翌朝の
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朝になった。すぐ側に人の気配がする。それはぴったりと寄り添っているようで、触れているところが温かい。葉子は心地良いまどろみの中で昨晩の事を思い出していた。
(そのまま寝ちゃったんだ……)
信じられない感覚が襲ったかと思ったら、そのまま疲れて眠ってしまったらしい。初めてのことに戸惑いもあったけれど、愛する人と身も心も結ばれるのはこんなにも幸福なことなのだと感じた。じんわりと幸せが心の内から込み上げて来る。
(それにしても何か……変な感じがする)
自分の下腹部にまだ異物が入っているような。押し開げられたような何とも言えない鈍い感覚が残っていた。自分は純潔ではなくなった。だが、初めての相手が愛する夫なのだからそれはむしろ喜ばしいことのように思えた。
(幸せ……)
思わず顔が綻んでしまい、誰に見られているわけでもないが葉子は布団を顔まで引き上げた。自分が布団の中に裸でいることに気付いていたが浴衣が掛けられている。先に眠りについた自分に掛けてくれたのだろうか。優しい気遣いにまた心がほわんと温かくなる。
葉子は横で寝ている杏寿郎にさらに身を寄せ、愛する夫の寝顔を見ようと布団から顔を出し、少し首を傾け顔を覗いた。
緋色の瞳と目が合った。
「お、起きてたんですか!?」
「朝だからな!」
てっきり寝ていると思っていたので驚いた。くっつき過ぎたと思った葉子は少し体を離そうと腰を引くと、腕を体に回されて動けなくなった。
「離れなくても良いだろう」
「いえ……でも」
二人とも浴衣は体に掛けているとはいえ、裸なのだ。昨夜のことが思い出され、思わず赤面する。
「笑っていたな。何を思い出していたのだ?」
杏寿郎は葉子の頭に顔を埋めながら尋ねた。声が頭を通して直接体に響く。ふわりと不思議な色の髪の毛が顔に掛かり、少しくすぐったい。葉子の体に回されている手は指で背中をとんとんと叩いていた。子どもをあやすように。
葉子はもう一度体から少し離れようと身を引くがやはり離す気は無いらしく、逆に引き寄せられさらに体は密着するようになってしまった。葉子は観念して、杏寿郎が気の済むまでこのままでいようと思った。
「……何を思い出していたのだ?」
杏寿郎は頭に埋めていた顔を離し、今度は耳元で囁いた。
とんとんと背中を叩いていたはずの手はいつのまにか背中、腰から尻へと稜線をなぞり腹の辺りに来ていた。ぞくりと皮膚が粟立つ。
「昨夜のことか?」
葉子はそう問われ、昨夜のことを思い出し赤面した。体の芯がうずくのを感じる。朝からこんなことを想像する自分がはしたなく感じ、布団を引き上げ顔まで覆った。
しかし、その布団もすぐに杏寿郎によって元の位置まで引き下げられてしまった。
「どうだった?……昨夜は?」
杏寿郎が悪戯っぽい目でそう赤裸々に聞いてくるものだから、葉子は思わず顔を背けた。
「……そういうことは言葉にしないものですっ!」
くつくつと小さく笑い声が聞こえ、
「冗談だ。悪かった」
杏寿郎がそう言うと、布団が覆い被さって来て、布団ごと大きく抱きしめられた。少し苦しい。
「俺は続きがしたいが! 昨日の今日だ! 家の片付けもあるしな。我慢しよう」
もぞもぞと布団から顔を出すと、既に浴衣の帯を結んでいる途中らしい杏寿郎のにこやかな顔が見えた。満面の笑みだ。
葉子も布団の中で浴衣をまとい、布団から出ると側に置いてある帯を手繰り寄せて急いで結んだ。ふうと一つ息をついて、布団の上でかしこまる。
「改めてよろしくお願い致します」
三つ指をついてお辞儀をした。
葉子にならい杏寿郎もすっと座り正座をする。
「こちらこそ! 煉獄杏寿郎の妻として、煉獄葉子として今日からよろしく頼む!」
そして葉子の手をとると、ぎゅっと力強く握った。
今日から新しい日が始まる──
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