想いのペンダント

また少し時は戻り……ゼルダは自分の部屋で目を覚ました。

「うぅ………。」

「ゼルダ?目が覚めた?」
ベッドの近くにサムスがいた。サムスは心配そうにゼルダを覗き込んでいる。

「……サムス?どうして……?」

「あなたを見た時はびっくりしたわ。なにしろリンクもフォックスも勝手に……」

「リンクは私のところに来ていません。…ピーチの方に行ったのでしょう。」

ゼルダはサムスを遮って言うと体を起こした。

「……え?そんなことは」

「よっ!ゼルダ。大丈夫か?」

ロイの声でサムスの言葉は途切れた。ロイが部屋に入ってくる。

「え…えぇ。でも、私は……」

「早く行こうぜ!ゼルダ姫!」

ロイはゼルダをエスコートするように連れ出した。

“……彼女は誤解したままなのね……。”

サムスも2人についていった。





「お誕生日おめでとう!」

ゼルダが会場に入った途端、その場にいた人々は口々に言った。

「こっちだ!」

ロイは驚くゼルダを席まで連れて行った。

「一体これは……。」

「いつも実行委員で大変だからって、でも、誕生日は祝わなきゃって、リンクががんばったんだよ。」

ゼルダの問にネスが答えた。

“そんな……ウソよ…。”

ゼルダは心の中で呟いた。

「リンクはどうした?」

ソニックがキョロキョロと辺りを見渡す。

「…僕が帰ってから一度も見てないね。」

トレーナーが心配そうに答えた。

「………きっと来たくないのでしょう。」

ゼルダが苦々しく言った。

「それはないだろう。」

ゼルダの様子に驚きながらも、メタナイトが否定した。

「あの頼み方は尋常ではなかった。」

スネークがメタナイトに同調する。

「でもリンクは、私ではなくピーチの方に…。」

「来てなかったよ。」

ゼルダの呟きに答える者がいた。ルイージだ。

「えぇ、私の方には来てないわ。」

ピーチがゼルダの方へやってきた。

「お誕生日、おめでとう!」

「え…えぇ…ありがとう…。」

ピーチの祝福の声にゼルダは作り笑いをした。

「……彼は遅れてでも来ると思うよ。今は楽しもうよ。」

マルスがゼルダを元気づけるように言った。

「……そうですね。」

ゼルダは頷き返す。

「ゼルダ!おめでとう!」

カービィはゼルダに飛びついた。

「で……何の話だったんだ?」

「それは…」

マルスはソニックにピーチとゼルダがさらわれ、リンク、フォックス、マリオ、ルイージが助けに行ったことを話した。

「I see.そんな事があったのか。大変だったな。」

ソニックは納得すると、パーティーを楽しみにいった。





パーティーも終盤になった。

“やっぱり、来るわけがないわ……。”

ゼルダはみんなと話していた。しかし、素直に楽しめない。他の人たちはワイワイガヤガヤと、それなりに騒いでいる。そんなときに、扉が開いた。しかし、その事に気付いたのはゼルダとファルコだけだった。フォックスが入ってくる。

“……もう、終わりかけだな…。”

フォックスは近くの椅子に座った。

“フォックス……。”

ゼルダは、複雑な気持ちだった。よく分からない想いが込み上げてくる。ゼルダは他の人との会話に戻った。

「ヨォ。遅かったな?」

ファルコはフォックスのもとにやってきた。

「あぁ……色々あった……。」

ファルコはフォックスに飲み物を差し出した。フォックスはそれを一気に飲んだ。

「……酒かよ……。」

フォックスは思わず呻いた。それに気付かずに、ファルコが問う。

「……リンクは……?」

「あいつは……来れない。すまないが、今は何も聞かないでくれ…明日、全部話す……。」

「……了解。」

フォックスの疲れた様子を見て、ファルコはそれ以上何も言わなかった。

「なぁファルコ。マリオ、ドンキー、カービィ、ルカリオ、ネス、アイク、ファルコン、ソニック、スネークに明日の朝、会議室に来るように頼んで欲しい。」

「どうしてだ?」

「……リンクの事だ。」

「分かった。俺も参加していいよな?」

「もちろんだ。」

ファルコは歩き去った。それと入れ替わるように、ルイージがフォックスの近くを通りかかる。

「ルイージ。」

「なんだい?」

「明日、会議室で話したいことがある。朝、来てくれるか?」

「いいけど……リンクはどうしたの?」

「…そのことで、来てほしいんだ。今は……。」

「分かったよ。」

ルイージはまだ聞きたそうな顔をしていたが、フォックスに頷いてみせ、去った。フォックスはその後、ヨッシー、メタナイト、ピカチュウ、トレーナー、マルス、オリマー、サムス、ピット、ロイに頼んでまわった。





“……結局、彼は来なかった……。”

パーティー終了後、ゼルダはすぐに部屋に戻っていた。その時、フォックスが扉を叩いた。

「開けてくれ。」

「……フォックス……?」

「あぁそうだ。渡したいものがある。」

「……すみませんが、後にしてくれませんか?今は話をする気分ではありません。」

「頼む。これを渡したらすぐに去る!だから開けろ!」

「………………。」

ゼルダはその場で首を横に振った。

「……なんなら、さっきみたいに扉を……」

「…分かりました。」

ゼルダは仕方なく、扉を開けた。

「………………。」

フォックスは無言で箱をゼルダに渡した。

「これは……?」

「リンクから預かっていたものだ。あいつに返せなくなったから、ゼルダに渡すことにした。」

フォックスは帰ろうとした。

「…待ってください!リンクは……リンクは今どこに……?」

「さぁ。俺はお前が知っていると思っていたが?」

「まさか!どうして私がそれを知っていると思ったのですか?」

フォックスは表情を曇らせる。

「……ガノンドロフに……協力したのだろう?」

フォックスはいなくなった。

「どうしてそれが関係するのですか……?」

ゼルダは呆然としたまま部屋に戻り、ベッドに座った。そして、箱を開ける。

「これは………。」

ゼルダはペンダントを取り出した。ハート形のローズクォーツにトライフォースが彫ってある。

「とってもきれい…。……?」

ゼルダは手紙が入っているのを見つけた。それを読み始める。

『ゼルダへ。本当にごめん。あれからもう一度考えてみたけど、やっぱり分からなかった。ごめん。こんなオレを許せるわけないよね?でも、これと一緒に入っているペンダントは受け取ってほしい。ギリギリになっちゃったけど、今日のために用意したんだ。気に入ってくれるとうれしい。最後にもう一言だけいわせて!ゼルダ、お誕生日おめでとう!リンクより』

紙にはそう書いてあった。

「リンク……!」

慌ててゼルダは部屋を出た。





ゼルダはリンクの部屋の前にきた。

“……?みんなどうしたのかしら?”

そこにはファルコン、トレーナー、ネス、ピカチュウが集まっていた。ゼルダは思わず、また隠れた。

「おいリンク!出て来いよ!一体どうしたんだ?」

ファルコンが話しかけた。返事は返ってこなかった。

「ゼルダ、寂しそうだったよ?リンク、あんなに頑張っていたのに……。」

ネスが訴える。

「そうだよ。何かあったの?君らしくないじゃないか!」

トレーナーが叫んだ。やはり返事はない。ファルコンがドンドンドンドンと激しく扉を叩き始めた。

「いい加減出て来い!」

トレーナーがファルコンの肩に手を置いた。

「……もう、放っておこう。」

トレーナーは歩き出した。

「あ………。」

ネスは困ったようにトレーナーを見、ファルコンを見た。

「……ったく!」

ファルコンは一発ドン!と強く扉を叩くと、トレーナーを追った。

「……みんなぁ……。」

「……仕方ないよ。ピカチュウ、行こう……。」

ネスも行ってしまった。

「………。リンク、本当に居るの……?」

ピカチュウは問いかけると、扉を開けようと跳んだ。しかし、届かなかった。

「……私が開けます。」

ゼルダは扉の前まで行く。扉を開けた。2人は中に入る。

「……リンク?」

ピカチュウは部屋の中を走り回った。

“…いなかったの……?”

ゼルダは唖然として部屋を見つめた。

「あら、ゼルダ。こんなところにいたの?部屋にいないから、びっくりしちゃった。」

サムスがやってきた。

「……サムス……。リンクを、知りませんか?」

ゼルダはサムスを見るなり、聞いた。

「あぁ……フォックス曰く、『帰って来れない』そうよ。」

呆れたようにサムスは答えた。

「帰って来れない?どうして?」

ピカチュウが不思議そうに聞き返した。

「さぁ。明日話すって言ってたけど……呼ばれたでしょ?」

「呼ばれた。」

サムスの答えにピカチュウは短く答える。が、ゼルダは余計に判らなくなったようだった。

「何のことですか?」

「ゼルダ、知らないの?……ごめん、全員だと思ってたから…忘れて。」

「え、えぇ……。」

歯切れの悪い答えに困惑しながらも、ゼルダは頷いた。

「ところでゼルダ。リンク、本当に浮気したと思う?」

何とはなしに、サムスはゼルダに聞いてみる。

「……もう、分かりません。」

ゼルダはその場に座り込んでしまった。

「リンクは、浮気なんかしていないよ。」

ピカチュウが慰めるように言った。

「……どうしてそう、言い切れるのですか?」

ゼルダは聞き返した。

「私達、誤解をしていたのよ。ピーチは本当にリンクを手伝ってただけ。」

サムスが言った。

「そして、2人が何も言わなかったのは、ゼルダを驚かせたかったから!」

ピカチュウが続ける。

「では私は………」

「もしかして、プレゼントってそれ!?」

ゼルダを遮って、サムスが叫んだ。

「え、えぇ……。」

ゼルダは圧倒される。

「まぁ、ピーチが手伝った割には……というか、とってもすごいじゃない!さすがはリンクね!」

「…………………。」

ゼルダは悲しげな顔を浮かべた。

「ゼルダ?大丈夫?」

ピカチュウが心配そうに声をかける。

「えぇ……気にしないでください。」

ゼルダはそう答えると部屋に戻っていった。





次の日の朝、フォックスやファルコに呼ばれた人達は、会議室に集まった。

「……来てくれたみたいだな……。」

フォックスは立ち上がった。

「みんな、聞いてほしいことがある。まずは……」

「ちょっと待ってくれ!」

ファルコンがフォックスを止めた。

「結論から言ってほしい。……リンクの事と聞いているから、あまり乗り気がしない。」

メタナイトがファルコンに続ける。

「……分かった。あいつを助けるのを手伝ってほしい。」

フォックスは要望に応えた。

「?どうしてぼく達が!?リンクは来なかった。ゼルダのパーティーに!」

ネスが叫んだ。怒りの表情が読み取れる。

「…彼を悪く言いたくはないが、彼は期待を裏切った。……重罪だ。」

アイクが静かに続けた。

「!あいつは……」

「……理由はあるのだろうが、簡単には許せない。」

フォックスを遮って言い捨てると、ルカリオは会議室を出ていった。

「な!待てよ!人の話を……」

みんなは次々と出て行く。

「最後まで聞け………。」

フォックスはその場に座り込んでしまった。

「……大丈夫か?フォックス?」

ファルコはフォックスの肩に手を置いた。

「あぁ……俺の信頼、ガタ落ちだな……。」

「そんなことはないよ。」

マルスはフォックスに近づいた。

「みんなはお前に失望したんじゃない。リンクにだ。」

ドンキーも行ってしまった。マルスはそれを少し睨む。

「……ハッ……リンクも散々だな……。」

フォックスは余計に落ち込んだ。

「みんながみんなじゃない!今は、俺はリンクを信じている!」

マリオがフォックスを元気づけるように言った。すると、

「僕もだよ!」

「ぼ、ぼくも!」

「私もよ!」

とピカチュウ、ルイージ、サムスが続けた。

「そう。仲間なら、どんな時も信じ合える。それが出来ない人がいても、少しはいるんだ。無論、僕は信じる。君も、リンクも。……トレーナー、君もだろう?」

マルスはトレーナーに話を振った。

「……ぼくもリンクの事は信じたい。けど、この事は本人から直接聞きたい。僕が間違ってるのは分かってる。けど、今回は僕、手を引くよ。」

トレーナーも行ってしまった。フォックスは溜息をつく。

「元気出せよ、フォックス。俺はいつでもテメェの味方だぜ。」

ファルコは笑ってみせた。

「……そうだな。…ありがとう、みんな。」

フォックスは再び立ち上がった。

「なら、聞いてくれるか?俺の話を。」

6人は頷いた。フォックスは頷き返すと、ゼルダの誤解から、リンクを置いて逃げてきたことまでを話した。

「…ウソ……酷い…。」

サムスは手で口を覆って呟いた。

「…すまない…俺は、リンクを………。」

フォックスはうなだれた。

「あなたは悪くないわ。そんな状況じゃ、どうにもならないもの………。」

サムスが慰める。

「リンク、大丈夫かなぁ…………。」

ピカチュウが呟いた。

「それで、フォックス。どうしたい?」

マルスはフォックスに先を促した。

「初めに言ったとおり、手伝ってほしい。アイツを助けるのを。」

「何人必要だ?」

マリオが聞いた。

「…俺を引いて……3、4人。だが、1人剣士が欲しい。…無理ならいいが。」

「なら、必然的に1人は僕だね。後2人ないし、3人はどうする?」

「僕!僕が行く!」

ピカチュウが名乗り出た。

「もう1人…誰か来てくれないか?」

フォックスが頼んだ。

「俺が行く。そもそも、誤解してしまったのが悪いし、殴っちまったからな。」

マリオが前に出る。

「じゃあ、決定かな?これでいいかい、フォックス?」

マルスが確認する。

「あぁ……協力してくれてありがとう。」

フォックスは頷き、礼を述べた。

「それじゃ、行こう!」

ピカチュウが言った。

「え?今すぐ?」

ルイージが驚いて聞き返した。

「もちろんだ。リンクが捕まってるんだ。1秒でも惜しい。」

マリオが答える。

「さぁ、行こうか。」

マルスが3人を促した。

「気を付けてね、兄さん!」

ルイージがマリオに叫んだ。マリオは頷いて返した。

「ピカチュウ、マルス、リンクをお願い。」

サムスが2人に頼む。

「任せて!」

とピカチュウは返し、

「分かっている。」

とマルスは応えた。

「フォックス!……気ぃ、引き締めて行けよ。」

ファルコのその声にフォックスはニヤッと笑うと親指を立てた。4人はいなくなった。





フォックス、マルス、マリオ、ピカチュウの4人はハイラル入り口から入ったので、ハイラルにはすぐに着いた。

しかしそこは……。

「どうなっているんだ?」

なんとかマリオは声を出す。ハイラルは、闇と化していた。

「昨日はこんな事にはなっていなかった……。」

フォックスが愕然として呟いた。

「あの美しいハイラルが、1日でこんな……?」

「恐ろしいぃぃぃ。」

マルスの驚きの声にピカチュウは思わず呻く。

「フォックス、そういえば、あてはあるのか?」

マリオの問にフォックスはすまなさそうな顔をした。

「…………ない。」

「えぇぇぇえ!?」

衝撃の事実に再びピカチュウが声を上げる。

「……すまん……。」

「仕方ないね。リンクが攫われた…じゃないか、捕まったところに行ってみよう…そこは分かるだろう?」

マルスが妥当と思われる案を出す。

「あ…あぁ。だが、行っても意味はないと思うが…とりあえず、入口までは行こう…。こっちだ。」

4人は歩き出した。





やがて、城下町前に到着した。

「あれ?あの穴は?」

ピカチュウが聞いた。

「あれが入口…みたいなものだ。ちなみに目の前にあるのは…城下町らしい。」

フォックスが答える。

「これが?随分と寂れたところだな。」

怪訝そうにマリオは城下町を眺めた。

「リンクやゼルダはいつも賑やかな所だと言ってたけれど…真逆だね。」

マルスが感想を述べたときだった。

「そこの4人!何をしている!?」

いきなり大きな声がした。4人は振り返った。武装した人が5人、立っている。

「そっちこそ……」

マルスがフォックスを手で制した。そして進み出る。

「僕はアリティア王国の王子、マルスです。近くまで来たので友人に会おうと思い、ここまで来ました。」

「王子だと?信用ならん……」

声を上げたらしい人が言い掛けたが、仲間の1人がその人の口を塞いだ。

「すみません。無礼なことをしました。皆、違う村々に避難しております。おそらく城下町にはいないでしょう。」

「そうですか。」

マルスは少し考える。

「どこでもいいので、近くの村を教えてくれませんか?」

「もちろんです。ご案内いたします。」

よくわからない一行は歩き出した。

「どうする気だ?」

フォックスが囁いた。

「情報収集だよ。村にいる人からなら、いろんな事が聞ける。」

マルスはそう言うなり ?一行についていった。他の3人は、やれやれとマルスに続く。





一行は近くの村に着いた。時刻は昼になっていた。

「静かだね……。」

ピカチュウが淋しげに呟いた。

「マルス。何があったのか、聞いてくれ。」

フォックスがマルスに囁いた。マルスは驚いて囁き返す。

「僕が?どうしてだい?」

「お前しかいないだろ?アリティア王国の王子様?」

マリオが茶化した。マルスは少しむすっとした顔になる。が、マルスが口を開く前に話しかけられた。

「ところで、友人とはどちら様でしょうか?」

「それはもちろん、この国の王女、ゼルダ姫ですよ。」

マルスは即答した。

「!?やっぱりこいつら、怪しい!」

先程の喧嘩腰だった人が叫んだ。

「いいえ。彼らは本当に私の友人です。」

ゼルダが現れた。

「ゼ、ゼルダ姫!」

「ゼルダ!」

その場にいた人達は口々にゼルダの名を呼んだ。

「業務ご苦労様です、ハイラルの兵よ。彼らのことは私に任せて休んでください。」

「ハッ!」

ハイラル兵はいなくなった。

「あいつらハイラル兵だったのか……。」

マリオは1人呟いた。

「ゼルダ、どうしてここに?」

フォックスが不思議そうにゼルダに話しかけた。

「ハイラルが闇に染まったと聞き、戻ってきました。……私のせいです……。」

ゼルダは悲しげな顔を浮かべている。4人は困ったように顔を見合わせた。

「……ゼルダ。詳しい話を聞かせてくれないかな?」

マルスが切り出した。

「…私はまだ詳しくは知りません。今からそれを聞きに行くところです。一緒に来てくださいますか?」

ゼルダは歩き出した。4人はゼルダについていく。





一行はある小さな家に入った。そこには男の人が一人、座っていた。が、ゼルダを見るなり、勢いよく立ち上がった。

「ゼルダ姫様!お戻りになられましたか!……そちらの方々は?」

「私の友達です。……一体、何があったのですか?」

「はい………ですが………。」

男性は言うのを渋った。フォックス、マルス、ピカチュウ、マリオをチラッと見る。

「力になりたいのです。それには、説明していただかなければ。」

男性の思ったことを理解したマルスは説得を試みた。

「分かりました。」

が、男性はあっさりと承諾した。安心したようだ。

「……戻ってきたのです…ガノンドロフが……。」

“それは分かってるんだ!”

マリオは声に出すのをなんとか抑えた。

「やはりそうですか……。しかし、どうしてハイラルは?」

「2人掛りで襲ってきたのです。城は簡単に落ちました……。」

フォックス、マルス、ピカチュウ、マリオが悲しげに顔を見合わせた。

「ガノンドロフともう1人は……?」

「緑の衣をまとった、勇気のトライフォースを持つ勇者……リンクです。」

ゼルダが口を覆った。言葉に詰まってしまう。代わりにマルスが質問した。

「2人がどこにいるか、ご存知ですか?」

「……ハイラル城だと思います。まれに、リンクは違う所で見たという情報も入りますが…。」

「それは一体どこでしょう?」

「襲われた町や村……主犯者はリンクのようです。」

「そんなことはない!あいつは……」

思わず叫んだフォックスをマリオがとめた。

「……すみません。続けてください。」

マルスは先を促した。

「はい。…今回、ガノンドロフは一切をリンクに任せているようです。」

「……その他に分かっていることは?」

動揺から多少回復したゼルダが聞いた。男性はゆっくり首を振った。

「しかし、ただ、言える事は……今までで一番最悪な状況だという事です。」

「ありがとうございます。」

男性は一礼すると家を出て行った。

「……あいつ!リンクをいいように使いやがって!」

男性が出ていったのをきっかけに、フォックスは怒りを爆発させた。フォックスの脳裏にリンクの苦痛に満ちた顔が浮かぶ。

「フォックス……落ち着いて?」

ピカチュウがフォックスをなだめた。

「いいように使う?どういう意味ですか?」

少し蚊帳の外となっていたゼルダが聞き咎めて質問した。

「フォックス?話していないのかい?」

マルスが呆れたようにフォックスに問う。

「………あぁ。」

「?どういうことですか?」

「…ゼルダ。リンクは今、ガノンドロフの手の中だ。」

マリオの説明にゼルダは青ざめた。

「そして、リンクは操られている。」

ピカチュウが続ける。

「そんな…!では、リンクは私の所為で……あぁ、どうしましょう!」

ゼルダはその場に座り込んでしまった。

「もちろん、助けに行く。」

フォックスは短く答えた。

「だが、どうする気だ?」

マリオが聞いた。

「リンクはハイラル城にいるんだろ?だったら、そこに攻め入るに決まっている!」

「フォックス……早まっちゃダメだよ。」

ピカチュウがヒートアップしてきたフォックスを再びなだめた。

「そんな事は言ってられない。これ以上、リンクを良いように使わせるわけにはいかないぜ!」

そんなフォックスにマリオものった。

「そうだな。今すぐハイラル城に……」

「ちょっと待てって!」

あくまでも冷静なマルスが2人を止めた。念のために扉の前に陣取る。

「それではあまりにも無謀すぎる。もっと冷静になるんだ。」

「だが………」

フォックスが反論しかけた。

「焦る気持ちも分かる。けど、何も考えずに行動して捕まってしまったら、元も子もないだろ?」

「しかし、何を決める必要がある?」

フォックスに比べたら、比較的冷静なマリオが聞いた。

「例えば……2つに分けるとか。」

「お前はリンクをなんとかして、俺とフォックスとピカチュウはガノンドロフを倒す。それで決まりだ。」

マリオが早口で言った。

「僕1人で本気のリンクを止めろって?無茶言わないで欲しいね。」

「おいおい、あのリンクだぜ?お前なら平気だろ。」

おかしな物でも見るかのように、マリオはマルスを見た。少し冷静さを取り戻したフォックスは、そのやり取りをボンヤリと眺めた。

“あぁ、マルス1人じゃ辛いかもな……。アイツ、普段は相当手を抜いてたし…………。”

「なら、仮に僕1人でリンクを止められるとしよう。じゃあ、リンクを探すのは大変だと思わないかな?」

「ねぇ………。」

「リンクもガノンドロフも一緒にいると思うが?」

傍観を決め込んでいたフォックスが割り込んだ。

「そんなありふれたことをガノンドロフという敵がすると思うかい?」

「だったら頑張って探してくれ。ガノンドロフを探すのだって大変なん」

「ねぇってば!」

突然、ピカチュウが大声を出した。

「何だよ!」

マリオはむっとして言い返す。

「僕、リンクの居場所なら分かると思う。」

「どうやってだ?」

もとの調子でマリオが聞いた。隣ではフォックスが納得したように一瞬笑った。

「僕はピカチュウ。ねずみポケモン。知ってるよね。」

マルスはピカチュウの意図を理解して顔を輝かせた。

「じゃあピカチュウ。僕と一緒に来てくれるかい?」

「もちろん!」

「なら、ピカチュウとマルスがリンク、俺とフォックスがガノンドロフ……でいいな?」

マリオが確認した。

「あぁ。じゃあ、行こうぜ!」

フォックスが走りかけた。それをマルスが軽く捕まえる。

「ゼルダ。1つくらいハイラル城への抜け道はあるだろう?教えてくれないかな……………あれ?」

ゼルダがいた場所を全員が見た。が、彼女はいなかった。

「…いつの間に…。」

マリオが呟いた。

「これは行くしかないよな?」

フォックスは勝ち誇ったような眼をマルスに向けた。

「はぁ…分かった……。」

マルスはやれやれと首を振り、フォックスが出るのを許した。フォックスが家を出、マリオ、ピカチュウが続いた。マルスも後を追う。




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