ダークリンクの苦労日記
ダークリンクは自身のオリジナルがこの地にいることを感じ取った。しかも、近い。
“もうここまで来たのか。ふざけんな!返り討ちにしてやる!”
そう意気込んでリンクを見つけ出し、闘いを挑んだが。あっけなく敗れた。
“この世界での俺の人生もこれで終わりか。随分と短いもんだな。”
ダークリンクはそんなことを思いながら最後の瞬間を待った。しかし、そんな瞬間はこなかった。
「大丈夫?久々だったから、ちょっとやりすぎたかも。」
なんてことを言いながら、自身を覗き込んでくるオリジナル。それに対し、ダークリンクは不審感しか持てない。口論に持って行くが、あろうことかオリジナルは、共存したいなどと訳の分からないことを言い出した。冗談交じりに、
「何、俺に協力しろとか言い出すんじゃねぇだろうな。」
と言ってやると、何やら真剣な顔をし、あろうことか肯定した。共存なんてどうでもよかったが、協力させられてはたまらない。色々と反論口実を探してその考えを潰そうと試みる。だが、全く折れそうになかった。
「だから終戦?して、みんなで仲良く暮らしたいんだ。」
という言葉を聞き、何を言っても無駄だと悟った。今までの会話から何をしたいのか、どうしてそう思ったのかを整理する。全くの第三者なら、何を言いたいのか分からないであろうことも多々あっただろうが、残念なことに、目の前にいるのはダークリンクのオリジナルである。以前ほどではないが、オリジナルの考えることは理解できる。理解してしまって、ダークリンクはうんざりした。その感情を隠すことなくリンクに向ける。
「……結局お前の我が儘か。」
「それでもいい。」
想定通りの返答で、やはり自分はこいつの考えが分かってしまうのかと落胆した。共存したいなんてことを我が儘と片付けることにも抵抗しない。本人は自身がどう思われるかなんて考えていないのだろう。そもそも共存なんて言い出すことが勇者様たる所以というべきか。
「つーか……多分お前のお人好しスキルが発動して、何か変なことになってるんだろうな……。」
心の中での葛藤が、とうとう口に出てしまった。しまったとどこか遠くで思いながら、倦怠感を込めて大きくため息を吐いた。リンクが分かっていない顔でこちらを見ている。本当にこいつは、とイライラする一方で、自身の性質が、嫌な方に転がり始めているのを感じていた。おさらいするが、目の前にいるのはこれ以上ないほどのお人好しである。
「しかも、この俺は、そのお人好しのコピーときた……断りてぇのに断れねぇ……!」
ダークリンクは頭を抱えて天を仰いだ。そう、自身はあくまでもコピーなのだ。コピーであれば、どうしてもオリジナルに近い考え方をしてしまうわけで。共存という言葉に魅力を感じてしまうわけで。そのために協力が必要ならば、たとえ自分の立場がかなり危うくなると分かっていても、そこはオリジナルのお人好しの性質が顔を出してきてしまうわけで……!
“ふざけんなよ……!なんで俺がこんな奴のコピーなんだ!!”
「ありがとう!じゃあオレは、女神側の説得を試みるから、魔王側をよろしくね!」
嬉々とした声が聞こえ、リンクに目を戻す。非常に嬉しそうな顔でリンクが自身を見ていた。自分が協力者に成り果てたことを知り、ダークリンクはがっくりする。
「……受けたとは言ってねぇ。」
ダメ元で反論をしてはみるが、
「あ、話が分かりそうな奴から始めてね。じゃないとダークが危ないから。」
と完全に無視された。リンクはニコニコ顔で立ち上がり、どこかへ行ってしまった。
「マジでふざけんなよ、アイツ……。」
届かないと分かっていながら、悪態をつく。しかし、最も悪いのは、引き受けてしまった自分だということは薄々理解していた。何故なら、自分を協力者に仕立て上げた彼は、本来的にはお人好しだからだ。お人好しというものは、人の気持ちを最優先する生き物である。つまり、断固拒否すれば引き下がるはずなのだ、あの勇者様は。
“……俺、馬鹿すぎねぇ?”
そのことに気付くと、ダークリンクは更に気落ちした。ダークリンクはしばらくそこから動けなかった。
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“もうここまで来たのか。ふざけんな!返り討ちにしてやる!”
そう意気込んでリンクを見つけ出し、闘いを挑んだが。あっけなく敗れた。
“この世界での俺の人生もこれで終わりか。随分と短いもんだな。”
ダークリンクはそんなことを思いながら最後の瞬間を待った。しかし、そんな瞬間はこなかった。
「大丈夫?久々だったから、ちょっとやりすぎたかも。」
なんてことを言いながら、自身を覗き込んでくるオリジナル。それに対し、ダークリンクは不審感しか持てない。口論に持って行くが、あろうことかオリジナルは、共存したいなどと訳の分からないことを言い出した。冗談交じりに、
「何、俺に協力しろとか言い出すんじゃねぇだろうな。」
と言ってやると、何やら真剣な顔をし、あろうことか肯定した。共存なんてどうでもよかったが、協力させられてはたまらない。色々と反論口実を探してその考えを潰そうと試みる。だが、全く折れそうになかった。
「だから終戦?して、みんなで仲良く暮らしたいんだ。」
という言葉を聞き、何を言っても無駄だと悟った。今までの会話から何をしたいのか、どうしてそう思ったのかを整理する。全くの第三者なら、何を言いたいのか分からないであろうことも多々あっただろうが、残念なことに、目の前にいるのはダークリンクのオリジナルである。以前ほどではないが、オリジナルの考えることは理解できる。理解してしまって、ダークリンクはうんざりした。その感情を隠すことなくリンクに向ける。
「……結局お前の我が儘か。」
「それでもいい。」
想定通りの返答で、やはり自分はこいつの考えが分かってしまうのかと落胆した。共存したいなんてことを我が儘と片付けることにも抵抗しない。本人は自身がどう思われるかなんて考えていないのだろう。そもそも共存なんて言い出すことが勇者様たる所以というべきか。
「つーか……多分お前のお人好しスキルが発動して、何か変なことになってるんだろうな……。」
心の中での葛藤が、とうとう口に出てしまった。しまったとどこか遠くで思いながら、倦怠感を込めて大きくため息を吐いた。リンクが分かっていない顔でこちらを見ている。本当にこいつは、とイライラする一方で、自身の性質が、嫌な方に転がり始めているのを感じていた。おさらいするが、目の前にいるのはこれ以上ないほどのお人好しである。
「しかも、この俺は、そのお人好しのコピーときた……断りてぇのに断れねぇ……!」
ダークリンクは頭を抱えて天を仰いだ。そう、自身はあくまでもコピーなのだ。コピーであれば、どうしてもオリジナルに近い考え方をしてしまうわけで。共存という言葉に魅力を感じてしまうわけで。そのために協力が必要ならば、たとえ自分の立場がかなり危うくなると分かっていても、そこはオリジナルのお人好しの性質が顔を出してきてしまうわけで……!
“ふざけんなよ……!なんで俺がこんな奴のコピーなんだ!!”
「ありがとう!じゃあオレは、女神側の説得を試みるから、魔王側をよろしくね!」
嬉々とした声が聞こえ、リンクに目を戻す。非常に嬉しそうな顔でリンクが自身を見ていた。自分が協力者に成り果てたことを知り、ダークリンクはがっくりする。
「……受けたとは言ってねぇ。」
ダメ元で反論をしてはみるが、
「あ、話が分かりそうな奴から始めてね。じゃないとダークが危ないから。」
と完全に無視された。リンクはニコニコ顔で立ち上がり、どこかへ行ってしまった。
「マジでふざけんなよ、アイツ……。」
届かないと分かっていながら、悪態をつく。しかし、最も悪いのは、引き受けてしまった自分だということは薄々理解していた。何故なら、自分を協力者に仕立て上げた彼は、本来的にはお人好しだからだ。お人好しというものは、人の気持ちを最優先する生き物である。つまり、断固拒否すれば引き下がるはずなのだ、あの勇者様は。
“……俺、馬鹿すぎねぇ?”
そのことに気付くと、ダークリンクは更に気落ちした。ダークリンクはしばらくそこから動けなかった。
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