ダークリンクの苦労日記
リンクのお人好しの性質を多少なりとも引き継いでしまっているダークリンクは、引き受けてしまった依頼を投げ出すことも出来なかった。仕方なく、行動に移すことにする。
“とはいえ……闇雲に動くのはいくらなんでもまずい。マジで俺の命がやべぇ。”
リンクの助言などなくとも、声をかける相手は慎重に選ばなくてはならない。誰に声をかけるのが妥当かを考える。だが。
“……俺、知り合いいねぇんだけど。”
自身は水の神殿の一室しか知らない。コピーとして生まれ、あの部屋でオリジナルを待ち、そして敗れた。自由に動き回れたのは、この世界に来てはじめてのことだ。当然、他者に出会ったことも……。
“なくはねぇか。作られた直後にガノンドロフ様には会ってるし。ツインローバやモーファとも顔合わせはしたな。”
記憶を辿りながらうんうんと頷く。だがすぐに動きを止めた。
“いやいやダメじゃねぇか。こんなところに話しに行ったら即刻殺される。つぅか、行くなら最後だろ。”
ダークリンクは額に手を当てた。
“……いきなり詰んだ。当てがねぇ。”
「オマエ、さっきから何してる?」
突然声をかけられて、ダークリンクはビクリとした。声は目の前、少し視線を下げたところからしたようだった。そちらに目を向けると、子供みたいなやつが立っていた。
「あー……お前誰?」
「ヒヒッ。オイラ、スタルキッド。オマエ、見てて面白かったゾ!アイツにそっくりだナ!」
「……あいつ?」
思い当たる存在など1つしかないが、思わずダークリンクは聞き返した。
「オイラのトモダチ。」
「は?」
全く想定外の返答に、ダークリンクはすっとんきょうな声をあげた。
“友達って……俺の他にもコピーがいんのか?”
「誰だよそいつ。」
「ヒヒッ。ナイショ!」
たたっとスタルキッドは走り出した。内緒と言う意味を考え、ダークリンクはハッとする。ダークリンクは慌てて追いかけ、スタルキッドを引き止めた。
「イタイ。」
「わ、悪い。じゃなくて!」
引き止める際、肩を掴んだのだが、思った以上に力が入っていたらしい。痛いと言われ、反射的に手を離した。しかし、すぐに、今度は力が入りすぎないように捕まえ直した。
「お前、もしかして、女神軍との共生に興味ある?」
「は?」
スタルキッドはポカンとしてダークリンクを見上げていた。ダークリンクは冷や汗を流しながら動きを止める。
“……み、ミスった……。いきなり爆弾投げてどーすんだ、俺……。”
双方、お互いの様子を探りながら見つめ合う。ダークリンクは内心焦っていたが、口から出た言葉は取り消せない。無理やり笑みを浮かべ、ダメ元で言葉を続ける。
「あ、あのだな……。女神軍のやつらと、仲良くしてみたいなー、とか思わねぇ?」
ダークリンクの乾いた笑い声は、しかし、冷え切った場に吸い込まれるように消えていった。スタルキッドはやはり怪訝な顔をしてこちらを見ている。無鉄砲もいいところだったなとダークリンクが後悔していると、
「オマエ、危険だナ。」
スタルキッドが言った。
「あ?」
言われた意味が分からず、ダークリンクは思わず威嚇するような声を出してしまう。それには気にした様子もなく、スタルキッドは目線をダークリンクの後方に向けた。疑問符を飛ばしながらダークリンクが振り返ると、何者かが逃げるようにして去っていくのが見えた。
“今の……誰だ?ってか、俺、やばくね?”
いよいよ不味いことになったかもしれない、とダークリンクは肝を冷やした。
「オイラはそういう考え方、否定しないケド。オマエ、気をつけた方がいいゾ。」
思いのほか前向きなスタルキッドの言葉が聞こえ、ダークリンクは力なく手を下ろした。すると、スタルキッドはその場で軽快なステップを踏み始めた。
「そういえば、オマエ、何ダ?」
打って変わって明るい声でスタルキッドがダークリンクに問う。
「ん?あぁ、俺か?俺はダークリンク。かの有名な勇者様のコピーだよ。」
スタルキッドにつられて、ダークリンクが普段の調子に戻って答えると、スタルキッドは楽しそうに笑い出した。
「ダークリンク。ヒヒッ、そういうことか。」
スタルキッドはニコニコとなんだか嬉しそうだ。対して、ダークリンクは眉をひそめた。
「そういうことってどういうことだよ。」
疑問を口に出すが、
「なら、オマエもオイラのトモダチ!よろしくナ!」
スタルキッドは更に不思議なことを言った。
「は?」
思わず聞き返したが、
「ヒヒッ、またな!」
ダークリンクの疑問に答えず、スタルキッドは高く跳んだ。そうかと思うと、姿が消えていた。今起きたことを処理しきれず、ダークリンクは目をパチクリさせながらボケっと突っ立っていた。
“友達……。”
聞きなれない単語に、心が温かくなるのを感じる。また、思った以上に好感触だったため、なんとかなるかもと思い始めていた。だから油断した。突然、後ろから衝撃がきた。何が起こったのか確認することも出来ず、ダークリンクは気を失った。
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“とはいえ……闇雲に動くのはいくらなんでもまずい。マジで俺の命がやべぇ。”
リンクの助言などなくとも、声をかける相手は慎重に選ばなくてはならない。誰に声をかけるのが妥当かを考える。だが。
“……俺、知り合いいねぇんだけど。”
自身は水の神殿の一室しか知らない。コピーとして生まれ、あの部屋でオリジナルを待ち、そして敗れた。自由に動き回れたのは、この世界に来てはじめてのことだ。当然、他者に出会ったことも……。
“なくはねぇか。作られた直後にガノンドロフ様には会ってるし。ツインローバやモーファとも顔合わせはしたな。”
記憶を辿りながらうんうんと頷く。だがすぐに動きを止めた。
“いやいやダメじゃねぇか。こんなところに話しに行ったら即刻殺される。つぅか、行くなら最後だろ。”
ダークリンクは額に手を当てた。
“……いきなり詰んだ。当てがねぇ。”
「オマエ、さっきから何してる?」
突然声をかけられて、ダークリンクはビクリとした。声は目の前、少し視線を下げたところからしたようだった。そちらに目を向けると、子供みたいなやつが立っていた。
「あー……お前誰?」
「ヒヒッ。オイラ、スタルキッド。オマエ、見てて面白かったゾ!アイツにそっくりだナ!」
「……あいつ?」
思い当たる存在など1つしかないが、思わずダークリンクは聞き返した。
「オイラのトモダチ。」
「は?」
全く想定外の返答に、ダークリンクはすっとんきょうな声をあげた。
“友達って……俺の他にもコピーがいんのか?”
「誰だよそいつ。」
「ヒヒッ。ナイショ!」
たたっとスタルキッドは走り出した。内緒と言う意味を考え、ダークリンクはハッとする。ダークリンクは慌てて追いかけ、スタルキッドを引き止めた。
「イタイ。」
「わ、悪い。じゃなくて!」
引き止める際、肩を掴んだのだが、思った以上に力が入っていたらしい。痛いと言われ、反射的に手を離した。しかし、すぐに、今度は力が入りすぎないように捕まえ直した。
「お前、もしかして、女神軍との共生に興味ある?」
「は?」
スタルキッドはポカンとしてダークリンクを見上げていた。ダークリンクは冷や汗を流しながら動きを止める。
“……み、ミスった……。いきなり爆弾投げてどーすんだ、俺……。”
双方、お互いの様子を探りながら見つめ合う。ダークリンクは内心焦っていたが、口から出た言葉は取り消せない。無理やり笑みを浮かべ、ダメ元で言葉を続ける。
「あ、あのだな……。女神軍のやつらと、仲良くしてみたいなー、とか思わねぇ?」
ダークリンクの乾いた笑い声は、しかし、冷え切った場に吸い込まれるように消えていった。スタルキッドはやはり怪訝な顔をしてこちらを見ている。無鉄砲もいいところだったなとダークリンクが後悔していると、
「オマエ、危険だナ。」
スタルキッドが言った。
「あ?」
言われた意味が分からず、ダークリンクは思わず威嚇するような声を出してしまう。それには気にした様子もなく、スタルキッドは目線をダークリンクの後方に向けた。疑問符を飛ばしながらダークリンクが振り返ると、何者かが逃げるようにして去っていくのが見えた。
“今の……誰だ?ってか、俺、やばくね?”
いよいよ不味いことになったかもしれない、とダークリンクは肝を冷やした。
「オイラはそういう考え方、否定しないケド。オマエ、気をつけた方がいいゾ。」
思いのほか前向きなスタルキッドの言葉が聞こえ、ダークリンクは力なく手を下ろした。すると、スタルキッドはその場で軽快なステップを踏み始めた。
「そういえば、オマエ、何ダ?」
打って変わって明るい声でスタルキッドがダークリンクに問う。
「ん?あぁ、俺か?俺はダークリンク。かの有名な勇者様のコピーだよ。」
スタルキッドにつられて、ダークリンクが普段の調子に戻って答えると、スタルキッドは楽しそうに笑い出した。
「ダークリンク。ヒヒッ、そういうことか。」
スタルキッドはニコニコとなんだか嬉しそうだ。対して、ダークリンクは眉をひそめた。
「そういうことってどういうことだよ。」
疑問を口に出すが、
「なら、オマエもオイラのトモダチ!よろしくナ!」
スタルキッドは更に不思議なことを言った。
「は?」
思わず聞き返したが、
「ヒヒッ、またな!」
ダークリンクの疑問に答えず、スタルキッドは高く跳んだ。そうかと思うと、姿が消えていた。今起きたことを処理しきれず、ダークリンクは目をパチクリさせながらボケっと突っ立っていた。
“友達……。”
聞きなれない単語に、心が温かくなるのを感じる。また、思った以上に好感触だったため、なんとかなるかもと思い始めていた。だから油断した。突然、後ろから衝撃がきた。何が起こったのか確認することも出来ず、ダークリンクは気を失った。
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