サイドストーリー
まさかのリンクの逆襲に、場は騒然としていた。ゼルダとガノンドロフでさえ、状況を処理できていない。リンクにかき回された争いの場は、暫く緊張状態が続いていた。今、選択できるのは、撤退か、話し合いか。戦闘続行があまりにも浅はかであることは、どちらも承知していた。しかし、だ。どちらを選択するにしても、先に提案した方が白旗を挙げたことになりかねない。そのため、両者とも口を開くことができないでいた。
「どうする?」
このままでは埒が明かない。そう判断したミドナは、重い口を開いた。緊張状態の中、トップ勢の目線がミドナに集まる。中でもインパは睨んでいたといっても過言ではない。敵味方問わず鋭い眼差しを受け、ミドナは肩をすくめた。
「このまま膠着状態を続けていても、共倒れだよ。」
そうかもしれないが、と両トップは思う。不利になることだけは避けたい。そう思うが故に、動くことができなかった。またしばらく無言の睨み合いが続く。
「……多分だけどさ。対等じゃなくても戦力が傾くと思うんだよな。」
やはり、声を上げたのはミドナだった。この場にいる全員が苛立ちを隠さず、再度ミドナに注目する。中でもザントは反発心を押さえられなかった。
「何を言っている?ミドナ?」
馬鹿にしたようなザントに対し、ミドナの理性は吹っ飛んだ。
「あんたは黙っていてほしいね、ザント。」
ミドナも喧嘩腰でザントを威嚇する。
「なんだと、」
当然、ザントは反論しようとしたが、突然ガノンドロフがザントを手で制した。ザントの勢いが削がれる。ギロリとガノンドロフの目がミドナに向いた。
「……説明しろ、影の王女。」
ミドナは再度、大げさに肩をすくめて見せた。
「仮にこっちが下になって、あんたらが世界を支配したとしよう。次はリンクと戦わなきゃならない。だけど、さっきの状況を見た限りじゃ、アンタらだけじゃ敵わない。」
ハッと鼻で笑う者がいた。ギラヒムだ。
「キミの仮定じゃ、キミ達はワタシ達の支配下だ。そちらの戦力も惜しみ無く使うに決まっているだろう?」
ギラヒムはミドナの仮定を聞いて余裕を取り戻していた。悠々とした態度で、芝居がかった身振りを交えながら指摘する。それに対し、ミドナは視線の温度を下げた。
「……全力を出すわけがないだろ。」
ミドナは投げ捨てるように言った。
「は?」
余裕綽々な態度から一変、ギラヒムは不機嫌を前面に出した。ミドナはともすれば棘をたっぷり含めそうになるのを理性で押さえながら、説明を続ける。
「勝っても負けても未来には闇しかない。アンタらに従って一緒に戦ったとしても、死ぬ気では戦えないね。」
沈黙。ギラヒムやザントは苛立ちを隠さなかったが、反論の言葉を失っていた。ゼルダやインパも、ミドナの勝手な発言は快く思っていなかったが、その意見には全面的に賛成だった。ガノンドロフは無表情のままミドナの観察を続けていた。
「逆に、こっちが上に立った場合。」
ミドナは誰かの発言を待つのを諦めて、続ける。もう誰も、ミドナを咎めなかった。
「ワタシらは基本、リンクに頼った戦いをしてきたからね。リンクがワタシらを潰すのは造作もないことだろう。そこでそっちの協力が必要となるが……果たしてアンタらは、ワタシらの思うように動くのか?」
ザントもギラヒムも答えない。ガノンドロフは目を伏せて苦い思いをやり過ごした。
「……動かない、それが答だろうな。」
しんと静まり返ったその場に落ちた、ガノンドロフの回答。それが意味することを、理解していない者はいなかった。全員が全員、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「つまり、ここで腹の探りあいは不毛だよ。戦争続行と大差ない。」
ミドナのまとめに対し、トップ二人は考えこむ。やはりその場を包むのは沈黙。ミドナはそれ以上何も言わず、様子をじっと見守っていた。インパはイライラとしながら腕を組んでゼルダを見やる。一方、ギラヒムやザントも癇癪を弄びながらガノンドロフの様子をうかがっていた。身じろぎ一つせず、思考を巡らすトップ二人。やがて、二人は示し合わせたようにお互いを見た。
「協力するしかなさそうだな。」
「そのようですね。不服ですが。」
それがトップ二人の出した結論だった。
「「正気ですか!?」」
その場に響き渡る二重奏。インパとギラヒムだ。それに気付いた二人はすかさずお互いを睨む。……端から見れば、見事なシンクロであった。
「小僧を消すまでだ。その後は知らん。」
「……仕方ありませんね。」
投げやりに言うガノンドロフに対し、意に沿わないことを隠さないゼルダ。何とも前途多難を予感させる状況ではあるが、話はどうにかまとまった。それぞれ、一度撤退する。
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「どうする?」
このままでは埒が明かない。そう判断したミドナは、重い口を開いた。緊張状態の中、トップ勢の目線がミドナに集まる。中でもインパは睨んでいたといっても過言ではない。敵味方問わず鋭い眼差しを受け、ミドナは肩をすくめた。
「このまま膠着状態を続けていても、共倒れだよ。」
そうかもしれないが、と両トップは思う。不利になることだけは避けたい。そう思うが故に、動くことができなかった。またしばらく無言の睨み合いが続く。
「……多分だけどさ。対等じゃなくても戦力が傾くと思うんだよな。」
やはり、声を上げたのはミドナだった。この場にいる全員が苛立ちを隠さず、再度ミドナに注目する。中でもザントは反発心を押さえられなかった。
「何を言っている?ミドナ?」
馬鹿にしたようなザントに対し、ミドナの理性は吹っ飛んだ。
「あんたは黙っていてほしいね、ザント。」
ミドナも喧嘩腰でザントを威嚇する。
「なんだと、」
当然、ザントは反論しようとしたが、突然ガノンドロフがザントを手で制した。ザントの勢いが削がれる。ギロリとガノンドロフの目がミドナに向いた。
「……説明しろ、影の王女。」
ミドナは再度、大げさに肩をすくめて見せた。
「仮にこっちが下になって、あんたらが世界を支配したとしよう。次はリンクと戦わなきゃならない。だけど、さっきの状況を見た限りじゃ、アンタらだけじゃ敵わない。」
ハッと鼻で笑う者がいた。ギラヒムだ。
「キミの仮定じゃ、キミ達はワタシ達の支配下だ。そちらの戦力も惜しみ無く使うに決まっているだろう?」
ギラヒムはミドナの仮定を聞いて余裕を取り戻していた。悠々とした態度で、芝居がかった身振りを交えながら指摘する。それに対し、ミドナは視線の温度を下げた。
「……全力を出すわけがないだろ。」
ミドナは投げ捨てるように言った。
「は?」
余裕綽々な態度から一変、ギラヒムは不機嫌を前面に出した。ミドナはともすれば棘をたっぷり含めそうになるのを理性で押さえながら、説明を続ける。
「勝っても負けても未来には闇しかない。アンタらに従って一緒に戦ったとしても、死ぬ気では戦えないね。」
沈黙。ギラヒムやザントは苛立ちを隠さなかったが、反論の言葉を失っていた。ゼルダやインパも、ミドナの勝手な発言は快く思っていなかったが、その意見には全面的に賛成だった。ガノンドロフは無表情のままミドナの観察を続けていた。
「逆に、こっちが上に立った場合。」
ミドナは誰かの発言を待つのを諦めて、続ける。もう誰も、ミドナを咎めなかった。
「ワタシらは基本、リンクに頼った戦いをしてきたからね。リンクがワタシらを潰すのは造作もないことだろう。そこでそっちの協力が必要となるが……果たしてアンタらは、ワタシらの思うように動くのか?」
ザントもギラヒムも答えない。ガノンドロフは目を伏せて苦い思いをやり過ごした。
「……動かない、それが答だろうな。」
しんと静まり返ったその場に落ちた、ガノンドロフの回答。それが意味することを、理解していない者はいなかった。全員が全員、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「つまり、ここで腹の探りあいは不毛だよ。戦争続行と大差ない。」
ミドナのまとめに対し、トップ二人は考えこむ。やはりその場を包むのは沈黙。ミドナはそれ以上何も言わず、様子をじっと見守っていた。インパはイライラとしながら腕を組んでゼルダを見やる。一方、ギラヒムやザントも癇癪を弄びながらガノンドロフの様子をうかがっていた。身じろぎ一つせず、思考を巡らすトップ二人。やがて、二人は示し合わせたようにお互いを見た。
「協力するしかなさそうだな。」
「そのようですね。不服ですが。」
それがトップ二人の出した結論だった。
「「正気ですか!?」」
その場に響き渡る二重奏。インパとギラヒムだ。それに気付いた二人はすかさずお互いを睨む。……端から見れば、見事なシンクロであった。
「小僧を消すまでだ。その後は知らん。」
「……仕方ありませんね。」
投げやりに言うガノンドロフに対し、意に沿わないことを隠さないゼルダ。何とも前途多難を予感させる状況ではあるが、話はどうにかまとまった。それぞれ、一度撤退する。
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