これが僕らのありがとう

私、ゼルダはお菓子を作っていた。愛を込めて。いつも私を助けてくれる大好きな彼のために。作っている段階から、喜んでくれるであろう彼を思い浮かべて、思わず笑みをこぼす。やがて、焼きあがったお菓子をカゴにつめて、彼を探しにキッチンを出た。


思えば、彼はいつも助けてくれる。困ったことがあれば手を差し伸べてくれるし、悲しみに暮れているとそっと寄り添ってくれる。そんな優しい彼が私は大好きだ。

そう考え事をしながら会場内を探し回るが、なかなか彼は見つからない。彼の部屋にも、彼がよく居るバルコニーにもいない。人に聞くことはしたくない。大好きな彼は、自分の力で見つけたかった。廊下でうーんと考え込んでいると、はたと思い浮かぶことがあった。そうだ、彼の代名詞とも言える場所があるではないか。


愛しの彼―リンクは、私が思った通りの場所、森の中で剣を振っていた。いつも強くあろうとする彼はかっこいい。無茶をして私を心配させることも多々あるけれど。そう思いながら私が近づいていくと、声をかける前に、リンクは私の存在に気付いた。素振りを止め、私に向き直る。

「あれ?ゼルダ?こんなところにどうしたの?」

私は笑ってリンクに駆け寄った。

「あなたのためにお菓子を焼いたの。食べてくれる?」

リンクは顔を輝かせた。

「わぁ、嬉しい。」

私はカゴをリンクに差し出した。リンクはお菓子を一つ取り、頬張った。

「ありがとう、とてもおいしいよ。」

とびっきりの笑顔でリンクは言った。私も微笑んで返す。ううん、リンク。私はその笑みが見たくて作ったの。あなたがそう言ってくれることも、これ以上ない笑みを見せてくれることも分かってた。ずるいわよね、私。でも、私にできることはこれくらいしかないから。いつものお礼を兼ねて、あわよくば、あなたの笑みを見たいと欲張って。


リンク、いつもありがとう!笑っているあなたはとても素敵よ。あなたの笑みを見ていられることが、私の幸せ。叶うことなら、その笑みを、ずっとそばで……。




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