6.再び
▼
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
道中の揺れる馬車の中で、ふつふつと考えていた。
これは自分が悪いのだと己を責めた。全ては迎えに行くのが遅くなったからだ。
気持ちが急いてしまい、目の前の事ばかり追いかけていた。
行くのが少しばかり遅れ、何人もの人が悲しみ泣くのを見て来た。家族。親と兄弟と、友人と、あるいは恋人と別れるのはその身を引き裂かれるように辛いことだ。
そんな人間をもう見たくない。自分がより多く、今までよりもさらに素早く動かなければ、守れる者も守れない。
しかし、自分自身についてはどうだったか。
葉子のことは常に頭の片隅に置いてあったはずだ。
幼い頃に結んだ誓いは決して忘れたことはない。それを目標に、厳しい鍛錬にも耐えてきた。そして柱になった。
葉子には、葉子には自分はどう映っただろうか。
初めて会った時と同じように、無垢な目を向けられ、言葉が出なかった。あの時の少女は美しく成長し、目の前に現れた。
この人を一生をかけて守るのだと思った。命がある限り。
自分が任務に奔走していた時に、あろうことか鬼殺隊士が葉子に迷惑をかけたという。
宇髄に隊士の名を聞いても「名前まではわかんねぇよ。名前を知ってどうすんだ」と言われてしまった。
確かに自分でもどうしたいのかわからなかった。ただ、斬り捨てねばならないとその時はとっさに思った。葉子に仇なすものを俺は絶対に許さない。
なぜ、早くに迎えに来なかったのかと怒るだろうか。呆れられるだろうか。
なぜ、葉子と任務とを両方とることができなかったのか。
何と不甲斐ないーー
「お客さん。ここから先は道が舗装されてないから馬車では進めませんよ」
馬を操る御者が、ゆっくりと馬の歩を止めた。
「かたじけない!ここからは走るとするか!」
御者に金を渡し、地面に降り立った杏寿郎は大きく両腕を伸ばし、腰に手を当て右に左にと上体を傾けた。軽い準備運動。
「走る……?まぁ、この辺りは人気がないから山賊とかに気を付けて下さいよ。昔はよく出てたみたいですからね」
「山賊など恐るるに足らず!」
「……はぁ、まぁ気を付けて下さいよ」
「うむ!世話になった!」
そう言うと、煉獄杏寿郎は疾風のような速さでその場を後にした。
「あらぁ……お客さん、とんでもなく足が速いな。もう米粒くらいの大きさだね」
葉子の待つ家までもう少し。