一次創作
文字の砂漠
2018/11/14 21:21少女が砂を掘っていた。
灰色の空の下、灰色の砂漠の上で、彼女は夢中になって砂を掻き分け、両脇に小さな山を作っている。
僕は何故だかそれを見ていた。ただ見ていた。
「なにをしているの」
何気なく問いかけた問いは少女の耳に届いたようで、彼女は顔を上げると、僕を見て言った。
「死んだ言葉を探しているの」
言われて僕は、自分が砂の上ではなく、文字の羅列の上に立っているのだと気が付いた。
灰色の文字の羅列が山と積み重なり砂漠を成し、ただそこで死んでいた。
少女は文字を掘り返すのをやめなかった。
「あった」
少女はやがて、嬉しそうに灰色の文字の中からひとつの言葉を拾い上げた。
「それはなに」
僕は思わず訊ねた。
「これはね、」
少女が嬉しそうに唇を開き
耳障りな電子音で目が覚める。
真っ先に目に入ったのは散らかった床だった。
やかましく鳴るスマホは朝が来たのだと嫌でも思い知らせてくれて、夢を見ていたのだと気付くまでにそう時間はかからなかった。
俺はスマホのアラームを止めてから、今朝見た夢の内容を思い出そうとして、布団の中で何度か寝返りを打った。
少女が見せてくれた言葉は、思い出せなかった。