秋花ちゃんから(イラスト&小説)
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「鳴子くんとナナさん、最近どうなの」
向かいの席でほんのり酔い始めている鳴子くんに何の気なしに問いかける。彼はそれを聞いてにやにやと口元を緩ませた。いかにもその質問を待ってました!とばかりに上機嫌だ。この人のこういう分かりやすい所は私も嫌いではない。
「ワイ?ワイのとこはなぁ、もう毎日イチャイチャしとりまっせ、そらーもう仲良うて。昨日の夜もな…」
「それは良かった、ナナ先輩を泣かせたら許さないからね」
「そんなん言われんでも当たり前ですー、心配されんでもワイが世界で一番幸せにしたる」
鳴子くんはそう言ってふふんと鼻を鳴らし誇らしげに笑っている。彼、鳴子章吉くんの彼女ナナさんは私の学生時代の先輩だった。同じサークルに属していたのがきっかけで良く話すようになり、私達はどんどんと打ち解けていき、いつしか親友とも言える存在になっていった。彼女はどんな人に対しても分け隔てなく接する人で、いついかなる時も親切だった。そんな彼女に対して想いを寄せる男性は当然多かったが、彼女の返答はいつも決まってノー。今は学業が忙しいから、というのがお決まりの断り文句だったのだが、ある時私は彼女に何故誰とも付き合わないのかを聞いてみた。すると彼女は高校時代の先輩に今もずっと片思いをしているからなのだと教えてくれた。ずっと好きで何年も憧れていた先輩なのだが、未だに想いは告げられないままなのだそうだ。その相手こそが今私の眼前にいるこの男、鳴子章吉だった。
ナナ先輩と鳴子くんはその会話をしてから程なく、無事にお付き合いを始めることになった。二人にはよく遊びに誘ってもらい、そこで紹介されて出会った先輩ーー荒北靖友と私は付き合うことになり、四人でダブルデートをしたりと青春を謳歌した。卒業してからナナ先輩と鳴子くんは結婚を前提に同棲を始めていた。それぞれ仕事に追われ、前よりは会う頻度が減ったものの二人は今でも変わらず大切な存在だ。今日はナナ先輩に渡したい誕生日プレゼントをこっそり鳴子くんに預ける為に仕事帰りに少しだけ時間を作ってもらったのだった。誕生日当日に渡しに行ければ良いのだが、なかなかスケジュールが合わず行けそうにもない。人様の彼氏と外で二人で会うというのはやはりどんな理由であっても気が引けるので渡した後に早々に帰ろうと思ったのだが、待ち合わせた場所の目の前に立ち飲みのお店があったので一杯だけ飲み交わすことにした。そして今に至る。
「アキのとこはどうなん?荒北さん最近忙しそうやな」
「靖友はいつも忙しいよ、でも時間が出来ればたまに会ってるしまあ順調かな」
「そんならエエな。毎日毎日忙しいばっかりで時々学生時代が懐かしゅうなるわ」
「あの頃は毎日遊んでばっかりだったよね」
「あん時もうちょい真面目に勉強もしてたら、今もう少し楽なんとちゃうかなとは思うわ」
「一番遊びたがってたのによく言うよ、それよりナナ先輩へのプレゼント、しっかり渡してよね」
「はいはい、言われんでも。実はな、ちょっとワイも二人に報告したいことがあんねん。」
いつになく真剣な表情だ。私は黙って話の続きを待った。鳴子くんはポケットの中をごそごそとまさぐり、小さな箱を取り出した。なるほど、どうやら彼は間近に迫った彼女の誕生日にプロポーズをしたいらしい。私はまるで自分の事のように嬉しくなり、ワクワクして思わず鼓動が早まった。
「プロポーズ、しようと思うんや」
はにかんだ口元からちらりと八重歯が覗く。彼の表情は本当に幸せそうだった。きっとナナ先輩はこの申し出を受けるだろう。私は精一杯の応援をして二人の幸せを心から願った。店先で別れ、互いに違う帰り道へ向かって歩き出す。私が世界で一番好きなカップルが結婚する。なんて幸せな出来事なのだろう。考えただけで足取りが軽やかになった。携帯を取り出し、靖友に電話をかけた。愛しい人の声が聴きたくなったのだ。早くこの事を知らせて幸せを共に分かち合いたい。
「もしもし?靖友?」
「お前どこにいんの?会えるかと思って家に来たのにいねーじゃん」
「すぐに帰る!待ってて!」
愛する人の元へ向かう幸せな足音が二つ、夜の帳に溶けていった。
向かいの席でほんのり酔い始めている鳴子くんに何の気なしに問いかける。彼はそれを聞いてにやにやと口元を緩ませた。いかにもその質問を待ってました!とばかりに上機嫌だ。この人のこういう分かりやすい所は私も嫌いではない。
「ワイ?ワイのとこはなぁ、もう毎日イチャイチャしとりまっせ、そらーもう仲良うて。昨日の夜もな…」
「それは良かった、ナナ先輩を泣かせたら許さないからね」
「そんなん言われんでも当たり前ですー、心配されんでもワイが世界で一番幸せにしたる」
鳴子くんはそう言ってふふんと鼻を鳴らし誇らしげに笑っている。彼、鳴子章吉くんの彼女ナナさんは私の学生時代の先輩だった。同じサークルに属していたのがきっかけで良く話すようになり、私達はどんどんと打ち解けていき、いつしか親友とも言える存在になっていった。彼女はどんな人に対しても分け隔てなく接する人で、いついかなる時も親切だった。そんな彼女に対して想いを寄せる男性は当然多かったが、彼女の返答はいつも決まってノー。今は学業が忙しいから、というのがお決まりの断り文句だったのだが、ある時私は彼女に何故誰とも付き合わないのかを聞いてみた。すると彼女は高校時代の先輩に今もずっと片思いをしているからなのだと教えてくれた。ずっと好きで何年も憧れていた先輩なのだが、未だに想いは告げられないままなのだそうだ。その相手こそが今私の眼前にいるこの男、鳴子章吉だった。
ナナ先輩と鳴子くんはその会話をしてから程なく、無事にお付き合いを始めることになった。二人にはよく遊びに誘ってもらい、そこで紹介されて出会った先輩ーー荒北靖友と私は付き合うことになり、四人でダブルデートをしたりと青春を謳歌した。卒業してからナナ先輩と鳴子くんは結婚を前提に同棲を始めていた。それぞれ仕事に追われ、前よりは会う頻度が減ったものの二人は今でも変わらず大切な存在だ。今日はナナ先輩に渡したい誕生日プレゼントをこっそり鳴子くんに預ける為に仕事帰りに少しだけ時間を作ってもらったのだった。誕生日当日に渡しに行ければ良いのだが、なかなかスケジュールが合わず行けそうにもない。人様の彼氏と外で二人で会うというのはやはりどんな理由であっても気が引けるので渡した後に早々に帰ろうと思ったのだが、待ち合わせた場所の目の前に立ち飲みのお店があったので一杯だけ飲み交わすことにした。そして今に至る。
「アキのとこはどうなん?荒北さん最近忙しそうやな」
「靖友はいつも忙しいよ、でも時間が出来ればたまに会ってるしまあ順調かな」
「そんならエエな。毎日毎日忙しいばっかりで時々学生時代が懐かしゅうなるわ」
「あの頃は毎日遊んでばっかりだったよね」
「あん時もうちょい真面目に勉強もしてたら、今もう少し楽なんとちゃうかなとは思うわ」
「一番遊びたがってたのによく言うよ、それよりナナ先輩へのプレゼント、しっかり渡してよね」
「はいはい、言われんでも。実はな、ちょっとワイも二人に報告したいことがあんねん。」
いつになく真剣な表情だ。私は黙って話の続きを待った。鳴子くんはポケットの中をごそごそとまさぐり、小さな箱を取り出した。なるほど、どうやら彼は間近に迫った彼女の誕生日にプロポーズをしたいらしい。私はまるで自分の事のように嬉しくなり、ワクワクして思わず鼓動が早まった。
「プロポーズ、しようと思うんや」
はにかんだ口元からちらりと八重歯が覗く。彼の表情は本当に幸せそうだった。きっとナナ先輩はこの申し出を受けるだろう。私は精一杯の応援をして二人の幸せを心から願った。店先で別れ、互いに違う帰り道へ向かって歩き出す。私が世界で一番好きなカップルが結婚する。なんて幸せな出来事なのだろう。考えただけで足取りが軽やかになった。携帯を取り出し、靖友に電話をかけた。愛しい人の声が聴きたくなったのだ。早くこの事を知らせて幸せを共に分かち合いたい。
「もしもし?靖友?」
「お前どこにいんの?会えるかと思って家に来たのにいねーじゃん」
「すぐに帰る!待ってて!」
愛する人の元へ向かう幸せな足音が二つ、夜の帳に溶けていった。