少年の依頼

モブが出しゃばります。
リンクの実力はばれておらず、マルスとの駆け引きも続いている状態です。
メインはリンク、トレーナー、マルス、マリオです。
―――――――――――――

ピンポーン。昼食も終わり、各自が思い思いに過ごしていた時、突然インターホンが鳴った。丁度みんなの部屋にいたマリオをはじめとした面々は、不思議そうな顔をした。

「何だ?こんな辺鄙なところに一体誰が何の用で来たんだ?」

ロイが呟いた。

「新たな参加者じゃないの?ほらマリオ、応対してきなさい。」

サムスが言った。

「何で俺が、」

ピンポーン。マリオが反論しかけると、再びインターホンの音が鳴り響いた。

「ほらほら、待ちくたびれているわよ。」

サムスが急かすと、マリオはため息を吐いた。

「ハイハイ、行きゃいいんだろ。」

そして、部屋を足早に出て行った。

「それにしても……あいつだよな?やって来た奴って。」

ロイが窓の外を指さした。ピカチュウが窓際に飛び乗り、窓から外を眺めた。

「そうだね。きっとそうだよ。見た感じ、リュカぐらいの年かな?」

「なんか、参加者じゃなさそうなんだが……。つぅか、どこか様子が変じゃないか?」

ロイが疑問を口にすると、サムスも窓際によってきた。

「そう?緊張しているだけじゃない?」

「そう、か……。気のせいかな。」

ロイはわけのわからぬもやもやを、気のせいだとして片付けてしまった。

“マリオがあいつを連れて戻ってきたら、全部分かるだろ。”



マリオが玄関を開けると、そこには茶髪の少年が落ち着きなく立っていた。マリオをみとめると、ハッとして、背筋を伸ばした。

「お前、」

「こ、ここが有名なスマッシュブラザーズの家ですかっ!?」

マリオの声掛けは、やけに力んだ少年の声に遮られた。

「そ、そうだが……。」

マリオは思わず一歩引いた。

「実はお願いがあって、」

「待て。」

マリオははたと気付いた。

「俺ら、そんなに有名か?」

「話は聞いています。ここには強者が集っていると。そこでお願いがあるのです。」

「待て待て。」

本題に入ろうとする少年にマリオは待ったをかけた。

「確かにここには強いやつらがたくさんいるが、というか、お前参加者じゃ、」

マリオは支離滅裂だった。絶賛混乱中だ。だが少年はそんなマリオに構わず続ける。

「こんな生き物が村を襲ってきて、」

少年は写真を見せた。マリオは思わず受け取る。

「村は壊滅状態……。お願いです!助けてください!!」

マリオは写真を見た。そこには、人型の紫の生物が映っていた。

“なんだこれ。こんなやつ、見たことないぞ……。”

マリオがそんなことを思っていると、一枚の紙が差し出された。

「これが村への地図です。」

差し出された地図を、マリオは為す術なく受け取ってしまった。

「よ、よくわからんが……とりあえず中に入って、」

「そ、それじゃ、よろしくお願いしますっ!!」

「あ、おい、待て!」

少年はマリオの制止を振り切って走り去ってしまった。

「な、何なんだよ、一体……。」



「なんか、帰っちゃったみたいだけど、何があったの?」

マリオが一人でみんなの部屋に戻ると、サムスが声をかけた。

「村が大変なことになっているから助けてほしいとかなんとか……。詳しい話は後でする。とりあえず、みんなを会議室に集めてくれないか?」

「緊急事態ってことで。りょーかいっ!」

ロイはすぐに動いた。

「……なんか、面倒事の臭いがするのは気のせいかな。」

ピカチュウはつぶやくと、部屋をかけ出して行った。みんなが出て行ったのを見送ってから、マリオはため息を吐いた。

「あぁ、ピカチュウ。俺もそんな気がするよ。」



「いきなり全員を集めて何だっていうんだ。」

ファルコが面倒臭そうに言った。だが、口には出さないだけで、大半の人はそう思っているようだった。

「悪いな。実はさっき、変な少年がやってきてな。俺らスマッシュブラザーズに助けてほしいそうだ。」

「ふーん。で、その少年は?」

ネスがいぶかしげに言うと、マリオは頭をかいた。

「それが、敵の写真と村への地図だけ置いて、どっか行っちまった。」

「……それは体よく面倒事を押し付けられたのではないか?」

アイクが眉を寄せて言った。それをマルスがたしなめる。

「そうかもしれないけど、困っている人がいるのは確かなんだろう?放っておくわけにはいかないよ。」

「ところで、その敵の写真、見せてくれないか?」

スネークが言うと、マリオは頷いた。

「あぁ、そうだな。回すから順に見ていってくれ。」

順々に写真が回される。その写真がトレーナーに回った時、彼は驚きの声をあげた。

「これは……!!」

「何か知っているのか?トレーナー?」

期待を込めてマリオが言った。トレーナーは頷いた。

「ミュウツーだよ。最強のポケモンって言われている。でも……ミュウツーは村を襲ったりしないはず……。」

「それ、ミュウツーって奴に間違いないんだな?」

ファルコンが聞くと、トレーナーは難しい顔をしたまま再び頷いた。

「うん、実際に会ったことあるし、間違いないよ。」

「敵が何なのか特定できたところで……誰が行く?」

マリオが問うと、ざわざわと部屋が騒がしくなった。

「マリオ、お前は行くんだよな?」

そんな中、ふいにロイが言った。

「これ、受けたのお前だし。」

「あ、あぁ……。」

マリオは頭をかいた。

「行くよ。じゃなきゃ、無責任だからな。」

「オレも行っていい?」

その時、ずっと黙っていたリンクが声をあげた。

「お前が?だが……。」

ファルコンは口をつぐんだ。だが、言わんとしたこと――リンクは強さ的に順位が低い――をきっちり理解していたリンクは、肩をすくめ、続けた。

「確かに、オレはみんなに比べたら弱いよ。だけど、一応勇者としてハイラルを救った経験もあるんだ。そこらの人と一緒にしないでほしいな。」

マルスはおや、と思った。いつにも増して、やけに積極的ではないか。だが、その変化に気付いたのはマルスだけだった。

「まぁ、いいだろう。足引っ張るなよ、リンク。」

マリオが言うと、リンクは曖昧に笑った。

「で、もう少し人手が欲しいんだが……他に出陣してくれる奴はいないか?」

マリオの問い賭けに、二人が立ったのはほぼ同時だった。

「「リンクが行くなら僕も行く。」」

トレーナーとマルスだった。リンクはマルスを見て、一瞬顔をしかめた。それをしっかり見ていたマルスは、にっこりとリンクに笑みを向けた。リンクはふいとそっぽを向いた。

「トレーナーにマルスか。二人とも戦力は十分にあるし、トレーナーに関しては敵の情報も持っている。このメンバーなら大丈夫だろう。」

スネークが冷静に言うと、マリオが立ちあがった。

「よし、それじゃ、早速行くか。」

「え、今から?」

マルスは当惑して言った。それにリンクが言う。

「当然でしょ。困っている人がいるんだ。一刻も早く助けてあげないと。」

そして四人は地図を頼りに出発した。四人が行ってしまってから、会議は解散になった。

「おい、フォックス。行かなくてよかったのか?」

ファルコがフォックスを捕まえて言った。

「ハ?何でだよ?」

フォックスは眉をひそめて言った。ファルコは両手を上げて、言った。

「リンクが心配じゃないのか?」

「あぁ。」

納得したようにフォックスは笑った。

「あのメンバーなら大丈夫だよ。」

“リンクが心配?あの中で一番強いんだぞ、あいつは。ま、すぐ帰ってくるさ。”



四人は地図を持ったマリオを先頭に歩いていた。しばらく歩いて、突然マリオが立ちどまった。あたりは岩ばかりがあるだけの、草木もほとんどない、荒れた土地だった。

「どうしたんだい、マリオ?」

マルスが聞く。当のマリオは、地図をいろんな方向から眺めていた。

「地図ではここが目的地なんだが……。」

マリオは心底困った顔をしていた。

「え?でも村どころか家の残骸すらないよ?」

トレーナーが言う。

“何だろう、すごく嫌な予感がする。”

リンクは注意深くあたりを見渡した。

「どういうことだ?」

マリオが言うと、マルスが呆れたように言った。

「マリオ、まさか地図を読み違えたなんてことは、」

「そんなことあるか!」

マルスの非難はマリオの大声に遮られた。地図を持ってマルスに迫る。

「見てみろ!ここが会場だろ、俺達は――」

マリオがマルスにどう来たかを説明している時、リンクはトレーナーの様子が変なことに気付いた。

「トレーナー?どうしたの?」

「ん?……あぁ……なんだか、さっきから眠く、って、……」

フラリとトレーナーが揺れた。倒れていく。慌てて、リンクはトレーナーを支えた。

「トレーナー!どうしたの!?トレーナー!!」

リンクの叫び声で二人も異変に気付いた。駆け寄ってくる。

「おい、トレーナー!大丈夫か!!」

マリオもトレーナーに問いかける。その時、バタン、と近くで音がした。音の方を見ると、マルスが倒れていた。

「マルス!お前、まで……」

マリオも倒れた。

「一体、何がどうなって……」

リンクの視界が反転した。そして、急激に眠気に襲われた。

“ダメ、だ……。今、寝たら……”

リンクは本能的にヤバいと感じたが、意識を手放してしまった。



リンクが気がつくと、体が揺れていた。それが、自分が運ばれているせいだと気付くと暴れた。拘束を解き、自分を運んでいたものに目を向けると、それはごつい灰色の体をした人型の生物だった。

「な、なんだコイツ……って、うわぁっ!!」

リンクは地べたに転がっていたが、あわてて横に転がった。ドン!今さっきいた場所に拳が振り下ろされる。リンクが灰色の生物を見ると、そいつは四本の手を地面に叩きつけたまま、リンクを睨んだ。リンクが起き上がると、突進してきた。ひらりとリンクは横によける。よけざま、足を出して、ひっかけた。そいつはよろける。その隙を逃さずに、リンクは剣を振り下ろした。

「カイー……。」

そいつは、そんな声をあげて倒れた。リンクは額の汗を拭い、灰色の生き物を見つめた。

“何だこいつ……。こんな敵、みんなに聞いた中にいなかった……。いや、ポケモンか?それなら、辻褄が合う……。”

ふとリンクは遠くを見た。

「あれは!」

そこには同じ生き物がいた。その腕にはトレーナーが抱えられていた。

「トレーナーっ!!」

リンクは灰色の生物その2に向かって駆け出した。灰色の生物その2は、リンクの大声に驚いて振り返った。が、剣を携えたリンクを見て、ビクリとし、ドシンドシンと走り出した。

「逃がすかっ!!」

リンクは足を更に速めた。何とか追いつき、後ろからジャンプ斬りをお見舞いする。灰色の生物その2はトレーナーを取り落し、頭を抱えた。トレーナーが地面に落ちていく。リンクはスライディングして、トレーナーが地面に激突することを防いだ。ふぅと息をついたのもつかの間、黒い影が二人に伸びて来た。リンクはトレーナーを横に転がし、振り下ろされた手をとっさに手で受け止めた。

「くっ……。」

が、相手の力は強い。押し負けて、リンクは地面に押さえつけられた。相手は片手なのに、リンクは動けなかった。蹴りつけてみるが、ビクともしない。手がリンクに振り下ろされる――。

「ゼニガメ、ハイドロポンプ!」

その時、とても強い水流が灰色の生物その2に襲い掛かった。灰色の生物その2は吹き飛ばされた。リンクはさっと起き上がる。が、灰色の生物その2は目を回していて、もう動けそうになかった。リンクはホッと胸を撫で下ろした。

「リンク!大丈夫!?」

いつの間にか目を覚ましたらしいトレーナーがやってきた。隣ではゼニガメがはしゃいでいる。

「見たか、カイリキー!ボクの力を!!」

それを眺めながらリンクは笑みをこぼした。そして、トレーナーに向かって言う。

「オレは大丈夫。トレーナー、ありがとう。助かったよ。ところで、怪我とかしてない?」

「してないよ。リンクが助けてくれたんでしょ。ごめんね、起きるの遅くって。」

リンクは首を振った。

「無事で良かったよ。ゼニガメも、ありがとね。」

「どういたしまして。」

ゼニガメはニコっと笑った。

「それにしてもリンク、カイリキーに素手で挑もうなんて、自殺行為もいいところだよ。あれはかくとうタイプなんだ。本当に骨とか折ってない?」

トレーナーは少々厳しい口調で言った。リンクはヒラヒラと手を振った。

「大丈夫だって。ところで……こいつら、やっぱりポケモンなんだね?じゃあ、ミュウツーって奴の手下?」

「さぁ、どうだろう……。そもそも、カイリキーって滅多に野生ではいないんだけど……。」

「と、いうと?」

「このカイリキーにトレーナーがいる確率が高いってこと。」

「……そのトレーナー、来たかもよ。」

リンクは剣の柄に手をやって言った。その目はもうトレーナーを見ていない。

「え?」

トレーナーがキョトンとしていると、声が聞こえてきた。

「全くカイリキー共は何してるんだ。」

ブツブツ言いながら、三人ほど人がやって来た。黒地にRのマークが入った服を着ている。

「ロ、ロケット団!?」

トレーナーが驚きの声をあげた。

「うぇ、起きてやがる!」

ロケット団の一人が腰にあるボールに手を持っていった。が、それをとることは叶わなかった。いつの間にか、リンクがそいつの後ろに回り込んでいて、蹴りつけ、こかしたからだ。

「うわぁ!」

そして、そのまま気絶させる。

「な、なんだコイツ!」

言いざま、そいつはリンクに殴りかかっていった。リンクは優雅にそれを避け、腕をつかんでひっくり返し、そいつも気絶させた。

「バ、バケモンだーっ!」

最後に残った一人は逃げようと試みた。が、すぐにリンクに追いつかれ、肩を掴まれた。

「ヒィィッ!」

そして、首に剣の切っ先を当てられ、動けなくなってしまった。その間、トレーナーはポカンとして動けなかった。

“そういえば、リンクってすごく強いんだっけ。”

「目的は何だ。」

リンクは低い声でロケット団に問うた。トレーナーは、場違いだがかっこいいと思ってしまった。

「も、も、目的って、」

対してロケット団は怯えきってしどろもどろだ。が、リンクはそれに構わず言い足した。

「オレ達を誘き出して、連れ去ろうとしてただろう。」

「そ、そんなの、命令されたからに、ヒィーっ!!」

ロケット団は再び情けない声をあげた。それは、リンクが剣先を更に近づけたためだった。

「そ、そういえば、スマッシュブラザーズを捕まえるとか何とか言っていたような……そ、それ以上は知らねぇよ!命令されたように動いただけなんだからさっ!!」

「命令?一体誰の?」

「俺はしたっぱのしたっぱ。班長が全部聞いてきて、俺らに命じるんだ。そ、その上は知らねぇ!本当だよ!!」

「じゃあ、その班長はどこ?」

「ア、アジトだ。い、言っとくけど、アジトの場所は知らねーぜ!窓一つないトラックの中に入れられてここに来てんだからな!!」

リンクはふぅとため息を吐いた。

「そう。じゃあ次で最後だ。後二人、オレらの仲間がいたはずだ。どこにいる?」

「それは――」

ロケット団は場所を説明した。リンクとトレーナーはその場所を頭に叩き込む。説明が終わると、リンクは残ったそいつも気絶させた。

「それじゃ、二人を助けに行こうか。」

「う、うん。と、いうか、リンク、やっぱりすごいね。」

「そうかな?あ、オレの実力については、」

「ナイショ、でしょ?」

トレーナーはふんわり笑うと歩き出した。リンクも笑みをこぼしてそれに続いた。



聞いた場所に行くと、一軒家があった。外にはロケット団らしき者がウジャウジャといる。リンクとトレーナーは岩の陰から様子を見ていた。

「本当のことを言ってたみたいだね。……本当に二人がここにいるかは分からないけど。」

「え、リンク、あの状態で疑っていたの?」

トレーナーは驚いてリンクを見やった。リンクは苦笑をこぼす。

「半信半疑。それで……数は十人くらいか。さすがに今回はポケモンも出されちゃうだろうし、ちょっと厄介だな……。ま、でも、正面突破するしかないか……。トレーナー、オレがあいつら引きつけるから、」

「ダメだよ、一人で戦おうなんて考えちゃ。僕も一緒に戦う。大丈夫、ロケット団との戦いには慣れているし、ポケモン勝負なら僕の専門分野だ。」

「だけど、」

「ほら、行くよっ!!」

ここで言い争っていても埒があかない。そう思ったトレーナーは飛び出していった。

「あ、待って!トレーナー!」

慌ててリンクも飛び出す。

「ん?何だ何だ?」

声に反応して、ロケット団がリンクとトレーナーの方を見た。

「あ!お前らは……。そうか、それであいつら帰ってこないんだな。行けっ、マタドガス!」

次々とロケット団はポケモンを繰り出した。

「来るよ、トレーナーっ!!」

言いながら、リンクは構えた。

「分かってる!行け、ゼニガメ!フシギソウ、リザードン!君達もだっ!!」

トレーナーはポケモンを繰り出した。リンクは駆け出した。近くにいたマタドガスに斬りかかる。

「ゼニガメ、クロバットにみずてっぽう!フシギソウ、グラエナにつるのムチ!リザードン、」

「分かっている。」

リザードンはそれだけ言うと、リンクに後ろから襲い掛かろうとしていたアーボックにとっしん、かみくだくをくりだした。リンクはそれをチラリと見、

「ありがとう!」

と叫ぶと次の相手に斬りかかっていった。

「な、なんだよアイツ……!生身の人間がポケモン相手に……。そうか、クロバット!アイツにどくどくだ!」

ゼニガメが倒したものと別個体のクロバットからどくどくが放たれる。本能的にヤバイと感じたリンクは、後退した。が、それでラッタの前に出てしまう。

「ラッタ、ひっさつまえば!」

ラッタがリンクに襲い掛かる。が、つるが伸びてきて、リンクを押し倒した。そのおかげで、攻撃を避けられた。

「ごめんリンク、力みすぎたっ!」

つるの正体はフシギソウだった。

「大丈夫、助かった!」

リンクはさっと立ち上がるとラッタを弾き飛ばした。そしてロケット団のもとまで走り寄る。ロケット団も小刀を取り出し、リンクに襲い掛かった。だが、リンクの敵ではなかった。小刀は簡単にはじかれ、剣の柄で思いっきり叩かれた。そいつは気絶してしまう。それを皮切りに、ロケット団が後退し始めた。やがて散り散りに逃げ出した。

「待て!」

リンクはそのうちの一人に狙いを定め、ブーメランを投げた。見事ヒット。当たり所が悪かったらしく、一発で気絶した。その間に他のロケット団は逃げ去ってしまった。リンクは最後に気絶させたロケット団のもとに行き、しゃがんだ。そこへトレーナーもやってくる。

「リンク、何でそいつだけ……。」

「コレだよ。」

リンクはロケット団から奪い取ったものを見せた。チャリ、と音がした。

「カギ……?」

それはカギ束だった。

「うん、そう。腰につけているのが見えたから、一応もらっとこうと思って。その家、カギがかかっているかもしれないしね。」

「なるほど。じゃあ、行こうか。」

トレーナーはポケモン達をボールに戻した。そして二人は一軒家に向かった。



一方、当の家の中。リンクがロケット団を尋問している頃、マルスの目が覚めた。視界にマリオが倒れているのが入る。慌ててマリオに駆け寄り、少し揺らすと、すぐマリオは目を覚ました。

「……ここは?」

「分からない。僕も目が覚めたばかりで何が何だか……。」

マリオは起き上がり、辺りを見渡した。二人は鉄格子の中にいた。

「俺らは牢屋の中にいるってことか?リンクとトレーナーはどうした?」

「さっきも言ったけど。」

マルスの声には苛立ちが混じっていた。

「僕も起きたばかりなんだ。何も分からない。」

マリオはおもむろに立ち上がると、鉄格子にいろいろな技を繰り出しはじめた。が、功をなさない。マルスも、幸運にもとられていなかったファルシオンで斬りつけてみたが、はじかれただけで断ち切ることはできなかった。やがてマリオはへたりこんだ。

「ダメかぁー。どうしたものかな。」

その時、急に外が騒がしくなった。

「な、何だ?」

マリオは驚いて音の方を見た。マルスがため息を吐いた。

「ここからじゃなんとも……。リンクやトレーナーが助けに来てくれたことを祈るばかりさ。」

「リンクじゃあてにならんがなぁ……。あいつら無事だといいんだが。」

「人の心配よりまず自分の心配しなよ……。」

マルスが呆れて言った。しばらくすると、外が静かになった。ドアノブが回る。ガチャ、ギィィィ……。マリオとマルスは身構えた。が、見えたのは金髪に緑の服。リンクだった。トレーナーと一緒に入ってくる。

「マリオ!マルス!無事だったんだね!」

トレーナーは言いながら牢屋に駆け寄った。

「お前らこそ!よかった……。」

ホッと胸を撫で下ろしてマリオが言った。

「ところで、外が騒がしかったようだけど……何かあったの?」

「敵に見つかっちゃってね。でも、トレーナーのおかげで山は越えたよ。残党も逃げたんじゃないかな?」

マルスの問いに、リンクがカギを開けながら答えた。トレーナーはチラッとリンクを見た。また、マルスも訝しむようにリンクを見た。が、カギに集中していたため、そのどちらの視線にもリンクは気付かなかった。

「それで、何か分かったのか?」

無事外に出られたマリオとマルス。彼らは情報交換を始めた。

「なんか、ロケット団が関わっているみたいだよ。」

トレーナーが答えると、マリオは目を点にした。

「ロケット団?なんじゃそりゃ?」

「僕達の世界で悪事をはたらいていた連中だよ。」

「じゃあ、ミュウツーは?いなかったの?」

マルスが聞くと、トレーナーは頷いた。

「うん、いなかった。ロケット団が僕達を誘き出すためのウソだったんじゃないかな。」

マルスは眉をひそめた。

「誘き出す?何のために?」

「スマッシュブラザーズを捕まえるとかなんとか…でもそれ以上は聞き出せなかったんだ。ね、リンク?……リンク?」

トレーナーの同意を求める声に反応はなかった。気付くと近くにリンクはいなかった。三人は辺りを見渡す。すると、家のつきあたりにリンクはいた。カチャカチャと何かやっている。

「おいリンク、何を勝手にやってるんだ。」

マリオが文句を言った。三人はリンクに近づいていった。

「ドアがあったら開けたいと思わない?」

振り返ることなくリンクは言う。リンクの言う通り、彼の前には扉があった。カチャ。

「あ、このカギだ。」

扉が開く。四人がのぞき込むと、そこには少年が怯えた表情で座り込んでいた。

「あ!お前!」

「う、うわぁぁっ!!ごめんなさい!!」

マリオが大声を出すと、少年は勢いよく下がって、頭を抱え込んだ。

「何脅かしているんだい。」

マルスは呆れたように言った。リンクは少年にゆっくり近づき、ひざまづいた。

「オレらはロケット団じゃないよ。怖かったね。でも、もう大丈夫、」

「ちょっと待て!」

マリオが待ったをかけた。三人は驚いてマリオを見る。

「全ての始まりはそいつだぞ!」

「え、マリオ、それってまさか、」

トレーナーが言うと、マリオは頷いた。

「そいつが俺達に援助要請をしてきた少年だよ。」

顎に手を当てて、リンクは考え込んだ。やがて、再び少年に語りかける。

「君はロケット団の仲間なの?」

「ち、違います!実は、本当に村が襲われてて……その、写真のヤツとは違うんですけど……大きい亀みたいなヤツに……。」

“大きい亀?なーんか、嫌な予感がするな……。”

マリオが思っている間にも少年の弁解は続く。

「言うことを聞いたら村から去ってくれるって言って……だから……あぁ、ごめんなさいっ!!」

マルスはふぅと息をつき、腕を組んだ。

「それで僕達がここに来るように言ったわけだね。で、君はなぜここに?」

「それが……あなた方に伝えた後、僕も捕まって……ここに閉じ込められちゃったんです……。無事に任務が完了したら帰してやるって言って……。」

リンクはハッとした。

「待って。それじゃ、君の村、危ないかもしれない。」

「え、何で?」

疑問を呈したのはトレーナーだった。それにマルスが答える。

「任務が失敗したから、だよ。その矛先が村に向いているかもしれないね。」

「そんな!早く村に帰らなきゃ!」

少年は走り出そうとした。その手をリンクが掴み、行くことを阻んだ。

「放してっ!」

悲痛な少年の声が響く。が、リンクは手を緩めなかった。

「待って。オレ達も連れていってよ。助けになれるはずだよ。」

「え?」

少年は呆けた顔をした。が、それに驚いたのは少年だけではなかった。

「おい、待てリンク。そいつの言うこと信じるのか?」

マリオが訝しげに言う。リンクは頷いた。

「オレは信じるよ。嫌なら、先に帰ってくれていい。」

リンクは少年に目を合わせた。

「ね、連れていって。」

一瞬、考えるように少年の目が泳いだ。が、

「う、うん。お願いします。」

そう言うと、少年はペコリとおじぎした。そして走り出す。リンクとトレーナーが続いた。

「マリオ、どうする?僕は行くけど。」

マルスが聞くと、マリオは頭をかいた。

「1対3かぁー。分かったよ、つき合いますって。」

そして二人も続いた。



少年の案内で今度こそ村に着いた。が、そこはしーんとしていて、人の気配はなかった。

「みんなぁー大丈フガッ、」

少年は叫んでいたが、マリオに口を塞がれた。

「むやみに叫ぶな!敵に知らせてどうするっ!!」

マリオは囁き声だが厳しく言った。が、

「……もう手遅れみたいだよ。」

リンクが剣を取り出しながら言った。リンクの言う通り、くり頭やカメが大量に向かってきていた。それを見て、マリオは嫌そうな顔をした。

「げっ、やっぱこいつらかよ……。」

「マリオの知ってる敵?」

リンクが聞くと、マリオは頷いた。

「あぁ。茶色のがクリボーで、カメがノコノコ。黒幕はきっとクッパっていう俺の宿敵だ。」

「しゃべってないで、来るよ!」

マルスが喝を入れた。やれやれといったようにマリオは答える。

「ザコだから大して問題ないと思うが……リンク!足引っ張るなよ!」

「ハイハイ。」

リンクは苦笑いして応じた。四人は襲い掛かってくるクリボーやノコノコを協力して倒していった。リンクとマルスは剣を振るい、敵をなぎ倒した。トレーナーはリザードンを繰り出し、いわくだきやかえんほうしゃで対応した。マリオはというと、クリボーを踏み潰しつつ、ファイアボールでノコノコを倒していた。が、誤ってノコノコを踏んでしまった。しかも2回も。1回目でカメの甲羅となったノコノコは、2回踏まれて滑り出した。

「しまった!カメの甲羅に気をつけろ!」

マリオの注意掛けで、三人はカメの甲羅による被害を被ることはなかった。しかし、その甲羅が向かっていったのは三人の下ではなかった。少年の下にカメの甲羅は滑っていく。

「あ……。」

少年はそれだけ言うと、固まってしまった。目が大きく見開かれる。

「危ない!」

リンクが少年を押し出した。

「リンク!」

トレーナーが叫んだ。なぜなら、押し出した代わりに、リンクのいるところにカメの甲羅が向かって行っているからだった。が、カメの甲羅は止まらない。そのままの勢いでリンクに激突した。

「うっ……。」

リンクは吹っ飛んだ。それを好機ととらえたクリボーやノコノコがリンクに襲い掛かる。リンクは避けようとしたが、マルスが視界に入り、ハッと動きを止めた。

“ここで動けば、オレが実力を偽っているのがばれる……。でも迷惑かけるのは……。”

悩んでいるうちにも敵は向かってきていた。気付いた時には、リンクは少年と一緒に囲まれてしまっていた。クリボーやノコノコが一斉に襲い掛かる。

“まずい!今は少年を助けるのが先だ!”

リンクは少年に走り寄ると、抱きしめた。が、奴らの攻撃が当たることはなかった。火が放たれ、剣が振られる音がした。リンクが手を緩め、顔を上げると、リザードンとマルスが片付けてくれていた。リンクも再び参戦する。そして四人でクリボーやノコノコの大軍を全滅させることができた。四人は一息つく。

「リンク、足引っ張るなって言っただろ。」

マリオが呆れて言った。

「ハハッ、ごめん。」

「いやいやマリオ、もとはと言えば君のミスだろう?危うく、少年にカメの甲羅が当たるところだったじゃないか。」

マルスがマリオをたしなめた。

「……すみません。」

マリオは恐縮してみせた。

「じゃあ、奥に行ってみよう。クッパだっけ、そいつを倒さなきゃ村の安全は確保されないんだし。」

リンクはそう言うと歩き出した。トレーナーもそれに続く。

「なんで。」

「ん?どうした?」

少年のつぶやきを聞き取ったマリオが少年を見た。それに気付いたマルスも少年を見る。

「どうしてここまで必死になって助けてくれるの?僕は……あなた達を騙したのに。」

「困っている人を見ると放っておけない質でね。お人好しだろう?特にあの緑の人。」

マルスはウィンクして、にこりと笑った。そして続ける。

「ほら、君が行ってくれないと、僕達、君の言う大きな亀のところにたどり着けないよ。」

「ねぇ、何してるのー!早く行くよ!」

トレーナーの声がした。見ると、リンクとトレーナーが待っていた。

「はい!」

少年は駆けて行った。肩をすくめ、マリオとマルスも続いた。



村の中心に、クッパと住人がいた。四人と少年は、家の陰から様子を見ることにする。

「何?逃げられたスマッシュブラザーズがここに来て、見回りのクリボーやノコノコを全滅させただと?」

「うん。さっき様子を見に行ったら見事に全滅させられてた。」
クッパは小さなクッパらしきものと話していた。それを見て、マリオはげんなりした。

「おいおい、クッパJr.までいるのかよ……。」

「あれが襲って来たっていう亀?」

リンクが確認すると、少年は頷いた。

「村人もここに集められているようだね。……どうやら、まだ何もされていないようだけど。」

マルスが分析したところだった。その時、一組の男女が前に引っ張り出された。

「お前たちの子供の失敗だ。責任とって死んでもらうぞ。」

クッパが大きく口を開けた。

「まずい!あいつ、火を吹くつもりだっ!!」

マリオが言うと、少年は真っ青になった。

「お父さん!お母さん!」

そして、家の陰から出て行ってしまう。

「あ、コラ、待て!」

マリオの制止の声が響いた。

「ん?」

その声を聞いて、クッパの動きが止まった。その隙に、実は少年が出た直後についていっていたリンクが、少年の両親とクッパの間に立った。

「オレ達を捕まえられなかった腹いせにこの人達を殺すって?理不尽すぎやしないか?」

「お前は……リンクとかいったか。よくここまで」

「リンク!お前はトレーナーと村人の安全を確保しろ!クッパは俺とマルスでやる!」

マリオは言いながら走り出てきた。リンクは頷き、トレーナーと共に、村人を安全なところに避難させに動いた。

「なっ!貴様はマリオ!何でこんなところにいるんだっ!」

「それはこっちのセリフだっ!村1つ占拠して、一体何を企んでいる!」

マリオはクッパに殴りかかっていった。クッパはその手を受け止めた。

「貴様らに答える義理はないわっ!!」

叫びざま、マリオを投げ捨てた。そこにクッパJr.が攻撃をしかける。が、

「させないよ!」

マルスが間に入り、クッパJr.を斬りつけた。クッパJr.は吹っ飛んでいく。

「うわぁー!」

クッパJr.は地面に激突、気を失った。

「おのれ!よくもクッパJr.を!」

怒ったクッパは火を吐きながらマルスに迫った。マルスは後ろに逃げる。が、家が立ちはだかって逃げ場を失った。

“どうするか……このままだと焼かれてしまう……!”

マルスはクッパを正面から見据えた。

“ファルシオンで炎をはじけるか……?”

マルスは剣を構える。炎がマルスに当たる。と、思ったその時、

「とぅっ!!」

マリオが横からジャンプ蹴りをお見舞いした。クッパはよろめく。

「俺を忘れるなっ!!」

マリオは言いながらファイアボールを放った。マルスも剣を振るい、確実にダメージを与えていった。

“くっ……2対1……これでは分が悪い……。”

クッパは大きくジャンプして後退すると、一面に炎を吐いた。

「しまったっ!家が!」

マルスの言う通り、クッパの炎は家に飛び火し、家々が燃え出した。

「マルス、トレーナー呼んでこい!ここは俺が引き受ける!」

そう言うマリオに対し、マルスは頷くと走り去っていった。

「ガハハッ、これで1対1だ、マリオ!我が輩に勝てるとでも?」

「俺に一度も勝ったことのないお前が言うか!」

再びとび膝蹴りを繰り出すマリオ。だが、やっぱりクッパはよろめくだけで、倒れてはくれなかった。クッパのひっかき攻撃が炸裂!だがマリオは後ろに跳んでそれを避けた。そして走り寄り、またしても強力なパンチを繰り出す。今度は顔面にヒット!クッパの顔が歪む。クッパは空いていた手でマリオを鷲掴みにした。至近距離で火を吹こうとする。が、

「フシギソウ、はっぱカッター!」

ヒュンヒュンヒュンと葉が飛んできた。地味に痛かったらしく、クッパはマリオを取り落した。ダダダダダッと走る音がする。クッパが音の方を見ると、マルスが肉薄していた。避ける間もなく、マルスからの攻撃を受けてしまう。流石のクッパも吹っ飛んだ。

「くっ、おのれ……!今回はこれくらいにしといてやる。次もこういくとは思うなよ!」

クッパは偶然にも近くにいたクッパJr.を拾い上げ、高く跳んだ。どこからともなくメカがやってくる。それに乗って飛んでいってしまう。逃がすまいと、トレーナーはリザードンを出そうとした。が、マルスに止められた。

「深追いはダメだよ、トレーナー。それより今は消化活動を……って、あれ?」

マルスが辺りを見ると、鎮火されていた。ゼニガメがトレーナーの下に戻ってくる。

「終わったよー!」

「おつかれ、ゼニガメ。マルス、ゼニガメを甘く見ちゃダメだよ。」

「ごめん。」

「こっちも片付いたみたいだね。」

リンクがやってきた。

「リンク、お前……。村人らを守ってろよ……何かあったらどうする……。」

マリオが小言を言った。が、涼しい顔でリンクは言う。

「もう大丈夫だよ。残ってたクリボーやノコノコは全部倒したから。それに、こっちがどうなっているのか気になってね。」

「ん?まだ残党がいたのかい?」

マルス問うと、リンクは頷いた。

「みたいだね。君達が行ってしまった後、一斉に襲い掛かって来たよ。相手がザコだったのが幸運だったけどね。」

「亀がいない!本当にやっつけてくれたんだね!」

少年がやってきた。リンクが慌てたように言う。

「あ!危ないから待ってて、って」

「さっき、あの亀が乗ってきたメカが飛んでいくのを見たんだ!だから、もしかしたら、って思って……。」

少年は興奮していたが、だんだんと覇気がなくなっていった。うかがうように、リンクを見る。リンクは困ったように笑いかけた。

「もう大丈夫みたいだよ。ね?」

マルスは頷いた。

「亀は追い払うことはできたよ。でも……。」

困ったように、マルスは目を泳がせた。頭をかいて、マリオが続ける。

「悪い、一部燃えちまった。」

「気にせんでくだされ。」

声の方を見ると、村人がやってきていた。年老いた人が言う。

「あなた方は我々を助けてくださった。それだけで十分じゃ。」

「ですが……。」

尚も申し訳なさそうにするマルスだったが、その人は手でマルスを制した。そして、にっこりと笑った。

「ありがとうございました。」



四人は帰路に着いた。

「はー、人助けをするって気持ちいいなぁー。」

のんきにマリオが言う。

「君、乗り気じゃなかっただろう……。」

やれやれといった風にマルスは言った。

「それで、」

マルスは後ろを歩いているリンクとトレーナーを見た。二人はどことなく暗い。

「なんで君達はそんな浮かない顔をしているんだい?無事、事件も解決したっていうのに。」

「それがさ。ロケット団って解散したはずなんだよね。そいつらがまた動いているっていうのが気になって……。」

トレーナーが答えた。言ってしまってから、更に顔をしかめた。

「なるほど。確かに気になるね。それで、リンクは?」

ビクリとリンクの肩が震えた。

「い、いや?何でもないよ?」

マルスはため息を吐いた。

「そんな風に見えないから聞いているんだ。気になることがあるんだろう?」

ハァとリンクは息を吐いた。

「疑問が次々と湧いてきてね。」

「例えば?」

“……これは言っても大丈夫かな……。”

「トレーナーが言うように、解散したはずのロケット団が動いているのはどうしてか。一体誰が統率しているのか。一見クッパが率いているようにも見えたけど、本当にそうなのか。第一、トレーナーの世界のロケット団と、マリオの世界のクッパが手を組んでいるのは一体どういうことなのか。……考えれば考えるほど、深みにはまっていっているんだけど。」

マルスはチラリとリンクを見、自分も考え込んだ。

“確かにリンクの言う通り、おかしな点がたくさんある。でも、どうしてリンクはそれに気付いた?これも結成理由に関係ある……わけないか。”

「おいお前ら!そんなに考えたって仕方ないさ。この件は終わったんだ。もっと気楽に行こうぜ。」

マリオはどこまでも楽観主義だった。

「……そうだね。ごめん、今言ったことは忘れて。」

ぎこちない笑みを浮かべながら、リンクは言った。だが、マルスはしっかりと、その笑みが意味していることを理解していた―気になるものは気になる、というリンクの気持ちを。しかし、それを表に出すことはなかった。

「分かった。トレーナーも、そんなに悩んじゃダメだよ。」

「うん。」

「よっしゃ。それじゃ、会場まで競争だ!」

言うなり、マリオは走り出した。

「あ、マリオ、ずるいっ!」

トレーナーは慌ててそれを追いかける。リンクとマルスは顔を見合わせ、笑みをこぼすと二人に続いた。



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