小ネタ集
「おや、あれは…。」
スタルキッドの一行が行商人の側を走り抜けていった。行商人は、そのうちの一人に目を向ける。
「……まさかねぇ。」
行商人は、怪しくじっと見つめていた。
リンクはスタルキッドの友達に引っ張られながら、皆と一緒に城下町を駆け回っていた。その時、見覚えのあるお面をした子供が横を走りすぎた。
“今のは……。”
リンクは振り返る。お面をした子供は、少し離れたところでリンクを見ていた。そのお面をしっかりと確認して、リンクは驚く。
“ムジュラの仮面だ……!!”
子供は、リンクが自分に気付いたと分かったようだ。小首を傾げたと思えば、走り出した。
“あれを放置するのはまずい!”
迷わずリンクは追いかけた。
「オイ、どうした!?」
友達のスタルキッドが声を掛けてきたのは分かったが、無視して走った。人を掻き分け、仮面をつけた子を追う。子供はケラケラ笑いながら逃げていく。周りの人は、なんだなんだと走る二人を見たが、すぐに微笑ましそうにするだけだった。何故だ、あの仮面がそうさせているのか!?と焦燥感を覚えながら、リンクは必死に走った。あぁ、人が邪魔だ!!
子供はやがて、人通りの多い道から細い路地に入った。角を曲がると、途端に人がいなくなった。リンクもその道を駆ける。しかし、しばらく進んで、子供を見失ってしまった。十字路で左右を確認するが、見当たらない。まずい、このままではまたおかしなことが起こってしまう……!!
「どうしたんダ!?」
そこへスタルキッドがやってきた。1人だ。友人の彼は、リンクを追いかけてきてくれたようだった。リンクがどう説明しようかと迷っていると、
「何してるの?鬼さん、こっちだよ。」
声が聞こえた。声の方を見ると、さっきの子どもが立っていた。リンクが見たのを確認して、子供はクスクス笑いながら走り出した。
「アノ仮面…!」
「待って!!」
思わずリンクは声を出した。呆然とするスタルキッドを放置し、子供を追いかける。
「ダメだ、これはきっと罠ダ!」
我に返ったスタルキッドが慌てて呼び止めたが、リンクは止まることなく子供を捕まえた。
「あははー、スタルキッドさん、速いねぇ!」
子供は無邪気に笑っている。リンクはそっとムジュラの仮面に手を伸ばした。意外にも、仮面はあっさりと外れた。
“あれ……?”
手の中にあるムジュラの仮面をリンクは見つめる。スタルキッドが側に寄ってきた。
「やっぱり、アノときの。」
「これを知っているの?」
子供が口を開いた。リンクは、仮面をしていた子供に再び目を向ける。そしてギョッとした。それは見知った顔だったのだ。リンクの様子には気付かず、スタルキッドは答える。
「知ってる。コレ、どうした?」
「クーコね、パパと遊びに来たけど、パパの用事が長くて。ひまー、って言ってたら、変な人が、これを貸してくれたんだ!これをつけてたら、きっとあなたと追いかけっこできるって!!」
“オレ、と…?”
「クーコ!!」
その時、後ろから声がした。振り返ると、ゲランが慌てた様子で走ってくるのが見えた。
「よかった。いい子にして待っていろと言っただろう。」
「パパ!終わったの?」
「あぁ。ほら、買い物に行くぞ。……ん?お前達は?」
ゲランはリンク達に気付いて、声をかけてきた。
「クーコとおいかけっこしてたの!楽しかったよ!また遊ぼうね!」
リンクは小さく頷くと、スタルキッドの友達を引っ張ってその場を後にした。
リンクとスタルキッドは人気がないところまでやってきた。
「どういうことダ?」
リンクはキョロキョロと辺りを見渡し、人がいないことを確認した。そして口を開く。
「仮面をつけて走り回っているのが見えたから、思わず追いかけてしまったけれど。よく考えてみたら、君が起こした事件の後、ムジュラの仮面から邪気はなくなったよね。……オレ、軽はずみな行動をしてしまったかもしれない。」
「……?ツマリ?」
スタルキッドは首を傾げる。リンクは深呼吸してから言った。
「君の言う通り、罠だった可能性が高い。オレを見つけ出すための。」
「やはりあなたでしたか。」
突然の第三者の声に、リンクとスタルキッドはビクリと反応した。
「オマエ…!お面屋!!」
リンクとスタルキッドの後ろにしあわせのお面屋が立っていた。リンクは何も言えず、彼を見つめた。スタルキッドが庇うようにリンクの前に出る。ハッと我に返ったリンクは、スタルキッドの腕を掴んだ。耳元で囁く。
「ダメだよ。オレは、大丈夫だから。」
スタルキッドは聞く耳を持たず、お面屋を睨みつけた。
「リンクは、渡さないゾ。」
すると、お面屋は不気味な笑い声を漏らした。
「これは面白い。あの時と逆の立場ということですか。」
「やめて、スタルキッド。……オレを、城に引き渡すの?」
弱々しく聞くリンクに、お面屋は怪しく笑った。
「いいえ。ただ1つ、お願いがありまして。」
警戒心を剝き出しにしながら、二人はお面屋を見つめた。
「あなたがしているお面を、見せていただきたい。」
リンクは目を見開いた。よくよく考えてみれば、自分は顔を隠していた。それでも正体が見抜かれていたということは、お面を見破られていたということだ。このお面に気付くとは、流石お面を扱っているだけはある。リンクは黙ってお面を取り、お面屋に差し出した。スタルキッドが不安そうにその様子を見ている。お面屋はそれを鑑定するかのように見つめた。
「……やはりそうですか。」
たっぷり時間を置いて、お面屋はそれだけを言った。リンクは眉を顰める。
「……何?」
すると、お面屋は怪しい笑みを浮かべて小さく首を振った。
「いえ、何でもありませんよ。これはお返しします。ワタクシが求めているものではないようだ。あぁ、ムジュラの仮面はお返しくださいね。」
ムジュラの仮面と交換し、リンクは再び装着した。
「あー!!」
「いたゾ!」
大きな声が響いた。わらわらとスタルキッド達がやってきていた。リンクは心臓が止まるかと思った。冷や冷やしながらスタルキッド達を見つめ
る。
「オマエら、ドコにいた?」
「探したゾ!」
だが、スタルキッド達はいつものように二人のもとに集まってくるばかりだ。どうやら顔は見られていないらしく、リンクは安堵した。友達のスタルキッドが対応する。
「探してくれたのカ。ありがとう。」
「ナニしてた?」
「探し物。」
「見つかったのカ?」
「ああ。」
「じゃあ戻るゾ。」
テンポよく語ると、スタルキッド達は大通りの方へ歩き出す。友達のスタルキッドがリンクを促した。しかしリンクは、歩き出せずにいた。
“見つかってしまった今、オレはもう…。”
「行くゾ。」
とうとう友達のスタルキッドはリンクを引っ張った。リンクは小さく首を振る。
「お行きなさい。」
リンクは驚いてお面屋に顔を向けた。やはり怪しい笑みを浮かべたまま、お面屋は言った。
「他言はしませんので。」
リンクは呆然とお面屋を見つめていた。しかし、スタルキッドが強く引っ張り、リンクを連れて行った。リンクは、スタルキッドに身を委ねることにした。
リンクやスタルキッド達を見送ったしあわせのお面屋。彼らが去った方を見ながら呟く。
「……あの方は哀しいお方だ。」
そして、手に持つムジュラの仮面に目を向けた。
「お面に何が宿るのか、よくご存知のはずなのに。」
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スタルキッドの一行が行商人の側を走り抜けていった。行商人は、そのうちの一人に目を向ける。
「……まさかねぇ。」
行商人は、怪しくじっと見つめていた。
リンクはスタルキッドの友達に引っ張られながら、皆と一緒に城下町を駆け回っていた。その時、見覚えのあるお面をした子供が横を走りすぎた。
“今のは……。”
リンクは振り返る。お面をした子供は、少し離れたところでリンクを見ていた。そのお面をしっかりと確認して、リンクは驚く。
“ムジュラの仮面だ……!!”
子供は、リンクが自分に気付いたと分かったようだ。小首を傾げたと思えば、走り出した。
“あれを放置するのはまずい!”
迷わずリンクは追いかけた。
「オイ、どうした!?」
友達のスタルキッドが声を掛けてきたのは分かったが、無視して走った。人を掻き分け、仮面をつけた子を追う。子供はケラケラ笑いながら逃げていく。周りの人は、なんだなんだと走る二人を見たが、すぐに微笑ましそうにするだけだった。何故だ、あの仮面がそうさせているのか!?と焦燥感を覚えながら、リンクは必死に走った。あぁ、人が邪魔だ!!
子供はやがて、人通りの多い道から細い路地に入った。角を曲がると、途端に人がいなくなった。リンクもその道を駆ける。しかし、しばらく進んで、子供を見失ってしまった。十字路で左右を確認するが、見当たらない。まずい、このままではまたおかしなことが起こってしまう……!!
「どうしたんダ!?」
そこへスタルキッドがやってきた。1人だ。友人の彼は、リンクを追いかけてきてくれたようだった。リンクがどう説明しようかと迷っていると、
「何してるの?鬼さん、こっちだよ。」
声が聞こえた。声の方を見ると、さっきの子どもが立っていた。リンクが見たのを確認して、子供はクスクス笑いながら走り出した。
「アノ仮面…!」
「待って!!」
思わずリンクは声を出した。呆然とするスタルキッドを放置し、子供を追いかける。
「ダメだ、これはきっと罠ダ!」
我に返ったスタルキッドが慌てて呼び止めたが、リンクは止まることなく子供を捕まえた。
「あははー、スタルキッドさん、速いねぇ!」
子供は無邪気に笑っている。リンクはそっとムジュラの仮面に手を伸ばした。意外にも、仮面はあっさりと外れた。
“あれ……?”
手の中にあるムジュラの仮面をリンクは見つめる。スタルキッドが側に寄ってきた。
「やっぱり、アノときの。」
「これを知っているの?」
子供が口を開いた。リンクは、仮面をしていた子供に再び目を向ける。そしてギョッとした。それは見知った顔だったのだ。リンクの様子には気付かず、スタルキッドは答える。
「知ってる。コレ、どうした?」
「クーコね、パパと遊びに来たけど、パパの用事が長くて。ひまー、って言ってたら、変な人が、これを貸してくれたんだ!これをつけてたら、きっとあなたと追いかけっこできるって!!」
“オレ、と…?”
「クーコ!!」
その時、後ろから声がした。振り返ると、ゲランが慌てた様子で走ってくるのが見えた。
「よかった。いい子にして待っていろと言っただろう。」
「パパ!終わったの?」
「あぁ。ほら、買い物に行くぞ。……ん?お前達は?」
ゲランはリンク達に気付いて、声をかけてきた。
「クーコとおいかけっこしてたの!楽しかったよ!また遊ぼうね!」
リンクは小さく頷くと、スタルキッドの友達を引っ張ってその場を後にした。
リンクとスタルキッドは人気がないところまでやってきた。
「どういうことダ?」
リンクはキョロキョロと辺りを見渡し、人がいないことを確認した。そして口を開く。
「仮面をつけて走り回っているのが見えたから、思わず追いかけてしまったけれど。よく考えてみたら、君が起こした事件の後、ムジュラの仮面から邪気はなくなったよね。……オレ、軽はずみな行動をしてしまったかもしれない。」
「……?ツマリ?」
スタルキッドは首を傾げる。リンクは深呼吸してから言った。
「君の言う通り、罠だった可能性が高い。オレを見つけ出すための。」
「やはりあなたでしたか。」
突然の第三者の声に、リンクとスタルキッドはビクリと反応した。
「オマエ…!お面屋!!」
リンクとスタルキッドの後ろにしあわせのお面屋が立っていた。リンクは何も言えず、彼を見つめた。スタルキッドが庇うようにリンクの前に出る。ハッと我に返ったリンクは、スタルキッドの腕を掴んだ。耳元で囁く。
「ダメだよ。オレは、大丈夫だから。」
スタルキッドは聞く耳を持たず、お面屋を睨みつけた。
「リンクは、渡さないゾ。」
すると、お面屋は不気味な笑い声を漏らした。
「これは面白い。あの時と逆の立場ということですか。」
「やめて、スタルキッド。……オレを、城に引き渡すの?」
弱々しく聞くリンクに、お面屋は怪しく笑った。
「いいえ。ただ1つ、お願いがありまして。」
警戒心を剝き出しにしながら、二人はお面屋を見つめた。
「あなたがしているお面を、見せていただきたい。」
リンクは目を見開いた。よくよく考えてみれば、自分は顔を隠していた。それでも正体が見抜かれていたということは、お面を見破られていたということだ。このお面に気付くとは、流石お面を扱っているだけはある。リンクは黙ってお面を取り、お面屋に差し出した。スタルキッドが不安そうにその様子を見ている。お面屋はそれを鑑定するかのように見つめた。
「……やはりそうですか。」
たっぷり時間を置いて、お面屋はそれだけを言った。リンクは眉を顰める。
「……何?」
すると、お面屋は怪しい笑みを浮かべて小さく首を振った。
「いえ、何でもありませんよ。これはお返しします。ワタクシが求めているものではないようだ。あぁ、ムジュラの仮面はお返しくださいね。」
ムジュラの仮面と交換し、リンクは再び装着した。
「あー!!」
「いたゾ!」
大きな声が響いた。わらわらとスタルキッド達がやってきていた。リンクは心臓が止まるかと思った。冷や冷やしながらスタルキッド達を見つめ
る。
「オマエら、ドコにいた?」
「探したゾ!」
だが、スタルキッド達はいつものように二人のもとに集まってくるばかりだ。どうやら顔は見られていないらしく、リンクは安堵した。友達のスタルキッドが対応する。
「探してくれたのカ。ありがとう。」
「ナニしてた?」
「探し物。」
「見つかったのカ?」
「ああ。」
「じゃあ戻るゾ。」
テンポよく語ると、スタルキッド達は大通りの方へ歩き出す。友達のスタルキッドがリンクを促した。しかしリンクは、歩き出せずにいた。
“見つかってしまった今、オレはもう…。”
「行くゾ。」
とうとう友達のスタルキッドはリンクを引っ張った。リンクは小さく首を振る。
「お行きなさい。」
リンクは驚いてお面屋に顔を向けた。やはり怪しい笑みを浮かべたまま、お面屋は言った。
「他言はしませんので。」
リンクは呆然とお面屋を見つめていた。しかし、スタルキッドが強く引っ張り、リンクを連れて行った。リンクは、スタルキッドに身を委ねることにした。
リンクやスタルキッド達を見送ったしあわせのお面屋。彼らが去った方を見ながら呟く。
「……あの方は哀しいお方だ。」
そして、手に持つムジュラの仮面に目を向けた。
「お面に何が宿るのか、よくご存知のはずなのに。」
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