社会人メロンパンズ(荒北 鳴子 )長編 完結
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荒北の住まいであるワンルームマンションの玄関に鳴子は転がされていた。
駅にも割合近く小綺麗で、何より玄関が土間と呼んでいいほどに広いところが気に入っている。寝ている鳴子の隣には行儀よく見知ったチェレステカラーが鎮座していた。
「荒北さんビアンキと付きぉうたらええんに」
ボソっと呟いたそれに荒北の眉はつり上がった。
「アァ?テメー、人んち転がり込んで来て第一声がそれかョ」
上着をハンガーに掛けながら寝ている鳴子の尻を足で突いた。転がり込んでも何も、実際はここまで担いできてやったのだ。荒北は一度懐に入れた相手の面倒は最後までみる男である。
「なんであの緑の服はオレがオメーの家知ってると思ったんだよメンドクセー」
送ると引き受けタクシーを呼んでから鳴子の家を知らないことに気がついたのだ。
金城の家に酔っ払いの鳴子を置いて退散することも考えたが、それはそれで面倒なのでやめておいた。
「名字さん」
「あ?」
「せやから緑の服やなくて名字さんす。覚えたって下さい」
額に手を当て、まるで荒北を咎めるようにため息を吐く鳴子。いや、飲みすぎた悪い子なのは鳴子ちゃんだよネと思いつつ「あー名字な」と返事をしておいた。
「ワイも可愛いヨメさんもろて子供たくさん欲しいとか思うとったんすけど、そういうの向いてないみたいですわ」
見るとビアンキの方を向いて真剣に語っている、そいつはオレじゃねーがそんな違わねぇかと放置する。
「彼女が寂しがってたと気づいとったんですが、営業は付き合いが命綱だし、休日にペダル回す時間も欲しい。そんな中でも時間は割いたし尽くしたつもりなんすけど」
鳴子は社会人チームに属し自転車を続けている。完全趣味で気が向いた時に乗る荒北とはまた違うのだろうが気持ちはわかる。
玄関で横たわったまま自転車に向かってポツポツと話す後ろ姿は、入社二年目にして大手取引先のお偉いさんに気に入られ従来のパイプも太くし、新規も開拓し続ける営業部期待の星と同一人物とは信じ難いほど小さく感じた。
「まあ実際チッセぇけど」
「小さくないです!ワイかてあれから伸びましたー!」
高校卒業から五センチ伸び、体つきも精悍になった鳴子は小さいとは言えないが、荒北にとっては真波や小野田世代は同様にかわいい後輩であった。
「んで、なンで名字がアレだって話ィ」
「ああ、なんでも友達の結婚式の二次会で会った荒北さんがかっこ良かったて名字さん言うて、そっからなんか誰かがあーでこーでワイと知り合いってことになりました」
「ぜんっぜんわかんねー、オメーも不思議ちゃんとは思わなかったナ」
雑な説明に頭を抱える。
まあ鳴子と荒北は競技自転車やってて顔見知りだよって誰かが言ったのだろう。
「荒北さんは、好きな女とかおらんのですか」
思いがけないストレートな質問に目を丸くする。
「好きな女とかねーョ、ガキの頃と違うんだから名字が好きならなんかなし崩し的にヤッちまえばいいんじゃナァイ?アイツマジメそうだし」
「ワイこないだまで彼女いたのに最低やないですか」
適当にカマかけたらビンゴだった。鳴子の新しく気に入った女が荒北をかっこいいと言い出してやさぐれているのだろうか。
荒北はだんだん面倒になってきた。頭をガシガシと掻く。
「あー、メンドクセーしどうでもいい。風呂入ってくる」
バスルームに向かおうすると鳴子がフラフラと起き上がり付いてきた。
「いや、オメーは寝てろ、オレが先使うから」
それともなんか文句あんのかョと睨むと、鳴子は白い顔をしていた。
「……吐く」
慌てた荒北は鳴子をトイレに押し込めた。バストイレ別の造りで良かったと安堵しながら荒北はシャワーを浴びるのであった。
駅にも割合近く小綺麗で、何より玄関が土間と呼んでいいほどに広いところが気に入っている。寝ている鳴子の隣には行儀よく見知ったチェレステカラーが鎮座していた。
「荒北さんビアンキと付きぉうたらええんに」
ボソっと呟いたそれに荒北の眉はつり上がった。
「アァ?テメー、人んち転がり込んで来て第一声がそれかョ」
上着をハンガーに掛けながら寝ている鳴子の尻を足で突いた。転がり込んでも何も、実際はここまで担いできてやったのだ。荒北は一度懐に入れた相手の面倒は最後までみる男である。
「なんであの緑の服はオレがオメーの家知ってると思ったんだよメンドクセー」
送ると引き受けタクシーを呼んでから鳴子の家を知らないことに気がついたのだ。
金城の家に酔っ払いの鳴子を置いて退散することも考えたが、それはそれで面倒なのでやめておいた。
「名字さん」
「あ?」
「せやから緑の服やなくて名字さんす。覚えたって下さい」
額に手を当て、まるで荒北を咎めるようにため息を吐く鳴子。いや、飲みすぎた悪い子なのは鳴子ちゃんだよネと思いつつ「あー名字な」と返事をしておいた。
「ワイも可愛いヨメさんもろて子供たくさん欲しいとか思うとったんすけど、そういうの向いてないみたいですわ」
見るとビアンキの方を向いて真剣に語っている、そいつはオレじゃねーがそんな違わねぇかと放置する。
「彼女が寂しがってたと気づいとったんですが、営業は付き合いが命綱だし、休日にペダル回す時間も欲しい。そんな中でも時間は割いたし尽くしたつもりなんすけど」
鳴子は社会人チームに属し自転車を続けている。完全趣味で気が向いた時に乗る荒北とはまた違うのだろうが気持ちはわかる。
玄関で横たわったまま自転車に向かってポツポツと話す後ろ姿は、入社二年目にして大手取引先のお偉いさんに気に入られ従来のパイプも太くし、新規も開拓し続ける営業部期待の星と同一人物とは信じ難いほど小さく感じた。
「まあ実際チッセぇけど」
「小さくないです!ワイかてあれから伸びましたー!」
高校卒業から五センチ伸び、体つきも精悍になった鳴子は小さいとは言えないが、荒北にとっては真波や小野田世代は同様にかわいい後輩であった。
「んで、なンで名字がアレだって話ィ」
「ああ、なんでも友達の結婚式の二次会で会った荒北さんがかっこ良かったて名字さん言うて、そっからなんか誰かがあーでこーでワイと知り合いってことになりました」
「ぜんっぜんわかんねー、オメーも不思議ちゃんとは思わなかったナ」
雑な説明に頭を抱える。
まあ鳴子と荒北は競技自転車やってて顔見知りだよって誰かが言ったのだろう。
「荒北さんは、好きな女とかおらんのですか」
思いがけないストレートな質問に目を丸くする。
「好きな女とかねーョ、ガキの頃と違うんだから名字が好きならなんかなし崩し的にヤッちまえばいいんじゃナァイ?アイツマジメそうだし」
「ワイこないだまで彼女いたのに最低やないですか」
適当にカマかけたらビンゴだった。鳴子の新しく気に入った女が荒北をかっこいいと言い出してやさぐれているのだろうか。
荒北はだんだん面倒になってきた。頭をガシガシと掻く。
「あー、メンドクセーしどうでもいい。風呂入ってくる」
バスルームに向かおうすると鳴子がフラフラと起き上がり付いてきた。
「いや、オメーは寝てろ、オレが先使うから」
それともなんか文句あんのかョと睨むと、鳴子は白い顔をしていた。
「……吐く」
慌てた荒北は鳴子をトイレに押し込めた。バストイレ別の造りで良かったと安堵しながら荒北はシャワーを浴びるのであった。