思考を重ねていると、たくさんの新入生がいた広間が急に騒がしくなりベルベットが振り向けば辺り一面を青い炎が覆っていた


「このままでは学園が火の海です！
誰かあの狸を捕まえてください！」

「…今のうちにここから出られそうね」


混乱に乗じて鏡の間から出ようとしたベルベットだったが、グリムはすかさず火を吹いて行く先を塞いだ


「待つんだゾ！
逃げるならその服を置いていけなんだゾ！」

「あんたもしつこいわね
魔物ならあたしが喰らうわよ」

「ふ、ふな…？」


ベルベットは業魔手（ごうましゅ）である左手を前に構えると、グリムはただならぬ気配を感じたのか一歩後ずさる


「……服なんてどうでもいいわ」


乱雑にローブを脱いでグリムへと放り投げれば小さい体で受け止めた
すると銀髪と赤髪の男達から逃げるように走っていく
ベルベットは今度こそ、と扉は向かって歩きだした


「はぁ、やっぱりこっちの方が身軽でいいわ」


いつも通りのボロボロの布にも等しいもので在り合わせた服装になるとどこからともなく女性にしては野太い悲鳴が響き渡った


「あんたなんっっっっっって格好してるのよ！」


大声とともに金髪を編み込みハーフアップにして紫のグラデーションがよく似合うヴィルが怒り狂ったような顔でベルベットに近づいてき、自身のローブを被せた


「服を着なさい！！」

「き、着てるじゃない…」


突然の服のダメ出しにベルベットはたじろぐ


「そんな腹も足も出して！なんなら下乳まで見えてるのは服着てるとは言えないわよ！痴女よ！」

「ど、ど、どこ見てるのよ！」


思わぬ言葉にベルベットに顔が熱くなる


「服もボロぎぬ、化粧もなし！髪もてきとうレディとしてあり得ないわ！！

こっちに来なさい！！」

「あ、あたしは災禍の顕主よっ！？」

「黙らっしゃい！災禍だかなんだかしらないけどあんたが災禍の顕主なら私は女王様よ！」

「………そ、そう…」


あまりの剣幕にベルベットは何も言えなくなってしまった


「服はとにかくローブで隠すとして、髪と化粧くらいはどうにかするわよ！」


広間の一角ではグリムがリドルとアズールに追いかけ回され、また一角ではヴィルに捕まったベルベットがメイクアップを施されるという謎の空間が生み出されていた


「なんなんだこれは…」


その光景を見ていたレオナはボソリと呟いたがそれは誰にも届くことはなかった