短編の短編
前ページ「とある昼下がり」から繋がっています。
※フォレストページ時代は中編として公開していましたが、思ったより短い話だったので、こちらに格納しました。
―――――――――――――
事のはじまりはターマスからの一本の電話だった。
「ということですから、よろしくお願いしますね。」
「え?は?ちょっと待って!!何がと、いうことでっ…って、切られた。」
ネスは忌々しげに電話を見た。もとはといえば、ルイージが出た電話だった。それを何故か呼ばれてかわってみれば、毎度如く、ターマスは一方的にしゃべり、切ってしまった。ネスはイライラと受話器を置いた。
「……ネ、ネス……。どうしたの……?」
一緒にいたリュカが心配そうに聞いた。ネスは未だに気が収まらないようで、そっけなく答えた。
「うちから夏休みの宿題が送られてきたんだって。リュカの分も。」
「え゛………。」
最後に付け加えられた一言によって、リュカは絶句した。
「で、問題は何するか、だよね。」
幾分落ち着いた二人は自分たちの宿題を確認した。すると、自由研究が含まれていたことが分かった。この際だから共同で研究しようと、上記のセリフに至る。
「あ、これは?動物達に話してもらうの。どう思ってるか、とか。」
リュカは目を輝かせている。一方ネスは冷静だった。
「それってあり?ぼくとしても興味津々なんだけど。」
だが、リュカも引き下がらない。
「だ、だって……ぼくらがPSI使えるのは、」
「周知のことだったね。よし、それ採用!!早速行こう!」
二人は外へ飛び出した。
が、数分後、とぼとぼと二人は戻ってきた。
「……ダメ、みたいだね。」
落胆してリュカがつぶやいた。ネスはため息をついた。
「見事に逃げられたよね。人間だー!!逃げろー!!だってさ。……襲うわけじゃないのに。」
「それだけぼくらって恐ろしい存在なのかな……なんか、悲しいね。」
そこへロイがやってきた。
「よぉ、そんなしけたツラしてどうしたんだよ?」
「……いいね、ロイは気楽で。」
ネスに八つ当たりされて、ロイはたじろいだ。
「……なんか、ホントに機嫌悪いな……。どうしたんだよ?」
ネスはそっぽを向いた。リュカが慌てて説明した。
「あ、あのね、自由研究って宿題があって、動物たちをテーマにしたんだ。それで、動物たちに話を聞こうと行ってみたんだけど……逃げられちゃって……。」
困ったようにリュカは俯いた。
「へぇ……自由研究……そんなんあるんだな。面白そうじゃんか。」
「他人事だと思って!!大変なんだよ、自由研究!!」
のんきなロイに対してネスは食って掛かった。
「わ、悪い悪い。」
機嫌が悪いネスに余計なことはいうもんじゃないとロイは思った。
「そうだ、ロイ。なんか案ないの?」
「え?それって動物たちとしゃべるための案か?」
「当然じゃん。」
”あきらめてないんだ……!!”
リュカは目を丸くした。一方問いかけられたロイはニヤッと笑った。
「簡単じゃんか。そいつら何で逃げたんだ?」
「知らないよ。何も聞かないうちにワーッと逃げちゃったんだからさ。」
ネスはムッとして言った。ロイはがっくりしながら、なんとか持ちこたえた。
「……そこは想像しろよ……。まぁいい。お前が人間だからだよ。」
「はぁ?」
「じゃ、頑張れよ。」
言うだけ言って、ロイは去って行った。
「……何が言いたかったんだよ……。」
ロイの真意をはかりきれず、ネスはため息を吐いた。隣で、リュカが合点のいった顔をした。
「ね、ねぇ、ネス。」
「何?」
「動物に……人間以外の人に説明してもらったら?」
ネスはポカンとした。
「それってどういう………そういうことか!!」
ネスはポンと手を叩いた。
「ナイスリュカ!行こう!まずはフォックスだ!!」
ネスはリュカの手を引いて走り出した。
「は、速いよぉー!!」
リュカの叫びが響いた。
「……それで、俺に通訳をやれと?」
ネスとリュカはフォックスの部屋の前にいた。二人はフォックスに事情を説明し、キラキラした目でYesの返事を待っている。フォックスは頭をかいた。
「お前らそれ、本当に学習のためか?なんか別の思惑があるような」
「ない!」
フォックスの疑問をネスが一蹴した。フォックスはため息をついた。
「そうかよ。」
しばらく二人と一匹は見つめ合った。やがて、フォックスは再びため息をついた。フォックスは根負けしたのだった。が、
「仮に学習のためだとして……お前らが勉強熱心なのに免じて手伝ってやりたいのはやまやまだが……。」
フォックスの言い様は歯切れが悪い。フォックスはチラッと部屋の中を見た。
「……あいにくと、仕事が山積みなんだ。」
ネスは膨れた。
「ウソだぁ!じゃあ、部屋、見せてよ!!」
「ネ、ネス……!迷惑かけちゃ悪いって。」
リュカがなだめにかかった。が、ネスは駄々をこねた。
「だって、ホントに仕事なのかわかんないじゃないか。ぼく達をたぶらかしているだけかもよ?」
フォックスは頭を抱えたくなった。
「そんなことしないって……。……はぁ、分かったよ。あんまり見せたく……ってか、ドアを大きく開けたくないんだが……入るなよ?」
フォックスはドアを開けた。二人は絶句した。部屋の中は書類だらけだった。その時、風がひゅうと入ってきた。すると、紙が数枚飛んだ。
「あーあ、飛んじまった。」
フォックスは他人事のようにつぶやいた。
「ひ、拾わないの?」
リュカがおずおずと聞いた。
「後で拾う。今行くと、被害が拡大するからな。……ハァ、ペッピーの奴、夏休みの宿題よろしく、大量に送ってきやがって。……ま、こういうわけだ。トレーナーあたりにでも当たってくれ。」
二人は頷くしかなかった。
「ごめんね、邪魔して。」
「こっちこそ協力できなくて悪いな。」
パタン、と、扉が閉められた。
「……。じゃあ、助言通りにトレーナーのとこ行こうか。」
「そうだね……ファルコもこんな状態かな……。」
「十中八九、そうだと思うよ……。」
二人はとぼとぼと歩き出した。
「え?動物たちに通訳?」
「そう、してもらえないかな?」
中庭でゼニガメ達と水遊びをしていたトレーナーを見つけ、二人は早速本題に入った。
「自由研究で、ねぇ……。」
「お願いできる?」
期待のこもった目で二人はトレーナーを見ている。それを見て、トレーナーは困ったな、と思った。
「……受けてあげたいけど、ダメなんだ。」
「えぇ!?なんで!?」
ネスが叫んだ。リュカはがっくりとしている。
”フォックスがダメだと、頼れる人が他にいないもんな……。”
トレーナーは苦笑した。
「君達の話だと、ポケモン達に君達は無害だと伝えてほしい、ということだけど……僕はもちろん、この3匹もピカチュウやプリンだって動物の言葉は分からないんだ。」
ネスとリュカはポカンとした。
「ポケモンと動物は違うの?」
「そうらしいね。僕は動物というのをはじめて見たから、はっきりとは言えないけど……。」
「……そっか。」
「あぁ、でも。」
あまりに落胆する二人を不憫に思い、トレーナーは付け加えた。
「動物好きの人、この会場にいると思うよ。その人なら人間でも大丈夫じゃない?」
「うーん……誰がいるかなぁ……。」
三人は考え始めた。しばらくして、あ、とリュカが言った。
「ソニックってさ、ハリネズミだよね?」
ネスは渋い顔をした。
「リュカ、どこ走っているか分からない音速ハリネズミ、どうやって捕まえるのさ。」
「あ……そうだね……。」
「そういえば、」
トレーナーが口を開いた。
「動物たちと話すって、もしかして森に行くの?」
「他にどこがあるの?」
ネスが不機嫌そうに答えた。トレーナーはため息をついた。
「……この前、オオカミがいるから気を付けるようにって」
「それだ!!」
ネスが叫んだ。トレーナーは驚いて口をつぐむ。
「ナイス、トレーナー!!リュカ、行くよ!!」
「え、えぇー?どこに?って、待ってよ!!」
嵐のように二人は行ってしまった。
「……これはどうしたらいいと思う?」
困り果てたトレーナーは、手持ちの三匹に助言を求めた。リザードンがそれに答える。
「ほっといて大丈夫だろう。あいつらは弱くない。それに、さっきリンクが森に入って行くのを見た。」
「……うん、彼がいるじゃんか。会えるといいね。」
トレーナーは森を見やった。
ネスとリュカは森にやってきていた。森の中をしばらく歩いた後、小さな広場になっている場所にたどり着いた。真ん中に大きな樹がそびえ立っている。その根元に、緑がかった色をしたオオカミがいた。
「あ、いたいた。」
ネスは嬉々としている。対してリュカは、怯えてしまっていた。
”オ、オオカミだ……。”
「よし、リュカ、行け!」
そんなリュカをよそに、ネスはリュカを思いっきり押した。
「え、えぇー!?」
リュカはなすすべもなく、オオカミに覆いかぶさる形となってしまった。
”ど、どうしよう……。”
『PSI全開にしててね。』
ネスは楽しそうにテレパシーを送った。
『う、うん……って助けてよ!!』
リュカが焦っていると、オオカミが身じろぎした。
”あ、う、動いた……!!”
リュカは身を固くした。
”……誰?と、いうか……どいてほしいんだけどな……。”
”あれ、どいてほしいって……ああ!!”
リュカは慌ててどいた。オオカミは起き上がり、伸びをした。
(……ネスにリュカ、どうしたの?また迷子……ってあぁ。)
オオカミはため息を吐いた。
”通じないんだった………。”
オオカミはそう思ったが、リュカたちにはしっかりと聞こえていた。
「……ネ、ネス……またってどういうこと?」
「あーあーあー!!もう!余計なこと言わないでよね、リンク!!!」
「(え??)」
リュカとオオカミことリンクは固まった。それを見たネスは肩を落とした。
「……一気にばらしちゃった……。」
(知ってたの?)
気を取り直してリンクが聞いた。
「んーまぁ…なんとなく。」
(そう……。)
「ま、いっか。リュカ、リンクに手伝ってもらって自由研究の続きするよ。」
「うん!!」
リュカはようやく動けるようになり、リンクを撫でていた。
(…自由研究?)
「あ、リンクは通訳してくれたらいいの。手伝ってくれなかったら……ばらすからね?」
リンクは黙り込んだ。
”別に問題ない気が……ま、いっか。”
(……分かった。)
二人はリンクに事情を説明した。
「――と、いうことなんだけど。」
(……なるほどね。……でもさ、)
「断るとかなしだよ!!もう後がないんだから!!」
(……。オレ、オオカミなんだけど。)
「うん、知ってる。だから頼んでるんだよ。」
リンクは黙り込んだ。それに不安を覚えたネスが問う。
「……何か、問題が?」
(……ネス、君はオオカミと対峙したでしょ?)
「え?」
リュカは驚いてネスを見た。ネスは罰が悪そうにする。
「……うん、まぁ……。って、それとこれとは関係が」
「あ……オオカミって、肉食動物……。」
「あ……。」
ネスとリュカはうなだれた。その時だった。
(リンクー!!)
一匹のウサギがやってきた。が、ネスとリュカを見るなり、急ブレーキをかけて足を止めてしまった。鼻をひくひくさせている。
(リ、リンクが人間と一緒にいる……。)
リンクはため息をついた。
(オレはもともと人間だし、今はオオカミなんだけど……。もっと危機感を持って。)
(リンクだったら大丈夫!)
ウサギは側に寄ってきた。
「リンク、オオカミでも問題ないよね?」
ネスが詰めよった。リンクは再びため息をついた。
(この子みたいに危機感がない動物でよければ紹介するよ。)
するとウサギは憤慨したように足を鳴らした。
(リンクは優しいから大丈夫なの!この森のみんなはそれを知ってるよ!)
ネスはニヤッとしてリンクを見た。
「だ、そうだけど?」
リンクはやれやれと首を振った。
(じゃあ、こっちに来て。)
二人と二匹は歩き出した。
ネスとリュカはリンクに連れられて更に奥へとやってきた。そこではたくさんの動物がくつろいでいた。
(あ、リンクだ。)
そのうちの一匹がリンクに気付く。すると、ネスやリュカがいるにもかかわらず、わらわらと動物たちが寄ってきた。
(この二人は悪さをしないから安心して。)
リンクが言うと、動物たちはにっこり笑った気がした。
(リンクの友達でしょ?だったら大丈夫だよね!!)
ネスとリュカは目を輝かせた。
「やったね!リュカ!!」
「うん!」
二人は黙り込んだ。嫌なことを思い出したのだ。
「……ぼくら、自由研究のために動いていたんだよね?」
「うん……でも、動物たちと交流するのに必死で、内容考えてなかった……。」
(どうしたの?怖い顔して。)
さっきのウサギが寄ってきていた。可愛く小首を傾げている。
「ううん、なんでもないよ。リュカ、せっかくの機会だから、おしゃべり楽しもう!こんなチャンス、なかなかないんだから。」
「そうだね。ねぇ!」
ネスとリュカは動物達に話しかけていった。リンクはその様子を眺めながら、あくびをした。
”二人がしゃべっている間、もう一眠りしようかな。”
次の日、リンクとトレーナーが図書室に行くと、ネスとリュカが必死に何かを調べていた。
「ネス、リュカ!昨日は動物たちと話せたらしいね。」
トレーナーが話しかけた。二人は嬉しそうに頷いた。
「いい経験だったよ。」
リュカははにかんでリンクをみた。
「そっか。それはよかった。今は何を調べているの?」
「昨日話していて、それぞれの動物の特徴とかが気になったんだ。だから、ぼくはそのことを調べてる。」
ネスは動物の図鑑を見せた。
「後は生態系とか付け加えたら完成かなって思って。そっちはリュカにまかせてるんだ。ね、リュカ。」
リュカは頭をかいた。
「ちょっと難しいんだけどね。」
「そう。じゃあ、僕らは邪魔になるといけないからもう行くね。頑張って。」
「ありがとう、トレーナー。」
トレーナーとリンクは踵を返した。が、リンクが足を止めた。
「また動物と話したいときはいつ行っても大丈夫だと思うよ。もうネスやリュカを怯えないと思うから。ただ、凶暴なオオカミもいるから、行くときはオレと一緒に、ね?」
リンクが釘をさすと、二人は苦笑いした。
「「はーい。」」
そうして、二人の自由研究は完成、無事夏休みの宿題は終了した。
あとがき
自由研究、ほぼ関係ない話ですね、分かります。ネスがオオカミリンクを知っているということが書きたかっただけです、はい。だから、自由研究の内容が浅すぎるとかいう突っ込みはなしにしてください、お願いです。
こんな自己満足の小説ですが、お読みいただきありがとうございました。
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※フォレストページ時代は中編として公開していましたが、思ったより短い話だったので、こちらに格納しました。
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事のはじまりはターマスからの一本の電話だった。
「ということですから、よろしくお願いしますね。」
「え?は?ちょっと待って!!何がと、いうことでっ…って、切られた。」
ネスは忌々しげに電話を見た。もとはといえば、ルイージが出た電話だった。それを何故か呼ばれてかわってみれば、毎度如く、ターマスは一方的にしゃべり、切ってしまった。ネスはイライラと受話器を置いた。
「……ネ、ネス……。どうしたの……?」
一緒にいたリュカが心配そうに聞いた。ネスは未だに気が収まらないようで、そっけなく答えた。
「うちから夏休みの宿題が送られてきたんだって。リュカの分も。」
「え゛………。」
最後に付け加えられた一言によって、リュカは絶句した。
「で、問題は何するか、だよね。」
幾分落ち着いた二人は自分たちの宿題を確認した。すると、自由研究が含まれていたことが分かった。この際だから共同で研究しようと、上記のセリフに至る。
「あ、これは?動物達に話してもらうの。どう思ってるか、とか。」
リュカは目を輝かせている。一方ネスは冷静だった。
「それってあり?ぼくとしても興味津々なんだけど。」
だが、リュカも引き下がらない。
「だ、だって……ぼくらがPSI使えるのは、」
「周知のことだったね。よし、それ採用!!早速行こう!」
二人は外へ飛び出した。
が、数分後、とぼとぼと二人は戻ってきた。
「……ダメ、みたいだね。」
落胆してリュカがつぶやいた。ネスはため息をついた。
「見事に逃げられたよね。人間だー!!逃げろー!!だってさ。……襲うわけじゃないのに。」
「それだけぼくらって恐ろしい存在なのかな……なんか、悲しいね。」
そこへロイがやってきた。
「よぉ、そんなしけたツラしてどうしたんだよ?」
「……いいね、ロイは気楽で。」
ネスに八つ当たりされて、ロイはたじろいだ。
「……なんか、ホントに機嫌悪いな……。どうしたんだよ?」
ネスはそっぽを向いた。リュカが慌てて説明した。
「あ、あのね、自由研究って宿題があって、動物たちをテーマにしたんだ。それで、動物たちに話を聞こうと行ってみたんだけど……逃げられちゃって……。」
困ったようにリュカは俯いた。
「へぇ……自由研究……そんなんあるんだな。面白そうじゃんか。」
「他人事だと思って!!大変なんだよ、自由研究!!」
のんきなロイに対してネスは食って掛かった。
「わ、悪い悪い。」
機嫌が悪いネスに余計なことはいうもんじゃないとロイは思った。
「そうだ、ロイ。なんか案ないの?」
「え?それって動物たちとしゃべるための案か?」
「当然じゃん。」
”あきらめてないんだ……!!”
リュカは目を丸くした。一方問いかけられたロイはニヤッと笑った。
「簡単じゃんか。そいつら何で逃げたんだ?」
「知らないよ。何も聞かないうちにワーッと逃げちゃったんだからさ。」
ネスはムッとして言った。ロイはがっくりしながら、なんとか持ちこたえた。
「……そこは想像しろよ……。まぁいい。お前が人間だからだよ。」
「はぁ?」
「じゃ、頑張れよ。」
言うだけ言って、ロイは去って行った。
「……何が言いたかったんだよ……。」
ロイの真意をはかりきれず、ネスはため息を吐いた。隣で、リュカが合点のいった顔をした。
「ね、ねぇ、ネス。」
「何?」
「動物に……人間以外の人に説明してもらったら?」
ネスはポカンとした。
「それってどういう………そういうことか!!」
ネスはポンと手を叩いた。
「ナイスリュカ!行こう!まずはフォックスだ!!」
ネスはリュカの手を引いて走り出した。
「は、速いよぉー!!」
リュカの叫びが響いた。
「……それで、俺に通訳をやれと?」
ネスとリュカはフォックスの部屋の前にいた。二人はフォックスに事情を説明し、キラキラした目でYesの返事を待っている。フォックスは頭をかいた。
「お前らそれ、本当に学習のためか?なんか別の思惑があるような」
「ない!」
フォックスの疑問をネスが一蹴した。フォックスはため息をついた。
「そうかよ。」
しばらく二人と一匹は見つめ合った。やがて、フォックスは再びため息をついた。フォックスは根負けしたのだった。が、
「仮に学習のためだとして……お前らが勉強熱心なのに免じて手伝ってやりたいのはやまやまだが……。」
フォックスの言い様は歯切れが悪い。フォックスはチラッと部屋の中を見た。
「……あいにくと、仕事が山積みなんだ。」
ネスは膨れた。
「ウソだぁ!じゃあ、部屋、見せてよ!!」
「ネ、ネス……!迷惑かけちゃ悪いって。」
リュカがなだめにかかった。が、ネスは駄々をこねた。
「だって、ホントに仕事なのかわかんないじゃないか。ぼく達をたぶらかしているだけかもよ?」
フォックスは頭を抱えたくなった。
「そんなことしないって……。……はぁ、分かったよ。あんまり見せたく……ってか、ドアを大きく開けたくないんだが……入るなよ?」
フォックスはドアを開けた。二人は絶句した。部屋の中は書類だらけだった。その時、風がひゅうと入ってきた。すると、紙が数枚飛んだ。
「あーあ、飛んじまった。」
フォックスは他人事のようにつぶやいた。
「ひ、拾わないの?」
リュカがおずおずと聞いた。
「後で拾う。今行くと、被害が拡大するからな。……ハァ、ペッピーの奴、夏休みの宿題よろしく、大量に送ってきやがって。……ま、こういうわけだ。トレーナーあたりにでも当たってくれ。」
二人は頷くしかなかった。
「ごめんね、邪魔して。」
「こっちこそ協力できなくて悪いな。」
パタン、と、扉が閉められた。
「……。じゃあ、助言通りにトレーナーのとこ行こうか。」
「そうだね……ファルコもこんな状態かな……。」
「十中八九、そうだと思うよ……。」
二人はとぼとぼと歩き出した。
「え?動物たちに通訳?」
「そう、してもらえないかな?」
中庭でゼニガメ達と水遊びをしていたトレーナーを見つけ、二人は早速本題に入った。
「自由研究で、ねぇ……。」
「お願いできる?」
期待のこもった目で二人はトレーナーを見ている。それを見て、トレーナーは困ったな、と思った。
「……受けてあげたいけど、ダメなんだ。」
「えぇ!?なんで!?」
ネスが叫んだ。リュカはがっくりとしている。
”フォックスがダメだと、頼れる人が他にいないもんな……。”
トレーナーは苦笑した。
「君達の話だと、ポケモン達に君達は無害だと伝えてほしい、ということだけど……僕はもちろん、この3匹もピカチュウやプリンだって動物の言葉は分からないんだ。」
ネスとリュカはポカンとした。
「ポケモンと動物は違うの?」
「そうらしいね。僕は動物というのをはじめて見たから、はっきりとは言えないけど……。」
「……そっか。」
「あぁ、でも。」
あまりに落胆する二人を不憫に思い、トレーナーは付け加えた。
「動物好きの人、この会場にいると思うよ。その人なら人間でも大丈夫じゃない?」
「うーん……誰がいるかなぁ……。」
三人は考え始めた。しばらくして、あ、とリュカが言った。
「ソニックってさ、ハリネズミだよね?」
ネスは渋い顔をした。
「リュカ、どこ走っているか分からない音速ハリネズミ、どうやって捕まえるのさ。」
「あ……そうだね……。」
「そういえば、」
トレーナーが口を開いた。
「動物たちと話すって、もしかして森に行くの?」
「他にどこがあるの?」
ネスが不機嫌そうに答えた。トレーナーはため息をついた。
「……この前、オオカミがいるから気を付けるようにって」
「それだ!!」
ネスが叫んだ。トレーナーは驚いて口をつぐむ。
「ナイス、トレーナー!!リュカ、行くよ!!」
「え、えぇー?どこに?って、待ってよ!!」
嵐のように二人は行ってしまった。
「……これはどうしたらいいと思う?」
困り果てたトレーナーは、手持ちの三匹に助言を求めた。リザードンがそれに答える。
「ほっといて大丈夫だろう。あいつらは弱くない。それに、さっきリンクが森に入って行くのを見た。」
「……うん、彼がいるじゃんか。会えるといいね。」
トレーナーは森を見やった。
ネスとリュカは森にやってきていた。森の中をしばらく歩いた後、小さな広場になっている場所にたどり着いた。真ん中に大きな樹がそびえ立っている。その根元に、緑がかった色をしたオオカミがいた。
「あ、いたいた。」
ネスは嬉々としている。対してリュカは、怯えてしまっていた。
”オ、オオカミだ……。”
「よし、リュカ、行け!」
そんなリュカをよそに、ネスはリュカを思いっきり押した。
「え、えぇー!?」
リュカはなすすべもなく、オオカミに覆いかぶさる形となってしまった。
”ど、どうしよう……。”
『PSI全開にしててね。』
ネスは楽しそうにテレパシーを送った。
『う、うん……って助けてよ!!』
リュカが焦っていると、オオカミが身じろぎした。
”あ、う、動いた……!!”
リュカは身を固くした。
”……誰?と、いうか……どいてほしいんだけどな……。”
”あれ、どいてほしいって……ああ!!”
リュカは慌ててどいた。オオカミは起き上がり、伸びをした。
(……ネスにリュカ、どうしたの?また迷子……ってあぁ。)
オオカミはため息を吐いた。
”通じないんだった………。”
オオカミはそう思ったが、リュカたちにはしっかりと聞こえていた。
「……ネ、ネス……またってどういうこと?」
「あーあーあー!!もう!余計なこと言わないでよね、リンク!!!」
「(え??)」
リュカとオオカミことリンクは固まった。それを見たネスは肩を落とした。
「……一気にばらしちゃった……。」
(知ってたの?)
気を取り直してリンクが聞いた。
「んーまぁ…なんとなく。」
(そう……。)
「ま、いっか。リュカ、リンクに手伝ってもらって自由研究の続きするよ。」
「うん!!」
リュカはようやく動けるようになり、リンクを撫でていた。
(…自由研究?)
「あ、リンクは通訳してくれたらいいの。手伝ってくれなかったら……ばらすからね?」
リンクは黙り込んだ。
”別に問題ない気が……ま、いっか。”
(……分かった。)
二人はリンクに事情を説明した。
「――と、いうことなんだけど。」
(……なるほどね。……でもさ、)
「断るとかなしだよ!!もう後がないんだから!!」
(……。オレ、オオカミなんだけど。)
「うん、知ってる。だから頼んでるんだよ。」
リンクは黙り込んだ。それに不安を覚えたネスが問う。
「……何か、問題が?」
(……ネス、君はオオカミと対峙したでしょ?)
「え?」
リュカは驚いてネスを見た。ネスは罰が悪そうにする。
「……うん、まぁ……。って、それとこれとは関係が」
「あ……オオカミって、肉食動物……。」
「あ……。」
ネスとリュカはうなだれた。その時だった。
(リンクー!!)
一匹のウサギがやってきた。が、ネスとリュカを見るなり、急ブレーキをかけて足を止めてしまった。鼻をひくひくさせている。
(リ、リンクが人間と一緒にいる……。)
リンクはため息をついた。
(オレはもともと人間だし、今はオオカミなんだけど……。もっと危機感を持って。)
(リンクだったら大丈夫!)
ウサギは側に寄ってきた。
「リンク、オオカミでも問題ないよね?」
ネスが詰めよった。リンクは再びため息をついた。
(この子みたいに危機感がない動物でよければ紹介するよ。)
するとウサギは憤慨したように足を鳴らした。
(リンクは優しいから大丈夫なの!この森のみんなはそれを知ってるよ!)
ネスはニヤッとしてリンクを見た。
「だ、そうだけど?」
リンクはやれやれと首を振った。
(じゃあ、こっちに来て。)
二人と二匹は歩き出した。
ネスとリュカはリンクに連れられて更に奥へとやってきた。そこではたくさんの動物がくつろいでいた。
(あ、リンクだ。)
そのうちの一匹がリンクに気付く。すると、ネスやリュカがいるにもかかわらず、わらわらと動物たちが寄ってきた。
(この二人は悪さをしないから安心して。)
リンクが言うと、動物たちはにっこり笑った気がした。
(リンクの友達でしょ?だったら大丈夫だよね!!)
ネスとリュカは目を輝かせた。
「やったね!リュカ!!」
「うん!」
二人は黙り込んだ。嫌なことを思い出したのだ。
「……ぼくら、自由研究のために動いていたんだよね?」
「うん……でも、動物たちと交流するのに必死で、内容考えてなかった……。」
(どうしたの?怖い顔して。)
さっきのウサギが寄ってきていた。可愛く小首を傾げている。
「ううん、なんでもないよ。リュカ、せっかくの機会だから、おしゃべり楽しもう!こんなチャンス、なかなかないんだから。」
「そうだね。ねぇ!」
ネスとリュカは動物達に話しかけていった。リンクはその様子を眺めながら、あくびをした。
”二人がしゃべっている間、もう一眠りしようかな。”
次の日、リンクとトレーナーが図書室に行くと、ネスとリュカが必死に何かを調べていた。
「ネス、リュカ!昨日は動物たちと話せたらしいね。」
トレーナーが話しかけた。二人は嬉しそうに頷いた。
「いい経験だったよ。」
リュカははにかんでリンクをみた。
「そっか。それはよかった。今は何を調べているの?」
「昨日話していて、それぞれの動物の特徴とかが気になったんだ。だから、ぼくはそのことを調べてる。」
ネスは動物の図鑑を見せた。
「後は生態系とか付け加えたら完成かなって思って。そっちはリュカにまかせてるんだ。ね、リュカ。」
リュカは頭をかいた。
「ちょっと難しいんだけどね。」
「そう。じゃあ、僕らは邪魔になるといけないからもう行くね。頑張って。」
「ありがとう、トレーナー。」
トレーナーとリンクは踵を返した。が、リンクが足を止めた。
「また動物と話したいときはいつ行っても大丈夫だと思うよ。もうネスやリュカを怯えないと思うから。ただ、凶暴なオオカミもいるから、行くときはオレと一緒に、ね?」
リンクが釘をさすと、二人は苦笑いした。
「「はーい。」」
そうして、二人の自由研究は完成、無事夏休みの宿題は終了した。
あとがき
自由研究、ほぼ関係ない話ですね、分かります。ネスがオオカミリンクを知っているということが書きたかっただけです、はい。だから、自由研究の内容が浅すぎるとかいう突っ込みはなしにしてください、お願いです。
こんな自己満足の小説ですが、お読みいただきありがとうございました。
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