挽回
リンクの意識が浮上する。リンクはゆっくりと目を開けた。見えた光景は全く見覚えがないものだった。
“ここは……?”
リンクは起き上がろうとする。しかし、体のあちこちに激痛が走り、身をよじる結果となった。
“!!!??!?!?痛い!!”
何故こんなにも体が痛いのか、そもそも何がどうなっているのか理解出来ず、リンクはその場で転げまわった。
「うごくナ。きずガひろがルゾ。」
誰かの声がした。自分の他に誰かがいたことを知り、リンクは動きを止める。少し目線を上げるが、声の主を見つけられない。荒い息のまま、首を動かす。痛みに顔をしかめつつ、なんとか声の主を見つけた。
「お前、は……!」
そこにいたのはキングブルブリンだった。驚きでリンクは目を丸くする。
「どう、して………。」
キングブルブリンは黙ったままじっとこちらを見つめている。なんだか不思議がっているように感じた。キングブルブリンに口を開く気配はない。リンクは、答えを得られなさそうだと感じ、必死に頭を回転させた。そして、今まで自分がどこにいたかを思い出した。背筋が凍る思いがしながらも、確認しなければと思い、再び口を開く。
「ギラヒム、は……?」
すると、ようやくキングブルブリンは答える気になったらしい。相変わらずリンクを見つめながら、言葉を発した。
「しらナイ。いまごろ、おこっテる、だろうナ。」
「あぁ、滅茶苦茶激怒してたぞ。次会ったら、命はないな。」
キングブルブリンに続けて第三者の声がした。知っている声のはずだが、すぐに誰の声か判断できない。痛いのを我慢しながらそちらに顔を向けると、ダークリンクがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。リンクはダークリンクを見て泣きそうになる。
「ダーク、」
リンクは弱々しい声を発した。だが、その先の言葉はダークリンクに遮られた。
「ホント、しばらく残っていて正解だった。真っ先に疑われたからな。」
面倒臭そうにダークリンクは言う。まるで、大したことではないかのような言い様だったが、リンクにとっては大事だ。青ざめてダークリンクを見る。
「疑われ、」
「俺にはアリバイあるし、お前は自力で逃げたことになってるから、こっちの心配はいらないぞ、お人好し。」
リンクが確認しようとすると、ダークリンクは再び声を被せて説明した。ダークリンクの様子に目をパチクリさせながら、リンクは再び声を発する。
「オレ、は、」
「だがギラヒムの戯言に付き合わされたのには参った。あれではまだ足りなかったのかとか、逃げられるなんて腑甲斐無いとか、魔王に顔向けできないとか……俺に言うなよ。」
やはりダークリンクはリンクを遮って発言した。ダークリンクはすごく嫌そうな顔をしている。だが、リンクにとって今、問題なのはそこではない。ダークリンクの、まるでリンクに何も言わせたくないような様子に、リンクは不安を覚えた。
「聞いて……。」
思わずリンクは懇願した。すると、ダークリンクはすでに歪めていた顔を更に歪めた。
「なんだよ、まだ不安要素があんのか。」
仕方なく、といった具合ではあったが、ようやく発言を許可した。リンクはそのことにホッとしながら、言葉を続ける。
「君達、が、助けて、くれたの……?」
「そうなるんだろーな。」
気だるそうにダークリンクは答えた。
「でも、大丈夫……?オレ、を、助け、て……。」
すると、ダークリンクはため息を吐いた。
「なぁ、話聞いてたか。こっちの心配は無用だっつうてんだろ。」
「だって、ダーク、は、」
「頼むからそれ以上言わないでくれ。」
ダークリンクがピシャリと言った。ビクリと肩を震わせながら、リンクはダークリンクの方をうかがう。ダークリンクは悲痛な顔をしていた。
“どうして……?何がダークをあんなに苦しめてるの……?”
リンクは非常に気になったが、黙れと言われてしまっては何も言うことができない。痺れたように鈍い頭を使って考える。
“オレを助けたから、だろうか……。また魔王軍で、辛いことをされたのかな……。”
そう思っても、今の自分では何をすることもできない。さらに、上手く働かない頭では、良策を思いつけるわけもない。不安に思いながら、ダークリンクを見つめることしかできなかった。その様子を見てか、ダークリンクはため息を吐いた。
「……そんな顔すんなよ。お前が思ってるようなことじゃない。だから、安心しろ。」
ダークリンクの言葉は優しいものだった。しかし、リンクは哀しいと思った。だからリンクは、ダークリンクから視線を外した。
“オレには教えたくないのかな……。そうだよね……オレじゃ力になれないし、頼りにならないから……。”
しばらく沈黙がその場を支配する。
「……………悪かった。」
突然、ダークリンクから謝罪の言葉が聞こえた。リンクは驚いた。痛みも無視し、ダークリンクの方に勢いよく顔を向けた。
「ダーク……?」
「俺はお前の頼みを放棄した。挙句の果てに、お前の目の前で完全否定した。」
「でも、」
「だから!」
リンクの言葉を遮り、ダークリンクはきつめに叫んだ。リンクは黙り込む。それを確認して、ダークリンクは元の調子に戻って続けた。
「悪かった。あれは、俺の落ち度だ。」
リンクは困り果てて視線を彷徨わせた。だが、考えをまとめるより早く、ダークリンクは次の言葉を発した。
「後、俺は、お前に感謝を伝えたい。」
「え……?」
リンクはポカンとダークリンクを見上げた。
「お前は俺を助けてくれた。だから……ありがとう。」
リンクは再び目を見開く。
「ダーク、」
「分かってる。お前は俺に対して、申し訳なかったとかもう無理はしないでくれとか思ってんだろ。そんで、お前の落ち度だとか言って、俺を助けたのは当然のことだなんて言い出すんだろ。ついでに言うと、あれじゃ助けられてないとか思ってんだろ。だが、俺はそんなの聞きたくない。お前は俺を助けてくれた。俺はお前に助けられた。それで十分だ。」
ダークリンクは一気に言ってのけた。そして、ほとんど間を開けずに続ける。
「後、……もう一度俺にチャンスをくれ。」
リンクは疑問符をとばした。
「ダーク……?」
「俺は、お前の……。」
ダークリンクは一度言葉を切った。視線を彷徨わせながら考えこんでいる。しばらくして、ダークリンクは再びリンクに目を向けた。その眼は力強かった。
「俺も、共存に魅力は感じてるんだ。お前に協力、させてくれ。」
ダークリンクの言葉にリンクは非常に驚いた。だが、それと同時に、リンクはとても気不味く感じた。申し訳なさでいっぱいになりながら、リンクは口を開いた。
「そのこと、だけど……。オレ……君達に、とって、悪……仇……。」
思わずダークリンクは息をのんだ。リンクの言葉は、かなり想定外だったらしい。しかし、リンクにはそれに構う余裕はなかった。泣きそうな声で先を続ける。
「共存、なんて……言う、資格……なかった………。」
ダークリンクはリンクを覗き込んだ。
「……そんなこと気にしてんの?」
「だって……事実……。」
リンクはダークリンクの眼を見ていられず、顔を背けた。
「じゃあ諦めるか。」
ダークリンクの声が冷たく感じる。リンクはビクリと身を震わせた。何も言うことが出来ない。あれだけのことを頼んで辛い目に合わせておきながら、自身は手を引こうとしているのだ。だから、ダークリンクを見ることも出来なかった。
「このまま両軍が衝突するのを黙って見てるか。」
再び聞こえたダークリンクの言葉に、思わずリンクは顔を上げた。
「衝突……?」
困惑した声でリンクは繰り返した。ダークリンクは頷いた。
「するぞ。近いうちにな。」
淡々と述べたダークリンクに、リンクはゾッとした。
「そん、な……。オレ、今まで、ずっと、正しい、と、思ってた。だけど……、今までの、オレ、を、恨む、よ……。本当……こんな、ことに、なる、なら……。どう、したら、いい、の、かな……。どう、したら……。」
自分を失い、訳が分からない。自分はどうしたらいいのか、どうしたいのか、リンクは見失っていた。
「……少し休めよ。」
ダークリンクは静かに離れていった。リンクはそれをぼんやり見ていたが、起き上がろうとした。だが、体が思うように動かない。水の中で溺れているみたいだった。
「やめロ。くるしい、ダケ。」
キングブルブリンの制止の声は聞こえたが、構ってなどいられない。リンクはもがく。何が正しいとか、どうするべきかとか、何も分からなかったが、両軍の衝突だけは許せなかった。見かねたらしいキングブルブリンは、とうとうリンクを押さえつけた。
「離、して……!止めな、きゃ。オレ、が……!」
リンクは悲痛な声で叫ぶ。叫んではいるが、弱り切っているため、大した音量は出なかった。キングブルブリンは、押さえつける手に更に力を入れた。
「いま、いっテモ、なにモできナイ。すぐ、つかまル。」
キングブルブリンの力は強く、リンクは身動きできなくなってしまった。仕方なく、抵抗を諦める。怯えた目を、キングブルブリンに向けた。
「……君は、オレ、を、恨ん、で、ないの?」
「おれハおまえヲみとめタ。それダケ。」
リンクはそれで納得できなかった。表情を歪めて反論しようとする。
「だけど……。」
だが、その後の言葉が続かない。すると、キングブルブリンが口を開いた。
「あのときハ、たたかう、ひつようだっタ。でも、いまハちがう。あいつノいうとおり。」
「あいつ……?」
眉を顰めてリンクは聞く。すると、キングブルブリンはニヤリと笑った。
「だーくりんく。」
「え?」
リンクはパチクリしながらキングブルブリンを見つめた。
「たいりつ、だけガすべてデハない。きょうりょく、できるナラ、すベキ。」
何かを暗唱するかのように言ったキングブルブリン。それが誰の言葉かを考えて、リンクは驚愕した。
「そんな、こと、を、ダークが……。」
「それニ。みんなガりんくヲうらんデる、わけジャ、ナイ。」
「え……?」
ポカンとリンクはキングブルブリンを見上げた。
「だいじょうぶ。みかた、いる。だから、やすメ。」
リンクはまた目をしばたかせた。色々考えなければならない気がするが、頭が回らない。どうしようもなく疲れきっていた。キングブルブリンは、慣れない手つきでリンクを撫ではじめた。それがどこか気持ちいい。何となく落ち着いたリンクは、眠りについた。
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“ここは……?”
リンクは起き上がろうとする。しかし、体のあちこちに激痛が走り、身をよじる結果となった。
“!!!??!?!?痛い!!”
何故こんなにも体が痛いのか、そもそも何がどうなっているのか理解出来ず、リンクはその場で転げまわった。
「うごくナ。きずガひろがルゾ。」
誰かの声がした。自分の他に誰かがいたことを知り、リンクは動きを止める。少し目線を上げるが、声の主を見つけられない。荒い息のまま、首を動かす。痛みに顔をしかめつつ、なんとか声の主を見つけた。
「お前、は……!」
そこにいたのはキングブルブリンだった。驚きでリンクは目を丸くする。
「どう、して………。」
キングブルブリンは黙ったままじっとこちらを見つめている。なんだか不思議がっているように感じた。キングブルブリンに口を開く気配はない。リンクは、答えを得られなさそうだと感じ、必死に頭を回転させた。そして、今まで自分がどこにいたかを思い出した。背筋が凍る思いがしながらも、確認しなければと思い、再び口を開く。
「ギラヒム、は……?」
すると、ようやくキングブルブリンは答える気になったらしい。相変わらずリンクを見つめながら、言葉を発した。
「しらナイ。いまごろ、おこっテる、だろうナ。」
「あぁ、滅茶苦茶激怒してたぞ。次会ったら、命はないな。」
キングブルブリンに続けて第三者の声がした。知っている声のはずだが、すぐに誰の声か判断できない。痛いのを我慢しながらそちらに顔を向けると、ダークリンクがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。リンクはダークリンクを見て泣きそうになる。
「ダーク、」
リンクは弱々しい声を発した。だが、その先の言葉はダークリンクに遮られた。
「ホント、しばらく残っていて正解だった。真っ先に疑われたからな。」
面倒臭そうにダークリンクは言う。まるで、大したことではないかのような言い様だったが、リンクにとっては大事だ。青ざめてダークリンクを見る。
「疑われ、」
「俺にはアリバイあるし、お前は自力で逃げたことになってるから、こっちの心配はいらないぞ、お人好し。」
リンクが確認しようとすると、ダークリンクは再び声を被せて説明した。ダークリンクの様子に目をパチクリさせながら、リンクは再び声を発する。
「オレ、は、」
「だがギラヒムの戯言に付き合わされたのには参った。あれではまだ足りなかったのかとか、逃げられるなんて腑甲斐無いとか、魔王に顔向けできないとか……俺に言うなよ。」
やはりダークリンクはリンクを遮って発言した。ダークリンクはすごく嫌そうな顔をしている。だが、リンクにとって今、問題なのはそこではない。ダークリンクの、まるでリンクに何も言わせたくないような様子に、リンクは不安を覚えた。
「聞いて……。」
思わずリンクは懇願した。すると、ダークリンクはすでに歪めていた顔を更に歪めた。
「なんだよ、まだ不安要素があんのか。」
仕方なく、といった具合ではあったが、ようやく発言を許可した。リンクはそのことにホッとしながら、言葉を続ける。
「君達、が、助けて、くれたの……?」
「そうなるんだろーな。」
気だるそうにダークリンクは答えた。
「でも、大丈夫……?オレ、を、助け、て……。」
すると、ダークリンクはため息を吐いた。
「なぁ、話聞いてたか。こっちの心配は無用だっつうてんだろ。」
「だって、ダーク、は、」
「頼むからそれ以上言わないでくれ。」
ダークリンクがピシャリと言った。ビクリと肩を震わせながら、リンクはダークリンクの方をうかがう。ダークリンクは悲痛な顔をしていた。
“どうして……?何がダークをあんなに苦しめてるの……?”
リンクは非常に気になったが、黙れと言われてしまっては何も言うことができない。痺れたように鈍い頭を使って考える。
“オレを助けたから、だろうか……。また魔王軍で、辛いことをされたのかな……。”
そう思っても、今の自分では何をすることもできない。さらに、上手く働かない頭では、良策を思いつけるわけもない。不安に思いながら、ダークリンクを見つめることしかできなかった。その様子を見てか、ダークリンクはため息を吐いた。
「……そんな顔すんなよ。お前が思ってるようなことじゃない。だから、安心しろ。」
ダークリンクの言葉は優しいものだった。しかし、リンクは哀しいと思った。だからリンクは、ダークリンクから視線を外した。
“オレには教えたくないのかな……。そうだよね……オレじゃ力になれないし、頼りにならないから……。”
しばらく沈黙がその場を支配する。
「……………悪かった。」
突然、ダークリンクから謝罪の言葉が聞こえた。リンクは驚いた。痛みも無視し、ダークリンクの方に勢いよく顔を向けた。
「ダーク……?」
「俺はお前の頼みを放棄した。挙句の果てに、お前の目の前で完全否定した。」
「でも、」
「だから!」
リンクの言葉を遮り、ダークリンクはきつめに叫んだ。リンクは黙り込む。それを確認して、ダークリンクは元の調子に戻って続けた。
「悪かった。あれは、俺の落ち度だ。」
リンクは困り果てて視線を彷徨わせた。だが、考えをまとめるより早く、ダークリンクは次の言葉を発した。
「後、俺は、お前に感謝を伝えたい。」
「え……?」
リンクはポカンとダークリンクを見上げた。
「お前は俺を助けてくれた。だから……ありがとう。」
リンクは再び目を見開く。
「ダーク、」
「分かってる。お前は俺に対して、申し訳なかったとかもう無理はしないでくれとか思ってんだろ。そんで、お前の落ち度だとか言って、俺を助けたのは当然のことだなんて言い出すんだろ。ついでに言うと、あれじゃ助けられてないとか思ってんだろ。だが、俺はそんなの聞きたくない。お前は俺を助けてくれた。俺はお前に助けられた。それで十分だ。」
ダークリンクは一気に言ってのけた。そして、ほとんど間を開けずに続ける。
「後、……もう一度俺にチャンスをくれ。」
リンクは疑問符をとばした。
「ダーク……?」
「俺は、お前の……。」
ダークリンクは一度言葉を切った。視線を彷徨わせながら考えこんでいる。しばらくして、ダークリンクは再びリンクに目を向けた。その眼は力強かった。
「俺も、共存に魅力は感じてるんだ。お前に協力、させてくれ。」
ダークリンクの言葉にリンクは非常に驚いた。だが、それと同時に、リンクはとても気不味く感じた。申し訳なさでいっぱいになりながら、リンクは口を開いた。
「そのこと、だけど……。オレ……君達に、とって、悪……仇……。」
思わずダークリンクは息をのんだ。リンクの言葉は、かなり想定外だったらしい。しかし、リンクにはそれに構う余裕はなかった。泣きそうな声で先を続ける。
「共存、なんて……言う、資格……なかった………。」
ダークリンクはリンクを覗き込んだ。
「……そんなこと気にしてんの?」
「だって……事実……。」
リンクはダークリンクの眼を見ていられず、顔を背けた。
「じゃあ諦めるか。」
ダークリンクの声が冷たく感じる。リンクはビクリと身を震わせた。何も言うことが出来ない。あれだけのことを頼んで辛い目に合わせておきながら、自身は手を引こうとしているのだ。だから、ダークリンクを見ることも出来なかった。
「このまま両軍が衝突するのを黙って見てるか。」
再び聞こえたダークリンクの言葉に、思わずリンクは顔を上げた。
「衝突……?」
困惑した声でリンクは繰り返した。ダークリンクは頷いた。
「するぞ。近いうちにな。」
淡々と述べたダークリンクに、リンクはゾッとした。
「そん、な……。オレ、今まで、ずっと、正しい、と、思ってた。だけど……、今までの、オレ、を、恨む、よ……。本当……こんな、ことに、なる、なら……。どう、したら、いい、の、かな……。どう、したら……。」
自分を失い、訳が分からない。自分はどうしたらいいのか、どうしたいのか、リンクは見失っていた。
「……少し休めよ。」
ダークリンクは静かに離れていった。リンクはそれをぼんやり見ていたが、起き上がろうとした。だが、体が思うように動かない。水の中で溺れているみたいだった。
「やめロ。くるしい、ダケ。」
キングブルブリンの制止の声は聞こえたが、構ってなどいられない。リンクはもがく。何が正しいとか、どうするべきかとか、何も分からなかったが、両軍の衝突だけは許せなかった。見かねたらしいキングブルブリンは、とうとうリンクを押さえつけた。
「離、して……!止めな、きゃ。オレ、が……!」
リンクは悲痛な声で叫ぶ。叫んではいるが、弱り切っているため、大した音量は出なかった。キングブルブリンは、押さえつける手に更に力を入れた。
「いま、いっテモ、なにモできナイ。すぐ、つかまル。」
キングブルブリンの力は強く、リンクは身動きできなくなってしまった。仕方なく、抵抗を諦める。怯えた目を、キングブルブリンに向けた。
「……君は、オレ、を、恨ん、で、ないの?」
「おれハおまえヲみとめタ。それダケ。」
リンクはそれで納得できなかった。表情を歪めて反論しようとする。
「だけど……。」
だが、その後の言葉が続かない。すると、キングブルブリンが口を開いた。
「あのときハ、たたかう、ひつようだっタ。でも、いまハちがう。あいつノいうとおり。」
「あいつ……?」
眉を顰めてリンクは聞く。すると、キングブルブリンはニヤリと笑った。
「だーくりんく。」
「え?」
リンクはパチクリしながらキングブルブリンを見つめた。
「たいりつ、だけガすべてデハない。きょうりょく、できるナラ、すベキ。」
何かを暗唱するかのように言ったキングブルブリン。それが誰の言葉かを考えて、リンクは驚愕した。
「そんな、こと、を、ダークが……。」
「それニ。みんなガりんくヲうらんデる、わけジャ、ナイ。」
「え……?」
ポカンとリンクはキングブルブリンを見上げた。
「だいじょうぶ。みかた、いる。だから、やすメ。」
リンクはまた目をしばたかせた。色々考えなければならない気がするが、頭が回らない。どうしようもなく疲れきっていた。キングブルブリンは、慣れない手つきでリンクを撫ではじめた。それがどこか気持ちいい。何となく落ち着いたリンクは、眠りについた。
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