集合&結成!?スマッシュブラザーズ!!

三匹は外に出ていた。誰も来ないような場所まで来ると、急にゼニガメが歩みを止めた。

「……ねぇ、二人とも………。ボク……何をしたの………?」

「忘れたのか!?」

ゼニガメの問にリザードンは怒りを抑えられなかった。ゼニガメは恐縮して見せた。

「……ごめん、なさい……。」

そこにフシギソウはやんわりと間に入る。

「ゼニガメも混乱状態だったもんね。僕が説明するよ。リザードンも知らないだろうしね。」

そして、フシギソウはメインルームについた後からアイクの怒りまでを話した。それを聞くと、ゼニガメは罪悪感を感じた。

「そう……なんだ。レッド……ボクのせいで怒られたんだ……!」

リザードンは腕を組んで息を吐いた。

「ゼニガメも流石に反省しているようだから、あまりくどくどとは言わないが……次からは気を付けろ。今まではポケモンのことをよく知る奴らの中にいたからよかったのかもしれん。だが……ここではそうはいかんようだ。レッドの悲しむ様を見たくなければ……これからは気をつけることだ。フシギソウ、これは俺達も例外じゃないだろう。」

「うん。そうだね……。」

その時、何かが飛んできてゼニガメに当たった。ゼニガメはちょっとだけ顔をしかめた。

「……バチがあたったかな……。」

リザードンとフシギソウは顔を見合わせた。すると、近くでがさがさ音が鳴り、リンクがやってきた。

「あれ?ゼニガメにフシギソウ、それにリザードン……。こんなところで何を……じゃなかった。誰かブーメランに当たらなかった?」

「……ブーメラン?」

フシギソウが聞くと、あ、とか言ってリンクはブーメランを取り出した。

「これのこと。さっき、何かに当たった音がしたから心配になって……。」

「……それなら……さっきゼニガメに当たったが。」

リザードンが言うと、リンクは額に手をやった。

「あー……やっぱり……。ごめん、ゼニガメ。ちょっと見せて。」

リンクがゼニガメに触れようとすると、ゼニガメは一歩引いた。

「大丈夫だよ!……バチがあたっただけだもん……。」

リンクはそっとゼニガメに近づき、隣に腰掛けた。

「何があったのか知らないけど……ゼニガメは笑ってる方が絶対いいと思うよ。」

リンクはゼニガメを撫でていた。

「そんなことないよ!それじゃあ……昨日見たいになっちゃうよ……。」

ゼニガメはシュンとなった。リザードンとフシギソウはじっと様子を伺っている。

「昨日のゼニガメは笑ってなかった。……怒ってた。」

「……あ……確かに……。」

フシギソウは昨日のゼニガメを思い返した。

「誰にでもムシャクシャする時はあるよ。それを抑えられない時もある。だけど……だんだん抑えられるようになるはずだと思う。……感情コントロールって難しいから。」

リンクはゼニガメに優しく笑いかけた。

「どうしたら抑えられるようになるの?迷惑かけなくてすむようになるの?」

ゼニガメは身を乗り出して訊いた。

「おい!そんなことまで……!」

リザードンが小声で諫めるが、リンクは特に気にした様子はなかった。うーん、と言いながらゆっくりと話しだした。

「それは……自分で見つけるものじゃないかな。……これといってオレに助言できることはない。君の経験とかによっても変わると思う。それと……迷惑かどうかっていうのは、その場面場面で違うんじゃないかな……。ごめん。実は、オレもよく分かってないんだけど……。」

困ったようにリンクが頭をかくと、ゼニガメは首を振って笑って見せた。

「ううん。……いろいろ、ありがとう。」

「どういたしまして。……怪我もなさそうだし、大丈夫そうかな。」

リンクは立ち上がった。

「あ、結局看てたんだ。」

フシギソウが感心して言うと、リンクは苦笑した。

「まぁ、ね。あれだけ思われている君達を傷つけたとでもなれば……トレーナーに会わす顔、ないから。」

“……あれだけ思われている……。”

三匹は心の中でトレーナーに感謝した。

「さて、と。ごめん、邪魔したね。じゃ、後で。」

リンクは戻ろうとした。が、フシギソウがそれを阻んだ。

「待って!……一つ、お願いを聞いてくれない?」

「え?オレにできることならいいけど?」

少し不安になったリザードンはフシギソウに顔を近付けた。

「……何を頼むつもりだ?」

「いいから、見ててよ。」

フシギソウはリンクを見上げた。

「……トレーナー、今、すごく落ち込んでいるんだ。だから……慰めてあげてくれないかな?」

すると、リンクはキョトンとした顔をした。

「そういうのはオレより君達のが……」

「ボクのせいだから。……ボクのせいだから……ボク……何も……。」

ゼニガメはうつむいた。それを見て、リンクは顔をしかめた。

「……アイクと……何かあったの?」

三匹は頷いた。リンクはため息をつく。

「そっか……わかった。……オレにも責任あるから……やってみるよ。」

リンクは会場に向かって歩いていった。それを見送ってからリザードンはフシギソウを見る。

「……フシギソウ、なぜそんな頼みを?」

フシギソウはリンクが歩いていった方を見ながら答えた。

「あの事件の直後、レッドが無事でいられたのも、まだこの会場に残っていられてるのも……リンクのおかげなんだ。それに、レッド、リンクのことが好きみたい。部屋の近くでレッドとリンクが話しているのを二回くらい見たけど、すごく安心したような、嬉しそうな顔で話してた。だから……。」

リザードンは納得した。

「……それなら、彼に任せた方がいいだろうな。」

そして、再びリンクが行った方向に目を向けた。



ポケモン達が出ていってからしばらく経った頃、扉を叩く音がした。トレーナーはハッと顔を上げる。

「……誰か知らないけど……しばらく、一人になりたいんだ………。」

その声はトレーナー自身もびっくりする程弱々しいものだった。これじゃ心配をかけるだけだ……と自己嫌悪に陥りながら、相手が去ってくれるのを願う。

「なら、扉の前に居てもいい?」

しかし、扉越しにいる人物からの返答はトレーナーの期待を裏切るものだった。けれども、その声を聞いたとたんに嬉しさが沸き上がってくるのをトレーナーは無視することは出来なかった。

「……リンク?そこにいるの、リンクなの?」

「うん、そう。」

リンクの声には気遣いが感じられる。トレーナーはそう感じた。トレーナーは扉の近くに寄った。

“……リンクだったら、いいかな………。”

意を決するとトレーナーは口を開いた。

「リンク、僕の話、聞いてくれる?」

「うん。オレでよければ。」

言葉と共にリンクが頷いた気配がした。トレーナーは一度深呼吸をし、ゆっくりと言葉を継ぎ始めた。

「僕……すごく怖いんだ。……アイクさんのこと。昨日は謝れたから、大丈夫かなって思ったんだけど……やっぱり怖くて、悪い気がして……夜も、なかなか寝られなくって。夜中に何度も起きたりして、もう、不安で………。」

トレーナーはもう泣きそうだった。しかし、辛うじてそれを我慢する。すると、向こうから声が返ってきた。

「……昨日、アイクに謝ったんだね。……アイク、許してくれなかったの?」

トレーナーは首を振った。

「うぅん。もう、怒ってない、って。でも……なんか、不安だった。そしたら、今日………。」

トレーナーは唇を噛んだ。

「……アイクと……何かあったの?」

限界だった。トレーナーの目から涙がこぼれ落ちた。

「……うっ……くっ……。」

なんとか涙を止め、質問に答えようと試みるが、口から洩れたのは嗚咽。トレーナーは手の甲に強く爪を立てた。その時、再び向こうから声が聞こえてきた。

「……ごめん、トレーナー………。」

それは謝罪の言葉だった。

「……?何で、謝るの?」

まだ涙を止めることが出来ず、涙声になりながらもトレーナーは聞いた。すると向こう側は冷静ではいられなくなったようだ。

「え……あの、その……。」

と焦ったような声が聞こえてくる。暫く返事を待ったが明確な言葉は何も返ってこない。焦ったリンクを簡単に思い浮かべられたトレーナーは、吹き出してしまった。

「……トレーナー?」

トレーナーが笑ったのに気付き、リンクが呼び掛けた。トレーナーの顔には涙の跡は見えたが、もう泣いてはいなかった。

「……フフフ……。ごめん。リンクって面白いなぁ、って思って。」

「そう………え?」

リンクは流しそうになったが、何か引っ掛かるものを感じたようだ。驚いて聞き返していた。

「だって……来てくれた、と思ったら謝りだすし。かと思えば焦っちゃって……。今は……困ってる?」

リンクが、自分はそんなに分かりやすかっただろうかと落胆しているのを露知らず、トレーナーはクスリとまた笑みを溢した。その顔は少し赤く目が腫れている以外、普段とさして変わりなかった。トレーナーは扉を開けた。すると、ドン、と言ってみれば気持ちよい、しかし嫌な音がした。直後に

「いたっ……。」

と言う声も聞こえる。トレーナーは嫌な汗を感じながら扉の向こうを覗いた。そこには扉から少し離れた位置で、こちらに背を向けながら頭を撫でるリンクがいた。どうやら扉を背にもたれて座っていたようだ。

「ご、ごめん!そんな風にいると思ってなかったから……。」

「気にしないで。平気だから。」

リンクは何でもなさそうにトレーナーに笑いかけた。その笑みに思わずトレーナーも笑顔を見せる。

「……やっぱり、リンクって優しいね。」

「だからそんなこと」

「ねぇ、一回中に入って。」

トレーナーはリンクを強引に中に引き入れた。

「あれ?一人でいたいんじゃ……」

リンクは首を傾げた。

「今はリンクと一緒にいたいんだ。」

トレーナーはリンクに笑いかけて、一度息を吐いた。そして、リンクの目をしっかり見た。

「リンク、今までありがとう。短い間だったけど……君と過ごせて嬉しかった。」

リンクはハッとしてトレーナーを見返した。

「それって、まさか……。」

リンクの確信めいた言い方にトレーナーは小さく頷いて、目を伏せた。

「……僕……帰るよ……。」

「…………………。」

リンクは何も言えずに次の言葉を待った。トレーナーは、また深く息を吸った。

「ここに居れば、また迷惑をかける。それに……さっきも言ったけど、怖い。」

「……トレーナー」

「引き止めないで!」

リンクの呼び掛けにトレーナーは思わず声を荒げる。そして少し、リンクから距離をとった。

「……僕、辛いだけだから。リンクには……本当に悪いと」

「オレがトレーナーを守る。怖いのなら、側にいる。」

突然、リンクがトレーナーの言葉を遮って言った。トレーナーは弾かれたように顔をあげる。その目はまた濡れていた。

「……これでも帰る?」

リンクが優しく聞いた。トレーナーはフルフルと首を振った。

「……もう、決めたんだ。だから………。」

するとリンクは、窓辺に行って遠くを眺めた。そして呟く。

「……じゃあ、オレも帰ろうかな。」

一瞬、トレーナーは惚けた顔をした。が、次の瞬間、慌ててそれを否定した。

「だ、ダメだよ!またゼルダ姫……悲しむよ。それに……君はここにいる人にとって必要だと思う。だから……リンクはここに残らなきゃいけないんだよ。ターマスだってまた怒ると思うし……。」

リンクは振り返ると、トレーナーを強い眼差しで見つめた。

「ここにいる人で必要ない人なんていない。それに……ターマスは、君が帰っても怒って追いかけて行くよ。」

トレーナーはため息を吐いた。

「リンク……僕の帰りたい気持ち、君なら分かってくれると……」

リンクはニヤッと笑った。

「分かるよ。だから、道連れしようとしてるんじゃないか。」

トレーナーは様子を伺うようにリンクを見た。

「……つまり、リンクは……僕に残ってほしいの?」

リンクは頷いた。

「僕なんかが……僕なんかが残ってもいいと思う?」

「残らなきゃいけないと思う。」

トレーナーはその場に座り込んだ。

「僕は……皆に、あんな迷惑をかけたのに?」

絞りだしたような声だった。

「……君が誰に、どんな迷惑をかけたって?」

「………リンクの意地悪。分かってるクセに……。」

トレーナーは顔を埋めてしまった。リンクはトレーナーのもとに行くと、目線を合わせる。

「オレは、トレーナーが誰かに迷惑をかけたと思ってない。」

すると、トレーナーは蚊の鳴くような声で言い返した。

「でも、僕は、アイクさんをあんなに怒らせた……。」

「昨日は許してくれたんでしょ?……それじゃダメなの?」

暫く間があいた。

「……今日、アイクさんが怒鳴り込んで来たんだ……。ゼニガメと話がしたいから貸してくれ、って。でも……あれは、トレーナーである僕の責任だったから……それに、僕はゼニガメを守らなきゃいけなかったから……。」

トレーナーの説明はたどたどしいものがあったが、リンクは、アイクとの間で何かがあったことを理解した。同時に、朝の出来事を思い出した。

「アイクは……勝手に怒らせておけばいいんじゃないかな。……多分、オレらを見て、いきなり怒り出すことも暫くは多発すると思う。」

トレーナーは何か引っ掛かりを感じてリンクを見上げた。

「……リンクこそ、何かあったの?」

「オレ?別に何もないよ。」

リンクは笑ってみせた。トレーナーはリンクをじっと見つめた。が、やがて、再び頭が下がっていった。

「……どちらにしても、僕は」

「オレ、いろいろと君に助けられたんだけどな。」

唐突な話題にトレーナーはついていけなかった。ワケも判らずリンクを見上げ、

「……何を言い出すの?」

と問うのは当然のことだろう。リンクはトレーナーの戸惑いに気付かずに、質問に答える。

「オレがこの会場に来たとき、君はオレに何をすべきか教えてくれた。」

トレーナーは会場に来たときを思い返した。が、ため息を漏らして言い返す。

「…それはピカチュウが」

「ピカチュウは食べ物を渡してくれた。確かにそう。だけど、ジェスチャーを思いついたのは、君。」

トレーナーは、あ、と声を漏らした。

「それは……そんな大したことじゃ……。」

けれども、トレーナーは純粋に嬉しいと感じた。

「それに、オレが道に迷っていたとき、どこにいたのか教えてくれた。まぁ……あれはそんなつもりなかったかもしれないケド…。」

リンクは少し恥ずかしそうに頭をかいた。

“昨日のありがとうってそういう意味だったんだ……。”

「リンク、迷ってたんだ。……でも……僕の部屋、どうして分かったの?」

「途中でマルスに会ったから、マルスに聞いた。……そういえば、マルスも心配してたよ、君のこと。」

トレーナーはうつむいた。

「ねぇ、トレーナー。もう少し様子を見るってことで……居てくれない?」

「……………。」

トレーナーは既に、先程のリンクの脈絡のない話の意図を理解していた。

「せめて今日一日だけでも!!」

「……リンクがずっと一緒にいてくれるなら、いいよ。」

リンクの必死な様子に、とうとうトレーナーは折れた。しかし、条件をつけることは忘れなかった。リンクは少し考え込んだが、すぐに了承した。了承されると思っていなかったトレーナーは、驚いて聞き返す。

「本当に?」

リンクは頷いた。その時、誰かが扉を叩いた。トレーナーは扉を開ける。

「……えっと……リュカ?どうしたの?」

そこにはリュカがいた。

「……タ、ターマスさんが来て……みんなに、集まってほしい……みたい……。」

リュカの言葉にリンクが頷いた。

「分かった。トレーナー、行こう。」

「う、うん。だけど……リザードン達、先に探さないと……。」

それにリュカはあの、と口を挟んだ。

「その三匹なら……ピカチュウが呼びに行った……と、思う……。」

「そ、そっか。じゃあ……行こうか。」

みんなのところ、特にアイクが居るであろうところに行くのを出来るだけ遅らせたいトレーナーは、ぎこちない笑みを浮かべると、ゆっくりとした動作で廊下に出る。その心中を察したリンクはトレーナーに囁いた。

「……大丈夫。オレが守るから。」

トレーナーは小さく頷いた。



リンク、トレーナー、リュカがリビングについた時には、既に大方のメンバーが集まっていた。そこにはもうポケモン達もいて、トレーナーを見つけるなり駆け寄っていった。リザードンだけは歩いていたが。また、ゼルダもリンクを見つけると側に行った。

「おはようございます……には、ちょっと遅いわね。リンク、どこに行っていたの?」

「外でちょっとね。あ、でもさっきまではトレーナーの部屋にいたよ。」

リンクとゼルダが話を始めたと思えば、怒鳴り声がした。

「HEY, LINK!」

ソニックだった。リンクを見つけた彼はつかつかとリンクのところに歩いて行った。リンクの隣では、トレーナーが不安そうにそれを眺めている。

「どうして朝食、食わずに行ったんだ!朝から大騒動だったんだぞ!?」

「ご、ごめん。……何かあったの?」

リンクはすまなさそうに聞き返した。すると、違うところから大きくため息を吐く音がした。

「何かあったの?って、ずいぶん呑気な事を言うじゃない!カービィやヨッシー………大変だったのよ!」

今度はサムスがまくし立てた。リンクは圧倒されてしまった。

「え……あ、ごめん……。」

「何でそこでお前が謝るんだよ………。」

また、突然声がした。フォックスだ。彼はカービィとヨッシーを連れて扉の前に立っていた。その隣ではファルコが欠伸をしている。

「で、解決策は?」

「私がご説明いたします。」

今まで黙視を決め込んでいたターマスが立ち上がった。

「……解決策って何のこと?」

ヨッシーが不思議そうに問う。一部の人からため息が漏れた。しかし、ターマスは動じることなく、淡々と告げる。

「あなた方が食事を食べ尽くさずにすむ方法です。」

ターマスは何かを二つ取り出すと、カービィとヨッシーに渡した。

「これを噛まずに飲み込んでください。」

「おいしいの?」

嬉々として受け取ったカービィは興味津々で渡されたものを見ていた。それは、錠剤のようなものだった。ただし、青の色がついている。

「あなた次第です。」

ターマスがこう答えると、カービィは納得したのか、それを口に含む。それを見たヨッシーも一口で飲み込んだ。

「……小さすぎて味わえないよ。」

どうやらカービィは、味以外に関しては興味がないようだ。そして、ヨッシーもそれに同調する。

「同感だねぇ。それで、これは何?」

「あなた方の食欲を抑えるものです。」

ターマスが答えると、カービィは頬を膨らませた。

「ボク、一応コントロールできるよ?」

「……朝、あれだけ騒いでおいて、よくそんなことが言えるわね?」

サムスの声は低く、普通の者ならば恐怖で動けなくなるようなものだった。

「あ、アハハ………
……………スミマセン。」

笑って見せる余裕はあったが、流石のカービィも素直に謝った。ひとまず、食事の件は解決した。

「さて、」

一つ問題が解決したと思ったターマスは、みんなの方を振り向くと突然切り出した。

「今日から皆さんはご自由にお過ごし下さい。」

他の者は始め、ターマスの話について行けずにぽかんとしていた。が、すぐに聞く体勢をとった。ターマスは満足して話を進めた。

「お金はそこの」

ターマスがぱちんと指を鳴らすと窓際に置いてある家具の引き出しが開いた。

「引き出しの中に入っています。この世界でのみ通用するものですから、ご自分の世界にお持ち帰りなさらないように。ちなみに、両替も不可能です。」

すると、何人かが舌打ちした。ターマスはチラッとそちらを見るだけにとどめた。

「……何かご質問は?」

ネスが手を挙げた。ターマスはネスを見る。

「君は今からどうするの?この建物には居るんだよね?」

「いいえ、居ません。」

まさかの答えにネスは言葉を失った。ネスを代弁するようにポポとナナが叫ぶ。

「えぇー!?いないの!?」

「無責任すぎるでしょ!?」

ターマスは困ったようにため息をついてみせた。

「そう言われましても……これでも忙しい身なので。」

さも残念そうに答えると、マリオが呆れたように聞いた。

「じゃあ、連絡を取りたい時はどうしたらいいんだ?」

「その時は電話を下されば結構です。電話はこの部屋の先程の家具の上と、コントロール室、会議室、玄関に一台ずつ置いてあります。あぁ、電話を下さっても必ずとれるわけではないので、そこはご勘弁を。」

各自思うことはあったが、そのことについてはもう誰も何も言わなかった。

「主催者自身が姿を現すのはいつ?」

サムスの声は刺のあるものだった。

「暫くは無理かと。」

サムスはターマスを睨んだだけだった。

「自国に帰る場合はどうしたらいいかな?」

今度はマルスが聞いた。

「………そうですね………三日間は勝手に帰っていただいて構いません。しかし、それ以上の滞在の場合はご連絡を下さい。無断で行かれた場合は確認に伺います。……仕事を増やさないで下さいね。」

ターマスはリンクを見ていた。リンクは顔を背けた。それからしばらく沈黙が走った。

「……こんなところか?」

ファルコンは確認するように一通り全員の顔を見た。

「まぁ、何かあれば電話したらよさそうだしね。」

ルイージが言うと、頷く者がいた。

「ねぇ、実際に大会を行うのはいつ?」

プリンの素朴な質問は、ここにいた者に集められた目的を思い出させた。

「さぁ……。まだ準備が出来ていませんから………。準備が出来次第、電話をおかけしますよ。」

準備くらい集める前にしておけ。一体何人がそう思っただろうか。だが、面倒になってきたのか諦めたのか、追及する者はいなかった。それ以上質問はないと判断したターマスは、

「では、私はこれで。」

と、一礼すると出ていってしまった。それを見送ったメンバーは思い思いのことをはじめた。


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