社会人メロンパンズ(荒北 鳴子 )長編 完結
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総務に誰がいるかとか今まで気にしたこともなかったが、少し意識してみるとわりと関わりがあるようだ。
会議の書類を渡しに来たり、懇親会の連絡に来たり、備品の在庫チェックをしてる後ろ姿や、電話を繋いだあの声はなるほど名字のものだった。
翌朝正気に戻った鳴子は面白いほど慌てて謝りお詫びに今度おごるので飲み直そうと誘ってきた。
別に気にしてねーしおごらなくてもいいけど飲むのは構わないので了承した。
それでもおごると聞かない鳴子に、吐いた後トイレで泣きながら寝てた赤い頭の男の写真、小野田ちゃんに送るネって言った瞬間、男なら割り勘すね!と一瞬で引いたのは笑える。
実際は写真など撮っていないがこれは暫く遊べるなと荒北はほくそ笑んだ。
「荒北さん、昨日すいませんでした」
仕事の合間、後輩が謝りに来た。鳴子と同期のやつで、荒北の部下だ。
「あー、別にいいし仕事のこと考えろ、またミスしたらただじゃおかねーかンな」
パソコンの画面を見たまま声だけで返事する。今は仕事中だ、そう言うことは休憩中に言いに来い。こっちは段取り組んで終業に間に合うよう動いてんだヨ。
「こっち、依頼者からとの要件ズレてるし、バグも修正しとけ」
ちょうど手間が省けたとばかりに指示を出す。荒北は口は悪いが後輩の面倒もきちんと見るので実は慕われている。
本人はそれを喜ぶでもなくむしろくすぐったいというか、嫌とまではいかないが恥ずかしいのか、礼を言うな、誉めんなのスタンスは昔から変わらない。
今の荒北があるのは高校時代福富に出会ったからであるし、福富と競技自転車がなければどんな大人になったかもわからない。
依存にも近い信頼を断ち切るために大学もその先の進路も別の道を選んだ。
福富のビアンキはもはや荒北の青春全てと言っても過言ではない時間を共にした。今更返す気もないし、そうされても福富も困るだろう。
しかし福ちゃんの結婚という節目に何かけじめをつけたい気がしていた。
何をすればいいんだろうか。
わからない。
ひたすらペダルを回して前に進んだように、真面目に愚直に仕事をこなした。
昼休み食堂できつねうどんをすする女が目に付いた。
「あー名字、オメーいつもそれな」
日替わり定食を持った荒北は向かいに腰を下ろす。
「荒北さん、私のこと……」
「ア?」
このはっきりものを言わない間にイラついてしまう荒北である。
「覚えてくれたんですね」
そういって満面の笑みで返す女はうどんの汁が襟にはねたのに気づかないくらいに嬉しさが溢れていて、まさに花が咲いたという表現がしっくりくる。
「あー……、今日鳴子と飲み直しに行くんだけど、オメーもどうよ」
その笑みにあてられたのか、何故か咄嗟に名字を誘ってしまう荒北であった。
わからない。
ほんの僅か、今度の予定が今日になってしまったことを気にしつつも、未知の感情に戸惑う荒北は福ちゃんに何かしてーな、と全く関係ないことを考えていたのだった。
会議の書類を渡しに来たり、懇親会の連絡に来たり、備品の在庫チェックをしてる後ろ姿や、電話を繋いだあの声はなるほど名字のものだった。
翌朝正気に戻った鳴子は面白いほど慌てて謝りお詫びに今度おごるので飲み直そうと誘ってきた。
別に気にしてねーしおごらなくてもいいけど飲むのは構わないので了承した。
それでもおごると聞かない鳴子に、吐いた後トイレで泣きながら寝てた赤い頭の男の写真、小野田ちゃんに送るネって言った瞬間、男なら割り勘すね!と一瞬で引いたのは笑える。
実際は写真など撮っていないがこれは暫く遊べるなと荒北はほくそ笑んだ。
「荒北さん、昨日すいませんでした」
仕事の合間、後輩が謝りに来た。鳴子と同期のやつで、荒北の部下だ。
「あー、別にいいし仕事のこと考えろ、またミスしたらただじゃおかねーかンな」
パソコンの画面を見たまま声だけで返事する。今は仕事中だ、そう言うことは休憩中に言いに来い。こっちは段取り組んで終業に間に合うよう動いてんだヨ。
「こっち、依頼者からとの要件ズレてるし、バグも修正しとけ」
ちょうど手間が省けたとばかりに指示を出す。荒北は口は悪いが後輩の面倒もきちんと見るので実は慕われている。
本人はそれを喜ぶでもなくむしろくすぐったいというか、嫌とまではいかないが恥ずかしいのか、礼を言うな、誉めんなのスタンスは昔から変わらない。
今の荒北があるのは高校時代福富に出会ったからであるし、福富と競技自転車がなければどんな大人になったかもわからない。
依存にも近い信頼を断ち切るために大学もその先の進路も別の道を選んだ。
福富のビアンキはもはや荒北の青春全てと言っても過言ではない時間を共にした。今更返す気もないし、そうされても福富も困るだろう。
しかし福ちゃんの結婚という節目に何かけじめをつけたい気がしていた。
何をすればいいんだろうか。
わからない。
ひたすらペダルを回して前に進んだように、真面目に愚直に仕事をこなした。
昼休み食堂できつねうどんをすする女が目に付いた。
「あー名字、オメーいつもそれな」
日替わり定食を持った荒北は向かいに腰を下ろす。
「荒北さん、私のこと……」
「ア?」
このはっきりものを言わない間にイラついてしまう荒北である。
「覚えてくれたんですね」
そういって満面の笑みで返す女はうどんの汁が襟にはねたのに気づかないくらいに嬉しさが溢れていて、まさに花が咲いたという表現がしっくりくる。
「あー……、今日鳴子と飲み直しに行くんだけど、オメーもどうよ」
その笑みにあてられたのか、何故か咄嗟に名字を誘ってしまう荒北であった。
わからない。
ほんの僅か、今度の予定が今日になってしまったことを気にしつつも、未知の感情に戸惑う荒北は福ちゃんに何かしてーな、と全く関係ないことを考えていたのだった。