意気自如
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セイが待っていると50m走を終えた生徒達が続々とやってくる
「お、来たか
個性使うと中学の頃と違って気持ちがいいだろ」
「はい!
個性の最大限を出せる!まさしく最高峰だと思います!」
和やかに声をかければ一番に入ってきた飯田がビシッと背筋を伸ばして答えた
「おーおー、気張ってんねぇ
んじゃこれ使って握力測っちゃって」
「はい!!」
「終わったやつは次立ち幅跳びな」
そう告げると握力測定をしている生徒の方からどよめきが起きる
「540キロて!!あんたゴリラ!?
タコか!!」
「タコって、エロいよね……」
セイも目を向ければ中心に障子がいた
「ふむ、540キロちゃ凄いじゃないの
緑谷はと、56ね
入試でアレぶっ飛ばしてたわりにはそんなに握力ないのね」
「はい…
あの、神落先生…相澤先生が言っていたのは本当なんですか?」
中学よりも身体能力の成績が伸びたことをほとんどの生徒が喜んでいる中、緑谷一人だけは曇った顔をしていた
「最下位は除籍ってやつ?
そうさなぁ、前に1クラス丸ごと除籍にしたこともあるらしいし今更一人除籍にしたぐらい何ともねぇわなはっはっはっ」
セイがカラカラと笑えばますます緑谷の表情は曇っていった
「そうですか…」
「まぁそう心配しなさんな
相澤ちゃんに見込み有りと思わせればいいんだよ
見込みさえあれば誰も見捨てない、相澤ちゃんはそんな男だ」
「見込み…」
緑谷は考え込むようにブツブツと何か言葉を発しながら次の種目のために歩いていった
続けて第5種目 ボール投げ
「セイ!!」
麗日が個性を使って投げたボールは重力を無視して空の彼方へと消えていった
相澤が手に持っていた画面には∞の文字
「∞!!?
すげぇ!!∞が出たぞー!!!」
「おお、こりゃ期待値高いね」
セイも感嘆の声をあげ皆が興奮する中、暗い表情のまま出てきたのは緑谷だった
「緑谷くんはこのままだとマズいぞ…?」
「ったりめーだ
無個性のザコだぞ!」
「無個性!?
彼が入試時に何を成したのか知らんのか!?」
「は?」
飯田の心配をよそに爆豪は出来なくて当然と言わんばかりに吐き捨てる
そして緑谷が個性を使い放ったボールの距離は46mだった
「な…今確かに使おうって…」
「"個性"を消した」
個性を使ったはずの結果に驚く緑谷に相澤は呆れたと言わんばかりの声で告げた
「つくづくあの入試は…合理性に欠くよ
おまえのような奴も入学できてしまう」
相澤が個性を発動させたことによって捕縛武器が宙を漂い、トレードマークともいえるゴーグルが現れた
「消した…!!
あのゴーグル…そうか……!
視ただけで人の"個性"を抹消する"個性"!!
抹消ヒーロー、イレイザー・ヘッド!!!」
気だるげな雰囲気を持った担任の正体に生徒達の間でざわめきが起きる
「見たとこ…"個性"を制御できないんだろ?
また行動不能になって、誰かに救けてもらうつもりだったか?」
「そっ、そんなつもりじゃ…!」
相澤は捕縛布を使って緑谷を引き寄せる
「どういうつもりでも、周りはそうせざるをえなくなるって話だ
昔、暑苦しいヒーローが大災害から一人で千人以上を救い出すという伝説を創った
同じ蛮勇でも…おまえのは一人を救けて木偶の坊になるだけ
緑谷出久、おまえの"力''じゃヒーローにはなれないよ」
相澤の髪が重力に従い元の姿に戻れば、個性を戻し早くボール投げを済ませるよう告げる
「ヒーロー、か…」
「?」
セイが小さく呟き、目を伏せたことに気がついたのは一番近くに立っていた爆豪だけだった
「見込み、ゼロ……」
緑谷が最後の一投を放つ
全力の踏み込みに相澤もセイも、相澤の指導の甲斐なく右手をボロボロにさせるものだと思った
ボールは705.3mの記録を出した
だが、折れているのは右手の人差し指のみ
「先生……!まだ……動けます」
涙目で震える手を折れた人差し指ごと握りしめ、必死の笑みを緑谷は相澤へと向けた
「こいつ……!」
「見込みあり、ってか…」
笑みを向けられた相澤も不敵な笑みで答え
セイは口元を綻ばせた