モブサイコ100
天井やぶりを除霊した日の夜。
影山家の晩御飯はオムライスだった。
モブがオムライスを食べていると、急にモブのスプーンが捻じれてしまった。どうやら無意識に力を使ってしまったらしい。
弟の影山律がそのスプーンを直す。いつもの光景だった。
次の日の事。
霊幻とモブと三人で、バスでとある心霊スポットに行っていた。
骨井戸トンネルという心霊スポットで、閉鎖されて何年もたつらしいが未だに恐ろしい噂が絶えない。肝試しに来た何人もの人たちが行方不明になったという話が何件も起こっている。そして極めつけは、三十年以上前の集団走行の事故で一度に二十人以上がなくなったらしい。つまりその場所は、それほど恐ろしいものがあるということなのだ。
一時間の走行の後、例のトンネルのバス停についた。不気味な風がまるでいざなうかのようにトンネルから吹いていた。
「お前ら、不測の事態に備えて集中しておけよ」
「はい」
「分かりました」
そして、骨井戸トンネルと書かれたトンネルの前に足を止めた。
「どれ、いっちょ見てやるか。霊能界の新星、この霊幻新隆がきれいに掃除してやろう、お前らいくぞっ」
と、霊幻がひとりでトンネルの中に入っていたが十秒ほどで走って出てきた。
「おいそこの弟子共。翡翠も何やってんだ、お前らも来るんだよ!
日が暮れたら厄介だ!おい聞いてんのか?」
モブと翡翠が何をやっていたかというと、二人で仲良くアリの巣を観察していた。
「ああ、いや。師匠様が余裕そうに見えたので、茂夫君とここで待っていようかと」
「バカっ、誰がじょr……。
まあ一人でも余裕だけども、修行だと思ってついてこい」
「師匠はさすがですね」
二人についてくるよう促し、再びトンネルに足を踏み入れようとしたとき、モブが霊幻に言った。
「奥の方から強い霊気がピリピリ感じます」
「そりゃそうだろうな。何人もの行方不明者を出しているんだ。恐ろしいものは間違いなくいる」
「いや、心霊スポットって大抵デマ情報が多いものです。本物だということは間違いないでしょう、もしあの中のものを怒らせてしまったら…」
翡翠の言葉がいったん途切れた、霊幻がオウム返しに聞いた。
「怒らせてしまったら?」
「無事で済むことはないでしょう」
翡翠の言葉で、一瞬びくりとした霊幻だが、冷静を務めた
「当たり前だ。だから、俺たちで除霊すんだろ?」
霊幻が前で、モブと翡翠が後ろでサポートすることになった。
「師匠様、霊の気配は?」
「え、ああ今日は鼻が詰まってるからな~」
「鼻詰まりは関係あるんですか、師匠」
「俺くらいになるとな、翡翠たちは何かを感じるか?」
ふと、二人の足が止まった。
「感じるというものではないですよ」
まるで警戒しているように翡翠が言った。
「17、18……。いやそれ以上いますね、すぐ近くに。あっ」
モブが何かに気づいたような声で霊幻はびくっと身体を固くした。当然だ、霊幻は何も見えないどころか、霊に対処する術すらも持っていないのだから。そしてモブが、最も恐れていたことを口にした。
「完全に囲まれましたね。襲ってきますよ」
しばらく黙っていた霊幻だが。
「よし、ザコは任せた、いけっ、翡翠!モブ!」
霊幻の指示と同時に、二人は一斉に攻撃を始めた。霊のうめき声がトンネル内で反響している。
二人が攻撃を始めるのを見届けると、霊幻は奥の方へ歩き出した。しかも速足で。
「いや~そんなに激しい音がするほどか~。もしいパン人だったら危なかったのかな?あれだけで全滅だろ、今回も楽s!?」
ぶつかった感触がした。
(目の前に誰かいる?!)
すぐさま携帯電話を取り出し、液晶画面で目の前を照らした。
そこには、スキンヘッドの男が仁王立ちの男が立っていた。
「んだよ、悪役レスラーか。悪霊かと思ってびっくりしただろ。こんなとこで練習してんじゃねえよ」
いろいろといちゃもんをつける霊幻に、スキンヘッドは何とも言えないような顔をした。
しかし入口の方向から。
「師匠様、奥の方に霊の長らしき奴がいるので気を付けてください」
翡翠の言葉で察した。目の前にいるのが悪霊だということに。スキンヘッドの悪霊、総長が不敵な笑みを浮かべている。
「……ふっ、悪霊のボス猿か!プロレスラーの振りをしようが、この霊幻の目はごまかせんぞ!」
言われるまで絶対気づいていなかっただろう霊幻の態度の急変で、反応に困った様子だったが気を取り直したように、自分の名を名乗った。
なんでも、集団バイクの走行中に戦闘がバナナの皮を踏んでしまって全滅してしまった暴走族の頭らしい。
「このトンネルは、俺の縄張りだぁぁぁ!侵入者で全員ぶっ潰す!いくぜぇ!
裏滅死YA~。根性焼きポルターガイスト!」
「茂夫君」
「はい」
瞬間、霊幻が炎に包まれた。
しかし霊幻の周りに強力なバリアが張られている。
総長が攻撃を繰り出す瞬間、モブが霊幻の周りにバリアを張ったのだ。
霊幻を超能力者だと勘違いした総長は狼狽えているうちに、霊幻が懐から塩と取り出した。スーパとかでよく売られている奴の。その袋の中に手を突っ込んだ。
「後悔先に立たず、天才霊能力者この霊幻新隆と対峙した瞬間、すでに決まっていたのさ…てめえの成仏をなあ!
盛り塩パンチ!」
食塩をまぶした拳をお見舞いしたのだが、やはり痛くもかゆくもなく、当然偽物だと見破られてしまい総長は再び攻撃を繰り出そうとした。が、モブと翡翠の攻撃で、見る見るうちに小さくなっていく。
「オゾン層に帰るがいい!」
何もしていないくせに、決まった顔をしてる霊幻。
そして、除霊されたと思ったら急に攻撃が止み、総長が小さいサイズになった。
早く溶かせと促す霊幻に翡翠が諫める。
「師匠、ちょっと話を聞きましょうよ」
総長の話によると、トンネルのもっと奥には、もっと恐ろしいものが潜んでいて自分たちはそいつに命令されてここに来た人間を脅かしていただけだったという。
「この程度のでまかせでこの霊幻をごまかせるとでもおもったのか?」
「でまかせなんかじゃない!ただ…このまま濡れ衣を着せられちゃ、俺たちデススペッターが浮かばれねえと思っただけだ……、。俺とあいつらの思い出がな……。
言いたいことはそれだけだ!あとは消すなり溶かすなり好きにしやがれ!」
総長が地面に仰向けになり叫んだ。
霊幻がこれは典型的な詐欺師の手口だといい、除霊を促した瞬間モブが奥へと歩き出した。
入る前に感じた霊気が消えていないことにモブも翡翠も違和感を感じていらるしい。
「まあ当然俺m「止めろ!!」
総長が切羽詰まった声で叫んだ。
「あのガキがいくら強くてもあいつには敵わねえ」
その霊気の持ち主は、何百年も前から棲みついている悪霊で、ここに来た人間たちも全員そいつに殺されたのだという。
「では、あなたたちもその悪霊に…」
「いや、俺たちはバナナの皮を踏んだだけだ」
「(#^ω^)(除霊してやろうか)」
その瞬間物凄い風が吹き出した。
「分かったろ!あのガキが可愛いならすぐに呼び戻せ!早く!」
「モブ!戻れ!戻ってこい、モブ!くそっ、翡翠、モブを連れ戻せ!」
慌てる霊幻とは対照的に、翡翠は落ち着いているようだった。
「大丈夫ですよ、茂夫君なら……」
それから大きな音がして、翡翠以外不安な様子だった霊幻達。
奥からモブが現れて、霊幻は安どした表情に総長は驚愕した表情を浮かべていた。
「お、お前何者なんだ?」
「え、何者って」
「バカ野郎お前と翡翠は、霊能界の新星、霊幻新隆の弟子だろうがッ!」
「ああ、そうですね」
「礼を言うぜ、これで俺たちも心置きなく成仏できるってもんだ」
そう言ってどこか栄光とする彼をモブは引き留め、写真と見せた。
主を除霊した後、ゴミの中から見つけ出したものだった。
その写真は、デススペッターのメンバーが生前のころ、みんなで撮った大切なものだった。あの頃のかけがえのない日々を思い出した総長は、ありがとうと伝え、メンバーとともに天へ登って行った。
総長たちを見送ってトンネルから出たものの、次のバスは6時32分だった。その時間まで、バスを待たなければいけ乃いのかと、思うと気が重くなった。
「師匠様」
「ん、何だ」
「どうして何もしなかったのですか?」
「塩で何かをしているようでしたが、それ以外何もしていませんでしたよね?」
図星を突かれ一瞬狼狽したが、冷静をよそをって。
「最初に言ったろ、ザコは任せるって」
「ああ、なるほど」
「そういえば言ってましたね、そんな事」
二人が納得して、霊幻は安どして汗を流していた。
バスで調味市に帰った三人は、ラーメンを食べることになった。
「チャーシュー追加するなら二枚までしとけよ」と霊幻から言われていたのだが、当の本人はチャーシューを6枚頼んでいた。しかもトウモロコシなど具がたくさん。
(納得がいかない)
(これ意見したほうがいいのかしら……)
と思ったが、結局意見することもなく、ラーメンを平らげた。