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人見知り猫ちゃんの手懐け方

〈そう言うけど〉




孤爪side






部活がなくていつもより早めの帰宅。


部屋着に着替えた後、すぐにベッドにうつ伏せになると手に持っているゲーム機を操作する。



帰宅しながらもサブモンスターを倒してきたからか、結構レベルも上がって敵も強くなってきてる





研磨「……あ。」





敵のHP残り1000で味方のHP600しかない。
次のターンでおれだからそれまで持ってくれたら3連続攻撃で勝てるかも…




部屋には戦闘のBGMとカチカチと機会を操作する音が響く




ゲームの初見殺しって珍しくないよね

でも何回か見たから、もうこの攻撃パターンは分かった。




敵の攻撃が終わって、味方のHPは250

こっちのターンに来たから終わりだね

おれの勝ち。




これで次のステージに行ける

今日はどこまで進められるかな


クリアしちゃったら、何をしよう

つまんなくなっちゃうのは嫌だな…





研磨「……」




この階段を登る音

…親のじゃない。



でも、一々気にするのは面倒臭いからドアには目を向けない


どうせ、今日も面白くない話をしに来るだけなんだし…。





足音がドアの前で止まるとノックも無しに開かれる


いつもの事だから、おれの目にはゲームの画面だけしか移していない





黒尾「よー、研磨」




何度も何度も聞いた低音
そしておれを呼ぶ声




研磨「……」


黒尾「研磨ー」


研磨「……」


黒尾「まーた、ゲームかよ」





おれが家でゲームをしてる時、あまり返事しないの知ってんじゃん。


クロは毎回何が目的で此処に来てるのか分からないけど部活がない日におれがする事なんてとっくに理解済みのくせに。





黒尾「なぁ…研磨」


研磨「…うるさい」







しつこく話しかけて来て、かまちょなのは変わらない



でもたまに、クロは変になる。



普段よりワントーン低い声でおれに近付いたらそれは始まる





黒尾「研磨ってさ、指綺麗だよな」


研磨「……何。」


黒尾「女みてーに細いし」


研磨「……。」





クロは当たり前のようにおれに触れる。

さも当然のように。



指が綺麗なんて言うけど、

クロがバレーをおれに教えたから。

セッターはボールを沢山触って指をよく使うって言うから。






研磨「…何すんの」


黒尾「何って見てわかんない?」


研磨「いや、そうじゃ…なくて。」


黒尾「こんなの俺達じゃ普通だろ」





"普通"



おれの指を口に咥える事も

身体を触る事も

服を勝手に捲る事も



クロは普通だと言った。

これが、クロの言う"普通"ならおれの"普通"はなんなの。






研磨「…何してるのってば、クロ。」


黒尾「流石にこれからする事は分かってんでしょ。」


研磨「だっ、…て…」


黒尾「研磨はしたくねぇの?」


研磨「お、れ…おとこだよ…?」






ギシッとベッドが軋む



いつの間にかゲーム画面にはGAME OVERの文字


時間内に敵ボスに攻撃しなかったから相手のターンになっちゃったんだ。






黒尾「だから何だよ。そんなの関係ねーよ」


研磨「…かんけ、い…ない?」





クロが、憐れむような顔でおれを見るから

クロが、"普通"だって言うから

クロが正しいと言うような顔で言うから




服に伸びる手を止められなかった。





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