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一次創作

死なない自殺志願者

2018/11/25 22:42
私が、いつものように首を吊っていた時のことだった。

「うわっ?!」

部屋に鍵をかけ忘れていたらしい。
入ってきた私の恋人は、私の有様を見て酷く驚いたらしかった。

「な、なにしてんの?!え!?なにしてんの!!?」
「なにって……」

首は締まっていたけれど、私は何とか喉から声を絞り出した。

「首吊ってるんだけど……」
「見たら分かるよ!!えっていうか生きてる!!?生きてんの?!?いやいやほんと、なにしてんだよほんと!!」

彼は慌てていたけれど、私が生きているとわかると、どたばたしながらも私の首から縄を外して、床に下ろした。
私の首には縄の痕がくっきりついているらしく、彼はしきりにそれを気にしていた。

「気にしなくていいのに」

私がそういうと、

「気になるんだよ」

と、彼は怒った。

「なんであんなことしてたんだよ」

怒りながら彼は聞いた。
私はちょっと考えてから、言った。

「どうしようもなく死にたくなる時って、ない?」
「あるの?」

質問に質問を返されて、私はなんと応えようか考えて、俯きながら頷いた。

「うん……」

彼は難しい顔をして考え込みながら、言った。

「人生終わらせたくなるってこと?」

「ううん」

そうじゃない、と私は言った。

「自分を……今までの自分を殺して、リセットして、一からやり直したくなること、ない?」

彼はしばらく黙ってから、頷いた。

「……あるかも」
「あるでしょ」
「だからって、」

彼はため息をついた。

「お前が死んだら、僕は悲しいよ」
「……ごめんね」
「もういいよ」

彼はそう言って、私の手を引っ張った。

「ご飯食べよう」
「うん」

誰かが私の死を悼むとき、私はきっと後悔するだろう。
その誰かが君だから、私は死なずに済んでいるのだ。
明日も多分、私は首を吊るけれど、君がいる限りは死なない。

君がいる限りは死なない。

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