名字呼びが多め。
3.言葉の真意は
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勉強会の後より光希と玄弥はお互いに話しをする機会が格段に増えた。
席が近いのもあるが、2人ともクラスに友人がいるわけではないので、休み時間や昼休みなど自然と一緒にいる。
(別に俺は気にしないけど…… 篠藤は大丈夫なのか?)
特段話しをする仲でも無かった2人が急に一緒にいる機会が増えた為に、クラス内では2人を好機の目で見る者が増えた。
少し勇気のある男子生徒が「もしかして2人って付き合ってたりする?」と玄弥に聞いてきたことがあった。その時は少し睨んでやったので、玄弥の前から急いで逃げた男子生徒の質問に対する回答は特にしていない。
学年一の才女と、近寄り難い凶悪な見た目の男。
あべこべの2人は非常に目立っていた。
「なぁ…… 篠藤は良いのかよ?俺といるといろいろ言われるけどよ」
休み時間に玄弥は聞いてみたことがある。
「不死川君こそ、私と一緒だといろいろ言われてるけど大丈夫?私は平気だけど不死川君が気にしてるかなって思ってた」
「俺は、別に」
そういうのには慣れている。
「なら、言わせておけば良いよね」
窓の外から教室へと視線を向けた光希は何だか楽しそうだった。
2人を見ていた何人かはとっさに顔をそらした。
「いっそのこと、手を繋いだりしたら周りの反応が面白いと思う。やってみる?」
「バ……やらねぇよ!」
なんだつまらないと再び窓の外に顔を向けた光希はやはり楽しそうだった。
「篠藤って好戦的なんだな」
「え!?そうかな!?それって誉めてないよね?私、そんな感じかな?可愛くないよね?ちょっと……ショックだなぁ」
ぶつぶつと1人で慌てる光希は何だかやっぱり面白くて玄弥はぷっと笑った。
「今、笑った?不死川君は……見た目によらず可愛い笑い方するよね」
「可愛い?俺が?篠藤の目はどうなってんだ?どうかしてるぜ。病院行っとけよ」
人から何と言われようと、一緒に会話をしている時間は2人にとって居心地の良いものだった。
(クラスに話し相手がいるってのは楽しいもんだな……)
・・・
この日の昼休みも玄弥と光希は一緒にいた。
屋上ではなく、ベランダのような作りの屋根のある場所で、外の空気を2人は浴びていた。
「不死川君って本当に少食なんだね」
おにぎり1つと野菜ジュースの紙パックで昼食を済ませている玄弥に光希は言った。
光希は手作りの弁当を持って来ている。母が毎朝作ってくれるのだという。
「身長もあるのに、すごく燃費の良い体なんだね。羨ましいなぁ」
「そうか?そう言えば、1、2食くらい抜いても平気だな。腹が減らない」
「良いなぁ……ダイエットとか……食べなくてもへっちゃらそうだね。羨ましいなぁ」
そう言って光希は自分のお腹をさすった。別に太っているわけでもないだろうに、年頃だから気にしているのだろうか。
「……ダイエット中か?」
「うーん、まぁ気にしてるというか……」
光希は玄弥の顔をじっと見つめた。
何かを言いたそうな、観察するような、こちらを試すような、何とも言えない不思議な表情をしている。
しばらくの間を置いてから、口を開いた。
「不死川君は痩せてる子が好きなんでしょ?」
え、何で急にそんな話しに?玄弥は突然の光希からの問いに顔が赤くなった。と同時に体ごとそっぽを向いたので、光希が今、どんな表情をしているのかはわからない。
「痩せてる子が好き……なんだよね?」
光希はもう一度聞いた。
その決めつけは一体何だ。そんな話しは炭治郎ともした事がない……と思う。なぜ急にそんなことを聞いてくるのか。
自分が好きな人は……
「痩せてるから、太ってるから好きとか嫌いとかじゃねぇ!……好きになったヤツが好きだから見た目は関係ない」
「そっか……」
2人はそのまま無言だった。
この場所は2人以外に誰もおらず、校舎からの声も聞こえない。ただ、雀が戯れる鳴き声だけは聞こえている。
「……誰にも言わないで欲しいんだけど」
沈黙を破ったのは光希の方だった。
風が光希の髪を撫でている。
「私、中二の時不死川君のこと好きだったんだぁ」
玄弥は咄嗟に振り向くと、光希は急いで食べ終えた弁当を片付けていた。
「あ、いけない。図書室に行きたかったんだ。ごめんね。先に行くね」
そう言うと、光希は慌ててその場を後にした。
「……それって……」
1人その場に残された玄弥は突然の告白に戸惑い、混乱した。
雀は玄弥を嘲笑うように、けたたましく鳴いていた。