短編の短編

メインはリザードン。
ゼニガメとフシギソウが山を下りると、何故レッドとリザードンがいたのか?
詳しくみてみましょう!
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ゼニガメを適当にあしらい、部屋を出たリザードン。少し歩くと、ルカリオに出会った。

「珍しいな。何をしている?」

リザードンを見つけたルカリオは、本当に不思議そうに首を傾げていた。

“…確かに普段は部屋で留守番をしているが、そんなに不思議がることはないだろう………。”

リザードンは内心ため息をついた。が、そんなことはおくびにも出さずに告げた。

「レッドを探している。知らないか?」

そして、主人の居場所を尋ねた。ルカリオは一瞬思案したが、

「彼なら、」

と、バルコニーの方を指差し、

「あちらにいた。」

と結んだ。リザードンは指差された方向を確認して頷いた。そして、

「礼を言う。」

そう言い残し、そちらに向かった。





バルコニーにたどり着くと、ルカリオの言った通り、トレーナー、いや、レッドはそこにいた。なんだか楽しそうに手すりから身を乗り出して空を見上げている。

「………レッド。」

「ん?」

リザードンが声をかけると、レッドは振り返った。

「リザードン。」

「なんだか楽しそうだな。」

ついリザードンはそんなことをこぼした。すると、レッドは笑みを深めた。

「フフッ、分かる?今日はね、いいことがある気がするんだ。」

リザードンは首を傾げた。だが、レッドはやはり笑ったままだった。

「そんな予感がするんだってば。ところで、どうしたの?」

なんてことを言いながら、レッドは用件を聞いた。それで本来の目的を思い出したリザードンは、疑問を脇に置いておき、淡々と答えた。

「今から下見に行かないか?」

「えっ?」

すると、レッドはポカンとリザードンを見た。が、すぐに言わんとすることを理解したらしい。納得した表情で、あぁ、と呟いた。

「今度の探検のことだね。でも、今から?うーん……ちょっと遅いと思うんだけど。」

彼は暫く考え込んだが、無理だと判断したようだった。しかし、リザードンは説得を試みた。

「見に行くだけだ。それに、うるさい奴もいない。」

レッドは再び唖然としてリザードンを見つめた。が、今回も理解に至るのは早かった。

「二人で、ってことか。……そうだね、なかなか行けないし。……でも」

リザードンの意図することは分かったが、レッドはやはり躊躇した。リザードンはもう一押しする。

「フシギソウがいる。心配ない。」

レッドはチラリとリザードンを盗み見た。リザードンには変わった様子はない。が、

“これは……何かあるかな……。最近はリザードンにあまり構ってあげられなかったし。”

一人、少し間違った方向に納得すると、レッドは満面の笑みを浮かべた。

「そっか。じゃ、お願い。」

リザードンは頷くと、身を屈めた。レッドが乗ったことを確認すると、空高く飛び立った。



ゼニガメが街に向かって飛び出したのは、丁度その頃。





その後、レッドとリザードンは遠くまで行き、次の行き先を決めた。その帰り道だった。下に流れる風景を眺めていたトレーナーは眉をひそめた。

「………?ねぇ、リザードン。この前登った山だよね、あれ。」

あれ、と言われた山の方を見る。その山を確認した時、見たくないものを見てしまい、顔をしかめた。もちろんレッドにそれは見えていない。リザードンは見なかったことにし、質問に答えた。

「…あぁ。」

「……今、ゼニガメとフシギソウが入っていった気がするんだけど……。」

リザードンはこっそりとため息をついた。

“俺にもそう見えた…。何をしているんだ、フシギソウのやつ……。”

「気のせいだろう。」

リザードンは努めて冷静に返した。しかし、レッドはそれで引き下がらなかった。

「うーん……そうだといいけど……気になるからさ、一度降りてよ。」

リザードンはチラリとレッドを見た。

「……あいつらは会場にいるだろう。遅いと文句を」

「リザードン。」

「…夕食にも遅れ」

「降りて!!」

とうとうレッドが怒鳴った。

「…………………わかった。」

さすがにリザードンもこれ以上逆らえない。仕方なく、件の山に向かう。気休めに、レッドが訝しまない程度に速度を落とした。二人は山のふもとに着陸した。レッドがリザードンから飛び降りた。

「………どうするんだ?」

リザードンはもう一度引き止めにかかった。

「どうするって、行くに決まってるでしょ?」

“どうしたんだろう…今日のリザードン、やっぱりなんか変だ。”

レッドの疑問に気付かず、リザードンはつれて帰ろうと言葉を並べる。

「あいつらが俺らなしで山に登ったりすると思うか?」

「…ゼニガメならありえるよ。」

レッドは腕を組んだ。

「だがフシギソウがついている。」

「ゼニガメは止まらない。」

「第一、さっきレッドが見たのが二人だったかどうかも怪しい。」

レッドは眉をひそめた。

「ここまで来たんだ、見に行った方が早いって。」

「しかし、」

埒があかないと思ったのだろう。レッドは無言で歩き出した。が、ゼニガメの思惑を知るリザードンとしては、みすみす行かせる訳にはいかない。あわててレッドの前方に回り込み、道を塞いだ。

「……何さ。」

レッドはずいぶん機嫌が悪くなっていた。

「…フシギソウなしで入るのは危険だ。」

リザードンは苦し紛れに答えた。が、全く効果はなかった。

「君がいるじゃないか!!」

イライラとレッドが吐き捨てた。それから暫く押し問答が続く。

“何をしている……!!早く戻ってこんか……!!”

レッドの言っていることは正しい。そのため、はじめからリザードンには不利であり、そろそろ限界だった。その時だった。

「レッドー!!!!」

一際大きな声が辺りに響く。山の入り口の方を見てみると、ゼニガメが大きく手を振っていた。その後ろに、フシギソウが苦笑して佇んでいる。レッドが何やら喚いていたが、リザードンは気にならなかった。疲れたように、認める言葉を吐いておく。嬉々として、ゼニガメが花を渡している。それを見ながら、やれやれと深いため息をついた。

「お疲れさま。」

気付けば、フシギソウが隣にいた。

「……何がだ。それはお前の方だろう。まさか山登りをしていたとは思わなかったが。」

リザードンはぶっきらぼうに返した。が、寛大なフシギソウは慣れたように答えた。

「思いとどまらせようとしたんだけどね。一度やる気になると止まらないから。……どうしてここにいたの?」

リザードンは言葉に詰まった。一瞬レッドとゼニガメに視線を向ける。

「………邪魔するつもりはなかった。」

ややあって、リザードンはそれだけ言った。すると、フシギソウはクスリと笑った。

「本当はレッドを遠ざけてくれてたんだよね。ありがとう。」

リザードンはふいとそっぽを向いた。やがて、レッドの呼ぶ声が聞こえた。






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