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オクタヴィネル寮の1年生が3章のストーリーにめちゃくちゃ干渉する話

 長い尾ひれに捕らわれないように、ルースは必死に泳いだ。時々、潮の流れや魔法の反動を利用して体をねじったり、スピードに緩急をつけたりもした。エースたちが捕まりそうになる度に、フロイドの注意を逸らし、ジェイドの魔法を防いで、それはそれは善戦した。
 
 しかし、一瞬の油断でルースはとうとうフロイドに捕まってしまった。
「あんなに一生懸命がんばってたのに、残念だったねぇ!」
「落ち込むことはありません、僕たち相手に頑張った方だと思いますよ。」
 フロイドは愉快そうに笑っている。ジェイドもそばに来てクスクス笑っていた。
「あー、追いかけっこもいい加減飽きてきた。」
「あと少しですよ、楽しみましょう。――ところでルースさん。昨日の話、考えてくれましたか?」
「なに、ジェイド?こいつとなんかあったの?」
 ジェイドとフロイドは写真そっちのけでおしゃべりを始めた。――いまここで自分たちがだべっていても、どうせイソギンチャクたちに勝ち目はあるまい。あいつらはおバカだから、捕らわれたルースを見捨てて学園に逃げ帰るなんて合理的なことはきっとできない。現にみんな動きを止めて、固唾を飲んで見守っている。
 
「モストロ・ラウンジで働いてみないかとお声をかけたんです。まだお返事はいただけてないのですが……」
「へぇ。で、どうなの?」
 じわじわと締める力を強めながら、フロイドはルースに迫った。誰かが心配そうにルースの名前を叫ぶ。
 ルースは苦しそうにもがきながらも、不敵に笑ってこう言い放った。
「そうだな……僕らがこの勝負に勝ったら、考えてやってもいい!」
 
 ギリギリと容赦なく締め上げられて、ルースが悲鳴を上げたその時だった。
 一瞬、光がエースたちを包んだ。

「なんだ!?今の光は?」
「……ん?あっ!デュース、お前頭のイソギンチャクが消えてんぞ!」
「ハッ、本当だ!」
「オレ様のも、エースのも消えてるんだゾ!やった!レオナたちがやってくれたんだ!」
 イソギンチャクが取れ、エースたちは口々に喜んだ。ジェイドとフロイドは困惑している。ルースを絞める力も弱くなった。
 
 ――昨晩ルースと別れた後、ユウはレオナ・キングスカラーを「オンボロ寮を取り戻すのに協力してくれないなら、毎日部屋の前で朝まで大騒ぎしてやる」と脅してこの作戦に協力させていた。
 ユウたちがリーチ兄弟と追いかけっこをしている間に、レオナたちサバナクロー寮生がモストロ・ラウンジで大暴れ。そしてそれに気を取られているアズールから金庫の鍵を奪い、契約書を外に持ち去って破壊したのだ。
 全体的にかなり強引なやり口に、ジェイドもフロイドも「うわぁ……」とドン引きしていた。
 
 突然、フロイドが「いてっ!」と悲鳴を上げた。ルースがフロイドの注意が逸れた隙を見計らって、こっそり袖口に隠していた安全ピンでフロイドの胴体を刺したのだ。
 突然チクリとやられたフロイドは驚いて拘束を解き、その隙にルースは急いで脱出した。
「はぁ……どうだ、ざまあみろ……!」
 ルースはか細い声で捨て台詞を吐いた。よろよろと泳ぐルースをジャックが受け止める。

「おい、大丈夫か?」
「ありがとう。まだもう少し、いける……」
「バカ、どう見ても大丈夫じゃねぇだろ!」
「聞いておいてそれか……本当に大丈夫だから……」

 撤退しようとしているジェイドとフロイドを、デュースとエースは引き留めるように挑発した。得意魔法も戻ってきて本調子になった元イソギンチャクたちは、反撃する気満々だった。
 ここでこの2人に仕返ししたら、後はアズールに写真を渡せば完全勝利だ。
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