一番怖いのは……
集合してからもうずいぶんと経ち、トーナメント等も何度か行われた後の話です。
トレーナー、フォックス、マリオのキャラ崩壊に注意!
―――――――――――――
プルルルル……プルルルル……。ある日また、電話が鳴った。近くにいたトレーナーがそれをとった。
「もしもし、ターマス?またトーナメント?」
トレーナーは話を聞いている。しばらくして辺りを見渡した。
「あ、いた。マリオ、ターマスが話があるって。」
「俺に?」
トレーナーは頷くと、マリオに受話器を差し出した。ピットと話していたマリオだったが、トレーナーから受話器を受け取った。トレーナーと、みんなの部屋に居合わせたロイが、なんだろうと聞き耳をたてる。
「代わったぞ。……うん、うん……は?リンクが?で、何々……俺に医者をやれと?確かに資格は持ってるが……うん、……うん、……分かった。え?乱闘も?……あぁ……まぁ、その辺はテキトーにするわ。あぁ、じゃあな。」
マリオは受話器を置いた。間髪入れずにトレーナーが口を開いた。
「リンク、どうかしたの?」
「え?あぁ……何か、怪我してるらしいぞ。それで俺に治療しろって。」
「マリオ、そんなこと出来るの?」
訝しんでピットが聞いた。
「一応な。昔、医者やってたこともあるもんだから。俺の部屋の隣が空いてただろ?そこに医者に必要なものは一式そろえてあるらしい。どうやら、そこを医務室にするつもりだな。」
「で、乱闘とか言ってたが、そりゃどういう意味だ?」
ロイが興味津々といった様子で聞いた。若干、身を乗り出している。
「え?あぁ……。」
対してマリオはどうでもよさそうだった。
「なんか、ドクターマリオとして、医者スタイルで乱闘に参加することも可能だってよ。」
「お医者さんの格好で戦えるの?」
ピットが当然の問いを発した。
「ま、一応な。……と、怪我人が帰ってきたみたいだ。」
みんなは窓の外を見た。リンクが丁度帰ってきたところだった。一見、普段と様子に変わりはない。
「本当に怪我してるのか?」
ロイが疑わし気に言った。マリオは肩をすくめた。
「さぁな。が、ターマスは俺らのあずかり知らぬところで俺らの情報掴んでくるからなぁ……。逃げられる前に捕まえるか。」
マリオは部屋を出ていった。
「僕も行くよ!」
トレーナーも後を追っていった。
「……ねぇ、マリオ……まだ?」
リンクが玄関にたどり着いたと思ったら、マリオとトレーナーが現れた。そしてそのままマリオの隣の部屋―医務室に連行された。そこで一悶着あった後、リンクは仕方なしに怪我した左肩を見せた。そして今に至る。
「……お前がさっさとみせてたら、とっくの昔に終わってたよ。まったく。」
リンクの抗議にマリオは小言を言った。そんなマリオは白衣姿で、現在リンクの肩を消毒していた。
「いや……だってさ……オレ、医者にみてもらったことないから、どうしたらいいのか分からなくて……。怪我しても全部自分で手当てしてたし。」
しどろもどろにリンクは言い訳を並べ立てる。が、
「あぁ、そうですか。」
呆れたようにマリオは言っただけだった。
「それにしても……お前、本当にどうしたんだよ?かすり傷だなんてお前ぐらいしか言わねーぞ。」
「リンクの怪我、そんなにひどいの?」
リンクを心配そうに眺めていたトレーナーが言った。
「傷は大きくて深い。……こりゃ、しばらく乱闘は無理だな。」
「それは願ってもないことだけど……。」
「そっか。リンク、大会が嫌だったんだもんね。……それでいつも、 わざと 一回戦負け。」
「ん?トレーナー、今何て言った?」
マリオは手を止めた。
「え? だから、」
「それでマリオ、終わった?」
リンクはトレーナーを遮って言った。立とうとする。が、マリオは慌ててそれを止めた。
「動くな!まだだって!」
「……マリオ、そんなにきちんと手当をしなくても……。」
「ダメ!」
トレーナーが大きな声でリンクの提案を却下した。
「ほら、トレーナーもこう言ってるんだから、もうちょっと待て。」
リンクは仏頂面で黙り込んだ。
「ほら、リンク。終わったぞ。」
しばらくしてようやく治療が終了したようだった。
「ありがとう。」
リンクは立ち上がった。そして、いきなり左肩を動かそうとした。すぐさまマリオが止めにかかった。
「おい!あんまり動かすな!まだ完全に傷口も塞がってないというのに……。いいか、さっきも言ったように、しばらく乱闘は禁止だ。修行もするなよ。後、左はあまり使わない方がいい。」
「………。……分かった。」
リンクは扉の方に歩いていった。
「リンク……。マリオの言うこと、ちゃんと守ってよ?」
トレーナーが念押しすると、リンクはぎこちなく頷いた。そして、部屋を出ていった。それを確認してからマリオはため息をついた。
「……あれは、そのつもりはありませんって顔だったな……。」
「マリオ、僕からもっと言っておこうか?」
「……いや、いいよ。どうせ誰が言っても無駄だろう……と、言いたいところだが、ゼルダがいたな。……あいつに頼めば……。」
「……マリオ……なんか、怖いよ、その顔……。」
マリオはうっすらと意地の悪い笑みを浮かべていた。トレーナーに指摘されて、真顔に戻る。
“やっぱり悪いことは考えない方がいいな……。顔に出る。”
「あ、そうだ。マリオ、そろそろ僕も行くね。」
「ちょっと待てぃ!」
「え?何?」
“何で時代劇風……。”
「さっきの話、もう少し詳しく話してくれないか?」
“あ、戻った。”
「さっきの話?何のこと?」
「リンクが大会嫌いで、わざと一回戦負けしてるって話だ。」
トレーナーは青ざめた。
「え?あ……聞こえてた?」
「あぁ。空耳かと思ったが。で、どうなんだ?」
「いや……あの……そのことだけど……忘れてほしいなぁ……。」
ダメ元で、トレーナーは頼んでみる。が、
「お生憎様。もう頭から離れねぇよ。」
マリオは一刀両断した。トレーナーは慌てた。
「じゃ、じゃあ、誰にも話さないで!!」
必死になって頼み込む。
「んーどーしよーかなー。」
マリオはその様子を見ながら楽しんでいた。
「マリオ、お願い!……じゃないと、僕、リンクに怒られちゃうよ……。」
「……お前、ホントにリンクのことが好きなんだな。」
「……え?」
トレーナーはポカンとしてマリオを見た。
「ん?自覚してねぇのか?こりゃ、ちょっと重傷だな。」
「いや、あの、それは……。」
トレーナーはたじろいだ。マリオは更にたたみかける。
「認めんのか、自覚してねぇのか、どっちだ?」
“……それってどっちでも一緒のような……。”
「まぁいいや。今更俺がどうこう言って変わることでもねぇしな。」
トレーナーの心の叫びは届かず、マリオはこの話を終了させた。トレーナーは黙り込むしかなかった。マリオは片づけを開始した。片づけながら口を開く。
「ところで、もっと詳しく話してくれねぇか?」
「……あれ以上詳しくって……一体何を…。」
「理由とか、本当の実力とか、いろいろあるだろ。」
「理由って……知らないよ……。でも、リンクは少なくとも僕より強い。」
「お前は戦わねぇだろ。」
「僕のポケモン達より強いってこと!」
「……あいつらより強いとなれば……ちょっと待て、今の記録と随分違ってくるぞ。」
「……かもね。」
“だって、はじまってすぐ上手に場外になるんだから……。”
マリオは片づけていた手を止めて考え込んだ。
「うーん……ロイあたりに手伝ってもらって一度ひっかけた方がいいな。」
「マリオ、お願いだから、やめて!」
トレーナーの悲痛な叫びは届かず、マリオは白衣を脱ぎすて、出ていってしまった。
「……このままだと……やばい、よね……。……リンク、探さないと!」
「セイ、ヤッ、ハッ、ヤァアアァァア!」
リンクはマリオの言うことを無視し、森の中で素振りをしていた。
「……お前さぁ……怪我してるんだろ……ちょっとは自重しろよ……。」
そこへフォックスがやってきた。リンクは動きを止めた。
「なんで怪我してること……というより、どうしてここが……。」
フォックスはため息を吐いた。
「まだ傷口塞がってねぇだろ。……血の臭いがすごいぞ。」
「……そんなに?」
リンクは怪我した左肩を思わず押さえた。
「あぁ。怪我についてはトレーナーに聞いた。あ、そのトレーナーだが、お前のこと血相を変えて捜してたぞ。」
「え?」
リンクは真っ青になった。
「……その顔を見る限り、本当は修行なんてしちゃいけなかったな?」
「そ、そんなことないよ。マリオだって……そんなにひどくないって言ってたし……。」
「何か声が小さくなっていったのは気のせいか?あ、マリオだが…気をつけろ。何か企んでいる。」
「企んでいる?マリオが?ロイじゃなくて?」
「あぁ。……一度戻ろう。」
フォックスはリンクを無理やり連れていった。
それから3週間ほどが経った。ゼルダからの注意やトレーナーやフォックスの監視のかいあって、リンクは大人しくしており、傷は完全に治った。
リンクは今、バルコニーでくつろいでいた。その近くでは……
カチャ、カチャ……
スネークが屋根で何かを取り付けていた。
「……これでよし、と……。」
スネークは無線を取り出した。
「こちらスネーク。準備が整った。……始めてくれ。」
「了解。」
無線の相手はマリオだった。無線を切る。マリオはバルコニーにつながる大窓の前にいた。そして、もう一人、剣を携えて待機している人がいた。
「向こうはOKのようだ。……さぁ、ロイ。暴れてこい!」
たたずんでいた人――ロイはニヤッと笑うと駆け出した。
「イィィイヤァア!」
ロイはリンクを中庭につき飛ばした。
「うっ……!」
いきなりの攻撃に驚いたリンクだったが、なんとか体制を立て直し、上手に着地して見せた。そのままの勢いでマスターソードを引き抜く。
「誰だ!……ってロイ!?」
リンクに驚きと後悔の表情が現れた。ロイはお構いなしにリンクにとびかかる。リンクはさっと避け、剣を受ける。そしてそれを流し、間合いをとった。
“へぇ……けっこういい動きしてんじゃねぇか……じゃなかった。”
マリオは感心していた。その間にもリンクは抗議の声を上げる。
「ロイ!どういうつもりだよ!……やめとこうよ……。」
ロイは聞こえなかったふりをして、マリオに一瞬目線を当てた。マリオは合図をしっかりと受け取り、叫んだ。
「リンク!ロイがおかしくなった!止めてくれ!」
「え………え?オレに……止めろって……?」
リンクは困惑してロイを見やった。マリオは後一押しと言わんばかりに叫んだ。
「もうお前しかいねぇんだよ!俺もさっきやられて動けないんだ!」
「マリオ、何があったのかな………ロイ?」
そこへ運悪くマルスがやってきた。口ではああ言ったものの、五体満足なマリオはさっとマルスの口を塞ぎ、動きも封じた。
「黙って見てろ!」
“……え?……何をするつもりだ……?”
「ハァァアア!」
ロイは再び斬りかかる。
“リンク、危ない!”
マルスは思ったが、口に出すことは叶わなかった。
“……仕方ない……ここは本気で戦うか……。”
リンクはさっと攻撃を避けた。そのまま一瞬でロイの後ろに回った。
「ロイ、ごめん。それと……忘れて。」
リンクはロイを蹴り飛ばした。そして、とどめを剣の柄で下突きでさした。ロイは一瞬の出来事に対処できず、気絶した。リンクはすぐにロイに駆け寄った。
ピッ。
スネークが取り付けていたのはビデオカメラだった。無事撮影も終了した。無線に話しかける。
「……ちゃんと撮れた。今からこのデータを保存しに行く。」
「あぁ、任せたぜ。」
マリオはマルスを解放し、ニヤニヤしながら答えた。
「マリオ……どういうことかな?」
「それは後でのお楽しみってことで。」
マリオは走り去った。マルスはリンク達のもとに向かう。
「……リンク、大丈夫だったかい?」
「マ、マルス……!今の見てた……じゃない、無事だったんだね。そっちから来たってことはマリオ見た?彼は、」
「リンク、落ち着いて。マリオはなんてことない。走れるくらいに元気だったよ。」
「え……?」
リンクは唖然としてマルスを見た。
「じゃあ、何で……いや、それより……。じゃあ、じゃあ、マリオ呼んでこなきゃ。ロイが……。」
「ロイもなんてことないと思うから、ほっといていいよ、リンク。」
「そりゃひどいぜ、マルス。」
ロイが起き上がった。
「ロイ、大丈夫?」
リンクが聞くと、ロイはぎこちなく頷いた。
“こいつ……やべーほど強い……じゃねぇ……セリフ忘れたー!”
「……さっきのこと覚えてる?」
「さっき……?い、いや……全然。」
“確か覚えてない設定だったよなー。……なんか、こいつがほっとしてるように見える……。”
「そっか。……マリオのところに行った方が、」
「そうだなー。そうするよ。あ、俺一人で行けるから。サンキュ。」
ロイは戸惑っているリンクを放置し、さっさとその場を後にした。
「……。みんなの、みんなの無事を確認しないと……。」
「その必要はないよ。」
マルスはいち早く状況を理解した。リンクに事実を教えてやる。
「君は、マリオとロイに騙されたんだ。」
リンクはポカンとした顔をした。
「騙す……?何で?」
「君の実力を暴くためだよ、リンク。」
トレーナーがフォックスと一緒にやってきた。
「実力……あ、」
リンクは不安そうにマルスをみた。マルスは微笑んだ。
「安心しなよ、リンク。君の実力なら知ってたからね。……一度戦った時に思い知ったし、薄々察してはいた。だけど……。」
「マリオとロイがみんなにバラすと思う。」
マルスの言葉をトレーナーが引き継いで言った。リンクはハッとした顔をした。
「……マリオが企んでいたことって……」
フォックスは頷いた。
「多分これだな。さっき屋根の上にスネークがいるのを見た。……全部撮られただろうな。」
“なんだ、トレーナーとフォックスは知っていたのか。”
「……そっか……今まで隠しててくれてありがとう……。」
“……後が……怖い……。”
一方スネークの部屋。スネークの部屋にマリオがやってきた。
「どうだ、スネーク?」
スネークは親指を立てた。
「バッチリだ。見てみるか?」
「いや、今はいいや。」
その時ドアがバーンと開いた。
「お前らここにいたのか!って、俺を放ってくなよ。」
「あぁ、ロイ。ご苦労さん。」
マリオがねぎらいの言葉をかけると、スネークはロイを見た。
「で?本気のリンクと戦った感想は?」
「マジヤベー。あれはねぇぜ。」
「ところで、そのデータだが……DVDにしてみんなに配ったらどうだ?」
「おーいいねぇ。これで次からリンクは本気を出さざるをえなくなるわけだ。」
マリオの提案にロイは乗り気だ。それを渋るのはスネークだけだった。
“それはそれで困りものだが……って、はじめと目的が違ってきてないか?”
スネークは回想した。
ある日の夜遅く、マリオが部屋にやってきた。
「なぁ、スネーク。ちょっと手伝ってくれないか?」
「……内容による。」
“……なんか嫌な予感が……。”
スネークの心の内には気づかず、マリオはニッと笑った。
「リンクの強さを確かめたい。」
「は?」
「俺が聞いた話によるとな、リンクはもっと強いらしいんだよ。」
「あぁ、それは姫さんも言ってたな。」
“なんだ、ゼルダもかよ。じゃあ、けっこう信憑性あるな。”
「そこで、本当はどれくらい強いのか、知りたいと思ったワケだ。……手伝ってくれないか?」
“なんだ、意外とまともな依頼じゃないか。”
スネークは快諾した。
「いいだろう。作戦はあるのか?」
「あぁ、一応な……。」
そして、話し合いは続いた。
“あの時の予感、結局は当たったか……。”
「なぁ、みんなに配れるだろ?」
ロイがスネークに詰め寄った。
「……できなくはないが……。」
「なら、やってくれよ☆」
マリオが言うと、ロイが隣でシャキ、と剣を鳴らしてみせた。
「……わ、わかった……。」
“こ、断れん……。”
そしてリンクとロイの戦いのDVDが作られた。
「サンキュー、スネーク。後は任せろ♪」
「協力、感謝するぜ。」
二人は思い思いに礼を述べると、部屋を後にした。
“……リンク、すまん……。”
次の日の朝。リンクは朝食を作り終えた。キッチンを出る。が……
「……あれ……おかしいな……カービィすら来ないなんて。」
いつも食事ができたとたんにやってくるカービィはおろか、誰もいなかった。
「……何かあったのかな……。」
リンクが不安に思っていると、扉が開いた。スネークがやってくる。
「おはよう、スネーク。よかった。……みんな来ないから何かあったのかと……。」
スネークは何も言わず、疲れたようにリンクを見た。リンクは扉に向かった。
「じゃあスネーク、後よろしくね。」
リンクは出ていった。スネークはしばらくの間それをぼんやり見ていた。が、やがてため息をついた。
「……それで許してくれるのなら、いくらでも任されよう……。」
その日の午後、リンクは部屋で本を読んでいた。すると誰かが扉をノックした。リンクが開けると、そこにはサムスがいた。
「リンク、今から乱闘しましょ!」
「…………え?」
“今から乱闘?しかも、何でオレを誘うんだ?”
「とぼけるなよ、リンク。見たぜ?」
ファルコンの声がした。リンクが少し扉を大きく開けてみれば、他にもうじゃうじゃといた。
“見たって……昨日、ロイとやったとき……!?”
「強いんだったら、もっと本気でやれよ、リンク!」
ドンキーが叫んだ。すると、アイスクライマーの二人がニコニコしながら言う。
「もうズルしても意味ないよー!」
「ぜーんぶDVDで証明されてるんだから!」
「………DVD………?……あぁ。」
“あの二人か……。”
リンクは納得した。
「さっそくコンのところへ行こうぜ!」
ソニックは言いながらリンクを引っ張った。
「え、でも、オレ、乱闘嫌い、」
「問答無用!」
最後は誰が言ったか分からなかった。その場にいたみんなにリンクはもみくちゃにされ、コンのところに連れ出された。その日、リンクは親しい人や一芸に関わったマリオ、ロイ、スネーク以外の人と本気を出して戦う羽目になった。手を抜こうとすると、やり直させられたので、今回ばかりは手の抜きようがなかった。次の日、リンクは朝食だけを作ると、部屋で寝込んでしまった。
時は戻り、DVDが配られた朝のこと。
「許さない……。」
トレーナーは3匹のポケモンと一緒にDVDを見ていた。
“……いずれはバレることだったと思うけどな”
フシギソウはこっそり思った。
「レッド、これはマリオとロイがリンクに罠を仕掛けてやった、というのは本当か?」
トレーナーはただ頷いた。リザードンはうなった。
「……小賢しいことを。」
「でもさ、やっぱりリンクって強いよねー!あこがれるなぁ……。」
ゼニガメがうっとりと言うと、やはりトレーナーは無言で頷いた。やがて映像が終了し、トレーナーはDVDを取り出した。リュックを持ち出してくると、必要ないものを出し始めた。
「どっか行くの?」
嬉々としてゼニガメは聞いた。
「うん。ちょっとシンオウのひみつきちに。」
「ワーイ、ボクも行くー!」
ゼニガメが喜び勇んで言うと、フシギソウがやれやれといったふうに言った。
「……ゼニガメ、遊びに行くんじゃないと思うけど……。」
そして、不安そうにトレーナーをみた。トレーナーは頷いた。
「……何をしに行く?」
リザードンが怪訝そうに聞いた。
「近くにいるおじさんにトラップを交換してもらいに行く。」
「……それ……ロイやマリオの部屋に仕掛けるの?」
「……正解。」
フシギソウの質問に、トレーナーは真顔で答えた。リザードンが間髪入れずに言う。
「やめておけ。」
「大丈夫だよ。僕がちゃんと責任とるし、マリオとロイ以外には迷惑かけないから。」
もちろん君達にも、と一言付け加えて立ち上がった。そして出ていった。リザードンがついていく。
「遊びじゃないなら、ボクはここにいるよー!……邪魔だと思うし。」
「ゼニガメのお守りしてまーす!」
残ることにした2匹は叫んだ。
「ボクは子供じゃない!」
ゼニガメが憤慨して言った。
「はいはい。」
フシギソウはそれを適当にあしらう。
“……レッドがいない口実を考えなきゃ……。”
リンクがほとんど全メンバーと乱闘させられている頃。トレーナーの部屋をノックする者がいた。
「入るぞ。」
そして、返事も聞かずに開けて入ってきた。それはフォックスだった。
「フォックスー、いきなり開けるなって。」
ゼニガメはフォックスの顔をみるなりじゃれついた。
「悪いな。だが、俺はいつもこうだ。」
一応謝りはしたものの、フォックスに悪びれた様子はなかった。
「フォックスー、今、暇なんだー。遊んでー。」
ゼニガメのあまえる攻撃が炸裂!
“ゼニガメ、フォックスの気をそのまま紛らわせておいて……。”
「後でな。トレーナーは?」
ゼニガメは軽くあしらわれ、フシギソウの心の声は届かなかった。
“……いきなり痛いところついてくるんだ……。”
「え……と、……どこ行ったんだっけ?」
ゼニガメは助けを求めるようにフシギソウを見た。フシギソウは用意していた内容を言う。
「ちょっと急用ができた、って言って帰ったよ。でも、すぐに戻るんじゃないかなぁ、あの様子を見たかんじだと。」
「……急用なぁ……こんなときに……。じゃあ、リザードンは?」
「トレーナーについていった。」
「そうか。………。なぁ、トレーナーに変わった様子はなかったか?」
「……変わった様子……?」
“……なんか、読まれてる……?”
「うーんとね、怒ってたよ。」
“それって言ってもいいの!?”
「……怒ってた?……あぁ、そっちの方が強かったか。」
「「え?」」
ゼニガメとフシギソウがはもった。
「いや、何でもない。悪かったな、邪魔し」
「いつ遊んでくれるの?」
「コラ、フォックスは忙しいんだから……。」
「そうだったな。今から遊ぼうか?」
「え?いいのー!?」
「あぁ。」
夜が来て、夕食になるまでゼニガメはフォックスに相手をしてもらっていた。
真夜中、いきなり扉が開いた。フシギソウは警戒しながら立ち上がった。すると、リザードンがトレーナーをかかえて入ってきた。フシギソウはリュックを受け取った。そのリュックはずっしりと重かった。リザードンはトレーナーをベッドに寝かした。
「おかえり、リザードン。遅かったね。」
「あぁ。……ゼニガメのように寝ていてもよかったのだが?」
「いや……ゼニガメをフォックスに任せてる間、昼寝してたから。」
「………そうか。」
「それで、このリュックの感じを見る限り、交換してもらえたんだね?」
「あぁ。……いつ実行するのかは知らんが……実行されたらマリオとロイの部屋はとんでもないことになるぞ。」
「そうだろうね……。」
2匹も眠りについた。
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トレーナー、フォックス、マリオのキャラ崩壊に注意!
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プルルルル……プルルルル……。ある日また、電話が鳴った。近くにいたトレーナーがそれをとった。
「もしもし、ターマス?またトーナメント?」
トレーナーは話を聞いている。しばらくして辺りを見渡した。
「あ、いた。マリオ、ターマスが話があるって。」
「俺に?」
トレーナーは頷くと、マリオに受話器を差し出した。ピットと話していたマリオだったが、トレーナーから受話器を受け取った。トレーナーと、みんなの部屋に居合わせたロイが、なんだろうと聞き耳をたてる。
「代わったぞ。……うん、うん……は?リンクが?で、何々……俺に医者をやれと?確かに資格は持ってるが……うん、……うん、……分かった。え?乱闘も?……あぁ……まぁ、その辺はテキトーにするわ。あぁ、じゃあな。」
マリオは受話器を置いた。間髪入れずにトレーナーが口を開いた。
「リンク、どうかしたの?」
「え?あぁ……何か、怪我してるらしいぞ。それで俺に治療しろって。」
「マリオ、そんなこと出来るの?」
訝しんでピットが聞いた。
「一応な。昔、医者やってたこともあるもんだから。俺の部屋の隣が空いてただろ?そこに医者に必要なものは一式そろえてあるらしい。どうやら、そこを医務室にするつもりだな。」
「で、乱闘とか言ってたが、そりゃどういう意味だ?」
ロイが興味津々といった様子で聞いた。若干、身を乗り出している。
「え?あぁ……。」
対してマリオはどうでもよさそうだった。
「なんか、ドクターマリオとして、医者スタイルで乱闘に参加することも可能だってよ。」
「お医者さんの格好で戦えるの?」
ピットが当然の問いを発した。
「ま、一応な。……と、怪我人が帰ってきたみたいだ。」
みんなは窓の外を見た。リンクが丁度帰ってきたところだった。一見、普段と様子に変わりはない。
「本当に怪我してるのか?」
ロイが疑わし気に言った。マリオは肩をすくめた。
「さぁな。が、ターマスは俺らのあずかり知らぬところで俺らの情報掴んでくるからなぁ……。逃げられる前に捕まえるか。」
マリオは部屋を出ていった。
「僕も行くよ!」
トレーナーも後を追っていった。
「……ねぇ、マリオ……まだ?」
リンクが玄関にたどり着いたと思ったら、マリオとトレーナーが現れた。そしてそのままマリオの隣の部屋―医務室に連行された。そこで一悶着あった後、リンクは仕方なしに怪我した左肩を見せた。そして今に至る。
「……お前がさっさとみせてたら、とっくの昔に終わってたよ。まったく。」
リンクの抗議にマリオは小言を言った。そんなマリオは白衣姿で、現在リンクの肩を消毒していた。
「いや……だってさ……オレ、医者にみてもらったことないから、どうしたらいいのか分からなくて……。怪我しても全部自分で手当てしてたし。」
しどろもどろにリンクは言い訳を並べ立てる。が、
「あぁ、そうですか。」
呆れたようにマリオは言っただけだった。
「それにしても……お前、本当にどうしたんだよ?かすり傷だなんてお前ぐらいしか言わねーぞ。」
「リンクの怪我、そんなにひどいの?」
リンクを心配そうに眺めていたトレーナーが言った。
「傷は大きくて深い。……こりゃ、しばらく乱闘は無理だな。」
「それは願ってもないことだけど……。」
「そっか。リンク、大会が嫌だったんだもんね。……それでいつも、 わざと 一回戦負け。」
「ん?トレーナー、今何て言った?」
マリオは手を止めた。
「え? だから、」
「それでマリオ、終わった?」
リンクはトレーナーを遮って言った。立とうとする。が、マリオは慌ててそれを止めた。
「動くな!まだだって!」
「……マリオ、そんなにきちんと手当をしなくても……。」
「ダメ!」
トレーナーが大きな声でリンクの提案を却下した。
「ほら、トレーナーもこう言ってるんだから、もうちょっと待て。」
リンクは仏頂面で黙り込んだ。
「ほら、リンク。終わったぞ。」
しばらくしてようやく治療が終了したようだった。
「ありがとう。」
リンクは立ち上がった。そして、いきなり左肩を動かそうとした。すぐさまマリオが止めにかかった。
「おい!あんまり動かすな!まだ完全に傷口も塞がってないというのに……。いいか、さっきも言ったように、しばらく乱闘は禁止だ。修行もするなよ。後、左はあまり使わない方がいい。」
「………。……分かった。」
リンクは扉の方に歩いていった。
「リンク……。マリオの言うこと、ちゃんと守ってよ?」
トレーナーが念押しすると、リンクはぎこちなく頷いた。そして、部屋を出ていった。それを確認してからマリオはため息をついた。
「……あれは、そのつもりはありませんって顔だったな……。」
「マリオ、僕からもっと言っておこうか?」
「……いや、いいよ。どうせ誰が言っても無駄だろう……と、言いたいところだが、ゼルダがいたな。……あいつに頼めば……。」
「……マリオ……なんか、怖いよ、その顔……。」
マリオはうっすらと意地の悪い笑みを浮かべていた。トレーナーに指摘されて、真顔に戻る。
“やっぱり悪いことは考えない方がいいな……。顔に出る。”
「あ、そうだ。マリオ、そろそろ僕も行くね。」
「ちょっと待てぃ!」
「え?何?」
“何で時代劇風……。”
「さっきの話、もう少し詳しく話してくれないか?」
“あ、戻った。”
「さっきの話?何のこと?」
「リンクが大会嫌いで、わざと一回戦負けしてるって話だ。」
トレーナーは青ざめた。
「え?あ……聞こえてた?」
「あぁ。空耳かと思ったが。で、どうなんだ?」
「いや……あの……そのことだけど……忘れてほしいなぁ……。」
ダメ元で、トレーナーは頼んでみる。が、
「お生憎様。もう頭から離れねぇよ。」
マリオは一刀両断した。トレーナーは慌てた。
「じゃ、じゃあ、誰にも話さないで!!」
必死になって頼み込む。
「んーどーしよーかなー。」
マリオはその様子を見ながら楽しんでいた。
「マリオ、お願い!……じゃないと、僕、リンクに怒られちゃうよ……。」
「……お前、ホントにリンクのことが好きなんだな。」
「……え?」
トレーナーはポカンとしてマリオを見た。
「ん?自覚してねぇのか?こりゃ、ちょっと重傷だな。」
「いや、あの、それは……。」
トレーナーはたじろいだ。マリオは更にたたみかける。
「認めんのか、自覚してねぇのか、どっちだ?」
“……それってどっちでも一緒のような……。”
「まぁいいや。今更俺がどうこう言って変わることでもねぇしな。」
トレーナーの心の叫びは届かず、マリオはこの話を終了させた。トレーナーは黙り込むしかなかった。マリオは片づけを開始した。片づけながら口を開く。
「ところで、もっと詳しく話してくれねぇか?」
「……あれ以上詳しくって……一体何を…。」
「理由とか、本当の実力とか、いろいろあるだろ。」
「理由って……知らないよ……。でも、リンクは少なくとも僕より強い。」
「お前は戦わねぇだろ。」
「僕のポケモン達より強いってこと!」
「……あいつらより強いとなれば……ちょっと待て、今の記録と随分違ってくるぞ。」
「……かもね。」
“だって、はじまってすぐ上手に場外になるんだから……。”
マリオは片づけていた手を止めて考え込んだ。
「うーん……ロイあたりに手伝ってもらって一度ひっかけた方がいいな。」
「マリオ、お願いだから、やめて!」
トレーナーの悲痛な叫びは届かず、マリオは白衣を脱ぎすて、出ていってしまった。
「……このままだと……やばい、よね……。……リンク、探さないと!」
「セイ、ヤッ、ハッ、ヤァアアァァア!」
リンクはマリオの言うことを無視し、森の中で素振りをしていた。
「……お前さぁ……怪我してるんだろ……ちょっとは自重しろよ……。」
そこへフォックスがやってきた。リンクは動きを止めた。
「なんで怪我してること……というより、どうしてここが……。」
フォックスはため息を吐いた。
「まだ傷口塞がってねぇだろ。……血の臭いがすごいぞ。」
「……そんなに?」
リンクは怪我した左肩を思わず押さえた。
「あぁ。怪我についてはトレーナーに聞いた。あ、そのトレーナーだが、お前のこと血相を変えて捜してたぞ。」
「え?」
リンクは真っ青になった。
「……その顔を見る限り、本当は修行なんてしちゃいけなかったな?」
「そ、そんなことないよ。マリオだって……そんなにひどくないって言ってたし……。」
「何か声が小さくなっていったのは気のせいか?あ、マリオだが…気をつけろ。何か企んでいる。」
「企んでいる?マリオが?ロイじゃなくて?」
「あぁ。……一度戻ろう。」
フォックスはリンクを無理やり連れていった。
それから3週間ほどが経った。ゼルダからの注意やトレーナーやフォックスの監視のかいあって、リンクは大人しくしており、傷は完全に治った。
リンクは今、バルコニーでくつろいでいた。その近くでは……
カチャ、カチャ……
スネークが屋根で何かを取り付けていた。
「……これでよし、と……。」
スネークは無線を取り出した。
「こちらスネーク。準備が整った。……始めてくれ。」
「了解。」
無線の相手はマリオだった。無線を切る。マリオはバルコニーにつながる大窓の前にいた。そして、もう一人、剣を携えて待機している人がいた。
「向こうはOKのようだ。……さぁ、ロイ。暴れてこい!」
たたずんでいた人――ロイはニヤッと笑うと駆け出した。
「イィィイヤァア!」
ロイはリンクを中庭につき飛ばした。
「うっ……!」
いきなりの攻撃に驚いたリンクだったが、なんとか体制を立て直し、上手に着地して見せた。そのままの勢いでマスターソードを引き抜く。
「誰だ!……ってロイ!?」
リンクに驚きと後悔の表情が現れた。ロイはお構いなしにリンクにとびかかる。リンクはさっと避け、剣を受ける。そしてそれを流し、間合いをとった。
“へぇ……けっこういい動きしてんじゃねぇか……じゃなかった。”
マリオは感心していた。その間にもリンクは抗議の声を上げる。
「ロイ!どういうつもりだよ!……やめとこうよ……。」
ロイは聞こえなかったふりをして、マリオに一瞬目線を当てた。マリオは合図をしっかりと受け取り、叫んだ。
「リンク!ロイがおかしくなった!止めてくれ!」
「え………え?オレに……止めろって……?」
リンクは困惑してロイを見やった。マリオは後一押しと言わんばかりに叫んだ。
「もうお前しかいねぇんだよ!俺もさっきやられて動けないんだ!」
「マリオ、何があったのかな………ロイ?」
そこへ運悪くマルスがやってきた。口ではああ言ったものの、五体満足なマリオはさっとマルスの口を塞ぎ、動きも封じた。
「黙って見てろ!」
“……え?……何をするつもりだ……?”
「ハァァアア!」
ロイは再び斬りかかる。
“リンク、危ない!”
マルスは思ったが、口に出すことは叶わなかった。
“……仕方ない……ここは本気で戦うか……。”
リンクはさっと攻撃を避けた。そのまま一瞬でロイの後ろに回った。
「ロイ、ごめん。それと……忘れて。」
リンクはロイを蹴り飛ばした。そして、とどめを剣の柄で下突きでさした。ロイは一瞬の出来事に対処できず、気絶した。リンクはすぐにロイに駆け寄った。
ピッ。
スネークが取り付けていたのはビデオカメラだった。無事撮影も終了した。無線に話しかける。
「……ちゃんと撮れた。今からこのデータを保存しに行く。」
「あぁ、任せたぜ。」
マリオはマルスを解放し、ニヤニヤしながら答えた。
「マリオ……どういうことかな?」
「それは後でのお楽しみってことで。」
マリオは走り去った。マルスはリンク達のもとに向かう。
「……リンク、大丈夫だったかい?」
「マ、マルス……!今の見てた……じゃない、無事だったんだね。そっちから来たってことはマリオ見た?彼は、」
「リンク、落ち着いて。マリオはなんてことない。走れるくらいに元気だったよ。」
「え……?」
リンクは唖然としてマルスを見た。
「じゃあ、何で……いや、それより……。じゃあ、じゃあ、マリオ呼んでこなきゃ。ロイが……。」
「ロイもなんてことないと思うから、ほっといていいよ、リンク。」
「そりゃひどいぜ、マルス。」
ロイが起き上がった。
「ロイ、大丈夫?」
リンクが聞くと、ロイはぎこちなく頷いた。
“こいつ……やべーほど強い……じゃねぇ……セリフ忘れたー!”
「……さっきのこと覚えてる?」
「さっき……?い、いや……全然。」
“確か覚えてない設定だったよなー。……なんか、こいつがほっとしてるように見える……。”
「そっか。……マリオのところに行った方が、」
「そうだなー。そうするよ。あ、俺一人で行けるから。サンキュ。」
ロイは戸惑っているリンクを放置し、さっさとその場を後にした。
「……。みんなの、みんなの無事を確認しないと……。」
「その必要はないよ。」
マルスはいち早く状況を理解した。リンクに事実を教えてやる。
「君は、マリオとロイに騙されたんだ。」
リンクはポカンとした顔をした。
「騙す……?何で?」
「君の実力を暴くためだよ、リンク。」
トレーナーがフォックスと一緒にやってきた。
「実力……あ、」
リンクは不安そうにマルスをみた。マルスは微笑んだ。
「安心しなよ、リンク。君の実力なら知ってたからね。……一度戦った時に思い知ったし、薄々察してはいた。だけど……。」
「マリオとロイがみんなにバラすと思う。」
マルスの言葉をトレーナーが引き継いで言った。リンクはハッとした顔をした。
「……マリオが企んでいたことって……」
フォックスは頷いた。
「多分これだな。さっき屋根の上にスネークがいるのを見た。……全部撮られただろうな。」
“なんだ、トレーナーとフォックスは知っていたのか。”
「……そっか……今まで隠しててくれてありがとう……。」
“……後が……怖い……。”
一方スネークの部屋。スネークの部屋にマリオがやってきた。
「どうだ、スネーク?」
スネークは親指を立てた。
「バッチリだ。見てみるか?」
「いや、今はいいや。」
その時ドアがバーンと開いた。
「お前らここにいたのか!って、俺を放ってくなよ。」
「あぁ、ロイ。ご苦労さん。」
マリオがねぎらいの言葉をかけると、スネークはロイを見た。
「で?本気のリンクと戦った感想は?」
「マジヤベー。あれはねぇぜ。」
「ところで、そのデータだが……DVDにしてみんなに配ったらどうだ?」
「おーいいねぇ。これで次からリンクは本気を出さざるをえなくなるわけだ。」
マリオの提案にロイは乗り気だ。それを渋るのはスネークだけだった。
“それはそれで困りものだが……って、はじめと目的が違ってきてないか?”
スネークは回想した。
ある日の夜遅く、マリオが部屋にやってきた。
「なぁ、スネーク。ちょっと手伝ってくれないか?」
「……内容による。」
“……なんか嫌な予感が……。”
スネークの心の内には気づかず、マリオはニッと笑った。
「リンクの強さを確かめたい。」
「は?」
「俺が聞いた話によるとな、リンクはもっと強いらしいんだよ。」
「あぁ、それは姫さんも言ってたな。」
“なんだ、ゼルダもかよ。じゃあ、けっこう信憑性あるな。”
「そこで、本当はどれくらい強いのか、知りたいと思ったワケだ。……手伝ってくれないか?」
“なんだ、意外とまともな依頼じゃないか。”
スネークは快諾した。
「いいだろう。作戦はあるのか?」
「あぁ、一応な……。」
そして、話し合いは続いた。
“あの時の予感、結局は当たったか……。”
「なぁ、みんなに配れるだろ?」
ロイがスネークに詰め寄った。
「……できなくはないが……。」
「なら、やってくれよ☆」
マリオが言うと、ロイが隣でシャキ、と剣を鳴らしてみせた。
「……わ、わかった……。」
“こ、断れん……。”
そしてリンクとロイの戦いのDVDが作られた。
「サンキュー、スネーク。後は任せろ♪」
「協力、感謝するぜ。」
二人は思い思いに礼を述べると、部屋を後にした。
“……リンク、すまん……。”
次の日の朝。リンクは朝食を作り終えた。キッチンを出る。が……
「……あれ……おかしいな……カービィすら来ないなんて。」
いつも食事ができたとたんにやってくるカービィはおろか、誰もいなかった。
「……何かあったのかな……。」
リンクが不安に思っていると、扉が開いた。スネークがやってくる。
「おはよう、スネーク。よかった。……みんな来ないから何かあったのかと……。」
スネークは何も言わず、疲れたようにリンクを見た。リンクは扉に向かった。
「じゃあスネーク、後よろしくね。」
リンクは出ていった。スネークはしばらくの間それをぼんやり見ていた。が、やがてため息をついた。
「……それで許してくれるのなら、いくらでも任されよう……。」
その日の午後、リンクは部屋で本を読んでいた。すると誰かが扉をノックした。リンクが開けると、そこにはサムスがいた。
「リンク、今から乱闘しましょ!」
「…………え?」
“今から乱闘?しかも、何でオレを誘うんだ?”
「とぼけるなよ、リンク。見たぜ?」
ファルコンの声がした。リンクが少し扉を大きく開けてみれば、他にもうじゃうじゃといた。
“見たって……昨日、ロイとやったとき……!?”
「強いんだったら、もっと本気でやれよ、リンク!」
ドンキーが叫んだ。すると、アイスクライマーの二人がニコニコしながら言う。
「もうズルしても意味ないよー!」
「ぜーんぶDVDで証明されてるんだから!」
「………DVD………?……あぁ。」
“あの二人か……。”
リンクは納得した。
「さっそくコンのところへ行こうぜ!」
ソニックは言いながらリンクを引っ張った。
「え、でも、オレ、乱闘嫌い、」
「問答無用!」
最後は誰が言ったか分からなかった。その場にいたみんなにリンクはもみくちゃにされ、コンのところに連れ出された。その日、リンクは親しい人や一芸に関わったマリオ、ロイ、スネーク以外の人と本気を出して戦う羽目になった。手を抜こうとすると、やり直させられたので、今回ばかりは手の抜きようがなかった。次の日、リンクは朝食だけを作ると、部屋で寝込んでしまった。
時は戻り、DVDが配られた朝のこと。
「許さない……。」
トレーナーは3匹のポケモンと一緒にDVDを見ていた。
“……いずれはバレることだったと思うけどな”
フシギソウはこっそり思った。
「レッド、これはマリオとロイがリンクに罠を仕掛けてやった、というのは本当か?」
トレーナーはただ頷いた。リザードンはうなった。
「……小賢しいことを。」
「でもさ、やっぱりリンクって強いよねー!あこがれるなぁ……。」
ゼニガメがうっとりと言うと、やはりトレーナーは無言で頷いた。やがて映像が終了し、トレーナーはDVDを取り出した。リュックを持ち出してくると、必要ないものを出し始めた。
「どっか行くの?」
嬉々としてゼニガメは聞いた。
「うん。ちょっとシンオウのひみつきちに。」
「ワーイ、ボクも行くー!」
ゼニガメが喜び勇んで言うと、フシギソウがやれやれといったふうに言った。
「……ゼニガメ、遊びに行くんじゃないと思うけど……。」
そして、不安そうにトレーナーをみた。トレーナーは頷いた。
「……何をしに行く?」
リザードンが怪訝そうに聞いた。
「近くにいるおじさんにトラップを交換してもらいに行く。」
「……それ……ロイやマリオの部屋に仕掛けるの?」
「……正解。」
フシギソウの質問に、トレーナーは真顔で答えた。リザードンが間髪入れずに言う。
「やめておけ。」
「大丈夫だよ。僕がちゃんと責任とるし、マリオとロイ以外には迷惑かけないから。」
もちろん君達にも、と一言付け加えて立ち上がった。そして出ていった。リザードンがついていく。
「遊びじゃないなら、ボクはここにいるよー!……邪魔だと思うし。」
「ゼニガメのお守りしてまーす!」
残ることにした2匹は叫んだ。
「ボクは子供じゃない!」
ゼニガメが憤慨して言った。
「はいはい。」
フシギソウはそれを適当にあしらう。
“……レッドがいない口実を考えなきゃ……。”
リンクがほとんど全メンバーと乱闘させられている頃。トレーナーの部屋をノックする者がいた。
「入るぞ。」
そして、返事も聞かずに開けて入ってきた。それはフォックスだった。
「フォックスー、いきなり開けるなって。」
ゼニガメはフォックスの顔をみるなりじゃれついた。
「悪いな。だが、俺はいつもこうだ。」
一応謝りはしたものの、フォックスに悪びれた様子はなかった。
「フォックスー、今、暇なんだー。遊んでー。」
ゼニガメのあまえる攻撃が炸裂!
“ゼニガメ、フォックスの気をそのまま紛らわせておいて……。”
「後でな。トレーナーは?」
ゼニガメは軽くあしらわれ、フシギソウの心の声は届かなかった。
“……いきなり痛いところついてくるんだ……。”
「え……と、……どこ行ったんだっけ?」
ゼニガメは助けを求めるようにフシギソウを見た。フシギソウは用意していた内容を言う。
「ちょっと急用ができた、って言って帰ったよ。でも、すぐに戻るんじゃないかなぁ、あの様子を見たかんじだと。」
「……急用なぁ……こんなときに……。じゃあ、リザードンは?」
「トレーナーについていった。」
「そうか。………。なぁ、トレーナーに変わった様子はなかったか?」
「……変わった様子……?」
“……なんか、読まれてる……?”
「うーんとね、怒ってたよ。」
“それって言ってもいいの!?”
「……怒ってた?……あぁ、そっちの方が強かったか。」
「「え?」」
ゼニガメとフシギソウがはもった。
「いや、何でもない。悪かったな、邪魔し」
「いつ遊んでくれるの?」
「コラ、フォックスは忙しいんだから……。」
「そうだったな。今から遊ぼうか?」
「え?いいのー!?」
「あぁ。」
夜が来て、夕食になるまでゼニガメはフォックスに相手をしてもらっていた。
真夜中、いきなり扉が開いた。フシギソウは警戒しながら立ち上がった。すると、リザードンがトレーナーをかかえて入ってきた。フシギソウはリュックを受け取った。そのリュックはずっしりと重かった。リザードンはトレーナーをベッドに寝かした。
「おかえり、リザードン。遅かったね。」
「あぁ。……ゼニガメのように寝ていてもよかったのだが?」
「いや……ゼニガメをフォックスに任せてる間、昼寝してたから。」
「………そうか。」
「それで、このリュックの感じを見る限り、交換してもらえたんだね?」
「あぁ。……いつ実行するのかは知らんが……実行されたらマリオとロイの部屋はとんでもないことになるぞ。」
「そうだろうね……。」
2匹も眠りについた。
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