第一回トーナメント戦!
プルルルル……プルルルル……。ターマスが去ってから初めて電話が鳴った。丁度みんなの部屋にいたマリオとフォックスは突然のことに一瞬フリーズした。
「なぁ、フォックス……これってどういう時に鳴るんだったっけ?」
「……忘れた。取り敢えずマリオ、出ろよ。」
「え、えぇ!?お、お前こそ」
「あれ?電話が鳴ってる。」
マリオとフォックスが幼稚な口論をしかけた時、ルイージがやってきた。そして、自然と電話をとる。
「もしもし?」
「その声はルイージさんですね?」
やはりというかなんというか、相手はターマスだった。
「うん、そうだよ。」
ルイージは普通に答えている。マリオはルイージの後ろに回り込み、受話器に耳を近付けた。
「皆さんに伝言をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「構わないよ。」
「そろそろ乱闘にも慣れてきたでしょうから、明日、トーナメントを行います。」
「はぁぁぁああ?」
「ちょ、ちょっと!兄さん!突然叫ばないでよ!」
「これが叫ばずに居られるか!いきなりすぎる」
その時、フォックスが後ろからマリオの口を塞いだ。ルイージに電話を続けるように、目で合図する。
「あ、えーと、ごめんね、ターマス。続けてよ。」
“……一体何があったというんだ……。”
ターマスは内心ため息を吐いた。が、おくびにも出さずに言葉を継いだ。
「明日の朝10時にそちらに伺いますので、それまでに心の準備をしておいてください、とお伝えください。こちらの用件は以上です。それでは。」
「あ、ちょっと待」
言うだけ言うと、ターマスはルイージの制止も聞かずに電話を切った。
「……何の電話だったんだ?」
フォックスが聞いた。
「ふぁなしぇよ(放せよ)。」
マリオが情けない声を出した。目が怖くなっている。
「あぁ、悪い。で?」
フォックスはマリオを放した。それを確認して、ルイージは答える。
「明日、トーナメントをやるんだって。」
「………は?」
フォックスはマリオの心情を理解した。
「…明日トーナメントを行う!?」
あの後、マリオ達は会場にいる人全員を集め、ターマスの伝言を伝えた。そして、先のファルコの叫びに至る。
「……また、なんて唐突な………。」
マルスはため息をついた。その隣でヨッシーが相づちを打っている。
「その対戦相手とかは決まってないの?」
サムスが普段に増して明るく言った。少なくともサムスは乗り気のようだ。
「さぁ。取り敢えず、明日来るとは言ってたよ。だから、詳しい説明は明日の朝にするんじゃない?」
「それにしても……準備って一体……。」
ピカチュウが首を傾げた。
「まぁ、取り敢えず知っとけってことだろ。」
ファルコンが答えた。
「ま、集めたっていっても伝えたかったのはこれだけだ。じゃ、解散。」
マリオの一言でお開きとなった。
“あぁ、恐れてたことがきたよ……。”
リンクは部屋に戻るとため息をついた。そのままベッドに寝転がる。
“前から決まってたことって考えればそうなんだけど……。”
そんな時、扉を叩く音がした。
「どうぞ?」
リンクは起き上がった。扉が開き、誰かが入ってくる。リンクはその人物を見ると、顔をしかめた。
「マルス………。」
マルスはそんなリンクを見て、苦笑いした。
「そんな嫌そうな顔をしないでほしいね。……とは言っても、君の思っている内容に近いけれど。」
リンクはため息をついた。
「何回聞かれても、オレは答えないよ。」
「うん、分かってる。今回は大会の目的を直接聞きにきたわけじゃないんだ。」
リンクは惚けた顔をした。因みに、マルスはターマスに大会の理由をリンクに聞け、と言われた時から何度もリンクを問い詰めていた。が、今までリンクはなんとかやり過ごしてきていた。それにしても、と、リンクは思う。大会の目的が知りたいのではなければ、一体何の用でマルスは来たのか?リンクはその疑問をストレートに投げた。
「じゃあ、何の用で?」
「僕と賭けをしないかい?」
「……………
……………
…………え?」
次の日の朝。10時頃には全員がみんなの部屋に集まっていた。そこへターマスがやってくる。
「おはようございます。皆さん、お揃いのようですね。」
「テメェが突然滅茶苦茶なことを言いだすからだ。気になって仕方がねぇ。」
ファルコが反発した。それに何人かが同調する。
「それはすみませんでした。では、本題に入ります。」
ターマスはファルコの抗議を軽く流すと、説明をはじめた。要約すると下のようになる。
・当然のことながら、トーナメント戦で勝ち抜け。
・1対1の真剣勝負とする。
・ルールはストック1。
・アイテムはなし。
・ステージは戦場。
・4つにグループを分け、最後にそれぞれの勝者どうしが闘う。
・つまり最後だけ4人で大乱闘。
・日程は今日から5日間。1日1グループ、最後の日に決勝戦と表彰式等。
・グループや対戦相手はターマスによる厳正なくじ引き(あみだくじ)で決めた。
・賞品はそれぞれの欲しい物(それぞれの世界のお金or食べ物or………etc)。
「ということです。何かご質問は?」
マリオが手を上げた。
「いつ始めるんだ?」
「お昼を食べた後でどうでしょう?今からですと、あまりにも急でしょうし、すぐにお昼になってしまいますから。」
マリオは頷いた。今日の当番であるルイージとフォックスはげっそりした顔になった。
「まだ作り初めてないよ……………。」
「もう行っていいか?」
「あぁ、昼食のことならご心配なく。もう作ってあります。」
2人はほっと息をついた。
「賞金はいくらぐらいもらえるの?」
「……そうですね………この世界でいう、50万円でどうでしょう?」
「……上等よ。」
サムスはにやりと笑った。
「他には?」
誰も何も言わなかった。ターマスは一通り全員を眺めると、
「では、まずは昼食を。」
と指を鳴らし、出した。
みんなはテーブルの方に行き、思い思いに昼食を取っている。リンクは彼らを一瞥してターマスに近づいた。
「……ターマス」
「ダメです。」
リンクを遮って短く言った。
「………まだ何も言ってないんだけど。」
リンクは顔をしかめた。
「あなたの言いたいことは分かっています。マルスさんのことでしょう?」
リンクは表情を変えずに頷いた。
「だったら、オレとマルス、どちらも一回戦負けするように仕組んでよ。」
「あなたらしくないことを。どうしてですか?」
「この大乱闘で賭けをすることになってしまったんだ。」
「勝てばいいのでは?」
「オレにそのつもりはない。」
ターマスはじっとリンクを見つめた。やがて、低い声で問う。
「実力を偽るつもりですか。」
「……そんな言い方しないでよ。みんな強いんだ。普段の乱闘を見て、よく分かってる。……オレは、味方と本気で闘いたくない。」
「ですが………」
「これは譲らない。」
迷うターマスを余所に、リンクはきっぱりと言った。
「…………もう対戦相手は決まっています。」
「だったら」
リンクは少々苛立ち始めていた。
「マルスが勝った場合、オレが話しても文句は言わないでよ。」
そう言い捨てると、昼食を食べに行ってしまった。残されたターマスは人知れずため息をついた。
一通り全員が昼食を食べ終え、彼らは会議室に移動した。そこには、いつの間に用意したのか、巨大なスクリーンがおいてあった。
「こちらが対戦相手です。」
ターマスはスクリーンに表を出した。
~Aグループ~
・シード
ファルコ
・1戦目
ルイージVSサムス
・2戦目
ドンキーVSアイクラ
・3戦目
リュカVSソニック
~Bグループ~
・シード
メタナイト
・1戦目
ピーチVSトレーナー
・2戦目
ファルコンVSピット
・3戦目
ディディVSスネーク
~Cグループ~
・シード
ルカリオ
・1戦目
リンクVSロイ
・2戦目
ゼルダVSオリマー
・3戦目
ネスVSカービィ
~Dグループ~
・シード
アイク
・1戦目
マリオVSプリン
・2戦目
ピカチュウVSヨッシー
・3戦目
マルスVSフォックス
“俺はロイと、か。そっちはいいや。問題は……マルス、だよな………。”
リンクはマルスの名前を探した。
“………あった。相手はフォックスか………。”
リンクが1人考え事をしているとマルスがやってきた。
「君はロイ、僕はフォックス。お互い、いきなり強敵だね。」
「……そうだね。」
リンクはやる気なく答えた。
「君がターマスに何か言ってたからちょっと心配したけど、安心したよ。」
リンクは何も言わなかった。
“……これ見る限りじゃ分かんないけど……ターマス、ちょっとは考えてくれたと思うよ……。”
その会話が聞こえていたターマスはこっそりため息を吐いた。
“……少々無理はしたさ。バラされるのだけは困るからな……………。”
ターマスはスクリーンの近くで何か操作していたが、みんなの方を振り向いた。
「では、始めましょうか。本日はAグループの方々です。では、1戦目、ルイージ対サムス!お二人は準備をしてきてください。コンの中に入ったら、いつもと同じように始まります。」
そうして、トーナメント戦がスタートした。
1戦目、ルイージ対サムス。これはサムスの圧勝で終わった。
2戦目、ドンキー対アイスクライマー。ナナは早いうちに脱落となったが、体力勝負の末、ポポがドンキーに勝利した。
3戦目、リュカ対ソニック。接戦だったが、ソニックのスピンアタックからのホーミングアタックが決まり、ソニックが勝利した。
4戦目、ファルコ対サムス。長期戦の結果、ファルコが勝ち星をとった。
5戦目、アイスクライマー対ソニック。アイスクライマーはドンキー戦での疲れがたたり、あえなく敗退。
6戦目、Aグループ最終戦、ファルコ対ソニック。良い戦いをして見せたが、勝利の女神はソニックに微笑んだ。
次の日、Bグループが同様に行われた。
1戦目、ピーチ対トレーナー。トレーナーは見事なポケモンさばきを見せたが、ピーチのお茶目な戦いぶりに振り回され続け、敗れた。
2戦目、ファルコン対ピット。力強さでファルコンが勝利を掴んだ。
3戦目、ディディ対スネーク。ディディの落ち着きのなさとスネークの冷静な戦闘態勢では、ディディに不利。スネークが勝利した。
4戦目、メタナイト対ピーチ。メタナイトはピーチの戦略にもぶれず、速攻でピーチを倒した。
5戦目、ファルコン対スネーク。力と頭脳の戦いと言っても差し支えない戦いだった。結果、スネークが勝利した。
6戦目、Bグループ最終戦、メタナイト対スネーク。頭脳戦の末、スネークが勝ちをとった。
3日目、Cグループ。とうとうリンクの番が来た。
「では、リンクさん、ロイさん。準備をお願いします。」
リンクはただ頷くと出て行った。ロイも追おうとする。その時、
「ロイ、頑張ってね。」
マルスから声がかかった。ロイは少し顔を引き攣らせた。が、それを悟らせないように慌てて普通を装い、
「おう。」
と言って、逃げるようにその場を後にした。
「ロイ、遅かったね。何かあったの?」
コンのところに行くと、リンクがすでに待っていた。
「何でもない。」
本当は少し動揺していたのだが、かろうじてそれだけ返す。
「そう……。」
リンクの普段と変わらぬ様子が、なんだかおかしかった。いや、なんだか物憂げに見えるのは俺だけか?
「じゃあ、ロイ。準備はいい?」
「あぁ。」
ふにゃりと、リンクが笑った。それにやっぱり違和感を覚えずにはいられなかった。
「なぁ、お前は大丈夫なのかよ?」
「え?何が?」
「何か……様子が変だぞ。」
「そうかな?気のせいじゃない?」
ドキッとした。リンクはばれないように深呼吸をする。まさか、ロイに勘ぐられるような事態になるなんて。
“……さっさと始めてさっさと終わらせよう。”
リンクはそう思うと言った。
「コン、お願いね。」
3……2……1……GO!
「始まったねぇ~、リンク対ロイの戦い。」
「うん。あ、今回の実況は僕、ピカチュウとカービィです。」
ちなみに、毎試合ごとに実況が入る。今回の実況は上記の二人だ。
「リンク、ロイ、がんばれ~~~。」
「……………こっちの方は頑張って無視してね。」
「……なんか、やる気の出ない実況だな。」
「……同感。でも、ピカチュウもあぁ言ってるし、お手柔らかにね、ロイ。」
にこり。リンクは笑みをロイに向けた。
「冗談。本気で行くぜ?」
にこり。ロイも笑みをリンクに向けた。剣を前に突き出して威嚇して見せる。しかし、こちらは些か堅い。
“マルスに脅されてんだ。勝たせて貰うぜ、リンク!!”
“本気で来なよ、ロイ。その方がこっちも楽だから。”
その刹那、キン、と金属独特の高い音が鳴り響いた。
「うわぁ~、ピカチュウピカチュウ、やっぱすごいよ!!ボクもときどき剣を使うけど、あんな闘い方はできないや。」
カービィは画面ギリギリまで近づき、試合を食い入るように見ながら短い手をパタパタ動かしていた。時折叫んでいる。それを横目に見ながら、ピカチュウはやれやれと首を振った。
「……うん、分かったから、実況しよう?」
すると、本来の仕事を思い出したようで、カービィはマイクの前に戻ってきた。
「えっと……?どうなったっけ?」
“……ねぇ、ターマス。なんで僕らにこんなこと頼んだの?人選ミスだよね?絶対何かの間違いだよね??”
ピカチュウは空を仰いだ。が、心の嘆きに答える者はいない。
「ピカチュウ?」
「うん、あー……えーとね、もうだいぶ進んでるみたいだからおさらいするとね、リンク、ロイがぶつかった後、暫くリンクに優勢だったんだけど、あるときから………あれ、ガラッと変わったはずなのに違和感なかったな……。」
「ピカチュウ、逸れたよ。」
ともすれば考え込みそうなピカチュウをカービィが引き戻す。彼も遊んでばかりいるわけではなかった。
「あ、ごめんなさい。それで……そうそう、あるときからロイに優勢になったんだ。今もまだロイの方に風は吹いてるかな。」
ピカチュウがまとめ終えると、パン!とカービィが手を叩いた。
「はい、ピカチュウお疲れ!!ここからは同時進行で ちゃんと お送りします!はい、現在ロイとリンクは崖っぷちの闘いです。さっきのピカチュウの話からも分かるように、危ないのはリンクの方です。リンクが挽回するのか!?ロイが押し切るのか!?ここからが見物です!!」
いきなりスイッチの入れ替わったカービィ。実は端に追いやられていた(両方のマイクを占領されてしまった)ピカチュウは空笑いした。
“……なんだ、やればできるじゃん。”
「さっきの威勢はどうしたんだよ?カービィにもあんな風に言われてるぜ?」
実はお調子者であったロイは、この場を楽しんでいた。挑発などという、考えなしにやれば自殺行為であることまでやってのけている。
“本当だよ。”
リンクは心の中で答えた。ロイの挑発に乗るつもりはない。むしろ、リンクには勝つ気などさらさらなかった。
“ここからが見物って……。もう終わらせてもいいかな……?”
ロイが剣を振り下ろした。リンクは受け止める。
“……今なら楽に終わらせられるんだけど……まぁ、初めに応戦したからいいかな……そういえば、ロイに当ててなかったよな……って!!”
リンクはバランスを崩して前のめりになった。ロイがいきなり力を抜いたのだ。
「もらった!!」
ロイは再び剣を振り下ろした。が、リンクはバランスを取り直すと、身を翻し、寸でのところでまたしてもロイの攻撃を防いだ。
「おおぉぉ!!リンク、すごいです!ロイの渾身の一撃を、綺麗な身のこなしで、しかも、あの場所、タイミング、共にギリギリのところで受け止めました!!ここまでかと思いきや、リンクも簡単にはやられません!って、ええぇ!?リンク、ダメだよ!!ここからが本番でしょ!?」
ピカチュウは騒ぐカービィを押しのけてマイクを取り戻した。
「……リンク、力負けしたみたいだね。ロイに押し出されて、場外になっちゃった。復帰してくる気配もないよ。」
ゲームセット!
「…………なんか納得いかねぇ。」
ロイは落ちていったリンクを睨みつけていた。
「待てよ、リンク!!」
メインルーム。ロイはコンから出ると、部屋を後にしようとしていたリンクを強い口調で引き止めた。
「……どうし」
ロイは、立ち止まったリンクの襟首をつかんだ。思わずリンクは言葉を失う。
「……本気じゃなかっただろ。」
“……うん、その点に関してはすごく申し訳なく思ってる。でも…あれが限界だ……あいつ以外は。”
リンクは心の中で謝罪する。が、表面には全く出さなかった。
「……ロイ、君、自分の実力に自信ないの?」
「んなわけあるか!!」
ロイが吠えた。リンクを見る目がより鋭くなった。
「じゃあ、なんでそんなこと。オレはオレの闘いをした。その上で君に負けちゃったんだ。」
「だけど」
「ねぇ、ロイ。早く戻ろう。皆を待たせちゃダメだよ。」
リンクはロイの拘束からするりと逃れた。そして行ってしまう。
「……ごまかしやがった。」
が、それ以上はどうすることも出来ず、ロイもリンクを追った。
その日、Cグループで勝ち抜いたのはルカリオだった。
その日の夜、マルスは廊下で部屋に戻ろうとするリンクを捕まえた。
「負けちゃったね、リンク。さぁ、この大会の目的を」
「まだだ。」
リンクはマルスを遮って言った。その顔は些か固かった。
「リンク、往生際が悪いよ。」
マルスは腕を組んでリンクを睨みつけた。対してリンクは、ひるむまいとその目を見つめ返した。
「確かにオレは、ロイとの試合に負けたけど。まだ賭けに負けたかどうかは決まっていない。」
「どういう意味だい?」
マルスは眉間に皺を寄せた。リンクは一拍おいてから言った。
「マルスが負ければ、賭けに勝ったも負けたもない。引き分けだ。」
するとマルスは、怪しい笑みを浮かべた。
「ふーん……なるほど。じゃあ、僕がフォックスに勝てばいいんだね。まぁ、見てなよ。明日、勝って見せるから。」
そして、悠々とその場を去っていった。
「……なんだ、今の会話。」
そこへ突然第三者の声がした。
「うわっ!びっくりした……。」
リンクが慌てて振り向くと、そこにはフォックスがいた。フォックスはやれやれとため息を吐いた。
「そんなに驚くなよ……。で?」
「え、えーと……。フォックス、お願いだから明日、マルスにだけは勝って!!」
リンクは説明するどころか、唐突に頼み込んだ。リンクのいきなりな頼みに、フォックスはポカンとした顔をした。
「は?いきなりなんだよ?」
「ちょっと賭け事をしていて……。オレ、負けちゃったから、もう後がないんだ……!!」
必死でリンクは頼み込む。フォックスは頭をかいた。
「そんなこと言われてもなぁ……お前が負けたように、俺に勝つ保証はないぞ。」
フォックスは至極真っ当なことを述べる。
「そうなんだけど……お願いします。」
リンクは力なく、頭を下げた。
「何を賭けたのか知らねぇが……ま、せいぜい頑張るよ。」
そんなリンクを不憫に思ったか、一応無難に頑張る旨を伝えるフォックス。リンクはただ、
「うん、応援しています。」
と言った。しばらく沈黙が流れた。やがて、フォックスは再びため息を吐いた。
「……何賭けたか言う気ねーな、お前……。」
「……ごめんなさい。」
「はぁ……珍しく頼み事をしてきたかと思えば無理難題かよ……。」
フォックスはやれやれと手を挙げた。そして、ポン、とリンクの頭を軽くはたいた。
「お前も無茶な賭けすんな。」
「ハイ……。」
“……一方的に賭けさせられたんだけど……。”
リンクの心の嘆きはフォックスには届かなかった。
「全く。一応全力は尽くすが、期待すんなよ。」
フォックスは行ってしまった。残されたリンクは叩かれたところをさすっていた。
4日目になった。Dグループの日だ。マルスとフォックスは3試合目に入っていた。順調に試合が進んでいく。1試合目はマリオが、2試合目はヨッシーが勝利を収めた。
「では、次。マルスさん、フォックスさん、準備をお願いします。」
すく、とマルスは立ち上がった。
「ようやく僕達だね。じゃあ、行こうか、フォックス。」
「あぁ。」
マルスとフォックスが示し合わせたかのようにリンクを見た。リンクはとても不安そうな表情を浮かべて二人を見ていた。それにマルスはニヤリと笑い、フォックスは苦笑いを残して部屋を後にした。
「じゃあ、行くよ、フォックス。」
「俺はいつでも大丈夫だ。」
「それじゃあ。コン、頼んだよ。」
「了解いたしました。」
3……2……1……GO!
「さぁ、フォックス。かかっておいでよ。」
“ここで勝てれば、リンクの口を割れるんだ。”
「望むところだ!」
“何を企んでいるかは知らないが、本気でいくぜっ!!”
「はじめっから白熱しているね。」
トレーナーが言うと、ゼニガメが同調した。
「うん、すごーい!!」
その様子を見ながら苦笑いするフシギソウ。そして、しなければならないことを示す。
「ハイハイ、分かったから、早く自己紹介してよ。ほら、リンクも。」
「あ、うん。今回実況をするのは、僕、トレーナーとポケモン達、そして、」
「リンクです。」
“何でこんな時にオレなんだ……。”
リンクは弱々しく言う。トレーナーは画面から一度視線を外し、リンクを振り返った。
「……リンク、なんでそんなに離れているの?そこからだと実況できないじゃないか。」
そう、リンクは画面が見えないくらいの位置に下がっていた。もちろんマイクに声は届きそうにない。
「ごめん、オレ、今客観的にものを見れないから、トレーナー達に任せます……。」
「仕事放棄するな。」
リンクが弱々しく言うと、リザードンから厳しい一言が飛んできた。が、フシギソウがやれやれといった風に言う。
「リザードンもする気ないでしょ。」
ふいとリザードンはそっぽを向いた。トレーナーはため息を吐いて画面を見やった。
「二人とも言い戦いをしているね。ゼニガメ、どっち優勢だと思う?」
「うーん、マルスかな。さっきから攻撃当てているのはマルスだし。でもフォックスも頑張ってるよ。」
「そうだね。マルスは近距離戦に強いから近づこうとする。フォックスはどっちもいけるから、出来るだけ離れようとしている気がするね。」
「あ、今、マルスの強い一撃がフォックスに入ったよ!あれは痛いんじゃないかな。」
フシギソウのその言葉を聞いて、リンクはスッと息を飲んだ。フシギソウの言葉は続く。
「でもフォックスもギリギリのところでふんばった……。」
リンクのゆっくり息を吐く音が聞こえた。
「あー、そのままフォックスイリュージョンが炸裂!!今度はマルスが危ない!けどマルスも耐えたね。これは分からない試合になってきたよ。……ところで。」
フシギソウが振り返った。
「リンク、さっきからどうしたの?」
「ごめん、聞かないで……。」
リンクは額に手をやってうなだれた。
マルスとフォックスはステージの両端に立って、向かい合っていた。お互い戦闘体制は崩していない。無言の数秒間が続いた。そこへフォックスがブラスターを撃つ。マルスは緊急回避でそれを避けた。が、追い打ちのようにフォックスのファイアフォックスが炸裂!それをもろに受けたマルス。ステージから押し出される。だが、それでも負けまいとドルフィンスラッシュで復帰した。フォックスが舌打ちをする。戻ってきたマルスにフォックスイリュージョンをお見舞いするフォックス。さすがに避けきれず、再びマルスは吹っ飛んだ。
“こんなところで負けるわけにはいかないんだ……!!”
マルスはなんとか踏ん張ろうとした。が、そこに容赦ないブラスターの連撃。
「これは戻ってこれないね、マルス。」
「フォックスに軍配あり、かな。」
トレーナーとフシギソウの声を聞いて、リンクは胸を撫で下ろした。そして、試合の進行具合に一喜一憂していた自分に気付いた。そんな自分にリンクは苦笑する。
“なんでこんな時に、って思ったけど……みんなの前でこんな様見せられないな……。”
ゲームセット!
「はぁ……ギリギリの戦いだったぜ。」
その後、Dグループで勝利を収めたのはアイクだった。
その日、リンクが部屋でくつろいでいると、またしてもノックをする音がした。
「……どうぞ?」
リンクが言うと、入ってきたのはやはりマルスだった。
「何の用?」
リンクは背筋をピンと伸ばした。警戒体制を整える。それを見たマルスは噴き出した。
「そんなに身構えないで。今回の賭けは引き分けだ、そうだろう?」
リンクはそれでも警戒心をとかなかった。
「そのはずだけど。」
「全く。ようやく君の口を割れると思ったのに。まさかこの僕が負けてしまうなんてね。」
「お互い強敵だと言ったのは、マルスだったと思うけど。」
リンクが指摘すると、マルスは笑い出した。
「あはは、そうだったね。ロイもフォックスも簡単にやられてくれる相手ではなかった。お互い、不運だったね。」
“オレは勝つつもりはなかったけどね。”
リンクは心の中でつぶやいた。それには全く気付かずに、マルスは言葉を続ける。
「トーナメントを出しにするのはやめにするよ。トレーナーに聞いた話だと、君は僕たちの試合中、ハラハラし通しだったみたいだし。」
「トレーナーに聞いたの!?」
リンクが驚いて聞くと、マルスは頷いた。
「君の様子が知りたくてね。聞いた話だと実況室にいたらしいじゃないか。全然声が聞こえてこなかったから、みんなと一緒にいたのかと思っていたのに。それにしても、見たかったなぁ。君の動揺しきった顔。」
リンクはムスッとした顔をした。
「見られてなくて本当によかったよ。」
「否定しないんだね。」
「……否定は、できないから。」
クスリ、とマルスは笑った。
「ところで、この大会の目的」
「お引き取り願えますか?」
最後のリンクの声は少々大きかった。
最終日、各グループの代表者が大乱闘を行った。ちなみに代表者は、Aグループから順にソニック、スネーク、ルカリオ、アイクだった。誰が勝ってもおかしくないほどの接戦。入り乱れる4人。時には相手を吹き飛ばし、時には誰かに吹き飛ばされ。それでも負けまいと復帰する。残ったメンバーは試合の成り行きを息を飲んで見守った。まず最初に脱落したのはアイクだった。ソニック相手に天空をお見舞いした直後、ルカリオにはっけいを決められた。復帰を試みるが、あえなく失敗。一方ソニックは無事に帰還を果たしていた。アイクが脱落した後も、激戦は続き、次にスネークがやられた。最終的にソニックとルカリオの一騎打ちとなった。………そして。
「おめでとうございます。優勝者はルカリオです。」
ターマスが言うと、パチパチパチパチと拍手のなる音がした。おめでとー、とかルカリオすごーいとか言う声も聞こえてくる。
「やっぱ最後は見ごたえのある戦いだったよな。」
マリオがしみじみと言った。
「ま、そうでなくちゃ。みんなを勝ち抜いてあの場に立ったのだからさ。」
ロイがマリオに同調して言う。
「それにしても、悔しい!私が優勝したかったわ。」
サムスが悔しさをにじませて言う。ファルコンがサムスの肩をポンポンと叩いた。
「まぁそう悔しがるなって。今回は力が及ばなかった。もしくは運がなかった、か。次のトーナメントに向けて精進しておくことだな。」
サムスはふぅと息を吐いた。
「えぇ、そうね。次までに特訓しておくわ。」
「ところで、ルカリオさん。優勝の賞品はいかがいたしましょうか?」
ルカリオが言葉に詰まった。みんなの視線を一身に受ける。
「それなのだが……私は強さのみを求める。他に欲しいものはない。」
一瞬静まりかえる場。が、すぐにざわめきを取り戻した。
「えー、ルカリオ、欲がなさすぎるよ!」
「ルカリオらしいと言えばルカリオらしいかな。」
等、それぞれの感想を述べる。ルカリオは困ったように俯いた。
「では、こうしたらどうでしょう?」
ターマスは全く動じずに、新たに提案する。
「何かあなたの欲しいものができたときに、それを私に要求する。それまでは賞品に関しては保留と言うことで。」
ルカリオは笑った。
「そうしてもらえるとありがたい。」
こうして、第一回目のトーナメントは幕を閉じた。
.
「なぁ、フォックス……これってどういう時に鳴るんだったっけ?」
「……忘れた。取り敢えずマリオ、出ろよ。」
「え、えぇ!?お、お前こそ」
「あれ?電話が鳴ってる。」
マリオとフォックスが幼稚な口論をしかけた時、ルイージがやってきた。そして、自然と電話をとる。
「もしもし?」
「その声はルイージさんですね?」
やはりというかなんというか、相手はターマスだった。
「うん、そうだよ。」
ルイージは普通に答えている。マリオはルイージの後ろに回り込み、受話器に耳を近付けた。
「皆さんに伝言をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「構わないよ。」
「そろそろ乱闘にも慣れてきたでしょうから、明日、トーナメントを行います。」
「はぁぁぁああ?」
「ちょ、ちょっと!兄さん!突然叫ばないでよ!」
「これが叫ばずに居られるか!いきなりすぎる」
その時、フォックスが後ろからマリオの口を塞いだ。ルイージに電話を続けるように、目で合図する。
「あ、えーと、ごめんね、ターマス。続けてよ。」
“……一体何があったというんだ……。”
ターマスは内心ため息を吐いた。が、おくびにも出さずに言葉を継いだ。
「明日の朝10時にそちらに伺いますので、それまでに心の準備をしておいてください、とお伝えください。こちらの用件は以上です。それでは。」
「あ、ちょっと待」
言うだけ言うと、ターマスはルイージの制止も聞かずに電話を切った。
「……何の電話だったんだ?」
フォックスが聞いた。
「ふぁなしぇよ(放せよ)。」
マリオが情けない声を出した。目が怖くなっている。
「あぁ、悪い。で?」
フォックスはマリオを放した。それを確認して、ルイージは答える。
「明日、トーナメントをやるんだって。」
「………は?」
フォックスはマリオの心情を理解した。
「…明日トーナメントを行う!?」
あの後、マリオ達は会場にいる人全員を集め、ターマスの伝言を伝えた。そして、先のファルコの叫びに至る。
「……また、なんて唐突な………。」
マルスはため息をついた。その隣でヨッシーが相づちを打っている。
「その対戦相手とかは決まってないの?」
サムスが普段に増して明るく言った。少なくともサムスは乗り気のようだ。
「さぁ。取り敢えず、明日来るとは言ってたよ。だから、詳しい説明は明日の朝にするんじゃない?」
「それにしても……準備って一体……。」
ピカチュウが首を傾げた。
「まぁ、取り敢えず知っとけってことだろ。」
ファルコンが答えた。
「ま、集めたっていっても伝えたかったのはこれだけだ。じゃ、解散。」
マリオの一言でお開きとなった。
“あぁ、恐れてたことがきたよ……。”
リンクは部屋に戻るとため息をついた。そのままベッドに寝転がる。
“前から決まってたことって考えればそうなんだけど……。”
そんな時、扉を叩く音がした。
「どうぞ?」
リンクは起き上がった。扉が開き、誰かが入ってくる。リンクはその人物を見ると、顔をしかめた。
「マルス………。」
マルスはそんなリンクを見て、苦笑いした。
「そんな嫌そうな顔をしないでほしいね。……とは言っても、君の思っている内容に近いけれど。」
リンクはため息をついた。
「何回聞かれても、オレは答えないよ。」
「うん、分かってる。今回は大会の目的を直接聞きにきたわけじゃないんだ。」
リンクは惚けた顔をした。因みに、マルスはターマスに大会の理由をリンクに聞け、と言われた時から何度もリンクを問い詰めていた。が、今までリンクはなんとかやり過ごしてきていた。それにしても、と、リンクは思う。大会の目的が知りたいのではなければ、一体何の用でマルスは来たのか?リンクはその疑問をストレートに投げた。
「じゃあ、何の用で?」
「僕と賭けをしないかい?」
「……………
……………
…………え?」
次の日の朝。10時頃には全員がみんなの部屋に集まっていた。そこへターマスがやってくる。
「おはようございます。皆さん、お揃いのようですね。」
「テメェが突然滅茶苦茶なことを言いだすからだ。気になって仕方がねぇ。」
ファルコが反発した。それに何人かが同調する。
「それはすみませんでした。では、本題に入ります。」
ターマスはファルコの抗議を軽く流すと、説明をはじめた。要約すると下のようになる。
・当然のことながら、トーナメント戦で勝ち抜け。
・1対1の真剣勝負とする。
・ルールはストック1。
・アイテムはなし。
・ステージは戦場。
・4つにグループを分け、最後にそれぞれの勝者どうしが闘う。
・つまり最後だけ4人で大乱闘。
・日程は今日から5日間。1日1グループ、最後の日に決勝戦と表彰式等。
・グループや対戦相手はターマスによる厳正なくじ引き(あみだくじ)で決めた。
・賞品はそれぞれの欲しい物(それぞれの世界のお金or食べ物or………etc)。
「ということです。何かご質問は?」
マリオが手を上げた。
「いつ始めるんだ?」
「お昼を食べた後でどうでしょう?今からですと、あまりにも急でしょうし、すぐにお昼になってしまいますから。」
マリオは頷いた。今日の当番であるルイージとフォックスはげっそりした顔になった。
「まだ作り初めてないよ……………。」
「もう行っていいか?」
「あぁ、昼食のことならご心配なく。もう作ってあります。」
2人はほっと息をついた。
「賞金はいくらぐらいもらえるの?」
「……そうですね………この世界でいう、50万円でどうでしょう?」
「……上等よ。」
サムスはにやりと笑った。
「他には?」
誰も何も言わなかった。ターマスは一通り全員を眺めると、
「では、まずは昼食を。」
と指を鳴らし、出した。
みんなはテーブルの方に行き、思い思いに昼食を取っている。リンクは彼らを一瞥してターマスに近づいた。
「……ターマス」
「ダメです。」
リンクを遮って短く言った。
「………まだ何も言ってないんだけど。」
リンクは顔をしかめた。
「あなたの言いたいことは分かっています。マルスさんのことでしょう?」
リンクは表情を変えずに頷いた。
「だったら、オレとマルス、どちらも一回戦負けするように仕組んでよ。」
「あなたらしくないことを。どうしてですか?」
「この大乱闘で賭けをすることになってしまったんだ。」
「勝てばいいのでは?」
「オレにそのつもりはない。」
ターマスはじっとリンクを見つめた。やがて、低い声で問う。
「実力を偽るつもりですか。」
「……そんな言い方しないでよ。みんな強いんだ。普段の乱闘を見て、よく分かってる。……オレは、味方と本気で闘いたくない。」
「ですが………」
「これは譲らない。」
迷うターマスを余所に、リンクはきっぱりと言った。
「…………もう対戦相手は決まっています。」
「だったら」
リンクは少々苛立ち始めていた。
「マルスが勝った場合、オレが話しても文句は言わないでよ。」
そう言い捨てると、昼食を食べに行ってしまった。残されたターマスは人知れずため息をついた。
一通り全員が昼食を食べ終え、彼らは会議室に移動した。そこには、いつの間に用意したのか、巨大なスクリーンがおいてあった。
「こちらが対戦相手です。」
ターマスはスクリーンに表を出した。
~Aグループ~
・シード
ファルコ
・1戦目
ルイージVSサムス
・2戦目
ドンキーVSアイクラ
・3戦目
リュカVSソニック
~Bグループ~
・シード
メタナイト
・1戦目
ピーチVSトレーナー
・2戦目
ファルコンVSピット
・3戦目
ディディVSスネーク
~Cグループ~
・シード
ルカリオ
・1戦目
リンクVSロイ
・2戦目
ゼルダVSオリマー
・3戦目
ネスVSカービィ
~Dグループ~
・シード
アイク
・1戦目
マリオVSプリン
・2戦目
ピカチュウVSヨッシー
・3戦目
マルスVSフォックス
“俺はロイと、か。そっちはいいや。問題は……マルス、だよな………。”
リンクはマルスの名前を探した。
“………あった。相手はフォックスか………。”
リンクが1人考え事をしているとマルスがやってきた。
「君はロイ、僕はフォックス。お互い、いきなり強敵だね。」
「……そうだね。」
リンクはやる気なく答えた。
「君がターマスに何か言ってたからちょっと心配したけど、安心したよ。」
リンクは何も言わなかった。
“……これ見る限りじゃ分かんないけど……ターマス、ちょっとは考えてくれたと思うよ……。”
その会話が聞こえていたターマスはこっそりため息を吐いた。
“……少々無理はしたさ。バラされるのだけは困るからな……………。”
ターマスはスクリーンの近くで何か操作していたが、みんなの方を振り向いた。
「では、始めましょうか。本日はAグループの方々です。では、1戦目、ルイージ対サムス!お二人は準備をしてきてください。コンの中に入ったら、いつもと同じように始まります。」
そうして、トーナメント戦がスタートした。
1戦目、ルイージ対サムス。これはサムスの圧勝で終わった。
2戦目、ドンキー対アイスクライマー。ナナは早いうちに脱落となったが、体力勝負の末、ポポがドンキーに勝利した。
3戦目、リュカ対ソニック。接戦だったが、ソニックのスピンアタックからのホーミングアタックが決まり、ソニックが勝利した。
4戦目、ファルコ対サムス。長期戦の結果、ファルコが勝ち星をとった。
5戦目、アイスクライマー対ソニック。アイスクライマーはドンキー戦での疲れがたたり、あえなく敗退。
6戦目、Aグループ最終戦、ファルコ対ソニック。良い戦いをして見せたが、勝利の女神はソニックに微笑んだ。
次の日、Bグループが同様に行われた。
1戦目、ピーチ対トレーナー。トレーナーは見事なポケモンさばきを見せたが、ピーチのお茶目な戦いぶりに振り回され続け、敗れた。
2戦目、ファルコン対ピット。力強さでファルコンが勝利を掴んだ。
3戦目、ディディ対スネーク。ディディの落ち着きのなさとスネークの冷静な戦闘態勢では、ディディに不利。スネークが勝利した。
4戦目、メタナイト対ピーチ。メタナイトはピーチの戦略にもぶれず、速攻でピーチを倒した。
5戦目、ファルコン対スネーク。力と頭脳の戦いと言っても差し支えない戦いだった。結果、スネークが勝利した。
6戦目、Bグループ最終戦、メタナイト対スネーク。頭脳戦の末、スネークが勝ちをとった。
3日目、Cグループ。とうとうリンクの番が来た。
「では、リンクさん、ロイさん。準備をお願いします。」
リンクはただ頷くと出て行った。ロイも追おうとする。その時、
「ロイ、頑張ってね。」
マルスから声がかかった。ロイは少し顔を引き攣らせた。が、それを悟らせないように慌てて普通を装い、
「おう。」
と言って、逃げるようにその場を後にした。
「ロイ、遅かったね。何かあったの?」
コンのところに行くと、リンクがすでに待っていた。
「何でもない。」
本当は少し動揺していたのだが、かろうじてそれだけ返す。
「そう……。」
リンクの普段と変わらぬ様子が、なんだかおかしかった。いや、なんだか物憂げに見えるのは俺だけか?
「じゃあ、ロイ。準備はいい?」
「あぁ。」
ふにゃりと、リンクが笑った。それにやっぱり違和感を覚えずにはいられなかった。
「なぁ、お前は大丈夫なのかよ?」
「え?何が?」
「何か……様子が変だぞ。」
「そうかな?気のせいじゃない?」
ドキッとした。リンクはばれないように深呼吸をする。まさか、ロイに勘ぐられるような事態になるなんて。
“……さっさと始めてさっさと終わらせよう。”
リンクはそう思うと言った。
「コン、お願いね。」
3……2……1……GO!
「始まったねぇ~、リンク対ロイの戦い。」
「うん。あ、今回の実況は僕、ピカチュウとカービィです。」
ちなみに、毎試合ごとに実況が入る。今回の実況は上記の二人だ。
「リンク、ロイ、がんばれ~~~。」
「……………こっちの方は頑張って無視してね。」
「……なんか、やる気の出ない実況だな。」
「……同感。でも、ピカチュウもあぁ言ってるし、お手柔らかにね、ロイ。」
にこり。リンクは笑みをロイに向けた。
「冗談。本気で行くぜ?」
にこり。ロイも笑みをリンクに向けた。剣を前に突き出して威嚇して見せる。しかし、こちらは些か堅い。
“マルスに脅されてんだ。勝たせて貰うぜ、リンク!!”
“本気で来なよ、ロイ。その方がこっちも楽だから。”
その刹那、キン、と金属独特の高い音が鳴り響いた。
「うわぁ~、ピカチュウピカチュウ、やっぱすごいよ!!ボクもときどき剣を使うけど、あんな闘い方はできないや。」
カービィは画面ギリギリまで近づき、試合を食い入るように見ながら短い手をパタパタ動かしていた。時折叫んでいる。それを横目に見ながら、ピカチュウはやれやれと首を振った。
「……うん、分かったから、実況しよう?」
すると、本来の仕事を思い出したようで、カービィはマイクの前に戻ってきた。
「えっと……?どうなったっけ?」
“……ねぇ、ターマス。なんで僕らにこんなこと頼んだの?人選ミスだよね?絶対何かの間違いだよね??”
ピカチュウは空を仰いだ。が、心の嘆きに答える者はいない。
「ピカチュウ?」
「うん、あー……えーとね、もうだいぶ進んでるみたいだからおさらいするとね、リンク、ロイがぶつかった後、暫くリンクに優勢だったんだけど、あるときから………あれ、ガラッと変わったはずなのに違和感なかったな……。」
「ピカチュウ、逸れたよ。」
ともすれば考え込みそうなピカチュウをカービィが引き戻す。彼も遊んでばかりいるわけではなかった。
「あ、ごめんなさい。それで……そうそう、あるときからロイに優勢になったんだ。今もまだロイの方に風は吹いてるかな。」
ピカチュウがまとめ終えると、パン!とカービィが手を叩いた。
「はい、ピカチュウお疲れ!!ここからは同時進行で ちゃんと お送りします!はい、現在ロイとリンクは崖っぷちの闘いです。さっきのピカチュウの話からも分かるように、危ないのはリンクの方です。リンクが挽回するのか!?ロイが押し切るのか!?ここからが見物です!!」
いきなりスイッチの入れ替わったカービィ。実は端に追いやられていた(両方のマイクを占領されてしまった)ピカチュウは空笑いした。
“……なんだ、やればできるじゃん。”
「さっきの威勢はどうしたんだよ?カービィにもあんな風に言われてるぜ?」
実はお調子者であったロイは、この場を楽しんでいた。挑発などという、考えなしにやれば自殺行為であることまでやってのけている。
“本当だよ。”
リンクは心の中で答えた。ロイの挑発に乗るつもりはない。むしろ、リンクには勝つ気などさらさらなかった。
“ここからが見物って……。もう終わらせてもいいかな……?”
ロイが剣を振り下ろした。リンクは受け止める。
“……今なら楽に終わらせられるんだけど……まぁ、初めに応戦したからいいかな……そういえば、ロイに当ててなかったよな……って!!”
リンクはバランスを崩して前のめりになった。ロイがいきなり力を抜いたのだ。
「もらった!!」
ロイは再び剣を振り下ろした。が、リンクはバランスを取り直すと、身を翻し、寸でのところでまたしてもロイの攻撃を防いだ。
「おおぉぉ!!リンク、すごいです!ロイの渾身の一撃を、綺麗な身のこなしで、しかも、あの場所、タイミング、共にギリギリのところで受け止めました!!ここまでかと思いきや、リンクも簡単にはやられません!って、ええぇ!?リンク、ダメだよ!!ここからが本番でしょ!?」
ピカチュウは騒ぐカービィを押しのけてマイクを取り戻した。
「……リンク、力負けしたみたいだね。ロイに押し出されて、場外になっちゃった。復帰してくる気配もないよ。」
ゲームセット!
「…………なんか納得いかねぇ。」
ロイは落ちていったリンクを睨みつけていた。
「待てよ、リンク!!」
メインルーム。ロイはコンから出ると、部屋を後にしようとしていたリンクを強い口調で引き止めた。
「……どうし」
ロイは、立ち止まったリンクの襟首をつかんだ。思わずリンクは言葉を失う。
「……本気じゃなかっただろ。」
“……うん、その点に関してはすごく申し訳なく思ってる。でも…あれが限界だ……あいつ以外は。”
リンクは心の中で謝罪する。が、表面には全く出さなかった。
「……ロイ、君、自分の実力に自信ないの?」
「んなわけあるか!!」
ロイが吠えた。リンクを見る目がより鋭くなった。
「じゃあ、なんでそんなこと。オレはオレの闘いをした。その上で君に負けちゃったんだ。」
「だけど」
「ねぇ、ロイ。早く戻ろう。皆を待たせちゃダメだよ。」
リンクはロイの拘束からするりと逃れた。そして行ってしまう。
「……ごまかしやがった。」
が、それ以上はどうすることも出来ず、ロイもリンクを追った。
その日、Cグループで勝ち抜いたのはルカリオだった。
その日の夜、マルスは廊下で部屋に戻ろうとするリンクを捕まえた。
「負けちゃったね、リンク。さぁ、この大会の目的を」
「まだだ。」
リンクはマルスを遮って言った。その顔は些か固かった。
「リンク、往生際が悪いよ。」
マルスは腕を組んでリンクを睨みつけた。対してリンクは、ひるむまいとその目を見つめ返した。
「確かにオレは、ロイとの試合に負けたけど。まだ賭けに負けたかどうかは決まっていない。」
「どういう意味だい?」
マルスは眉間に皺を寄せた。リンクは一拍おいてから言った。
「マルスが負ければ、賭けに勝ったも負けたもない。引き分けだ。」
するとマルスは、怪しい笑みを浮かべた。
「ふーん……なるほど。じゃあ、僕がフォックスに勝てばいいんだね。まぁ、見てなよ。明日、勝って見せるから。」
そして、悠々とその場を去っていった。
「……なんだ、今の会話。」
そこへ突然第三者の声がした。
「うわっ!びっくりした……。」
リンクが慌てて振り向くと、そこにはフォックスがいた。フォックスはやれやれとため息を吐いた。
「そんなに驚くなよ……。で?」
「え、えーと……。フォックス、お願いだから明日、マルスにだけは勝って!!」
リンクは説明するどころか、唐突に頼み込んだ。リンクのいきなりな頼みに、フォックスはポカンとした顔をした。
「は?いきなりなんだよ?」
「ちょっと賭け事をしていて……。オレ、負けちゃったから、もう後がないんだ……!!」
必死でリンクは頼み込む。フォックスは頭をかいた。
「そんなこと言われてもなぁ……お前が負けたように、俺に勝つ保証はないぞ。」
フォックスは至極真っ当なことを述べる。
「そうなんだけど……お願いします。」
リンクは力なく、頭を下げた。
「何を賭けたのか知らねぇが……ま、せいぜい頑張るよ。」
そんなリンクを不憫に思ったか、一応無難に頑張る旨を伝えるフォックス。リンクはただ、
「うん、応援しています。」
と言った。しばらく沈黙が流れた。やがて、フォックスは再びため息を吐いた。
「……何賭けたか言う気ねーな、お前……。」
「……ごめんなさい。」
「はぁ……珍しく頼み事をしてきたかと思えば無理難題かよ……。」
フォックスはやれやれと手を挙げた。そして、ポン、とリンクの頭を軽くはたいた。
「お前も無茶な賭けすんな。」
「ハイ……。」
“……一方的に賭けさせられたんだけど……。”
リンクの心の嘆きはフォックスには届かなかった。
「全く。一応全力は尽くすが、期待すんなよ。」
フォックスは行ってしまった。残されたリンクは叩かれたところをさすっていた。
4日目になった。Dグループの日だ。マルスとフォックスは3試合目に入っていた。順調に試合が進んでいく。1試合目はマリオが、2試合目はヨッシーが勝利を収めた。
「では、次。マルスさん、フォックスさん、準備をお願いします。」
すく、とマルスは立ち上がった。
「ようやく僕達だね。じゃあ、行こうか、フォックス。」
「あぁ。」
マルスとフォックスが示し合わせたかのようにリンクを見た。リンクはとても不安そうな表情を浮かべて二人を見ていた。それにマルスはニヤリと笑い、フォックスは苦笑いを残して部屋を後にした。
「じゃあ、行くよ、フォックス。」
「俺はいつでも大丈夫だ。」
「それじゃあ。コン、頼んだよ。」
「了解いたしました。」
3……2……1……GO!
「さぁ、フォックス。かかっておいでよ。」
“ここで勝てれば、リンクの口を割れるんだ。”
「望むところだ!」
“何を企んでいるかは知らないが、本気でいくぜっ!!”
「はじめっから白熱しているね。」
トレーナーが言うと、ゼニガメが同調した。
「うん、すごーい!!」
その様子を見ながら苦笑いするフシギソウ。そして、しなければならないことを示す。
「ハイハイ、分かったから、早く自己紹介してよ。ほら、リンクも。」
「あ、うん。今回実況をするのは、僕、トレーナーとポケモン達、そして、」
「リンクです。」
“何でこんな時にオレなんだ……。”
リンクは弱々しく言う。トレーナーは画面から一度視線を外し、リンクを振り返った。
「……リンク、なんでそんなに離れているの?そこからだと実況できないじゃないか。」
そう、リンクは画面が見えないくらいの位置に下がっていた。もちろんマイクに声は届きそうにない。
「ごめん、オレ、今客観的にものを見れないから、トレーナー達に任せます……。」
「仕事放棄するな。」
リンクが弱々しく言うと、リザードンから厳しい一言が飛んできた。が、フシギソウがやれやれといった風に言う。
「リザードンもする気ないでしょ。」
ふいとリザードンはそっぽを向いた。トレーナーはため息を吐いて画面を見やった。
「二人とも言い戦いをしているね。ゼニガメ、どっち優勢だと思う?」
「うーん、マルスかな。さっきから攻撃当てているのはマルスだし。でもフォックスも頑張ってるよ。」
「そうだね。マルスは近距離戦に強いから近づこうとする。フォックスはどっちもいけるから、出来るだけ離れようとしている気がするね。」
「あ、今、マルスの強い一撃がフォックスに入ったよ!あれは痛いんじゃないかな。」
フシギソウのその言葉を聞いて、リンクはスッと息を飲んだ。フシギソウの言葉は続く。
「でもフォックスもギリギリのところでふんばった……。」
リンクのゆっくり息を吐く音が聞こえた。
「あー、そのままフォックスイリュージョンが炸裂!!今度はマルスが危ない!けどマルスも耐えたね。これは分からない試合になってきたよ。……ところで。」
フシギソウが振り返った。
「リンク、さっきからどうしたの?」
「ごめん、聞かないで……。」
リンクは額に手をやってうなだれた。
マルスとフォックスはステージの両端に立って、向かい合っていた。お互い戦闘体制は崩していない。無言の数秒間が続いた。そこへフォックスがブラスターを撃つ。マルスは緊急回避でそれを避けた。が、追い打ちのようにフォックスのファイアフォックスが炸裂!それをもろに受けたマルス。ステージから押し出される。だが、それでも負けまいとドルフィンスラッシュで復帰した。フォックスが舌打ちをする。戻ってきたマルスにフォックスイリュージョンをお見舞いするフォックス。さすがに避けきれず、再びマルスは吹っ飛んだ。
“こんなところで負けるわけにはいかないんだ……!!”
マルスはなんとか踏ん張ろうとした。が、そこに容赦ないブラスターの連撃。
「これは戻ってこれないね、マルス。」
「フォックスに軍配あり、かな。」
トレーナーとフシギソウの声を聞いて、リンクは胸を撫で下ろした。そして、試合の進行具合に一喜一憂していた自分に気付いた。そんな自分にリンクは苦笑する。
“なんでこんな時に、って思ったけど……みんなの前でこんな様見せられないな……。”
ゲームセット!
「はぁ……ギリギリの戦いだったぜ。」
その後、Dグループで勝利を収めたのはアイクだった。
その日、リンクが部屋でくつろいでいると、またしてもノックをする音がした。
「……どうぞ?」
リンクが言うと、入ってきたのはやはりマルスだった。
「何の用?」
リンクは背筋をピンと伸ばした。警戒体制を整える。それを見たマルスは噴き出した。
「そんなに身構えないで。今回の賭けは引き分けだ、そうだろう?」
リンクはそれでも警戒心をとかなかった。
「そのはずだけど。」
「全く。ようやく君の口を割れると思ったのに。まさかこの僕が負けてしまうなんてね。」
「お互い強敵だと言ったのは、マルスだったと思うけど。」
リンクが指摘すると、マルスは笑い出した。
「あはは、そうだったね。ロイもフォックスも簡単にやられてくれる相手ではなかった。お互い、不運だったね。」
“オレは勝つつもりはなかったけどね。”
リンクは心の中でつぶやいた。それには全く気付かずに、マルスは言葉を続ける。
「トーナメントを出しにするのはやめにするよ。トレーナーに聞いた話だと、君は僕たちの試合中、ハラハラし通しだったみたいだし。」
「トレーナーに聞いたの!?」
リンクが驚いて聞くと、マルスは頷いた。
「君の様子が知りたくてね。聞いた話だと実況室にいたらしいじゃないか。全然声が聞こえてこなかったから、みんなと一緒にいたのかと思っていたのに。それにしても、見たかったなぁ。君の動揺しきった顔。」
リンクはムスッとした顔をした。
「見られてなくて本当によかったよ。」
「否定しないんだね。」
「……否定は、できないから。」
クスリ、とマルスは笑った。
「ところで、この大会の目的」
「お引き取り願えますか?」
最後のリンクの声は少々大きかった。
最終日、各グループの代表者が大乱闘を行った。ちなみに代表者は、Aグループから順にソニック、スネーク、ルカリオ、アイクだった。誰が勝ってもおかしくないほどの接戦。入り乱れる4人。時には相手を吹き飛ばし、時には誰かに吹き飛ばされ。それでも負けまいと復帰する。残ったメンバーは試合の成り行きを息を飲んで見守った。まず最初に脱落したのはアイクだった。ソニック相手に天空をお見舞いした直後、ルカリオにはっけいを決められた。復帰を試みるが、あえなく失敗。一方ソニックは無事に帰還を果たしていた。アイクが脱落した後も、激戦は続き、次にスネークがやられた。最終的にソニックとルカリオの一騎打ちとなった。………そして。
「おめでとうございます。優勝者はルカリオです。」
ターマスが言うと、パチパチパチパチと拍手のなる音がした。おめでとー、とかルカリオすごーいとか言う声も聞こえてくる。
「やっぱ最後は見ごたえのある戦いだったよな。」
マリオがしみじみと言った。
「ま、そうでなくちゃ。みんなを勝ち抜いてあの場に立ったのだからさ。」
ロイがマリオに同調して言う。
「それにしても、悔しい!私が優勝したかったわ。」
サムスが悔しさをにじませて言う。ファルコンがサムスの肩をポンポンと叩いた。
「まぁそう悔しがるなって。今回は力が及ばなかった。もしくは運がなかった、か。次のトーナメントに向けて精進しておくことだな。」
サムスはふぅと息を吐いた。
「えぇ、そうね。次までに特訓しておくわ。」
「ところで、ルカリオさん。優勝の賞品はいかがいたしましょうか?」
ルカリオが言葉に詰まった。みんなの視線を一身に受ける。
「それなのだが……私は強さのみを求める。他に欲しいものはない。」
一瞬静まりかえる場。が、すぐにざわめきを取り戻した。
「えー、ルカリオ、欲がなさすぎるよ!」
「ルカリオらしいと言えばルカリオらしいかな。」
等、それぞれの感想を述べる。ルカリオは困ったように俯いた。
「では、こうしたらどうでしょう?」
ターマスは全く動じずに、新たに提案する。
「何かあなたの欲しいものができたときに、それを私に要求する。それまでは賞品に関しては保留と言うことで。」
ルカリオは笑った。
「そうしてもらえるとありがたい。」
こうして、第一回目のトーナメントは幕を閉じた。
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