記憶を取り戻してから5年ほど経った。とりあえず、言いたいことを言おうと思う。
「ここ、ワンパンマンの世界じゃん……」
　いや、ね？怪人騒ぎは二、三年前から知ってたのよ。それに関してはへーそうなんだ、ワンパンマンっぽいな〜ぐらいの気持ちだったの。
　だって怪人騒ぎとかワンパンマンに限らずありそうじゃん？トリップ系の漫画ではよくある話かなぁと思ってたの。
　でもさ、最近気がついたことがあってさ。
「お兄ちゃん……」
「どうした、またご飯こぼしたか？」
「ジュース……」
　今俺に話しかけてきた弟いるじゃん。可愛くいじけてて愛らしい雰囲気の六歳の男の子なんだけどさ。こいつ恐らく、キングなんだよね。
「あの、人類最強（笑）のキング……」
「？お兄ちゃん、どうしたの」
「なんでもないよ、お兄ちゃん時々お空と会話しちゃうんだ」
「お空とお話できるの？すごいね！」
　ぐぅっ可愛いっ！俺は弟のこぼしたジュースを拭き、コップを台所に置く。こんなにも可愛いのになぜ俺がキングだと確信したかというと……顔と髪や目の色、そして何より
「？」
　今、はにゃってしてる顔が年々キングによってきてる。いや、でもまだまだ可愛いし、六歳の愛らしさを内包している笑顔や怒った時のふくれっ面……キングとはかけ離れてる。けど流石にさ、親の顔で分かってくるのよ。
「マム、今日のご飯ってなに？」
「今日？ハンバーグよ」
「マジかやった！」
　ママはまじで美人。金髪で蒼眼でそして身長が高い、その上顔もいい家庭的なママだ。見た目はほぼモデル。もうやばいくらい理想的な人で、キングと俺の髪や瞳の色はこのひと譲りなんだろうと察することができる。
「ただいま」
「あら〜おかえりなさいパパ♡」
「おかえりだでぃ」
「おかえりダディ」
　問題はパパなのだ。
　本当に言葉に出来ないくらい人相が悪い。いや、ヤクザの頭だと言われたら納得のいく顔立ちなんだけど、家族じゃなかったら子供が泣く顔つきをしてる。もうまじ怖い。
　そしてその顔が、キングに似ているのだ。……キングの方が顔が整ってるけどそれはきっとママのおかげだろう。
「ただいまお前たち、ただいまダーリン」
「ん、ハニーったら今日はミントの味がする唇なのね」
「さっきまでガムを食べてたよ」
……この夫婦のいちゃラブもなかなかだ。ダーリンハニー呼びをする日本在住の結婚八年目とか聞いたことねぇよ。砂糖を吐きそう。俺はかわいい弟を持ち上げてリビングの椅子に座った。早く飯を食べたい。
「やーんもう」
「ふふ、今日も美味しそうなご飯だね」
絵面がえぐいし、腹は減るし、早く切り上げろバカップル。