想いのペンダント

一行は村を出ると、来た道を戻った。城下町に入り、ハイラル城に侵入する。そして、二手に分かれた。マルス、ピカチュウは、リンクがいると思われる方向に走っていた。

「この先かい?」

「うん!」

マルスが聞くと、ピカチュウは頷いた。無言で先に進む。





それからほんの少し進み、

「うわっ!」

ピカチュウがいきなり止まった。マルスもなんとか止まる。

「この部屋の中!」

「ここにリンクが……。他に人は?」

「いないと思う。」

「よし、じゃあ、僕が入ったらピカチュウはこっそり中に入って僕を援護してほしい。」

「一緒じゃダメなの?」

寂しそうにピカチュウは聞いた。

「うん。リンクしかいないと言っても、彼は操られているらしいからね。2人とも気付かれるのは、まだ早いと思うよ。」

「分かった。」

マルスはピカチュウを撫でると扉を開けた。鍵はかかっていなかった。マルスは中に入る。ピカチュウは隙間から、忍び込んだ。





マルスが入ると、突然リンクの声がした。

「……また来たの?一体何の用?」

リンクは窓の前に立っていた。扉に背を向けている。

“…操られているのは本当だと思ってよさそうだね…。”

リンクは繋がれていなければ、武器も取られていなかった。

「……ガノンドロフ?今度は何をさせる気だ?」

リンクが振り向いた。すると、顔が一瞬で強張った。

「マ…マルス……どうして……。」

リンクは剣を引き抜き、構えた。

「リンク、大丈夫かい?」

マルスは表情を曇らせながら、剣を抜く。

「…見ての通りだよ…マルス、お願いだ……ここから……………去れ。」

リンクの声は最後、とても冷たい声になった。そして、マルスに襲い掛かる。

“感情は残ったまま操られているのか……酷なことをするね、ガノンドロフ。”

マルスはリンクの攻撃を剣で受ける。キン、キン、キン、キン………シャキン!リンクとマルスが剣を挟んで見つめあった。

「リンク。僕はどうしたらいいのかな?」

「知ら…な…い。……に…げ…て…。」

リンクの唇が動いただけだった。しかし、マルスは理解した。

「知るわけない、か。とりあえず、君の動きを封じさせてもらうよ。」

「それよりも……」

また唇だけが動く。マルスがピカチュウに合図しようとしたとき、リンクがマルスを振り切った。そして、そのままの勢いでマルスに攻撃する。

“……しまった!”

マルスは構えの体制をとった。が、辺りが一瞬真っ白になる。再び見えるようになったとき、リンクは縛られていた。

「ハァ…ハァ……助…かった……。」

今度は声も出た。マルスはリンクの後ろに立っている青年に気付く。

「シーク……。」

青年―シークはリンクをマルスに預かると変身した。

「リンク……ごめんなさい。私………。」

「? どう……して、ゼルダ…が、あや、まる、の?悪、いのは……オレ…だか…ら。」

リンクは咳き込んだ。

「ちが………」

「ペン…ダント……フォックス……かな?つけて…くれ…たん、だね。ありが…とう。……フォッ…クス…は?」

「彼もここに来ているよ。…君のために。」

「え……?オレ…あの、とき……フォックス…を……怪我…は?それ……に、マルス……大…丈…夫…?」

「僕は心配いらないよ。ゼルダのおかげでね。フォックスも……大丈夫だと思うよ。……ところでゼルダ。どうしたらいいか、分かるかい?」

ピカチュウが出てきかけた。しかし、マルスが来ないように合図した。

「ごめんなさい。分かりません。リンク、どうしてあなたは?」

「何…か、の、薬……飲ま…され…た。」

「薬!?」

マルスとゼルダの声がはもった。そのとき、リンクがビクッと反応した。

「! 2人…とも…隠れて…ガ……しゅ……主人が来る…………。」

リンクは、主人と言った瞬間、うなだれた。

「……分かった。…ゼルダ!」

ゼルダは頷くとシークに変身し、リンクの束縛を解くと2人は隠れた。

2人が隠れて間もなく、ガノンドロフが部屋に入ってきた。

「珍しいな、貴様が座り込んでいるのを見るのは初めてのような気がするが?」

「今度は何だ……!」

リンクは歯ぎしりした。

「……ザコの片付けをしてもらう……。」

ガノンドロフは冷たく言い放った。リンクは血の気がひいた。が、それはリンクの考えたこととは違った。しかし、それでも最悪の事態には変わりなかった。ガノンドロフはフォックスを掲げて見せたのだ。

「…フォックス…!」

「そうだ、そういえばこの狐、お前の仲間だったな。ハッ、残念だったな。仲間を殺すことになるとは。」

ガノンドロフがリンクを嘲笑った。マルス、シークは目を見張った。リンクは首を振っている。

「ところで……入り込んだ鼠は、こいつだけじゃなさそうだが?」

リンクは僅かに反応してしまった。

「何か知っているようだな、小僧?」

「知ら…ない…。」

リンクの息が荒くなってきた。

「小僧、お前に選択権はない。何を知っている?言え!」

「………ハァ…ハァ…。」

リンクは目を瞑った。

「マルスと…ゼルダ……2人がこの城にいる………これで満足か!」

「いや。」

ガノンドロフはリンクの襟首を掴み、持ち上げた。

「それで、お前はどうした?」

「戦った。」

リンクの顔が強張った。

「それで?」

「…オレは縛られて動けなくなった。……少し…は…なしを……し………」

「ほう?それで俺には何も言わなかったと?」

リンクを掴む手に力が入る。

「はい………ご……め……ごめんなさい………。」

「フッ。」

ガノンドロフはリンクを投げ捨てた。

「オレが戻ってくるまでにその狐を始末しておけ。」

ガノンドロフは部屋を出ていった。リンクはしばらく転がったまま動かなかった。が、やがて起き上がり、剣に手をやった。

“誰か……オレを止めてくれ!”

リンクはフォックスに斬り掛かっていく。マルス、ピカチュウ、シークが飛び出した。が、間に合いそうにない。剣がフォックスに降りていく。その時、

「…俺も……これで終わりかな。」

フォックスが目を開けた。その一瞬だけリンクに自制がきいた。リンクは剣の先を自分に向ける。剣はリンクの肩に刺さり、血が飛び散った。

「リンク!」

4人が一斉に叫んだ。

「……仲間を殺すぐらいなら………死んだ方がいいよ。」

リンクは剣を抜かないようにしながら言った。

「ダメ!」

ピカチュウは悲痛な声を上げた。マルスはフォックスの元に行き、支えている。

「ピカチュウ……君もいたの………?」

リンクは剣を抜いてしまい、構えた。

「し…ば…れ……。」

声は出なかった。リンクはピカチュウに飛び掛かっていく。が、シークがすぐに反応してリンクを縛った。

「……きつくないか?」

「ハハッ……これぐらいしないと…………。」

リンクは乾いた笑いを漏らした。

「ところで、フォックス。何があったのかな?」

いささか厳しい口調でマルスがフォックスに聞いた。

「俺は……悪い。お前の言う通り、何も考えてなかった。ガノンドロフを見た途端、掛かっていってしまった……。マリオには、止められたんだがな……。俺は10分ともたなかった。リンク……お前はすごいよ………。」

「そんなこと…ないよ。……マリオ、も、来ているんだね……一体、何人で来たの………?……やっぱり、いい……言わ…ない…で………。」

「リンク………。」

シークが呟いた。

「ねぇ…オレのこと、もういいから。あいつ……あの人…ハァ…ハァ……からは逃れられない。オレに止めをさして…逃げて……。」

「何言ってるの!?」

ピカチュウが叫んだ。非常に驚いたようで、耳と尻尾がピンと立っている。

「…酷いことを言うね。大体、僕達が君を置いて逃げると思ったかい?」

「……お…願…い…。」

リンクは懇願した。

「今回は断る。お前が何と言おうと、操られたままだろうと、生きて連れて帰る!」

フォックスの言葉にリンクは首を振った。

「それに…他の人に……会わす顔がないよ………。」

「え!?何で?」

リンクはうつむいた。

「その件に関しては僕がなんとかする。……僕が悪いからね。」

シークが言うと、フォックスはニヤッと笑った。

「そういうことだ、リンク。行くぞ!」

「歩けるかい?」

マルスがリンクに声をかけた。

「…それも、選択の余地はなさそうだね………やってみるよ。」

リンクはなんとかして、立ち上がった。

「解くぞ。」

シークはリンクを縛っている物に手を伸ばした。

「だめ…だ………!」

「………何故だ?」

その問にリンクは答えられなかった。代わりにマルスが答えた。

「リンクは操られている。自制もほとんど利かないようだ。リンクには悪いけど、会場まで我慢してもらうしかないよ。」

「そうか……分かった。」

シークは頷いた。

その時、バン!……………ドン!と部屋の外で大きな物音がした。

「な、何事……?」

ピカチュウが耳をそばだてた。

「……か…れ…だ……。」

リンクはその場に跪いている。

「もう一匹いたか!…小僧!来い!」

「ハァ…ハァ…ハァ…。」

リンクはその時から動かなくなった。

「マリオも危なそうだね………シーク、ピカチュウ、フォックス、リンクを会場まで連れていってくれ。」

状況判断を一瞬でしたマルスが、3人に指示を出した。

「……マルスは?」

心配そうにシークが聞いた。

「僕はマリオを連れて行くよ。……ガノンドロフは倒さずに行くと思う……それでいいかい?」

「あぁ。まずはリンクが先だ。」

「マルス…マリオと2人で平気か?」

フォックスが聞いた。

「あぁ。逃げるだけだから何とか…」

「リンク!」

突然、ピカチュウが大声で叫んだ。その声で3人はリンクを見た。

「!」

3人は絶句した。リンクが拘束を解き、立ち上がって剣を4人に向けていたのだ。

「ハァ…ハァ…失…せ…て…“逃げて”。」

リンクは飛び掛かった。マルスが慌てて応戦する。

「フォックス、ピカチュウ!やっぱり君達はガノンドロフを!」

しかし、急展開の中での指示は忘れなかった。その直後、マリオが部屋の中まで飛ばされてきた。ガノンドロフも入ってくる。

「小僧!俺は来いと言ったはずだ!」

リンクはガノンドロフの声を聞くとビクッとし、マルスを振り切った。

「…すみません…。」

そして、すぐにマルスとの戦いに戻る。

「ピッカァ!」

ピカチュウのでんげき攻撃!

「ハッ!」

フォックスは後ろからガノンドロフを蹴りつけた。

「チッ。」

ガノンドロフはどちらも避け切れず、くらった。少し飛ばされる。

「まだもう一匹いたか。それに狐……始末しておけと言ったはずだが。」

ガノンドロフはリンクを盗み見た。マルスに優勢のようだった。

「ハァ!」

そこにマリオの攻撃がくる。ガノンドロフは再びくらった。

“数が多い……一度引くか。”

「小僧!行くぞ!」

ガノンドロフは扉の向こうに消えた。リンクは一瞬目を瞑るとマルスを突き飛ばした。扉に向かって走りだす。が、

「な!…は、放…せ…。」

リンクは誰かに掴まれた。

「断る。」

シークだった。シークはもがくリンクを押さえ込んだ。

“チッ!”

ガノンドロフはリンクが確実に来れないのを悟ると、城から去った。

「やっぱり、オレ……全然、自制がきかない!」

リンクが大声で叫んだ。

「…ハイラルは、元に戻ったみたいだがな。」

フォックスが静かに告げた。

「どうして分かるんだ?」

マリオの問に、フォックスは窓の方を顎でしゃくった。ピカチュウが窓に駆け寄り、身を乗り出した。

「…きれい……!」

ピカチュウは嬉しそうに尻尾を振った。ハイラルは美しく輝いていた。

“どうしてオレだけ…………!”

リンクの瞳から涙が零れた。

「リンク…私がなんとかするから……泣かないで。」

いつの間にか変身していたゼルダがリンクの耳元で囁いた。リンクの涙をそっと拭う。マリオ、マルス、ピカチュウ、フォックスは2人の様子を静かに見守っていた。やがて、リンクはふっと笑った。そして、すまなさそうに言う。

「……ごめん、オレ……疲れた………。」

リンクはそのまま眠ってしまった。その顔には、安堵の色が伺えた。

「ガノンドロフが居ないほうが気分的にはいいみたいだね………。」

「そうだね。」

マルスとピカチュウは頷き合う。



ザワザワ…ザワザワ…。
城内が騒がしくなってきた。

「まずいな……早くここから出ないといけない。」

フォックスが落ち着きなく言った。

「…今なら、全員をワープさせることができます。」

「どこまでだ?」

「ここからですと……ハイラル入口が限界です。」

マリオの問にゼルダは静かに答えた。

「ねぇ、ゼルダはここに残るの?」

「いえ。魔法が失敗したときのために、同行しておきます。」

「城の方は大丈夫なのか?」

「おそらく。一段落ついたら戻るつもりですから、それまでは誰かが代わってくださるでしょう。」

すると、それまで黙っていたマルスが口を開いた。

「分かった。じゃあ、お願いするよ。」

ゼルダは頷くと全員をワープさせた。





ハイラル入口にゼルダ、リンク、フォックス、マルス、ピカチュウ、マリオが現れた。そこには、サムス、ルイージ、ファルコが待っていた。

「みんな、お帰り!」

ルイージが言った。

「お疲れ様。」

続けてサムスが労う。

「ガノンドロフも倒せたみたいじゃねーか。闇がなくなるとこ、ちゃんと見てたぜ。」

ファルコがニヤッと笑った。それを見て、5人は意味ありげに顔を見合せた。

「倒したのとは違うけど…………。」

「………ハイラルの方は大丈夫だな。」

マリオとピカチュウはため息をついた。

「ところで、リンクは大丈夫?」

サムスが聞いた。リンクはマルスに支えられて、眠ったままだった。

「…大丈夫じゃないだろうね。」

マルスは神妙な面持ちで答えた。

「え?どういうこと?」

ルイージが不思議そうに尋ねた。

「まだ操られたままなんだ…………。」

フォックスがつらそうに説明した。

「ウソだろ!?」

否定を求めたファルコにフォックスは静かに首を横に振った。
そんな中、サムスはそっとピカチュウに近づき、しゃがんだ。

「ところで……ゼルダも行ってたの?」

「向こうで合流したよ。ハイラルの人から呼ばれたみたい。」

「なるほどね。」

「あの…誰か、薬に詳しい方はいらっしゃったでしょうか?」

「薬?どうして?」

ルイージが聞いた。

「リンクは薬で操られているの。」

ピカチュウが答えた。

「薬!?オレはてっきり何かの魔法かと思ってた。」

フォックスは驚いた。

「薬、なぁ……スネークぐらいか?」

ファルコが聞いた。

「そうだな……。」

困ったような顔でマリオは答えた。

「スネークしかいないとなると……厄介ね。」

サムスが同調した。

“あの方ならば、悩む必要も………あぁ、そういうことですか。”

「私が彼を説得したら、可能ですか?」

ゼルダが聞いた。それにマルスが答える。

「僕達が説得するよりは可能性は高いと思うよ。けど100%とは言えない。」

「それでもやってみます。リンクを、お願いしますね。」

ゼルダは会場内に入っていった。

「さてと、リンクを部屋に連れて行こうか。フォックス!」

マルスはフォックスを呼ぶと、リンクの武器類を差し出した。

「持っていって欲しい。」

「あ、あぁ。」

フォックスは受け取った。

「……重い……よくこんなものを持ってあれだけ動けるな……………。」

マルスはリンクを背負うと歩きだした。フォックスがついていった。他の者も中に入った。





ゼルダはスネークの部屋までやってくると、扉を叩いた。

「誰だ?」

スネークは部屋から出てきた。

「姫さんか。どうした?」

「スネーク……いきなりですが、薬には詳しいでしょうか?」

ゼルダが聞いた。

「薬?俺の仲間に調べさせればなんとかなるが…どうしてだ?」

「リンクが……リンクが、薬によって操られているのです。」

「おいおい姫さん……リンクがおかしくなったからといって、それはないぜ。」

「リンクはおかしくなっていません。…私でした。」

「はぁ……そうですか。じゃあ、何を証拠に薬だと言うんだ?」

スネークは、半信半疑であったが、話を合わせることにした。

「彼……リンクが、そう言いました。」

「リンクに会っただと?いつ、どこでだ?」

スネークは単独でリンクの部屋に行った時の事を思い出していた。

“あの時は、何の返事もなかったぞ……。”

「先ほどハイラルで。今は、この会場に居ます。」

ゼルダはスネークの問に静かに答えた。

“? …話がみえてこんな……。”

ゼルダはスネークが状況を理解していないのに気付き、説明した。

「私は…リンクを疑ってガノンドロフのもとに行きました。けれどリンクは…私が捕まったと勘違いして、私達のもとに……。それでリンクは……ガノンドロフに捕まってしまいました……。だから彼は、私の誕生パーティーに来られなかったのです。」

「…………。」

スネークは考え込んだ。

「…………………………。分かった。とりあえず、リンクの所に行ってみようじゃないか。」

スネークが歩き出した。ゼルダはその後をついていく。





スネークはリンクの部屋に着くと、ノックもせずに扉を開けた。ゼルダと共に、中に入る。

「……来てくれたんだね、スネーク。」

スネークがいきなり入ってきたことに驚きもせず、マルスは静かに言った。彼は椅子に座っていた。リンクはベッドで横たわっている。その隣に、フォックスが立っていた。

「あ……あぁ。」

スネークはいきなり開けたことを少し後悔しながら答えた。そして、フォックスをチラッと見た。

「それで……信じてくださいますか?」

ゼルダが様子を伺うように聞いた。

「……完全には無理だな。」

「……どこが信用出来ない?」

マルスが聞いた。

「リンクが操られたという事自体が、な。非現実的すぎる。」

「うぅ……ここ……どこ?」

その時、タイミングがいいのか悪いのか、リンクが目を覚ました。そして次の瞬間、隣にいるフォックスに襲い掛かった。フォックスがすぐに受け止める。

「……気分はどうだ?」

フォックスはリンクを抑え込んで、動きを封じた。

「………最悪だよ………。」

リンクは相変わらずもがいていた。

「手伝った方がいいかい?」

マルスが声をかけた。

「いや、大丈夫だ。」

フォックスは答えると、そのままリンクの動きを完全に封じた。

「…ハァ……ハァ……ごめん………。」

「……まだ、信じられませんか?」

ゼルダが再び聞いた。スネークは多少動揺しながら首を振った。

「いや……十分だ。しかし………これが全て薬のせいだと言うのか?」

全員の目がリンクに集まった。

「ハァ…ハァ…それは、分からない。でも…そんなものは…飲んだ…。」

「なら、調べてみるか。…安全をとるか、緊急をとるか、どちらがいい?」

協力する気になったらしいスネークが聞いた。

「安全 ですね/かな/だ 。」

「緊急……。」

言葉は違えど、4人の声が重なった。スネークはこっそりため息をついた。

「……本人の意見を尊重するべきか?」

リンクが頷いた。

「だが……」

フォックスが反論しかけた。が、リンクがそれを遮る。

「お願いだ……これ以上、耐えられないよ……。」

スネークがリンク以外の人を見た。

「……どうやるつもりかな?」

マルスが聞いた。

「俺が…俺じゃなくてもいいが…リンクの血液を採る。それを仲間の所に送る。こちらはそれだけだ。」

「ちなみに……安全をとると、どうするのですか?」

ゼルダが聞いた。

「こちらから行くか、来てもらう。」

「安全とか緊急とか、違いはあるのか?」

フォックスが聞いた。

「当たり前だ。血液を採るなんてのは、一歩間違えりゃ、死、だぜ。しかも、得体の知れない薬付きだ。後、行くにしても来るにしても、3日はかかる。」

スネークは身振り手振り交えて説明した。すると、リンクが口を開く。

「なら……スネーク………頼むよ……。」

スネークは他の3人を見た。それぞれ頷いた。

「道具を取ってこよう。」

スネークが戻ってきた後、四苦八苦しながら注射器でリンクの血液を採った。そして、それをスネークの仲間に送った。





あれから数週間後………

リンクは会場のバルコニーにいた。バルコニーから身を乗り出して、外を眺めている。

「よぉ。調子はどうだ?」

フォックスがやってきた。

「まぁまぁ、かな。……たまに言う事を聞かないことがあるけど。」

「でも、よかったじゃないか。しばらくしたら効果の消える薬で。もっと対策を考えなければいけないと思った時もあったが。」

「サラッと言うなよ………。」

リンクは恨めしそうにフォックスを見上げた。が、すぐに元の体勢に戻る。

「ハハッ、悪い、悪い。……ところで、いつまでみんなを避ける気だ?」

「え?何のこと?」

「とぼけるなって。分かってるんだろ?」

「………。」

リンクは困ったような顔をフォックスに向けた。

「みんなには、俺らが説明したから大丈夫だろ?確かに初めのうちはやりにくいかもしれないが…」

「それもあるけど……それだけじゃない。」

リンクはフォックスを遮って言った。

「……まだ、全部抜けてないことか?」

声のトーンを落として聞く。

「うん。また自制が効かなくなったらどうしよう?しかも、誰かの側で?また、誰かを傷つけたらどうしよう?……誰かが側に来たり、近付きそうになったりするといつも、そう思うんだ。そして……誰かの側に居るのが怖くなる。だから、近づけない。」

リンクは悲しそうにフォックスを見た。

「実は……今も怖い。」

「……すまん。気付けなかった。辛いよな…そんな風に考えると…。」

「いいんだ。フォックスが気にする事じゃないよ。」

リンクはフォックスに笑いかけた。

「でもな、俺の前くらい気楽にしてろよ。もし、リンクに自制が無くなっても対処できるぞ。」

「あぁ……ありがとう。」

リンクははにかんだ。

「リンクー!」

その時、ゼルダがリンクを呼ぶ声が聞こえた。リンクは苦笑いするとフォックスに手を合わせ、ゼルダのもとに行った。

“…お前って奴は……。”

フォックスは呆れ、しばらく2人を眺めていた。

「それにしても……きれいだな。」

フォックスは室内に戻った。ゼルダの胸元にあるローズクォーツは、キラキラと輝いていた。




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