これが僕らのありがとう

「ポポのバァーカ!!もう知らない!!」

ナナが叫んで出て行った。ナナが出て行ったところで、ようやく僕は一息ついた。今の今まで、口喧嘩をしていた。もちろん今出て行ったナナと。原因なんてしらない。もう忘れた。でもナナが悪い。僕は窓から外を眺めた。ピカチュウとピチューが走り回っている。そこへネスとリュカがやってきた。何か話している。僕は窓を開けた。

「おーい!何してるのー!?」

僕が叫ぶとみんながこっちを向いた。手を振ると、ネスとリュカが振り返してくれた。

「今から街に行くんだ!おつかい!!」

おつかい?買い出しには誰かが行ってるはずなのに…。ま、いっか。

「僕も行っていいー!?」

「いいよー!早く来てね!!」

僕は急いで部屋を出ると、みんなのもとへ行った。僕が着くと、ピカチュウが首を傾げた。

「さっきも一人でいたみたいだけど…ナナはどうしたの?」

イラッとした。

「ナナ?あんなやつ、知らない。」

僕がそっけなく言うと、みんなは驚いた顔をした。…ピチューを除いて。

「喧嘩したの?」

どこか悲しそうにピチューは言った。

「…違うよ。喧嘩なんかじゃない。」

僕は素直に認めるのが癪でそう言った。そして、できるだけ明るい声で続ける。

「おつかい頼まれてるんでしょ?早く行こう!」

そして僕達は街へ行った。

街に行ったはいいが、なんだか素直に楽しめなかった。話していても、僕が言った後に、ナナだったらこう言う、とか、かわいい雑貨を見つけては、ナナは多分欲しいと言ってしばらく動かないだろうなとか…気づけば僕は、ナナのことばかり考えていた。買ってもいいと言われていたらしいクレープを食べながら、僕達は噴水の前にいた。リュカやピチューが食べ終えて、噴水に夢中になっている。…食べながら、と言ったけれど、思わずナナの好きな味を買ってしまった僕は、クレープに口をつけられないでいた。

「あのさ、ポポ。」

突然真剣な声をかけられて、僕はビクッとした。声の方を見ると、ネスとピカチュウが心配そうに僕を見ていた。

「な、何?」

どぎまぎしながら答える。

「気づいていると思うけど、君、さっきからナナのことばっかり考えてるよ。」

ネスは読んでしまったようだ。気まずくなって視線を外した。

「余計なお世話かもしれないけど。ポポ、沈んでる。そのクレープ持って、行ってきなよ。」

ピカチュウは僕の視線の先に回り込み、僕の目を見て言った。その目はこう言ってる。…仲直りしてこいと。僕は意を決すると、立ち上がった。

「ごめん、おつかいの途中だけど、」

「ナナのところに行くの!?」

いつの間にか、ピチューとリュカも僕を見ていた。ピチューは期待のこもった目を僕に向けている。僕が頷くと、リュカが言った。

「いってらっしゃい。」

その声を合図に、僕は走りだした。





「ポポのバァーカ!!もう知らない!!」

部屋を飛び出した私は、みんなの部屋に向かった。ホント、ポポってばムカツク!!こうなったら、ポポの悪いところ、言いふらしてやるんだから!!みんなの部屋に入ると、そこではピーチ、ゼルダ、サムスがお茶をしていた。荒々しく入ってきた私に、驚いたようだった。

「ナナ、どうかしたの?」

優しくピーチが聞いてくれた。けど…私の怒りはそれで収まってくれなかった。

「ちょっと聞いてよ!ポポってば最低なの!バカでアホでとんちんかんの分からず屋……!!」

私は思わずイライラと地団駄を踏んだ。

「…ナナ。それじゃ、ポポの何に怒っているのか分からないわ。」

静かにサムスが言った。あれは…苦笑い?

「どうして!!ポポが悪いの!!ポポがぁっ!!」

「…うん、ポポと何かあったんでしょ?何が原因でそんなに怒っているの?」

「それは…、」

それは?あれ?何で私、ポポにこんなに怒っているんだっけ?

「原因はささやかだったため、忘れてしまった、というところでしょうか?」

ゼルダに言われ、急に恥ずかしくなった。うつむいて、頷く。

「まぁ、あれだけ一緒にいれば、そういうこともあるわよ。」

サムスはまだ苦笑いをしている。

「ナナも一緒にお茶しない?ハーブティーなの。飲むと落ち着くかもしれないわ。」

そう言いながらピーチは、すでにお茶が入った状態のカップを少し上げて見せた。ゼルダが私の肩をそっと持ち、

「あちらにどうぞ。」

と言いながら席に座らせてくれた。私はピーチにもらったハーブティーを一口飲んだ。うん、いい匂いだ。味もすっきりしている。私の苛立った心を静めてくれた。

それから、私達は他愛のない会話をしていた。はじめは、楽しく聞いていたし、私も話してたんだけど…途中から、話が頭に入ってこなくなった。ポポは今頃何してるのかなとか、まだポポは怒っているのだろうかとか、考え始めては、ハッとして話に集中しようとする。それを何度か繰り返した頃。

「ナナ。」

突然声がかかった。また話から意識が逸れていたので、ギクリとして声の主を見る。

「何、ゼルダ?」

「無理して、私達のところにいなくていいのですよ?」

「え?」

「あなたの心はここにありません。行きたいところがあるのでしょう?」

ゼルダはとても優しい顔をしている。…が、何を言っているのか、さっぱり分からなかった。

「ゼルダ?何、言って…、」

「あなた、気づいてる?さっきから一言も話してないし、話も聞いていないみたいだし。」

「そ、そう?ごめん、サムス、」

「謝ってほしいのではないわ。私達は、ナナに素直になってほしいの。ゼルダも言っていたでしょう?」

ピーチの言葉で、ゼルダの声がよみがえる。行きたいところがあるのでしょう、か…。私は……。私は目をつむった。そして、意を決すると、立ち上がった。

「私、ポポのところに行ってくる。」

三人は私に笑いかけてくれた。私はみんなの部屋を出た。





僕が部屋を認めた時、
私が部屋の前に立った時、

「ナナ!」

ナナが部屋の前に立っていた。
ポポの声が聞こえた。

どちらからともなく駆け寄り、

「ごめんね。」

その言葉が出たのは同時。

「ナナ、これ、ナナの好きなクレープ。…冷めちゃったけど。」

「おいしそう!!ありがとう!一緒に食べよう?」

「うん!」

二人は仲良く手を繋ぎ、お互いの存在を確認する。

「いつも一緒にいてくれてありがとう。」



僕/私達はいつも一緒。だけどたまには喧嘩だってする。そして離れてみると、とてつもない違和感。離れてみて初めて分かる君のありがたさ。僕/私のパートナーは君しかいない。いつもありがとう!!



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