東堂庵と饅頭屋 中編
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インターハイが近づくにつれ、レギュラー陣はピリピリしてきた。練習量もぐっと増える。サポートする他の部員や我々マネージャー達も力を入れはじめた。
とはいえ部活動をする条件として、家業の手伝いもすること、と親に言われていたので、今朝も日曜だというのに饅頭を箱詰めし、東堂庵へお届けするところだ。
最近お母さんは東堂庵へのつかいを私にやらせる「尽八くんに会えるといいわねー」なんて言いながら。恥ずかしいのでやめて欲しい。確かに、会いたいっていつでも思っているけど。
我が饅頭たちは旅館のお土産コーナーの一角、目立つところに置いてもらっている。
せっせと積んでいると大好きな声がした。
甘くてクセのある喋り、遠くからでもよくわかる。
「……だぞ、マキちゃん、聞いているのか、おいマキちゃん!!」
どうやら電話は一方的に切られたようで、東堂さんは携帯を見つめて渋い顔をしている。
マキちゃんは東堂さんのことが好きではないのだろうか。
「おお、名字名前さんではないか」
私に気がついた東堂さんが側に来てくれた。
先ほどの曇った表情は消えて、笑顔をみせてくれる。
「いつもすまないな」
「いえこちらこそ!お仕事ですから」
「ああ、仕事のことばかりではないさ。こうして仕事もあるのにマネージャー業もしっかりとこなしてくれることに感謝しているということだ」
これから走りに行くのか、サイクルジャージ姿の東堂さんは身体のラインがよくわかる。
無駄な肉のない山を登る為に作られた美しい肢体。
「かっこいい……」
「なに?!」
「あ!いえ何でもないです、あの、家業の手伝い終わったら部室行きますので!」
「いや待つのだ名字名前さん!天から三物を与えられたこのオレを前にして正常なる反応だぞ!気にすることはない!」
かっこいいなんて言われ慣れてるはずなのに、東堂さんはとても嬉しそうだった。
それにしても恥ずかしい。考えてることが口にでてしまうこのクセどうにかしたい。
因みに天からもらった三物については皆が知るところだ。そして異論はない。
「すいません、足止めして。東堂さんはこれから登りに行くんですよね」
「ああそうなのだが、聞いてくれるか名字名前さん!なんと巻ちゃんが来週の土日に箱根に来てくれることになったのだ!敵状視察ショなどとうそぶいているが、オレと山を登るのが楽しみで仕方ない様子だったぞ!オレも楽しみでたまらん、巻ちゃんと登る山は格別だからな!」
「と、泊まり……ですか」
「ああ、すまんな、巻ちゃんと山を登るのが楽しみすぎて余計なことまで言ったな、巻ちゃんは総北の生徒だが汚い真似はせん、心配するな、オレと登りを楽しんで帰るだけさ」
ああ本当に東堂さんはマキちゃんが好きなんだな。
彼女の話をするときは目が輝いている。
マキちゃんは自転車に乗る人なんだ。私には乗れないもの。
東堂さんと別れて自宅に帰る道すがら。
思い起こすのは先程の東堂さんの台詞。
(仕事もあるのにマネージャー業もこなしてくれて感謝している)
東堂さんも私を見ていてくれた。
それだけで満足しようと思う。
だって私はロードバイクをあんな風に乗れない。山を登れない。
東堂さんの好きなマキちゃんにはなれないのだから。
とはいえ部活動をする条件として、家業の手伝いもすること、と親に言われていたので、今朝も日曜だというのに饅頭を箱詰めし、東堂庵へお届けするところだ。
最近お母さんは東堂庵へのつかいを私にやらせる「尽八くんに会えるといいわねー」なんて言いながら。恥ずかしいのでやめて欲しい。確かに、会いたいっていつでも思っているけど。
我が饅頭たちは旅館のお土産コーナーの一角、目立つところに置いてもらっている。
せっせと積んでいると大好きな声がした。
甘くてクセのある喋り、遠くからでもよくわかる。
「……だぞ、マキちゃん、聞いているのか、おいマキちゃん!!」
どうやら電話は一方的に切られたようで、東堂さんは携帯を見つめて渋い顔をしている。
マキちゃんは東堂さんのことが好きではないのだろうか。
「おお、名字名前さんではないか」
私に気がついた東堂さんが側に来てくれた。
先ほどの曇った表情は消えて、笑顔をみせてくれる。
「いつもすまないな」
「いえこちらこそ!お仕事ですから」
「ああ、仕事のことばかりではないさ。こうして仕事もあるのにマネージャー業もしっかりとこなしてくれることに感謝しているということだ」
これから走りに行くのか、サイクルジャージ姿の東堂さんは身体のラインがよくわかる。
無駄な肉のない山を登る為に作られた美しい肢体。
「かっこいい……」
「なに?!」
「あ!いえ何でもないです、あの、家業の手伝い終わったら部室行きますので!」
「いや待つのだ名字名前さん!天から三物を与えられたこのオレを前にして正常なる反応だぞ!気にすることはない!」
かっこいいなんて言われ慣れてるはずなのに、東堂さんはとても嬉しそうだった。
それにしても恥ずかしい。考えてることが口にでてしまうこのクセどうにかしたい。
因みに天からもらった三物については皆が知るところだ。そして異論はない。
「すいません、足止めして。東堂さんはこれから登りに行くんですよね」
「ああそうなのだが、聞いてくれるか名字名前さん!なんと巻ちゃんが来週の土日に箱根に来てくれることになったのだ!敵状視察ショなどとうそぶいているが、オレと山を登るのが楽しみで仕方ない様子だったぞ!オレも楽しみでたまらん、巻ちゃんと登る山は格別だからな!」
「と、泊まり……ですか」
「ああ、すまんな、巻ちゃんと山を登るのが楽しみすぎて余計なことまで言ったな、巻ちゃんは総北の生徒だが汚い真似はせん、心配するな、オレと登りを楽しんで帰るだけさ」
ああ本当に東堂さんはマキちゃんが好きなんだな。
彼女の話をするときは目が輝いている。
マキちゃんは自転車に乗る人なんだ。私には乗れないもの。
東堂さんと別れて自宅に帰る道すがら。
思い起こすのは先程の東堂さんの台詞。
(仕事もあるのにマネージャー業もこなしてくれて感謝している)
東堂さんも私を見ていてくれた。
それだけで満足しようと思う。
だって私はロードバイクをあんな風に乗れない。山を登れない。
東堂さんの好きなマキちゃんにはなれないのだから。