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気に入らない

ある日を境に鈴は時々なにかとスイッチが入ったかのように明らかに拗ねるようになった、俺は何が原因なのか若干分かってはいたが確証がないのとなにより鈴との壁を感じて頭を抱えていた。

そんなもやもやと鈴との壁を感じていたとある日の夕飯時、今晩ハヤシライスだ。
いただきますの後は無言が続く、スプーンにはもう何も残っていないのにスプーンを噛む鈴はいつもの様にどこか不機嫌そうで何か言いたそうにこちらを見ていた。
もちろんその視線に気づいてはいたが俺から言い出すのはなにか違うなと思い気付かぬふりをしていた。

「ねぇ、蘭くん。お話してもいい?」
ようやくスプーンを口から離した鈴は俺に言葉をなげかけた。鈴、どうしたの?と何も気づいてないふりをして返事をすると不機嫌そうに話を始めた。

「あのね、…俺は気に食わないの。蘭くんのお部屋にいたあのくまさん。こんなこと言っちゃうと蘭くんが傷ついちゃうかもしれないけどね、あのくまさん黄緑色 で…なんか俺みたいだし…俺は一人で寝てるのにその間くまさんと寝てて…俺は…俺は…なんだか蘭くんをあのくまさんに取られたような気がして気に食わないの。」
そう言い切ると鈴はハッとしてごめんなさいと一言いい残りを食べきるとそさくさと部屋へと戻っていった。
…俺の部屋に入ってきた日から薄々は気づいていたが…やっぱり言わなきゃな。ハヤシライスを食べ終え追うように部屋へ向かった。


「すず、入るよ?」
コンコンとノックするも返事は返ってこなかったので部屋に入った。思った通り布団にくるまっていたのでベットに腰かけて話を始めた。
「鈴、ごめんね。」
「…………。」
「鈴、俺ね。秘密にしてたことがあるんだよね。」
「……ほかにもなにかあるの?」
「ある、笑わない?」
「…笑わない」
「ありがとう、それじゃあ話すね。
……俺、寂しがり屋なんだよね。昔からぬいぐるみをギュッてしないと寝れなくて、本当は鈴と毎晩一緒に寝たいんだけどそれも迷惑になっちゃうから言えなくて…気がついたらぬいぐるみ…買ってた…でも鈴の前ではかっこいい頼れる俺で居たかったんだ、だから部屋に入らないでって言ってたのはそのせい。…ごめん。」

ひとしきり話終わると鈴は起き上がり抱きついてきた。強く強く。
「どしたのすず?」
「勝手に拗ねちゃってごめんなさいのぎゅっ……蘭くんも気にせずに俺に甘えてきていいんだからね?嫌がらないかななんて思わないでよ、俺は…蘭くんのこと大好きなんだから…そんなこと思わない…もん…」
そう言いながらこちらの方を見てぷくーと頬を膨らませていた。かわいいななんていいながら膨らませた頬をつつき逆側の手で抱き返した。
「ありがとう、鈴、そのごめんね……」
「俺こそごめんなさい…でも蘭くんの新しい1面が見れたからうれしいよ!」
「恥ずかしいってぇ……」
そういいながら俺は顔を隠した、鈴のことは見えないけれどきっとか笑っているのだろう。

「ねぇ蘭くん、今日、一緒に寝よっか」
「い、いいの?」
「もちろん!ここで一緒に寝よ?」
「鈴がそう言うなら仕方ないなぁ〜」
えへへ〜と照れくさそうに鈴は照れながら俺の事を押し倒してきた。
「う、え?す…ず?」
彼の顔はさっきとは違い真剣であった
「蘭くん、心配しないで、俺は蘭くんのこと絶対嫌いにならないよ?だって大好きなんだもん、でももし不安になったら俺になんでも聞いてよ。抱え込まずにさ…」と言い唇に軽くキスをした。
何が起こったのかわからず俺はぽけっとしていた気がつけば鈴の布団の中で隣を向けば鈴の顔が近くにあった。唇が当たってしまいそうな程に。鈴はニッコリ微笑んで「もう寝ちゃおっか蘭くん」と言った。
「そうだね…あのね鈴、……ぎゅってして寝てもいい?」
「いいよ、おいで?」
鈴が両手を少し広げると俺はそこに飛び込むように抱きついた。ぬいぐるみとは比にならないほどに安心する。
「おやすみなさい、鈴、愛してる」
「ありがと、蘭くん。おやすみなさい、蘭くん俺も大好きだよ」

いつもより安心したのかすぐに眠りに落ちた。
おやすみなさい。またあした。
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