ダークリンクの苦労日記
リンクがギラヒムの手に渡ってから数日が経過した。その間に、ダークリンクはいろんな噂を聞いた。それにより、何故、リンクがあの場にいたのか、そして、どうして暴行を受けることになったのかを知った。力のあるやつの中には、リンクが抵抗しなかったことに気づいたやつもいたようだが、それが何故かは誰も分からなかった。しかし、事情を知っているダークリンクは違った。オリジナルの考えたこと――抵抗しないことが誠意――を正確に推測できた。
“……それは、ただの馬鹿だと俺は思うけど。”
他の魔物達から隠れ、仏頂面をしながらダークリンクは思う。
“でもそれが、あいつか。お人好しだもんな。敵対してた俺らのことは許しておきながら、俺らの怒りは受け止めたいとか思ったんだろ、どうせ。”
ダークリンクはやれやれと首を振った。
“大体、何様のつもりだよ。裏切った俺なんか放っておけよ。助けんなよ。”
ダークリンクは近くの小石を蹴った。唇を噛み締める。だんだんと気持ちが高ぶっていき、ダークは地団駄を踏んだ。助けるな、なんて本気で思っているわけではない。ただの八つ当たりだ。だが、助けてもらって嬉しいはずなのに、何故か悔しくてたまらなかった。
“俺は、どうしたらいい!?”
とうとうダークリンクは膝をつき、顔を覆った。
「どうしたら、いい……?」
小さな声で呟いた。それで何があるとも思っていなかったが、無意識に声に出していた。
「オマエは、どうしたい?」
「え?」
しかし、あろうことか返事が返ってきた。ダークリンクはキョロキョロと辺りを見渡す。だが、声の主は見つけられなかった。
「だ、誰だ……?」
掠れた声でダークリンクは問いを投げた。
「ヒヒッ。オイラのこと、忘れたカ?」
ダークリンクは目を見開いた。
「その笑い声……!スタ、うぐっ!」
ダークリンクはスタルキッドと叫ぼうとしたが、何処からともなく現れたパペットに突き飛ばされ、最後まで言えなかった。
「バーカ。」
スタルキッドが無機質な声で言った。ダークリンクはムッとする。
「テメェ、いきなり攻撃しといて馬鹿とはなんだ。大体、一体どこにぐわっ!」
ダークリンクが反論していると、またパペットに襲われた。すぐさま立ち上がろうとしたが、今度はパペットに押さえつけられる。
「いい加減に」
「うるさい。叫ぶナ。ばれる。」
ばれると聞いて、ダークリンクはハッとした。そして、スタルキッドが何を意識していたかを悟る。
「……悪い。」
素直にダークリンクは謝った。スタルキッドの姿は見えないが、声だけが響く。
「いっぱい言いたいことあるケド、長くいれないカラ用件ダケ。オイラ、トモダチ助けたい。オマエ、強いなら、キングブルブリンのところに行け。アイツは強いヤツ、好きダ。ダカラ、トモダチのことも好き。オマエが強いなら、オマエも好きになる。」
パペットがダークリンクから離れた。
「今、オイラ達、見張られてる。オイラとオマエが会うのは危険ダ。誰か来たカラ、オイラは行く。」
辺りは静かになった。言葉の通り、スタルキッドは去ったらしい。ダークリンクは呆然と寝そべったままでいた。だが、確かに何かの気配が近づいてきていた。今は誰かに会う気分ではない。仕方なくダークリンクは立ち上がり、その場を後にした。歩きながら、スタルキッドの言ったことを考える。
“……人にどうしたいか聞いといて、そっちの要望だけ伝えてくのかよ。”
少々スタルキッドにイラッときた。ダークリンクは眉間に皺を寄せる。
“まぁ、だが、言いたいことは分かった。”
ダークリンクは天を仰いだ。青空が見え隠れしている。
“スタルキッドに乗っかるのも悪くないな。俺は。”
ダークリンクは足を止める。目を固く瞑った。今、とんでもない決意をしようとしている。その覚悟が、本当にあるのか。もうあんな絶望を味わいたくないと思ったのではなかったか。
『みんなで仲良く暮らしたいんだ。』
リンクの声がダークリンクの中で響いた。ダークリンクの様子を不安そうに見ながら言っていたが、その声はしっかりしていたことを覚えている。それだけ強い願いなのだろう。どんなに難しい願いか理解しているだろうに、叶えるため、リンクは必死だった。だが、今回、リンクはダークリンクを助けた。魔王軍の理不尽に応えた。夢を実現させたいなら、そんなことをしている場合ではないはずなのに。
“だからお前は、お人好しって言われるんだよ。”
苦虫を噛んだような顔をしながら、ダークリンクは思う。しかし、すぐに、ダークリンクは顔を緩めた。
“だけど……悪くないな。俺は、そんなお人好しの力になりたい。”
ダークリンクは前を見据えて歩き出した。その瞳には強い光が灯っていた。
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“……それは、ただの馬鹿だと俺は思うけど。”
他の魔物達から隠れ、仏頂面をしながらダークリンクは思う。
“でもそれが、あいつか。お人好しだもんな。敵対してた俺らのことは許しておきながら、俺らの怒りは受け止めたいとか思ったんだろ、どうせ。”
ダークリンクはやれやれと首を振った。
“大体、何様のつもりだよ。裏切った俺なんか放っておけよ。助けんなよ。”
ダークリンクは近くの小石を蹴った。唇を噛み締める。だんだんと気持ちが高ぶっていき、ダークは地団駄を踏んだ。助けるな、なんて本気で思っているわけではない。ただの八つ当たりだ。だが、助けてもらって嬉しいはずなのに、何故か悔しくてたまらなかった。
“俺は、どうしたらいい!?”
とうとうダークリンクは膝をつき、顔を覆った。
「どうしたら、いい……?」
小さな声で呟いた。それで何があるとも思っていなかったが、無意識に声に出していた。
「オマエは、どうしたい?」
「え?」
しかし、あろうことか返事が返ってきた。ダークリンクはキョロキョロと辺りを見渡す。だが、声の主は見つけられなかった。
「だ、誰だ……?」
掠れた声でダークリンクは問いを投げた。
「ヒヒッ。オイラのこと、忘れたカ?」
ダークリンクは目を見開いた。
「その笑い声……!スタ、うぐっ!」
ダークリンクはスタルキッドと叫ぼうとしたが、何処からともなく現れたパペットに突き飛ばされ、最後まで言えなかった。
「バーカ。」
スタルキッドが無機質な声で言った。ダークリンクはムッとする。
「テメェ、いきなり攻撃しといて馬鹿とはなんだ。大体、一体どこにぐわっ!」
ダークリンクが反論していると、またパペットに襲われた。すぐさま立ち上がろうとしたが、今度はパペットに押さえつけられる。
「いい加減に」
「うるさい。叫ぶナ。ばれる。」
ばれると聞いて、ダークリンクはハッとした。そして、スタルキッドが何を意識していたかを悟る。
「……悪い。」
素直にダークリンクは謝った。スタルキッドの姿は見えないが、声だけが響く。
「いっぱい言いたいことあるケド、長くいれないカラ用件ダケ。オイラ、トモダチ助けたい。オマエ、強いなら、キングブルブリンのところに行け。アイツは強いヤツ、好きダ。ダカラ、トモダチのことも好き。オマエが強いなら、オマエも好きになる。」
パペットがダークリンクから離れた。
「今、オイラ達、見張られてる。オイラとオマエが会うのは危険ダ。誰か来たカラ、オイラは行く。」
辺りは静かになった。言葉の通り、スタルキッドは去ったらしい。ダークリンクは呆然と寝そべったままでいた。だが、確かに何かの気配が近づいてきていた。今は誰かに会う気分ではない。仕方なくダークリンクは立ち上がり、その場を後にした。歩きながら、スタルキッドの言ったことを考える。
“……人にどうしたいか聞いといて、そっちの要望だけ伝えてくのかよ。”
少々スタルキッドにイラッときた。ダークリンクは眉間に皺を寄せる。
“まぁ、だが、言いたいことは分かった。”
ダークリンクは天を仰いだ。青空が見え隠れしている。
“スタルキッドに乗っかるのも悪くないな。俺は。”
ダークリンクは足を止める。目を固く瞑った。今、とんでもない決意をしようとしている。その覚悟が、本当にあるのか。もうあんな絶望を味わいたくないと思ったのではなかったか。
『みんなで仲良く暮らしたいんだ。』
リンクの声がダークリンクの中で響いた。ダークリンクの様子を不安そうに見ながら言っていたが、その声はしっかりしていたことを覚えている。それだけ強い願いなのだろう。どんなに難しい願いか理解しているだろうに、叶えるため、リンクは必死だった。だが、今回、リンクはダークリンクを助けた。魔王軍の理不尽に応えた。夢を実現させたいなら、そんなことをしている場合ではないはずなのに。
“だからお前は、お人好しって言われるんだよ。”
苦虫を噛んだような顔をしながら、ダークリンクは思う。しかし、すぐに、ダークリンクは顔を緩めた。
“だけど……悪くないな。俺は、そんなお人好しの力になりたい。”
ダークリンクは前を見据えて歩き出した。その瞳には強い光が灯っていた。
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