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「幸せ逃げるとか、うつるとか言うやろ」
「えっ」
「ため息」
コロンと机に置かれたイチゴ味の飴。
「飴ちゃんやるから」
「あ、ありがとう……」
今は古典の授業中だよとかそんなにため息ばかりついてたかなとか、そんな風に言えば良かったのだろうか。
名前は実際参っていたところ思いがけず親切にされたので、つらつらと悩みを吐露してしまう。
「最近落ち込むことが多くてさ。部活でも友だちとの関係もうまくいかなくて……」
名前の話をうんうんと隣の席の赤い髪の男の子は聞いてくれる。
調子の良い相づちなので多分そんなに聞いていないのかもしれないけど、それが逆に良かった。
「そやなー、名前もいろいろあんねんなー」
「うん、悩んでもどうしようもないことぐずぐず考えちゃってさ」
「そーかそーか」
それまで一応身体は教師の方を向いていた鳴子はくるっと名前を真っ直ぐに見てニカッと笑った。
「ほんなら日曜日レース観に来たらええやん、ワイの最高の走り見せたるわ」
「えっ」
「めっちゃ元気でるでー!!!」
声が大きいけど古典の教師は淡々と授業を進めるタイプなので何も注意はされない。
ただ、名前は鳴子の八重歯が可愛いな、とだけ思った。
******
名前は久々に落ち込むこともなく、むしろ高揚した気持ちで夜を迎えた。
(鳴子にデートに誘われてしまった……いやデートではないかも。いやでもレースのあと一緒に帰ったりごはん食べたりとか)
(レースって何するのかな、何着て行こう……あ、差し入れだ!差し入れとかどうしよう、鳴子すごい食べるからなー!手作りじゃ重いかな、パン買って行こうかな)
名前の悩みは落ち込んでも自分ではどうにもならない類のものなので、考えないことこそ実質解決したと言っていいから鳴子のおかげで悩みから解放されたと言っていい。
(いやでも差し入れって渡せるの?選手控えのところ行けるのかな、まあ後で二人で食べてもいいか……って、二人になれないかもしれないし!)
しかし別の幸せな悩みにより名前の眠れない夜は続くのであった。飴は今日の証拠に舐めないで大事にしまってある。
日曜日が良い日となりますように。
END イラスト はげインコ様/文 はちよ
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