主鍵
裂けた生地から、どろり、と、カスタードクリームが溢れるのが見えた。
「あ、」
紅朗は咄嗟に手を伸ばし、鍵介の食べていたシュークリームから溢れたそれを、指で受け止めてやる。
「食べ方下手だな、鍵介……」
「せ、先輩は食べないからわかんないでしょうけど、」
クリームを口の端につけたまま、鍵介が眉をしかめる。
「難しいんですよ!こぼさないで食べるの!」
「ふーん?」
紅朗は返事をしつつ、指先に付いたクリームを舐め取る。
彼の薄紅色の舌が、白い指の上で這うのを見て、鍵介は何だかちょっとどきどきしてしまった。
そんな視線にも気付かずに、紅朗は嫌そうな顔をする。
「あっま……」
甘いの苦手だったのか、と思いつつ、鍵介は紅朗がベジタリアンであることを思い出す。
「……カスタードクリーム、確か卵入ってますよ。牛乳も」
「知ってる」
まだ少しクリームが残る中指を舐めてから、紅朗は微笑んだ。
「気にしてたら鍵介とキス出来ないだろ」
「……そういう恥ずかしいセリフを素面で言える精神力、どこにあるんです?」
まだシュークリーム残ってるんで、と、鍵介が再びかぶりつこうとすると、紅朗が手を伸ばしてきた。
「口にクリームついてるぞ」
「えっどこですか」
「ほら、取ってやるから」
慌てて手の甲で擦ろうとする鍵介を止めて、紅朗は手―――ではなく、顔を近づけ、ぺろりと舐めた。
「ん、やっぱり甘いな」
「……………………」
鍵介は紅朗を押し返し、裂けたシュー生地からかぶりつく。
カスタードクリームを出来るだけ、口に残しておいてやろうと思った。
「あ、」
紅朗は咄嗟に手を伸ばし、鍵介の食べていたシュークリームから溢れたそれを、指で受け止めてやる。
「食べ方下手だな、鍵介……」
「せ、先輩は食べないからわかんないでしょうけど、」
クリームを口の端につけたまま、鍵介が眉をしかめる。
「難しいんですよ!こぼさないで食べるの!」
「ふーん?」
紅朗は返事をしつつ、指先に付いたクリームを舐め取る。
彼の薄紅色の舌が、白い指の上で這うのを見て、鍵介は何だかちょっとどきどきしてしまった。
そんな視線にも気付かずに、紅朗は嫌そうな顔をする。
「あっま……」
甘いの苦手だったのか、と思いつつ、鍵介は紅朗がベジタリアンであることを思い出す。
「……カスタードクリーム、確か卵入ってますよ。牛乳も」
「知ってる」
まだ少しクリームが残る中指を舐めてから、紅朗は微笑んだ。
「気にしてたら鍵介とキス出来ないだろ」
「……そういう恥ずかしいセリフを素面で言える精神力、どこにあるんです?」
まだシュークリーム残ってるんで、と、鍵介が再びかぶりつこうとすると、紅朗が手を伸ばしてきた。
「口にクリームついてるぞ」
「えっどこですか」
「ほら、取ってやるから」
慌てて手の甲で擦ろうとする鍵介を止めて、紅朗は手―――ではなく、顔を近づけ、ぺろりと舐めた。
「ん、やっぱり甘いな」
「……………………」
鍵介は紅朗を押し返し、裂けたシュー生地からかぶりつく。
カスタードクリームを出来るだけ、口に残しておいてやろうと思った。