これが僕らのありがとう

リンクは中庭を歩いていた。そこへひゅうと風が吹いてきた。

「あ」

それと同時にリンクの帽子が飛んでしまった。追いかけようと振り向く。すると、ちょうどやってきていたフォックスが、帽子をキャッチした。リンクはフォックスに駆け寄った。

「ごめん、フォックス。」

「お前なぁ……。」

リンクに帽子を渡しながら、フォックスはため息を吐いた。

「何?」

困ったようにリンクが問う。フォックスは再びため息を吐いた。

「そこはありがとうって言うところなんだよ。お前は何も悪いことしてないだろ。」

「え、でも……。」

「でもじゃない。」

ぴしゃりとフォックスは言う。

「…ありがとう。」

リンクは頭をかいた。

「なんか、言いづらいな。」

「何でだよ。」

フォックスは腕組みをした。

「確かにいいことしてもらったけど。もとはといえば、オレのミスで、本来はフォックスのしなくていいことでしょ?手間をかけさせてしまったから……」

「考えすぎだ。」

再び一刀両断されてしまった。

「お前、帽子を拾ったくらいで、余計な手間をかけさせやがって、とか考えるか?」

リンクは勢いよく首を振った。

「だろ?それに、謝罪とお礼、どっちが言われたい?」

「……それはお礼だけど。」

リンクは罰が悪そうに言った。

「ほら。俺だって、他の奴らだって、お礼のが言われたいんだよ。だから、さ。ちょっと後ろめたく感じても、何かされたらお礼を優先させろよ。」

「…そう、だね。ありがとう、フォックス。」

二人はにっこり笑った。




申し訳なさが勝って、ついごめんと言ってしまうことが多いけれど。本当にふさわしい言葉はありがとうのはずなんだよね。ちょっと難しいけれど、頑張ってこの癖は直したいと思う。



.
6/9ページ