短編の短編

ほのぼのです、たぶん。
メインはネスとリンク。
トワプリ未プレイの方には分かりづらいかもしれません。
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ぼくはネス。さっきご飯を食べて、今、森の中を歩いてるんだ。え?なんでって?そんなの、ただの気まぐれだよ。今は野球をする気にもならないし。…そしたらさ、すごいもの、見つけちゃったんだ。









「………オオカミ?」

ネスの目線の先、木々が開け、丁度日当たりのいいところにオオカミが一匹眠っていた。ネスに気付いた様子はなく、気持ちよさそうに寝ている。

“…な、なんでこんなところにオオカミがいるの?”

ネスはじっとオオカミの様子を見ている。……動く気配は全くない。

“……オオカミって、本物、はじめて見るんだよね。でも、オオカミってこんな色だったかな?”

そのオオカミは緑かかった黒に、銀の毛が混ざった、不思議な色をしていた。

“………ちょっとぐらいなら、大丈夫、かな。”

ネスは忍び足でオオカミに近づいて行った。少し進んでは止まって様子を見、また近づいていく。その時、くしゅん!とオオカミがくしゃみした。

「うわぁあ!」

ネスは思わず大声を上げた。慌てて後方に下がる。しかし、くしゃみをしただけのようで、オオカミに起きる気配はない。

「…び、びっくりしたぁ………。」

ふぅ、と息を吐き、ネスは再びオオカミを見やった。すると、オオカミと目があった。

「………………え。」

ネスは一度目をこするとオオカミに目線を戻した。やはり、オオカミの目は開いている。

“…さっきまで寝てたよね!?いや、間違いなく寝てたよ!!”

殺気こそは感じないが、オオカミはネスの様子を伺っているようだった。

「ご、ごめんなさい!!」

ネスは何故か謝ると、その場から駆け出した。つまり、逃げたのである。オオカミが一声吠えたのが聞こえた。ネスはそれが『待って』と言っているように聞こえたが、無視した。

“いやむしろ、それで待ったらこっちの命がないって!!”

オオカミを無視したことへの罪悪感に突っ込みながらネスは走り続けた………。








……うん、それで、今に至るんだけど………。

「ここ、どこだろう?」

そう、ぼくは、走るのに夢中で、迷ってしまったんだ。









ネスが迷ったことに気付いてから何時間か経った。ネスは勘の赴くままに歩き続けたが、会場は全然見えてこない。

“ウソ……帰れないじゃん。”

ネスは途方に暮れて、その場に座り込んだ。

“…誰か探しに来てくれないかなぁ…。生き物の気配ならたくさんするんだけど………って、は?”

ネスは立ち上がると辺りを伺った。

“……オオカミ、この森にいたよね………。なんか、嫌な感じがする。”

ネスは戦闘体制をとった。気配はだんだん近づいてくる。カサ、と音が鳴ったと思うと、オオカミが3匹現れた。ネス追い詰めるように、じわりじわりと近づいていく。ネスはそれに伴って後退していった。が、場所が悪かったのか、木に背中がついてしまった。それを見たオオカミは笑ったように見えた。ワゥワゥ、と言い合っている。

“…話してる、のかな?PSIで聴けるかな?”

ネスは集中した。

(珍しくないか?)

“聴けた!”

ネスはじっとオオカミ達を見据えた。

(人間の子供だ。)

(おいしそうじゃあないか。)

ネスは身震いした。

“まずい、殺される………!”

しかし、ネスは恐怖で動けなくなってしまった。

(とりあえず仕留めようか。)

ネスは反射的に目を瞑った。その時、ガサッと大きな物音がした。シュッと肌に風が当たる。恐る恐る目を開けると、オオカミが一匹増えていた。が、そのオオカミは他の3匹に対峙するようにネスに背を向けている。

“……さっき見たオオカミ………?”

ネスが不安げに今や4匹となったオオカミを見ていると、荒々しく向こうの3匹が吠えだした。

(なんだよ、横取りか?)

(久しぶりの人間なんだよ、どきな。)

(新人さんよぉ、大人しくしてた方がいいぞ。)

ネスの方が怯んでしまう内容だった。しかし、緑のオオカミは全く物怖じしない。

(この子はオレの知り合いだ。手を出すな。)

“………?知り合い…………?”

(はぁ?何ふざけたことを)

(やるっていうなら、相手になるよ。)

緑のオオカミが唸り声を上げる。相手のオオカミは怯んだようだった。

(チッ、いいよ。同族で争うのは好みじゃない。)

3匹はあっけなく手をひいた。走り去っていく。すると、緑のオオカミは力を抜き、ネスを振り返った。

(さてと、ネス。大丈夫?……って、そうだ、通じないんだった。)

オオカミは1人呟くと歩きだした。

“…何で僕の名前知ってるのかな………。”

ネスが首を傾げていると、ワン!と声がした。そちらを見ると、オオカミがネスを見つめている。

「…な、何?」

“…何って言われても………。”

オオカミはしばらくネスを見つめていたが、やがて、ネスの様子を伺いながらゆっくりとネスに近づいていった。少し恐かったが、ネスはじっとしていた。オオカミは服の端を軽く噛むと小さく引っ張った。

「…ついてこいってこと?」

オオカミはネスを見上げると歩きだした。しばらく行くと止まり、振り返った。それで、ネスは自分の解釈があっていたと知り、オオカミについていく。日はずいぶん傾いていた。









しばらくオオカミについていくと、会場が見えてきた。

「か、帰ってこれた………。」

ネスは思わず胸を撫で下ろした。

「ありがとう、オオカミさん。」

ワゥ。そう答えると、オオカミは走り去っていってしまった。

「ネスー!」

「どこにいるんだー!」

「ご飯食べちゃうよぉ!」

ネスを探している声が聞こえる。

“心配、かけちゃったな。”

なんかおかしな言葉があった気がするけれど。多分それは彼なりの思いやり。

「僕はここだよー!」

ネスは駆け出した。









「ネスー、どこ行ってたの?」

「ちょっと森に、ね。」

「迷ってたのか?」

「そんな訳ないじゃん!」

帰ってすぐに夕食だった。みんな待っててくれたみたい。でも、まだ食べない人がいて。僕はその人達を凝視してしまっていた。そしたら、そんな僕の視線に気づいたマルスが説明してくれた。

「まだ帰ってこない人がいるんだ。」

その言葉と同時に扉が開いた。

「リンク!お帰り!」

トレーナーがにっこり笑って言ってる。

「リンクも森にいたの?」

あ、こらカービィ、余計なことは言わないの。

「え?あぁ。」

あれ?リンク、こっち見た?…気のせいか。

「さぁね。」

……リンクがはぐらかすなんて珍しい。そう思ってたら、マリオがあ、とか言い出した。

「森で思い出した。ネス、オオカミに出会ったりしてないか?ターマスから気をつけろって電話が入ってたんだ。」

もっと早く言え、配管工。

「ううん、会ってない。」

皆には十分心配かけたから。もう会ったことは内緒にしておく。それに、少なくとも1匹は悪いオオカミじゃなかったし。…あれ、またリンク、こっち見たような…。

「そうか、そりゃよかった。」

…マリオ、ちょっと本気で恨みたくなってきたんだけど。

「どうせガセでしょ。あの使いの言うことだもの。」

「えー?」

「案外いたりするかもよ?」

「リンクはよく森に行ってるよね。知ってる?」

自然とみんなの目がリンクに集まる。リンクは困ったような表情を浮かべた後、こう言った。

「いるかもね。」

それから、僕に微笑みかけたんだ。僕はそれで、気付いてしまった。







助けてくれたのはリンクだったんだ。……でも、これって秘密なのかな?リンクがオオカミになれるってこと。




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