは思わず後ずさった。
「逃げないでよっ!僕は!ずっとリンクと話したかった!」
リンクは困ったように視線を逸らした。ようやくトレーナーはリンクに追いつき、手を掴んだ。
「やっと、捕まえた……。」
「レッド……オレ、何するか分からないよ。」
「知ってる……この会場の人はみんな知ってる……。だけど、そうやって逃げられるのは嫌なんだ。」
リンクはハッと目を見開いた。
「リンクが攻撃的になってしまっても、誰もリンクを嫌がらないから。お願い。逃げないで。」
信頼していない、というフォックスの言葉が脳裏をよぎる。オレ、は……。
「リンクはみんなを守ってるつもりかもしれないけど。僕からしたらそんなことない。お願い、リンク。僕たちから逃げないで。守るつもりなら、一緒にいて。僕にとってはそれが大事だから。」
みんなを守っていたつもりが、自分を守っていただけなんだ。そして、それがレッドを傷つけていた……。
「レッド、オレ……」
「いい。何も言わないでいいよ……。大丈夫、僕らは強いから。さぁ、戻ろう?」
リンクはにっこり笑って頷いた。大丈夫、こんなにも頼れる仲間が、連れ戻してくれる仲間がいるんだから。
戻ってきた二人が仲良く話しているのを見たメンバーは、ほっと胸を撫で下ろした。そして、次は自分がリンクとの溝を埋める番だと思った。
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