赤い糸40,075km

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透香さ〜ん、俺のことも褒めてくださいよ〜」
「うーん、リエーフくんは背が高いね…?」
「えへへー、でしょー?」

はぁ???
リエーフが久世を後ろから抱き締めるように頭に顎を、肩に肘を置いている。その状態のまま普通に会話を続ける二人に、自分の中の何かが切れそうになる。


順を追って説明すると、まず、俺達は進級した。久世は夜久が同じクラスだと知って大喜びしていたが、俺の姿を見付けると「げっ、黒尾も居たの…」とわざとらしく嫌がった。俺達はいつのまにかお互いを呼び捨てするようになり、久世の人見知りの壁もとうとう無くなって随分と親しくなったと思う。呼び捨てにされるのも、雑に扱われるのも、甘えの一種だと思えば結構可愛いもんだ。久世はほかの部員とも完全に打ち解けて、部活の時はそれはもう生き生きとしていた。そんな中、新入部員が入ってきた。さすがに2つも後輩だと人見知りが発動しないのか、久世は1年達ともすぐに打ち解けた。なんならむしろ仲良くなりすぎている。そんで今に至るという訳だ。

透香さんってなんかいい匂いしますね」
「嗅がないでね〜」

男子高生が女子高生の頭にすりすりと頬擦りをする図。普通にアウトだろ。久世もなにが「嗅がないでね〜」だよ。なんでもっと嫌がったりとか怒ったりとかしねぇの?もし俺が同じことしたら絶対すぐに距離を取ってゴミを見るような目で見てくるくせに。しかもこの短期間で名前で呼び合ってるし。マジでなに??
ストレッチをしながら二人の様子を眺めていると、隣でゲームをしている研磨が「クロ、顔怖いよ」と指摘してくる。

「アレどー思う?著しく風紀を乱してると思うんですケド」
「距離感バグってるなとは思うけど、犬や猫が戯れてると思えば別にふつーなんじゃない」
「マジ??」

あまり気に止めていない様子の研磨に絶句していると、「クロだから気になるんでしょ」なんて意味深なことを言われる。研磨はたまに俺より俺の事を分かっていたりするから、また何か見透かされていると思って聞いてみたが、「自分で気付かないと意味無いと思うよ」と返されてしまい、それまでだった。

気付くって、何を?

「4月って意外と寒くないスか?」とか言いながら久世にぴたーっとくっつくリエーフを見て、ついに堪忍袋の緒が切れる。あーハイ気付いた気付いた。俺部活中にそういう浮ついたの許せねぇんだわ。

「オイ、リエーフ退け」
「うわっ?!なんスか黒尾さん」
「なんスか、じゃねぇよ!お前もさっさとアップ始めろ!それか準備手伝え!」

リエーフの首根っこを引っ掴んで久世から引き剥がす。なんで怒られてるのか分かんないって態度が余計にイラつかせてくる。解放された久世は一度だけこちらを見て、今がチャンスだと言わんばかりにパタパタと準備に向かってしまった。何も言わずに去っていくその背中を、つい名残惜しく眺めてしまう。
…いや、いいんだけど。
別に感謝してほしくてやった訳じゃないし、そもそもアイツは別に困ってた訳じゃないし、相変わらずテキパキ準備進めてくれんのは助かるし。
いいんだけど。

「準備しますからぁ!離してくださいよー!」

首根っこを掴まれたままのリエーフがジタバタと暴れる。パッと手を離すと、リエーフはマーカーコーンを並べる久世の元に真っ直ぐ向かって行った。仲睦まじく話しながら一緒に作業する二人を見ていると、なんだか心が落ち着かなくなる。
…そういえば、最近ろくに久世と話していない気がする。去年、目立つからという理由でクラスでは話しかけないでほしいと言われ、俺はまぁ部活でいつでも話せるしと了承した。今年も同じクラスになったけど、必要以上に話しかけたりはしていない。どうせ部活で話す、そう思っていたのに、前と比べて、久世と話すことはかなり減った。前は何かある度に黒尾くん黒尾くんと話しかけてきた彼女が、今ではすっかりみんなのマネージャーになった。というか、久世は俺のダル絡みとかを本気で嫌がっている可能性もあって、ちょっとした部活の確認ごととかは副部長の海にするようになっていた。俺も前は人見知りな彼女を気にかけてあれやこれや世話を焼いていたが、それももう無い。別に何も悪いことじゃないんだけど、なんだかなぁ。

「なぁに」
「ウザい」
「ひどっ」

何もしてないのに研磨がジト目で見ているから声を掛けたのに、唐突な暴言を食らわされる。やっぱりコイツは何か気付いている。俺がまだ気付いてないことを。でも自分で気付かないと意味が無いらしいから、問いただしても仕方ない。俺は時間を見て集合をかけ、その日の練習を始めた。



「あ、虎くん落としたよ」

帰り道。山本が雑にカバンにかけていたタオルが地面に落ち、それを久世が拾う。この二人も最近、距離感がちょっとアレだ。前までは一番接しづらそうにしていた久世は、一周回って「私のこと女子として意識してるの可愛い」みたいな態度にシフトしていた。「女子に慣れてないなら、全然女子っぽくない私で慣らしていこう」とかなんとか言っちゃって、彼女の方から軽いスキンシップを測る場面もよく見られるようになった。いや女子っぽくないってなに?確かに久世は女子の中では背が高くてショートヘアで、可愛い系というよりはカッコイイ系、綺麗系だ。でも俺達の中に居たら普通に小せぇし、普通に女子だからね、お前。というかなに、「虎くん」て。研磨が山本を「虎」と呼ぶから、それが伝染ったってのは分かる、分かるけどさ。それ、俺に変換したら「鉄くん」って呼んでるってことだぞ?………はあ?????
わざと山本の手に触れるようにタオルを渡し、悪戯っぽく上目遣いをするその姿に、妙にイライラする。山本が赤面して「はわぁ?!ス、スンマセンッ!」と慌てるのを見て、久世がクスクス笑う。……なんか、見てられねんだけど。
俺がイライラを逃がすように溜息を吐いて頭を搔くと、隣を歩く研磨が「自分の気持ちにはほんと鈍感」と呟く。だったら教えてくれよ。俺は何にモヤモヤしてんの?どうしたらいいんだよ。



次の日も、その次の日も、イライラとモヤモヤが消えない。久世はそんな俺の態度に気付いてか、少しよそよそしい様な気がして、それもなんだかムカつく。結局この数日久世とろくに話していなくて、俺から話しかけなきゃ俺達の会話って生まれないんでしたっけ?とかしょうもないことでまた苛立つ。なにこれ。
俺の気が立っていることに他の部員達も気付いているようで、どこかギスギスとした雰囲気になってしまう。部長としてこんなんじゃ駄目だ、と練習の時は気持ちを切り替えるのに、彼女の動向が気になって仕方がない。プレーの質も落ちているし、そのせいで彼女の笑顔を見れることも少ない。本当に何やってんの俺。

最後のメニューであるポジション別の練習で、リエーフと犬岡にみっちりブロックのなんたるかを教え込む。うちはブロックを教えられるのが俺しか居ないから、必然的にコイツらに付きっきりになる。反対コートから福永達にスパイクを打ってもらい、それに対してブロックをしていくシンプルな練習。リエーフは未経験で、反応も移動も手の出し方もまだまだ全部幼稚だ。でも一丁前にタッパだけはあるから、たまにその手にボールが当たり、まぐれでドシャットできたりしてしまう。

「ナイスブロック!リエーフくん」
「よっしゃーー!!もっと褒めていいんですよー!?」

ノートを持って練習の回数を数える久世が、リエーフのブロックに反応する。今のがまぐれだってことは当然彼女も分かっているだろうが、初心者のリエーフにはまず難しいことより快感を覚えさせようとしているんだろう。駆け寄って来たリエーフの頭に手を伸ばし、わしゃわしゃと撫でて甘やかしてやっている。…いや、さぁ。まずは楽しいってことを教えるって考えは俺も同じなんだけどさ。その距離感まじでどうにかなんねぇ?

「リエーフ戻って来い」

自分でもびっくりするくらい低く平坦な声が出る。リエーフは特に気にとめた様子もなく戻って来て、久世は不思議そうに俺の顔色を窺っていた。…ムカつく。


「…お前、ブロック練は見なくていいから」


酷く冷たい声が、体育館に響く。

えっ、今の、俺が言った?

練習見てなくていいって?

久世に?


心臓の辺りに、ぞわりと嫌な感覚が広がる。

「サイテー」
「黒尾さんって透香さんに冷たいっスよね?!良くないと思います!」

ネットの向こうの研磨の言葉が突き刺さり、リエーフの何も考えてない声が重くのしかかる。
冷たい?俺が??久世に???

「…大丈夫、分かった。」

久世はゆるく微笑んで、パタパタと倉庫の方へ走っていく。それを研磨が引き止めて「透香は何も悪くないよ」と言うと、彼女は振り返りもう一度微笑む。その睫毛が震えていたのは言うまでもない。そしてついに倉庫の中へと姿を消してしまった。


・・・


終わった。完全にやった。
彼女がいつもどんな気持ちで俺たちの練習を見守ってくれているのか、それを一番分かってるのは俺だったんじゃないのか。常に俺達のために何かできないか考えて、すぐ動いてくれて、輝く瞳で俺達の全てのプレーを見守ってきてくれた、その人に。あんな冷たく「見なくていいから」?それだけは絶対に言っちゃ駄目だろ。えっ本当に俺が言った…?
嫌な汗をかいて呆然とする俺の元に、目に見えて怒っている夜久と、いつも通りの笑顔が逆に怖い海が向かってくる。

「後で。部室。説教。」
「……ハイ………」

単語だけで凄む夜久に、身を縮めて返事をする。自分が100%悪いことは分かっているから、むしろ怒ってもらえた方が有り難い。というか本当に俺は一体何をしている?誰か助けてくれ。俺が久世を傷付けたいわけがない。倉庫から出て来ない彼女が心配になるけれど、多分今、唯一俺だけには彼女を心配する資格がない。



練習が終わり、集合をかけても、彼女は姿を見せなかった。まぁ備品の整理とかしてる時は集合に参加しない日もあるから、特別珍しいことでもないけど。…まさか、泣かせてしまったりしたんだろうか。じくじくと痛む胸を抑えながら、俺は説教されるために部室に向かう。

「お疲れ様です…」
「おう、お疲れ」

部室内の異様な雰囲気に、1年達が怯えながら帰っていく。ごめんなーほんとに。俺は仁王立ちする夜久の前で正座をしていた。部室内に俺と夜久、海、研磨の4人だけになったタイミングで、夜久が口を開く。

「…で?お前の最近の態度はなに。」
「……すみません……」
「すみませんじゃなくて。なんなんだって聞いてんだよ」

ぐ、と言葉に詰まる。なんなんだって、それは俺が一番聞きたい。夜久の怒りっぷりからして、やっぱり泣かせてしまったんだろうか。俺は行くことを止められたが、他の奴らは片付けの時に倉庫に行っているから、彼女の様子を見たはずだ。言葉が出ない俺に、研磨が溜息を吐く。そして、


「好きなんでしょ、透香のこと」



「「………はっ??」」

俺と夜久の声が重なる。

「ああ、やっぱり?」と海が言って、研磨が頷く。
えっ。はっ?
好き?誰が誰を??
なんで急にそんな話になってんだ??

「…つまり、リエーフとかに嫉妬したってことだよね。久世と距離近いから」

「…そうなのか?」

海が解説をして、夜久がこっちに聞いてくるけど、……いや、いやいや、さすがにそれは違うって。

「なんで急にそんな話になんだよ……そういうのじゃねぇから」
「じゃあなんなの」

否定することを許さないように研磨に突っ込まれる。だからそれは、俺も知りたいところで…。

「ほんとクロってめんどくさい。どう見たってバレバレなのに、なんで自分のことになるとそんな馬鹿なの」
「ばっ、ば……?!」

馬鹿?!バレバレ?!
俺はもう何が何だか分からず困惑する。夜久はもう「そうなのか?」しか言わなくなっちまったし、研磨はもう一度溜息を吐いて、海は相変わらず笑っている。

「自覚ないのかも知れないけど、クロは透香のことが好きで、くだらない嫉妬して冷たくして、好きな子のこと悲しませたの。分かる?」

捲し立てる研磨に「ちょっっと待って」と言うとノータイムで「待たない」と言われる。俺はそれを無視して、頭を抱えて長考する。
確かに、研磨や海の言っていることは、実際の状況と辻褄が合っているように思う。俺とは接する機会がぐっと減ったのに、他の奴と親しげにしているのが気に食わなかった。確かにこれは嫉妬だ、うん。でもやっぱり、それは恋愛的なものではないと思う。
だって、久世は全然タイプじゃない。
普段のクールさと好きなものに向ける笑顔のギャップにはたまにやられるけど、基本的には俺が好きになるような感じじゃない。
今まで好きになった子は、みんな決まって髪が艶やかに長かったし、思わず守ってあげたくなるような可愛げがあって、揶揄うと「もう!」とかって怒ってくれるような、そんな子ばかりだった。久世は軽やかなショートヘアがよく似合っているし、こっちが守ろうとしたってどんどん想像を超えて勇ましくなっていくし、俺のダル絡みには氷点下の眼差しを向けてくる。俺は彼女のそんなサッパリしたところが、”部活仲間”としてはとても好ましいと思っているけど、恋愛対象からは結構遠い。
だから、違う。
…でも、そうだな。多分アレだ。拾ってきた猫を甲斐甲斐しく世話して、飼い慣らすのにすっげー時間かかったのに、気付いたら誰にでもすり寄るようになっちゃったみたいな。なんか親心で寂しくなっちゃうみたいな。そんな感じだ。

俺は考えをまとめて、それを3人に話す。研磨はすごい顔してまた溜息を吐いた。

「まぁ、そこはなんでもいいけど、とにかく今日みたいなことは二度と言うなよ」
「それは、ハイ…。もちろん…。」
「後輩達も怖がるから、ピリピリするのもやめような」
「ハイ…!」

夜久と海からそれぞれ釘を刺される。
ほんと、気を付けます。二度としません。
研磨はまだ納得いってないようだけど、俺としては頭の中が整理できて、とりあえずはスッキリできた。久世には明日、すぐ謝ろう。そう心に決めて、4人で部室を出た。


─────



翌日、日曜日の午前練。
いつも通り研磨を連れて登校し、少し緊張しながら体育館へ向かうと、既にジャージ姿の久世がパタパタと体育館の扉に向かっていた。あ、と目が合う。俺はすぐに謝らなきゃと思い、一歩踏み出して口を開く。

「……ぁ、」
「おはよ!」

彼女はいつもより明るく、いつもより大きい声で挨拶をしてきた。俺は面食らって、つい口を閉じてしまう。そんな俺に追撃するように、久世がさらにニコッと笑って見せる。彼女が気まずくならないために気丈に振る舞ってくれていることが分かり、俺は一層申し訳なく思いつつ、彼女のそういうところが本当に尊敬できるなと思う。でもなんだか、謝罪することを拒まれているようにも思う。ちゃんと謝りたいのに、心を閉ざされてしまっているような、そんな焦りを覚えて、俺は慌てて彼女のところまで向かった。そして、しっかりと目を合わせる。

「…昨日、ごめん。思ってもないこと言った」
「ううん!私こそなんかごめん!その場で空気変えれるようなこと言えなくて」

彼女の顔には笑顔が張り付いたままで、やっぱり俺の謝罪は全く届いていないようだった。しかも向こうから謝られてしまう始末だ。久世との心の距離が、ぐっっと遠くなったのを肌で感じる。俺は自分のしでかしたことを本気で後悔した。これはもう、全て正直に話すしか信頼回復の道はなさそうだ。

「聞いて。ほんっとにあんなことが言いたかった訳じゃねぇんだって」

彼女の肩を掴んでそう言うと、やっとその笑顔が剥がれ落ちる。そして、不安そうに揺れる瞳とやっと目を合わせることができた。昨日の発言だけじゃない。俺はここ数日、ずっと彼女に対して素っ気なかったはずだ。きっと久世は、もう何日も前からずっと不安だったんだ。

「お前が…!最近俺には全然話し掛けて来ねぇのに、他の奴とばっか仲良さげにしてっから……、その、嫉妬、してまして……」

ちゃんと全部言うって決めたはずなのに、いざ口に出すとなんとも恥ずかしいもので、しりすぼみになる。久世は目を丸くして呆然と俺を見上げていて、じわりと耳に熱が集まる。とりあえず一番恥ずかしいところは言い終わったので、補足を付け加える。

「あー、変な意味じゃねぇよ?お前をマネに誘ったの俺だし、ほら、お前人見知りだし…、手懐けた捨て猫が他の奴とも仲良くなっちゃったー、みたいな、そういう意味のやつな」

いや、結局言ってること全部ダサくないか?
でも今は自分がダサいかどうかなんてどうでもいい。頼むからもう一度俺に心を開いてくれ。全然関わりのないクラスメイト相手みたいに、鉄壁の笑顔で対応するのはやめてくれ。自分で思っていた以上にダメージを負っていたことにやっと気付く。久世は少し考えてから、ゆっくりと緊張を解いた。

「…じゃあ、私は引き続きみんなを見ててもいい?」
「あ、たり前だろ」
「…うん、それが聞けたら十分」

久世はそう言うと柔く微笑み、体育館の鍵を解錠した。俺が嫉妬うんぬん言ったのが彼女にどう届いたのか気になり、俺がその横顔をじっと見詰めていると、それに気付いた彼女がまたこちらを見上げる。

そして、ニッと広角を上げ、その目を優しく細める。

「黒尾のしょぼくれモードはめんどくさいね」

ぱしぱしと俺の腕を叩くと、重たい体育館の扉を開けて中に入って行ってしまう。


俺は、なんだか、そこから動けずに居た。

思えば、一年前久世に初めて話しかけた時も、あんな顔にドキッとさせられたんだった。
心臓が、妙に高鳴っている。
一部始終を全て見ていた研磨が、そっと近付いてきて「分かった?」と言ってくる。
それに、上手く答えることができない。



その後の練習では久しぶりに調子が戻ってきて、お手本として飛んだブロックがまぁ綺麗に決まった。すると視界の端で、「ナイスブロックー!」と言って、両手を上げてブロックのジェスチャーをしながら笑う久世が映る。視線を向けると、彼女はキラキラと輝いていて、久しぶりに見るその様子に、胸がギュッと掴まれる。

…いやいや。いやいやいや。違う違う。違うって。
引退するまで恋愛とかそういうのするつもりねぇし。
いやほんと、好みのタイプとは違うんだって。

「好きなんでしょ、透香のこと」
昨日研磨が言ったセリフがずっと頭の中で回ってる。


「…マジかぁ……」


俺は熱の集まる顔を片手で覆いながら、誰にも聞こえないくらい小さい声で呟いた。











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