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鳴子章吉

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ワイの彼女はエエ匂いがする。

料理部所属やからってのもあるんやろうけど、どうやら名前自身から甘い匂いがするらしい。


名前は部活帰りに作ったもんを差し入れにくれたりするが(もちろんワイのこと待っとって一緒に帰るんやで)たとえそれがカツサンドでも甘い匂いがふわりと漂ってくる。

ワイがそのカツサンドがうまいうまい言い続けたらスカシが「オレのお勧めはこれだ」って得意気にお取り寄せのカツサンドをくれたりしたがあれはなんや。ワイは愛されるとるんか。
まあそれはそれでもちろんうまかった。

それはええ、スカシのカツサンドの話はええ。小野田くん台風オカンの作ったんもオッサンのとこのカツサンドもうまかったし、なんやカツサンド大会になったりしたがその話は置いておく。



気になるのは名前からエエ匂いがすることや。
甘いミルクみたいな砂糖みたいな、そういう香水なんかと聞いてみたがなんにもつけてないらしい。
あの匂いはワイを狂わせる。


クラクラしてよう考えられんようになるわ。だからあんまり近くでよう嗅がんようにしとくのが最善やろうけど、まあしたいやん、ちゅーとか。


名前の唇はやわこくてぷるぷるであかん。食べたい。でも食べると無くなるからあかん。
唇で挟んだり舐めたりちょっと噛んだりしてもあかん。名前は真っ赤な顔で怒る。
せやからまだワイは良い子にちゅーってするだけや。
せやけどちゅってしたら目の前にはかわええ彼女が真っ赤な顔で目つむってるし甘い甘い匂いが漂ってくるし、掴んだ肩は柔らかくてちょっと目線を下げれば更にフワフワに決まっとる二つの膨らみが無防備にそこにあるし、常にワイは試されとるんや。

もうワイにできる対策なんてただ一つで、密室で二人きりにならないとかそんなや。隙をみてちゅってするくらいならそれ以上しようとは思わんし、怒られることもない。



******



「鳴子くん、テスト勉強すすんでる?よかったら一緒にやらない?」


テスト前期間の部活のない間にこそスカシに差つけるチャンスやけど、実際赤点なったらシャレにならんでたまには真面目に勉強でもするか。
その後自転車乗ってもええし。

「せやな、どうする、図書室でええか」


「あのさ、もしよかったらだけど」


少しの間。ちょっと目をそらしたり赤くなったり。忙しくてかわええやっちゃな。

「うちに、こない?」


「あー、名前んちか!行くわ、ってえー!!名前んちかい!ほんまに?」

「う、うん。今日はお父さんもお母さんも仕事で遅いから静かに勉強はかどるかなって」

「お、おぅ」


いやきっとあれや、ワイと一緒で兄弟ぎょうさんおって世話に忙しなるパターンやと思って聞いたら名前に兄弟はおらんかった。





一旦別れて、名前の家の最寄り駅で待ち合わせることにした。名前はバスと電車で、ワイはもちろん自転車で向かう。
少しでも走っておきたいし、電車より速く着いとったら「すごーい」ってなるやろなって下心がないでもない。更なる下心があるかと言えばあるけど、それをかき消すべく、ワイはペダルを漕ぎだした。



電車の乗り継ぎに待ち時間もあるし、裏道を使ったワイの方が当然速い。まあこれはワイが天才やからで自転車の方が電車より速い言うわけではない。

まだ名前の乗った電車が着くまで少し時間がある。駅前のコンビニでスポーツドリンクと、名前の好きなミルクティーを買おうと手に取る。
と、あと、アレ。
なんや四角い箱に入ってる六個入りとかの。お菓子ちゃうで。ほーん、三個入りもあるんか、こっちでええか、いやでも今後も使うことも考えたら……。
いやいやいやいや!!ワイは名前を大事にする!今日はなんもせん!そもそも制服やでワイ、落ち着け。


結局飲み物だけ買ってコンビニを出ると名前の姿が見えた。なんやこんだけ人がおっても彼女のことはすぐわかるもんやな。小走りでこっちに来る様子がなんとも言えん、ああ付き合ってるんやなって実感する。


「鳴子くん、待った?速いね!」

「いやそんな待っとらんよ、軽く流して来た程度やし。ワイが本気出したらそら待つけど」

ミルクティーを渡すとありがとうと笑う。

名前いつもミルクティー飲んどるから甘い匂いするんと違うか」

「そんな飲んでないよ。たまたま飲んでたら鳴子くんが好きだと思ってるから」

「なんやそんな好きやなかったん」



「…………好きだよ」



「…………おう」


なんやそんな目で真剣に好き言うなや。照れるやろ。


「それにミルクティー飲んで甘い匂いするなら鳴子くんだって牛乳くさいはずじゃない?」

「そんな雑巾みたいに言わんといて」

「えー!違うよ、ちょっと嗅がせてよ」

「牛乳くさいからダメですー」

「鳴子くん、ごめんて。確かめるから」


一生懸命に人のこと嗅ごうとする名前を避けながら歩いた。ハコガクにそんな先輩もいるらしいやんな。
今嗅いでくるのは可愛いワイの彼女やけど。



駅前の賑やかさから外れた住宅街。名前の家は巻島さんちみたいに驚くようなこともなく普通の一軒家で、初訪問が家人の留守中いうんは少し気にはなったがまあリラックスして上がれた。
だから完全に油断していた。



リビングはまだええ。階段も普通。

その先の「ここが私の部屋だよ」って通された先があかん。

甘いようなフワフワしたようななんとも言えん名前の匂いで満ちている。

頭がジンジンして落ち着かない。


「飲みものとってくるね、座ってて」

一人猫のクッションに座らされたワイは部屋を見渡す。

小学校の頃から使ってそうな学習デスクに棚には本やぬいぐるみ。クローゼットがあって、それからベッドがある。

ベッドにもぬいぐるみがいて寝るところは狭そうだ。もうダメや。この部屋の匂いにベッドなんで見てたらあかんことになる。


ワイはせめて勉強はリビングでせんかと言いに行くため立ち上がるが、ちょうどそのタイミングで部屋のドアが開いた。


「鳴子くん?どうかした?」

グラスになみなみと注がれたミルクティー。やっぱ好きやんな。


「や、ちょっと……な。勉強は居間でせぇへん?」

「ん、どうしたの、なんか変だよ鳴子くん」


心臓がいつもより速く打つ。レースの時に全てを出し切ったあとの全身が脈打つ感じとも違う、もっとむず痒いような気がする。走り出したい。


「や、なんかこの部屋きてからクラクラすんねん」

「えー!大丈夫?勉強どころじゃないから、横になって」


名前はグラスを部屋のローテーブルに置くと、ワイの手を取ってベッドに座らせた。


「使っていいから、休んで」


このベッドからも甘い匂いがする。ワイを狂わせる名前の匂いや。

ワイを寝かせようとする優しいその手を掴んで引き寄せた。
「なるこ、くん……」

抱きしめて、耳の裏や首筋の匂いを嗅ぐ。これやこれや、ワイが欲しかったんは。

「や、やめて、ぁっ……」

唇や鼻で擦ると色っぽい声を上げる。
しばらく抱いたまま柔らかさと匂いを堪能してたが、顔が見えるくらいの距離をとる。


名前の顔はいつもとは違くて。赤く染まった頬に、なにかを待つような視線を感じたから、今度はなるたけそっと近づいて、唇を合わせた。

甘い、甘い。

もっと味わいたくて舌で舐めると、その口から文句は出なくて、ワイを受け入れてくれた。


唾液まで甘くて暖かくて口内を隅々まで味わう。
はじめてのたっぷりとしたキスの後には名前はとろんとした目線でワイのことを見上げて、唾液が唇から垂れていた。

もうだめや、この甘くて可愛い彼女を全部食べたい。


やっぱりさっきコンビニでゴム買っとけばよかったなあ。
再び抱きしめながらそんなこと考えてたんは内緒やで。



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