尾形side
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100年前愛してやまなかった、しかし
結ばれることのなかったアイツを、やっと見つけた
金曜日、会社の飲み会から帰っていた時だ
たまたま、そう、本当に偶然
次の日が休みということもあり駅から自宅までいつも通る道ではなく、ほんの気まぐれで通ったことのない道を歩いていた
ストリートミュージシャンか、ギターの音と女の歌声が聴こえてきた
近づいてみると
周りには数人が集まり、その歌声を思い思いに聴いているようだった
いつもなら見向きもしないが、なんだかやけに懐かしい声のように感じて、つい足を止めた
そして中心にいる人物を見て
ドクン、と心臓が鳴った
慣れた手つきでギターを弾きながら伏し目がちに歌う女は、俺が探していた女だった
見つけた
その感情にぞわりと背筋がわななき、ジッと女を見つめた
するとちょうど最後の曲が終わったようで、女は目線をあげ、ぺこりと客に礼をした
少し後ろに立っていたせいか
まだ俺には気付かない
早く気付け、
と思ったがまだ客がはけないうえ、がっつくのもどうかと思い近くのベンチへ腰掛けた
数人が立ち去り、よく聴きに来ているのか顔見知りとにこにこと会話を交わし、そいつらが去ったあと、ギターや譜面台を片付けはじめた女にスタスタと近づいた
女はぴたりと動作をやめ、目の前で立ち止まった俺を見上げた
その瞳が俺の姿捉えた瞬間、女の口から発せられた言葉は
やっと見つけたぞ
なんて軽口を叩くつもりだった俺を一瞬で失望の淵に追いやった
「はじめまして。もしかして聴いてくださっていたんですか?」
笑顔ではじめまして、なんて挨拶されたものだから
「あ、あぁ」
と面食らって動揺の声が漏れてしまった
すると女は
「あ、わたし美穂って言います。ここで毎週金曜日に歌ってます」と言いながら、片付けようとしていたスケッチブックを手に取りこちらへ向けた
そこには手書きで名前と、なにかのアドレスが書いてあった
その名前を見て
知ってる、とひとりごちたがそいつには聞こえていないようだ
どうやら、俺が美穂の声や顔、話し方に匂いまでも鮮明に覚えているのに反し、美穂は何一つ俺の事を覚えていない
その事実にガツンと何か固いもので頭を殴られたような感覚に陥った
ジッと何も言わずに見つめる俺に美穂は少し困ったのか、
「えっと…」
と視線を泳がせた
「あぁ、すまない。たまたまこの近くを通ったんだが、耳に残る声だったから聴かせてもらっていたんだ」
前世ではあまり話さない方だったが、今は仕事のおかげか、この場を切り抜ける言葉がするりと出てきた
そう言うと
美穂はパッと笑顔になり
「本当ですか?耳に残るだなんて、すごく嬉しいです」
その屈託のない笑顔は俺の記憶に一番残っているものと全く同じで胸が少し苦しくなった
「ただ最後の方しか聴けなかったんだ」
残念だったが、また聴きにくる、と続けると
少し考えた仕草のあと
「じゃあ、お兄さんのために一曲歌っちゃおうかな」
そう言って美穂はギターを構えなおした
そしてゆっくりとしたテンポで歌い始めたその曲はどうやらオリジナルの失恋ソングらしかった
結ばれることのなかったアイツを、やっと見つけた
金曜日、会社の飲み会から帰っていた時だ
たまたま、そう、本当に偶然
次の日が休みということもあり駅から自宅までいつも通る道ではなく、ほんの気まぐれで通ったことのない道を歩いていた
ストリートミュージシャンか、ギターの音と女の歌声が聴こえてきた
近づいてみると
周りには数人が集まり、その歌声を思い思いに聴いているようだった
いつもなら見向きもしないが、なんだかやけに懐かしい声のように感じて、つい足を止めた
そして中心にいる人物を見て
ドクン、と心臓が鳴った
慣れた手つきでギターを弾きながら伏し目がちに歌う女は、俺が探していた女だった
見つけた
その感情にぞわりと背筋がわななき、ジッと女を見つめた
するとちょうど最後の曲が終わったようで、女は目線をあげ、ぺこりと客に礼をした
少し後ろに立っていたせいか
まだ俺には気付かない
早く気付け、
と思ったがまだ客がはけないうえ、がっつくのもどうかと思い近くのベンチへ腰掛けた
数人が立ち去り、よく聴きに来ているのか顔見知りとにこにこと会話を交わし、そいつらが去ったあと、ギターや譜面台を片付けはじめた女にスタスタと近づいた
女はぴたりと動作をやめ、目の前で立ち止まった俺を見上げた
その瞳が俺の姿捉えた瞬間、女の口から発せられた言葉は
やっと見つけたぞ
なんて軽口を叩くつもりだった俺を一瞬で失望の淵に追いやった
「はじめまして。もしかして聴いてくださっていたんですか?」
笑顔ではじめまして、なんて挨拶されたものだから
「あ、あぁ」
と面食らって動揺の声が漏れてしまった
すると女は
「あ、わたし美穂って言います。ここで毎週金曜日に歌ってます」と言いながら、片付けようとしていたスケッチブックを手に取りこちらへ向けた
そこには手書きで名前と、なにかのアドレスが書いてあった
その名前を見て
知ってる、とひとりごちたがそいつには聞こえていないようだ
どうやら、俺が美穂の声や顔、話し方に匂いまでも鮮明に覚えているのに反し、美穂は何一つ俺の事を覚えていない
その事実にガツンと何か固いもので頭を殴られたような感覚に陥った
ジッと何も言わずに見つめる俺に美穂は少し困ったのか、
「えっと…」
と視線を泳がせた
「あぁ、すまない。たまたまこの近くを通ったんだが、耳に残る声だったから聴かせてもらっていたんだ」
前世ではあまり話さない方だったが、今は仕事のおかげか、この場を切り抜ける言葉がするりと出てきた
そう言うと
美穂はパッと笑顔になり
「本当ですか?耳に残るだなんて、すごく嬉しいです」
その屈託のない笑顔は俺の記憶に一番残っているものと全く同じで胸が少し苦しくなった
「ただ最後の方しか聴けなかったんだ」
残念だったが、また聴きにくる、と続けると
少し考えた仕草のあと
「じゃあ、お兄さんのために一曲歌っちゃおうかな」
そう言って美穂はギターを構えなおした
そしてゆっくりとしたテンポで歌い始めたその曲はどうやらオリジナルの失恋ソングらしかった
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