本当に行ってしまうんですか？
「はい、私は夜叉王にのみ仕えていこうと決めていたので。それに、私はこの国の人ではありません。あなたにはあなたの部下や従者がいる。私は、あなたがこれから統治するこの国を見ていくことはできないけれど、信じていますから」

男はため息をつくと、ぽつりと答えた
「また、あなたがこの国に訪れた時に失望されないように頑張っていきますね」

二人は笑顔で別れを言うとそれぞれの道へ向かった

「さて、あの男にバレないうちに魔女の元にいきますか」

取り出したカケラが地面に落ちると魔法陣が現れ風が吹くといつの間にか女性は消えていた




シィィィィィ

そこにはリオンが来るのがわかっていたのか黒い服をきた女性が待っていた


「こんにちは、お願いがあります」

「どんな願いかしら」

「ある男から逃げるために異世界に行きたいんです」


「その願いは今叶えることはできないわ。だから、時が来るまでこの店で働いてもらう」

「（あ、そーゆうのもありなんだ）」

「わかりました、私はリオンと申します。あなたのことはなんとお呼びすれば良いですか？」

「壱原侑子よ、次元の魔女とも呼ばれているわ」

「では侑子さん、時が来るまでよろしくお願いします」

「ふふ、じゃあまずはご飯でも作ってくれるかしら？」

彼女はそう言うと、マルー！モロー！案内してあげて！と二人を呼んでリオンの手を引き店に入った




ご飯できましたよー！と、遠くから聞こえる

侑子は眉を潜めながら呟いた
「たとえ記憶がなくても戻ったその日に絶望してしまわないようにこれからの旅が変えていくと信じているわ」




リオンが侑子のところに来てすでに3年が経っていた
ほとんど侑子さんのお世話だが、ちょっとした手伝いもしている


いつものように洗濯物を片付けていると玄関先が煩くなった
「新しいお客様かな？とりあえずお茶でも用意するか」

侑子さんのところへ行くとまだガヤガヤと煩かった
「リオンー！新しいバイト君よ！」

「はい、お茶。良かったよいい加減私以外にもバイト増やして欲しかったから！あ、私リオン。あなたは？」

「え、四月一日君尋と言います」

「四月一日ね、よろしく！侑子さん飲んだくれでぐうたらだから頑張ってー」

「いきなり呼び捨てかよ！しかも、飲んだくれなのかよ！」

「あははー、四月一日面白すぎー！」

この出会いも必然...




いつものようにある物を弄っていると先月来た四月一日が通った

「リオンさん、何やっているんですか？」

「んー？時計弄り」

「なんで二つあるんすか？」

「ふふ、この店に来る前にね助けてくれた人がいるの。それで、その人達に渡す対価なの」

対価...彼はそう呟いて何か考えていた


「四月一日も侑子さんに何か対価払ったんでしょ？」

「あー！俺の時計！」

彼はまだあーだこーだ騒いでいる

「（その時はいつ来るのだろうか）」


外は晴れ、描きかけだったあの絵を完成させるのにぴったりだと思い部屋に篭っていた。短い間だけど四月一日には色々貰ったその感謝にきっとなるだろうと

彼に会えたことで私自身も成長したなと物思いにふけっているとノックがなり、入室の許可を出した


「侑子さんから伝言で、時が来たと」

「そう、わかったわ。準備をしたら行くわ。それと、これあげるわ」

「え、これ！いいんですか？」

「うん、四月一日には色々貰ったからまた逢える日まで」


やっとその時がきた

あの男に捕まるわけにはいかない。まして、あの男の駒に殺されるわけにも


ー外はいつのまにか雨が降っていたー